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憂国の文学者たちに 60年安保・全共闘論集
ユウコクノブンガクシャタチニロクジュウネンアンポゼンキョウトウロンシュウ
- 著: 吉本 隆明

冒頭に置かれた「死の国の世代へ」は「闘争開始宣言」という副題を持つ詩である。そこでは誰の保護も受けずに生きた個人のイメージが描かれる。
60年安保闘争での敗北を経て書かれた「擬制の終焉」では社会党や共産党などの党派的な左翼運動や市民・民主主義的な啓蒙主義を完全に否定し、真の前衛運動ないし市民運動の成長に期待を寄せた。
1969年、東大安田講堂に籠もった学生が警察力によって排除された直後に書かれた「収拾の論理」において、丸山真男に代表される大学の知識人の欺瞞を批判し、徹底的に論争を続ける旨宣言して結ばれる。
日本がバブル景気で沸き立っていた1988年に書かれた「七〇年代のアメリカまで」では、その後の東西冷戦終結でアメリカ合衆国が唯一の超大国となる……というあまりに単純化された物言いとまったく異なるアメリカへの視線が浮かび上がっている。
本書に収録された13篇がモチーフとするのは60年安保闘争や全共闘運動といった過去の出来事だが、むしろ執筆当時の文脈から切り離されて現代において読まれてこそ、個人と権力の関係をより切実に感ずることができ、その真価を発揮するものと思われる。
Ⓒ吉本多子
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目次
死の国の世代へ
憂国の文学者たちに
戦後世代の政治思想
擬制の終焉
現代学生論
反安保の悪煽動について
思想的弁護論
収拾の論理
思想の基準をめぐって
「SECT6」について
権力について
七〇年代のアメリカまで
革命と戦争について
書誌情報
紙版
発売日
2021年11月12日
ISBN
9784065260456
判型
A6
価格
定価:2,200円(本体2,000円)
ページ数
336ページ
シリーズ
講談社文芸文庫
電子版
発売日
2021年11月11日
JDCN
06A0000000000385124D
初出
「死の国の世代へ」…「日本読書新聞」1959年1月1日、「憂国の文学者たちに」…「東京大学新聞」1959年11月25日、「戦後世代の政治思想」…「中央公論」1960年1月号、「擬制の終焉」…『民主主義の神話』1960年10月30日 現代思潮社刊、「現代学生論」…「週刊読書人」1961年4月17日、「反安保闘争の悪煽動について」…「日本読書新聞」1963年3月25日、「思想的弁護論」…「週刊読書人」1965年7月19日/7月26日/8月2日/8月9日/8月30日/9月6日/9月13日/9月27日/10月4日/10月11日、「収拾の論理」…「文芸」1969年3月号、「思想の基準をめぐって」…『どこに思想の根拠をおくか』1972年5月25日 筑摩書房刊、「「SECT6」について」…『SECT6+大正闘争資料集』1973年4月10日 蒼氓社刊、「権力について」…「ORGAN」1号 1986年11月15日、「七〇年代のアメリカまで」…「マリ・クレール」1988年7月号、「革命と戦争について」…『甦るヴェイユ』1992年2月1日 JICC出版局刊。 底本として『吉本隆明全集5』『吉本隆明全集6』『吉本隆明全集7』『吉本隆明全集9』『吉本隆明全集11』『吉本隆明全集12』『吉本隆明全集20』『吉本隆明全集24』『吉本隆明全集25』(晶文社刊)を使用し、ふりがなを適宜補いました。
収録作品
-
作品名初出
-
作品名
死の国の世代へ
初出
『日本読書新聞』1959年1月1日
-
作品名
憂国の文学者たちに
初出
『東京大学新聞』1959年11月25日
-
作品名
戦後世代の政治思想
初出
『中央公論』1960年1月号
-
作品名
擬制の終焉
初出
「民主主義の神話」1960年10月30日、現代思潮社刊
-
作品名
現代学生論
初出
『週刊読書人』1961年4月17日
-
作品名
反安保闘争の悪煽動について
初出
『日本読書新聞』1963年3月25日
-
作品名
思想的弁護論
初出
『週刊読書人』1965年7月19日、7月26日、8月2日、8月9日、8月30日
-
作品名
no.7続き
初出
、9月6日、9月13日、9月27日、10月4日、10月11日
-
作品名
収拾の論理
初出
『文芸』1969年3月号
-
作品名
思想の基準をめぐって
初出
「どこに思想の根拠をおくか」1972年5月25日、筑摩書房刊
-
作品名
「SECT6」について
初出
「SECT6+大正闘争資料集」1973年4月10日、蒼氓社刊
-
作品名
権力について
初出
『ORGAN』1号、1986年11月15日
-
作品名
七〇年代のアメリカまで
初出
『マリ・クレール』1988年7月号
-
作品名
革命と戦争について
初出
「甦るヴェイユ」1992年2月1日、JICC出版局刊
著者紹介
吉本隆明(1924・11・25~2012・3・16)詩人、批評家。東京生まれ。東京工業大学卒業。1950年代、『固有時との対話』『転位のための十篇』で詩人として出発するかたわら、戦争体験の意味を自らに問い詰め文学者の戦争責任論・転向論で論壇に登場した。60年安保闘争を経て、61年「試行」を創刊。詩作、政治論、文芸評論、独自の表現論等、精力的に執筆活動を展開し「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。80年代からは、消費社会・高度資本主義の分析を手がけた。主な著書に『言語にとって美とはなにか』『自立の思想的拠点』『共同幻想論』『心的現象論序説』『最後の親鸞』『マス・イメージ論』『ハイ・イメージ論』『アフリカ的段階について』『夏目漱石を読む』(小林秀雄賞)、『吉本隆明全詩集』(藤村記念歴程賞)等がある。