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荻生徂徠「政談」
オギュウソライセイダン

悪魔の統治術か。近代的思惟の先駆けか。
江戸の<病理>に立ち向かった、日本近世思想史の巨人による政策提言集。
開闢以来第一の人物と同時代人にも称賛された日本近世思想史の巨人、徂徠。
将軍吉宗の下問に応えて彼が献上した極秘の政策提言書には悪魔的な統治術の数々がしたためられていた。
反自由・反平等・反啓蒙の立場の表れか。
近代的思惟の先駆けか。
それは江戸の現実と病理に立ち向かった実践的思索の集積であった。
いまも論争を呼ぶ経世の書を平明な現代語で読む。
<「政談」巻末より>
「機事、密ならざれば、則ち害生ず」(『易経』繋辞上伝)ということがあって、幕府の政治上の機密は明白に人に語るべきものではないから、この物語は弟子にも書かせず、私自身の老眼と悪筆で認(したた)めたことである。将軍様の上覧に入れたのちは、焼却していただきたい。
物部茂卿 敬 識(もののべのもけい つつしんで しるす)
※本書の原本は、1974年に『日本の名著 16 荻生徂徠』として中央公論社より刊行されました。
文庫化にあたっては、中公バックス版の同名書(1983年刊)を底本としました。
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目次
■政 談■
○巻 一
国を治める方法の根本
江戸の町中ならびに武家屋敷の取締りのこと
出替り奉公人の取締りのこと
旅人を滞在させるについての取締りのこと
戸籍のこと
路引のこと
浪人ならびに道心者の取締りのこと
遊女と河原者ならびに乞食の取締りのこと
譜代者のこと
武家の旅宿の境界を改めること
海路の取締りのこと
○巻 二
経済政策の重要性
せわしい風習を改めるべきこと
礼法の制度が現在はないこと
幕府の財政のこと
諸大名の困窮を救うこと
旗本・御家人の困窮を救うこと
物価のこと
金銀の数量が減少したこと
貸借のこと
礼法の制度のこと
武家が米穀を貯蔵すること
○巻 三
人の処遇、および官位・爵禄・勲階のこと
頭・助・丞・目のこと
諸役人の統属関係や職務分担のこと
諸役人の才徳を見分けること
代官の職のこと
旗本諸役人の人材登用のこと
諸役人には器量ある者を選ぶべきこと
諸役人の勤務に間暇があるようにすべきこと
役職に文武の区別があるべきこと
○巻 四
番衆の行動に対する制約のこと
法令を統一すべきこと
養子のこと
潰れ大名の家来は郷士とすべきこと
大きな大名は分割すべきこと
結婚した女は夫の家風に従うべきこと
貴賤ともに女の仕事のこと
妾を御部屋と称すること
妾を妻とすること
妾を隠し者とすること
密告のこと
喧嘩両成敗のこと
博奕打のこと
強盗のこと
吉利支丹のこと
田地売買のこと
御文庫の書籍のこと
学問のこと
儒者のこと
医者のこと
○補 注
●国家主義の祖型としての徂徠(尾藤正英/1974年)
●あとがき
●解 説 (高山大毅)
書誌情報
紙版
発売日
2013年01月11日
ISBN
9784062921497
判型
A6
価格
定価:1,408円(本体1,280円)
通巻番号
2149
ページ数
368ページ
シリーズ
講談社学術文庫
初出
原本は、1974年に「日本の名著 16 荻生徂徠」として中央公論社より刊行されたもの。文庫化にあたっては、中公バックス版の同名書(1983年刊)を底本とした。
著者紹介
1666~1728。江戸時代の儒学者・思想家。独自の漢籍研究法と朱子学批判の立場から、古文辞学を確立し、のちには徂徠学と呼ばれる思想潮流を生み出した。
著・訳: 尾藤 正英(ビトウ マサヒデ)
1923年、大阪市生まれ。1949年、東京大学文学部国史学科卒業。東京大学助手、名古屋大学講師、名古屋大学助教授、東京大学助教授、教授を歴任。1984年、定年退職により東京大学名誉教授。以降も千葉大学教授、川村学園女子大学教授を歴任する。文学博士(名古屋大学、1962年)。日本学士院会員。専攻は日本近世史。 ○著書 『日本封建思想史研究―幕藩体制の原理と朱子学的思惟』青木書店、1961年。 『幕藩体制の政治的原理と朱子学との関係に関する研究』(博士論文)1962年。 『大世界史16 閉ざされた日本』文藝春秋、1968年。 『江戸時代とはなにか』岩波書店、1963年。 『安藤昌益』(校注/『日本思想体系45 安藤昌益・佐藤信淵』)中央公論社、1974年。 『荻生徂徠』(責任編集/『日本思想体系16』)中央公論社、1974年。 『日本の歴史19 元禄時代』小学館、1975年。 『日本文化の歴史』岩波書店、2000年。