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ふたつの嘘 沖縄密約[1972-2010]
フタツノウソオキナワミツヤク
- 著: 諸永 裕司
国家の密約と夫の不実。西山太吉氏妻の告白沖縄密約をめぐる情報公開訴訟判決で、ベストセラー『運命の人』のモデル・西山太吉の名誉は回復された。本書は沖縄をめぐる本格ノンフィクションである。
沖縄密約をめぐる二人の女の物語
本書は、沖縄密約をめぐる国の嘘によって人生を断たれた元新聞記者・西山太吉と、国の嘘を認めさせようと願い、動いた人々の記録である。
第一部では、「夫の嘘」と「国の嘘」に翻弄された西山の妻の半生をたどる。
第二部では、国による「過去の嘘」と「現在の嘘」に挑んだ女性弁護士の戦いに光を当てる。西山が「最後の戦い」として挑んだ情報公開請求訴訟をたどる。
情報公開をめぐる法廷で、かつて否定をつづけてきた密約を認めた元外務省高官は、こう語った。
「嘘をつく国家はいつか滅びるものです」。
あの日から、三十八年。 沖縄をめぐる「嘘」のあとを追った。
〈本書の抜粋〉
自宅の電話が鳴った。めずらしく受話器を取ったのは夫(西山太吉氏)だった。
「作家の山崎ですけど」
そう聞いて、夫は同姓の元同僚からだと勘違いした。
「最近、どうしてるんや」
「私は作家の山崎豊子よ。『太陽の子』や『沈まぬ太陽』は読んでないの」
「読んじゃおらんよ」
夫は間髪いれずに言い放った。山崎にとっては屈辱的な返答だっただろう。それでも丁重な口ぶりで、ぜひ(『運命の人』を)書かせてほしいと迫った。
「あなたの人権はぜったいに守りますから」――。
【目次】
〈第一部〉「夫の嘘」と「国の嘘」――西山太吉の妻 啓子
【序 章】十字架
〈ひそかに情を通じ〉新聞記者の夫の罪を問う起訴状の一言。あれから、すべてが狂った。夫はペンを折り、社会から抹殺された。一方で、密約は葬られた。
【第一章】 暗転
受話器をとると、女性の声がした。外務省の事務官だという。「ご主人の帰りは遅いの?」切る間際に、舌打ちが聞こえた。スキャンダルの予感がした。
【第二章】 傷口
事件後、啓子は日記をつづっていた。〈夫婦でいていいのか。果して、夫婦と云えるか〉〈すべてから逃れ得るには、死よりは道はないのだろうか〉
【第三章】 離婚
二十年近くも別居を続けてきた。すでに気持ちは離れていた。でも、なかなか決断できない。生ける屍のようになった夫を前に、啓子は揺れていた。
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目次
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【第四章】 再生
事件から二十八年後の朝。夫がゴミ拾いから帰ってまもなくだった。「密約を裏づける米公文書が出た、と朝日新聞が報じています」転機は突然、訪れた。
【第五章】 逆風
外務省元高官も密約を認めた。ついに、夫は国を相手に裁判を起こした。しかし、敗訴。負けたまま死ぬわけにはいかない。夫はまだ、あきらめたわけではなかった。
〈第二部〉「過去の嘘」と「現在の嘘」 ――弁護士 小町谷育子
【第六章】 衝突
沖縄密約の文書を開示せよ――。作家の澤地久枝やジャーナリストの筑紫哲也らも立ちあがった。しかし、国の回答は「不存在」小町谷の心に火がついた。
【第七章】 封印
当時の日記で、 西山太吉は「死」について触れていた。葛藤と悔悟の末にたどりついた絶望。それから四十年近く、国への怒りが消えることはなかった。
【第八章】 反骨
「密約はない」。国はいまも嘘を重ねている。では、文書は消えたのか。小町谷は情報公開訴訟のなかでこう訴えた。〈no records, no history〉
【第九章】 記憶
「吉野さんの証言を聞きたい」。裁判長の言葉に、法廷がどよめいた。元外務省アメリカ局長の吉野文六は、沖縄返還をめぐる交渉の責任者。歴史の目撃者でもあった。
【第十章】 宿題
米公文書という「密約の証」を見つけた琉球大学教授の我部政明。その職人のような地道な作業の積み重ねが、国の築いた情報公開の厚い壁を破る武器となった。
【第十一章】告白
吉野文六は再び、法廷に立った。かつての刑事裁判での偽証を覆し、密約を認めた。三十七年ぶりに西山とも再会した。しかし、それで勝てるほど甘くはなかった。
【第十二章】追及
小町谷は突然、立ち上がった。「ひとつ、国にお聞きしたいことがあります」。原告が負わされている立証責任の一部を国に求めた。情報公開に風穴をあけようとしていた。
【終 章】判決
劇的な幕切れに、拍手が広がった。西山は目を潤ませ、妻の啓子は「離婚しなくてよかった」と初めて思った。小町谷は何度も判決文を読み返した。歴史の扉がついに、開いた。
書誌情報
紙版
発売日
2010年12月22日
ISBN
9784062166850
判型
四六
価格
定価:1,980円(本体1,800円)
ページ数
322ページ
電子版
発売日
2014年01月31日
JDCN
0621668500100011000A
著者紹介
(もろなが・ゆうじ) 1969年生まれ。東京学芸大卒。93年、朝日新聞社入社。京都、つくば両支局、「AERA」編集部、社会部、「週刊朝日」編集部などを経て現在はアサヒ・コム編集部所属。著書に『葬られた夏 追跡 下山事件』(朝日新聞社)がある。
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