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訣別 ゴールドマン・サックス
ケツベツゴールドマンサックス
顧客の利益第一を掲げ信頼を得てきた名門投資銀行はいつからこんな会社に堕落してしまったのか。同時多発テロ、世界金融危機、欧州政府債務危機などを経るなかで、ゴールドマン・サックスは変質した。、顧客を「マペット」つまり「他人に操られる馬鹿で愚かな奴」といってはばからぬ金儲け第一主義に堕した。アメリカ金融界なぜここまで腐食していったのか? 愛し、忠誠を尽くした会社を去るにあたっての覚悟の一冊。
日本の読者のみなさまへ
多くの人にとってウォール街は謎めいた場所のようです。私はあなたのような一般読者のことを念頭に、本書を執筆しました。「大手の銀行がなぜあれほど金儲けができるのか」「金融機関の〈社風〉はどのようにその会社を形づくっているのか」「どういう人物が出世するのか」、それから「金融機関はどうやって利益相反を犯して収益を上げるのか」といった業界の謎を、本書では解き明かしています。この本で目を開かれた、おもしろかったとみなさんが思ってくださることを願ってやみません。――グレッグ・スミス
スタンフォード大学を卒業した私は、合格率2.2パーセントの超難関を突破してゴールドマン・サックスに就職。ところが、2001年9月11日、同時多発テロが襲う。
9・11後の強烈な収縮局面から脱していない金融市場はリストラの嵐が吹き荒れていたが順調に仕事をこなしていた私は、デリバティブについて学ぶ日々を送る。
2006年、ウォール街は上げ潮状態だった。6月にブランクファインが会長兼CEOに就任。投資銀行からトレーディングへと大きく軸足が動いていく。株式デリバティブ部門でも好成績を残した私は、ヴァイス・プレジデントに昇格した。
2008年3月にベア・スターンズ、9月にはメリル・リンチとリーマン・ブラザーズが破綻。AIGも存亡の危機に陥る。そんな中、ゴールドマン・サックスは銀行持ち株会社に移行した。銀行救済を目的とするTARPが議会で可決された。「トゥー・ビッグ・トゥー・フェイル」というわけだ。
2009年には回復基調にあったゴールドマン・サックスは、金融危機を乗り越える過程で別の会社に生まれ変わってしまった。2010年4月、ゴールドマン・サックスはSECより詐欺罪で提訴された。収益第一、顧客第二に変わりつつある社風。この会社はどこへ向かっているのか。
ロンドン転勤の打診を受けた私は、メンターに相談し、ついに決断する。着任した私は、ロンドン支社の異様なまでに儲け第一の路線に違和感を憶える。もはや顧客第一を標榜したゴールドマン・サックスは過去のものだった。たび重なる失望、諦念の末、私は自分が愛し、尽くしたこの会社を去る決心を固めることになる。
- 前巻
- 次巻
目次
第1章 「わかりません。でも、すぐに調べます」
第2章 最悪の日々、飛躍の日々
第3章 スプリングボックの着地点
第4章 何かが終わった……
第5章 カジノ・ゴールドマンへ、ようこそ
第6章 大型取引を狩る日々
第7章 ウォール街、深淵をのぞき込む
第8章 顧客には四種類ある……
第9章 「この怪物どもが」
第10章 ロンドンへの道
第11章 荒野のロンドン支店
あとがき さらばゴールドマン・サックス
書誌情報
紙版
発売日
2012年10月23日
ISBN
9784062180801
判型
四六
価格
定価:2,090円(本体1,900円)
ページ数
458ページ
著者紹介
1978年、南アフリカ共和国ヨハネスブルグ郊外に生まれる。高校を総代で卒業すると同時に、米スタンフォード大学の全額給費奨学生の権利を得て渡米。大学1年次に受けた経済学の授業に触発されて進路を決める。3年次の2000年にゴールドマン・サックスで夏期インターンシップを経験し、新卒で採用される。入社直後の2001年9月11日、ニューヨークを襲った「同時多発テロ」を目撃する。 入社3年目で20億ドルの先物取引をこなし、20代後半でヴァイス・プレジデントとなる。その4年後、32歳の時にロンドン異動を命じられた。ロンドン時代は、欧州、中東、アフリカ向けのデリバティブ事業責任者として活躍。 その間、特に2008年の世界金融危機以降の社風の変化に疑問を持つようになり、2012年春に12年勤務したゴールドマン・サックスを退職。「私がゴールドマン・サックスを去る理由」”Why I Left Goldman Sachs”と題する手記を『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄稿して話題となる。
1965年生まれ。翻訳家。作家。徳川宗家19代目。慶應義塾大学経済学部卒。米ミシガン大学大学院で経済学修士号、米コロンビア大学大学院で政治学修士号を取得。主な訳書にA・チュア『最強国の条件』、G・ソロス『ソロスは警告する』(ともに講談社)、W・バーンスタイン『「豊かさ」の誕生』(日本経済新聞社)、S・L・シャーク『中国危うい超大国』(NHK出版)、著書に『なぜ日本経済が21世紀をリードするのか』(NHK出版新書)、『自分を守る経済学』(ちくま新書)、『バブルの興亡』(講談社)などがある。
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