儒学殺人事件 堀田正俊と徳川綱吉

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儒学殺人事件 堀田正俊と徳川綱吉

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徳川三百年にあって江戸城内での刃傷沙汰は7件。いちばん有名なのは、浅野内匠頭が吉良上野介を松の廊下で傷つけた事件ですが、同じ将軍綱吉の治世に、もう一つの殿中刃傷事件がありました。それも最高位の大老殺害。殺されたのは堀田正俊、下手人は、なんと若年寄の稲葉正休でした。しかもその黒幕が将軍綱吉であったことはほぼ間違いありません。なぜ将軍は大老を消そうと考えるにまで至ったのか。その特異な背景を追跡します。


第36回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞!

 徳川三百年にあって江戸城内での刃傷沙汰は7件起こっています。いちばん有名なのは、浅野内匠頭が吉良上野介を松の廊下で傷つけた事件ですが、そのほかにも6件あるわけです。最高位の大老が殺害された例もあります。
「大老暗殺」といえば幕末の井伊直弼のケースが思い浮かびますが、あれは桜田「門外」であって「殿中」ではないのでここではカウントされません。では江戸城という国家権力を象徴する場所で殺害事件は、いつ、なぜ起こったのか、殺された大老とは誰なのか……。
 事件発生は貞享元年(1684)8月28日。殺された大老は堀田正俊(下総佐倉藩主)。下手人は、なんと若年寄の稲葉正休でした。
「発狂」「乱心」の結果とされたこの異様な事件は、さまざまな憶測を呼びました。たとえばその場で稲葉正休を討ち果たしてしまったことに対して、水戸光圀は「粗忽である」と難詰、生かしておいて原因を究明すべきだったと断じたと『徳川実紀』にあります(じつは、殺害後の正休は無抵抗であり確信犯的行動だったようです)。
 そんなしだいで、当時から事件の背景には時の将軍綱吉の意向があるとの噂も絶えませんでした。たしかに正俊在世中の綱吉は比較的抑制した権力行使の態度がみられますが、世に言う元禄時代、綱吉のやりたい放題の政治(側用人政治)は正俊暗殺以後に始まるといえます。
 さまざまな状況証拠から推して、大老暗殺の黒幕が将軍であったことはほぼ間違いありません。しかし、なぜ将軍は大老を消そうと考えるにまで至ったのか、双方はどこまで「政治、国家観」「統治者像」を同じうし、どこから超え難い溝が生ずるようになったのか……。本書は思想をめぐって発生した知られざる殿中暗殺事件を追うことで、近世日本における「期待される政治家像」の形成を論じます。異色の思想史ドラマとなるはずです。


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  • 次巻

目次

はじめに 聖堂へ昇る将軍
第一章  大老、殿中に横死す
第二章  天和の改革と将軍綱吉
第三章  牧民の思想
第四章 『〓言録』の世界
第五章  君子、慎むべし
第六章  朝鮮通信使と儒学
むすびに 扇の小箱

書誌情報

紙版

発売日

2014年04月25日

ISBN

9784062189330

判型

四六変型

価格

定価:3,080円(本体2,800円)

ページ数

386ページ

電子版

発売日

2014年05月30日

JDCN

0621893300100011000A

著者紹介

著: 小川 和也(オガワ カズヤ)

小川和也(おがわ・かずなり) 1964年群馬県館林市生まれ。成蹊大学文学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。専攻は日本思想史。現在、北海道教育大学准教授。著書に『鞍馬天狗とは何者か』(藤原書店)、『文武の藩儒者 秋山景山』(角川学芸出版)、『牧民の思想─江戸の治者意識』(平凡社)、『大佛次郎の「大東亜戦争」』(講談社現代新書)、『ひとりでいいんです─加藤周一の遺した言葉』(共著、講談社)がある。

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