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言語学者が語る漢字文明論
ゲンゴガクシャガカタルカンジブンメイロン
- 著: 田中 克彦

漢字は言葉ではない。記号である。漢字にはオトは必要ない。どの言語ででも漢字を「訓読み」できる。では、中国文明の周辺地域を含めた「漢字文化圏」とは自明のものなのか。歴史上の突厥・契丹・西夏・女真・モンゴル文字など、漢字からの自立運動は何を意味するのか。漢字を残す日本語は独自の言語であることの危機に瀕しているのか。言語学者が考察する文字と言語の関係。
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目次
第一章 日本語という運命
母語ペシミズム 外国人をはばむ漢字語 日本人に八つもの言語が!
「言語共同体」とは ことばの名に「国」をつけるな 言語共同体は運命共同体
第二章 「日本語人」論
日本語人にはみずからの意志によってなる 自分の意志でなるカナダ人
人類共用語のために母語を捨てられるか 漢字はローマ字に勝てない?
文法はかえられない 文字はかえられる
オト文字は言語の構造をより明らかにする
第三章 漢字についての文明論的考察
「漢字文化圏」論 日本は「漢字文化圏」の行き止まり
漢字文化圏からの離脱の歴史 進化する本家の漢字
中国語知らずの漢字統一主義者 漢字に支配されなかった周辺諸族
特に突厥文字の原理について ウラル=アルタイ諸語を特徴付ける母音調和
チベット文字とモンゴル文字 漢字におと7は必要ない
訓読みはどの言語にも起きうる 音読みだって一通りではない
数字の訓読み ローマ字にも見られる象徴性
ふりがな、訓読みは線条性(リネアリテ)に反する 歴史記述と線条性
筆談で伝えるのは言葉ではない もしローマ帝国が漢字を使っていたら
漢字は言語を超えている いまさら「音声中心主義」?
周辺民族の恐るべき言語本能 直接支配下にあった朝鮮語
ハングルによる朝鮮語の闘いはこれから 中国語そのものが漢字と闘っている
日本人と漢字――最後に残る漢字圏の問題
第四章 「脱亜入欧」から「脱漢入亜」へ
日本は中国と同文同種か 中国語は日本語よりも英語に近い
モンゴル語が開いてくれた世界 トルコ語もフィンランド語も
ラムステッドに導かれて ウラル=アルタイ語世界
印欧語比較言語学と音韻法則 音韻法則を超えて
カタテオチのカタはウラル=アルタイ共有語 中国語はhave型言語
ロシア人を捉えて放さないユーラシア主義 東方性こそがロシアの特徴
ユーラシア・トゥラン語圏 トゥラン主義の日本への伝播
日本文化の基軸にかかわる漢字問題 漢字という障害物
ドゥンガン語――漢字抜きの中国語 「漢字文化圏」の外に経つ漢語
書誌情報
紙版
発売日
2017年08月10日
ISBN
9784062924450
判型
A6
価格
定価:1,155円(本体1,050円)
通巻番号
2445
ページ数
312ページ
シリーズ
講談社学術文庫
電子版
発売日
2017年08月25日
JDCN
06A0000000000004279E
初出
本書の原本は2011年に角川マーケティングから『漢字が日本語をほろぼす』として刊行されました。
著者紹介
1934年生まれ。東京外語大学モンゴル語科卒業。一橋大学大学院社会学研究科修了。一橋大学名誉教授。専門は社会言語学、モンゴル語学。言葉と国家と民族の関係について総合的に研究を進めている。 著書に『ことばと国家』『エスペラント――異端の言語』『ノモンハン戦争――モンゴルと満洲国』(岩波新書)『ことばとは何か』(講談社学術文庫)などがある。
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