文芸(単行本)作品一覧

猫弁と星の王子
文芸(単行本)
あの「猫弁」が、帰ってきたーー!
百瀬太郎は亜子と結婚の約束を交わしたものの、個人的な事情でまだ結婚には至っていない。二人が喫茶店でご飯を食べていると、「ちょっと見ていてください」と百瀬の腕に……渡されたのは、赤ちゃんだった! 一方、地方から上京してきた正水直は入学金詐欺に遭い、途方にくれていた。行くところがない直も、百瀬の事務所にたどり着き……。さらに、「死なない猫」の相談まで舞い込んでーー。事務所は大賑やか、百瀬は大忙し。亜子との関係は、いったいどうなる!?

大江健三郎全小説全解説
文芸(単行本)
新聞記者として長年大江健三郎を取材してきた著者による、わかりやすい大江健三郎入門書。『大江健三郎全小説』(全15巻)を通して書かれた解説を一冊にまとめる。大江健三郎全小説のあらすじから説き起こしつつ、個々の作品発表当時の文芸批評家による主要評論に言及、その作品がどのように受容されてきたかを論じる。またときに作家へのインタビューを引用しながら作品の意義を明らかにする。大江文学がどのように生まれ、どのように読まれ、さらにこれからどのような研究課題がありえるのかを総合的・俯瞰的に論じた大江評論の決定版。
目次
はじめに
よろしい、僕は地獄に行こう!
惨憺たる青年たち
封印は解かれ、ここから新たに始まる
復元された父の肖像
神話としての「個人的な体験」
知と懐かしさの容れ物として
ノーベル賞はいかにしてもたらされたか
果てしなく多義的な偽史をめざす
アメリカの影が差す女性たち
予戒としての近未来SF
青年の夢想と酷たらしさ
世紀末に集中した「魂のこと」
再びの「カラマーゾフ万歳!」
永遠のモラリスト、伊丹十三
「晩年のスタイル」こそ苛烈に
大江健三郎年譜
『大江健三郎全小説』収録作リスト
文献一覧
索引

無駄花
文芸(単行本)
なんの捻りもないコメントだけれど、捻る間も惜しんで勧めたい。
とにかく読んでください。自分が書いたことにしたいくらい大好きな作品。
ーー尾崎世界観 (クリープハイプ)
29歳、戦慄のデビュー。第14回小説現代長編新人賞 奨励賞受賞作。
関西弁で押し進めるテンポが軽やかで、少年期を関西圏で過ごした私には妙に納得が行くリズムと“間”があって、この作者の声が聞こえて来る気がした。少年期の多感な情熱と、不安、悩みもよくうかがえた。これは文章における才能である。
ーー伊集院静
一番に推した。(略)全体として密度が高く、エモーションや怒りのようなものが持続し、台詞も臨場感のあるものだった。また、永山則夫と比較される覚悟を感じ、その点に特に好感を抱いた。
ーー宮内悠介
【内容紹介】
ある日、死刑囚・中村は、出版社の社員から、これまでの半生について手記を書くよう手紙で促される。そこで中村は自身の半生と、因縁の男・島田との関係を綴り始めることになった。困窮した家庭に育った中村と、地元でも有数の実業家一族の島田の二人は、一度は中学で同じ不良グループに属していたが、島田の度重なる裏切りに業を煮やした中村が殴り合いの喧嘩の末、島田と縁を切ることに。
その後、上京して会社員となり、結婚して幸福な生活を送っていた中村は、父の重篤の報を受け、看病のため久しぶりに帰郷する。そこに一族の経営会社を引き継いだ島田が現れ、二人は十数年越しに再会を果たす。直後に襲った株価暴落もあり、過去の蟠りを払拭して彼の会社に入社することを決意した中村だったが、そこにはなんと犯罪や不貞が横行する世界が待ち受けていたのだった。島田に妻を寝取られ、またしても裏切りにあった中村は、遂に怒りを爆発させ、凶行へとひた走るーー。

私の中にいる
文芸(単行本)
母子二人暮らしのアパートで発見された、女性の変死体。亡くなっていたのは母親、そして殺してしまったのは、日々虐待を受けていた小学生の娘だった。事件以降、“人”が変わったような言動をとりはじめる少女。何かが、おかしい。原因は過度の精神負荷による、解離性同一性障害……多重人格のせいなのか。では――「私の中にいる」のは、誰? 『人間に向いてない』で注目の著者が、読者に突きつける社会の底。

人間とは何か 偏愛的フランス文学作家論
文芸(単行本)
文学がすべてを教えてくれた。
サド、ボードレール、フローベール、ランボー、プルースト、カミュ……。
自身の文学遍歴=「文学による感情教育」を語りつつ、フランス文学史を彩る31名を通して、人間精神の多彩な運動の軌跡を描き出すエッセイ的評論。
〈目次〉
1 サド――悪について
2 ラクロ――心のメカニズムについて
3 カザノヴァ――自由について
4 コンスタン――愛の不可能性について
5 スタンダール――誠実さについて
6 バルザック――誘惑について
7 メリメ――情熱について
8 ボードレール――自意識について
9 フローベール――夢想について
10 ロートレアモン――反抗について
11 ヴェルレーヌ――感傷について
12 ランボー――自己の超越について
13 ヴェルヌ――冒険について
14 バルベー・ドールヴィイ――文学的欲望について
15 ゾラ――食について
16 モーパッサン――恐怖について
17 ユイスマンス――デカダンスについて
18 リラダン――観念について
19 プルースト――人生と芸術について
20 ジッドー――小説について
21 コクトー――虚偽について
22 ラディゲ――倫理について
23 セリーヌ――絶望について
24 アルトー――狂気について
25 ブルトン――ユーモアについて
26 バタイユ――エロティシズムについて
27 カミュ――不条理について
28 ジュネ――言葉の魔術について
29 マンディアルグ――幻想について
30 ヴィアン――反人間主義について
31 マンシェット――ニヒリズムについて

数学者の夏
文芸(単行本)
天才的な数学の才能を持った高校生、上杉和典は校内の理数工学部に所属している。今年から部員でリーマン予想の証明に取り組んでいたのだが、和典は皆で議論を戦わせながら進めていく方針にどうにもなじめない。皆は合宿でリーマン予想に取り組むというが、和典はひとりで証明に挑戦するため、長野の山奥で夏休みを過ごすことにした。ここは古くから高校生や大学生、予備校生を対象に学生村を開設しており、和典の学校でも募集の告知があった場所の一つだった。
和典はそこで、ホームステイをしながら数学に没頭しよう、そう意気込んでいた―ー。
ステイ先に到着するやいなや、問題に取り組む和典。だが、不注意により書き込みをしていた紙を飛ばしてしまう。すべて回収したと思いきや、一部垣根を越えてよその家まで飛んでいってしまったことが分かる。
そしてこの飛ばしてしまった紙が、和典に思いもよらぬ出会いをもたらすことになるとは、誰も知る由もなかった―ー。

海蝶
文芸(単行本)
日本初の女性海保潜水士、挑戦と勇気の物語。
“初”だからこその悩みと光。絆の大切さを感じられる、感動の物語です!―岩崎恭子さん(オリンピック200m平泳ぎ金メダリスト)
母なる海の守護神たらんとする海上保安官の心を描いた傑作だ。ー佐藤雄二氏(元海上保安庁長官)
女性の自立と家族愛は超ハートフル、手に汗握るサスペンスはVRシネマ級!
(あらすじ)
女性初の潜水士として注目を集める、横浜海上保安部所属・忍海愛。兄は特殊救難隊、父もベテラン海保潜水士で血筋は折り紙付き。しかし、愛は現場には気を使わせるお荷物だ。覚悟して海に対峙する愛を待ち受けていたのは、とんでもない事件だった。
推薦・感動の声続々!!
期待を浴びて華麗にデビューした海の蝶。
音も色もない水の中で感情は研ぎ澄まされ、
喪失のトラウマは怪物となって命を脅かす。
それでも潜らなければならない理由がある。
覆すのは常識だけではない。救うのは人の命だけではない。
プロフェッショナルとしての決意と覚悟が伝わる。
前代未聞の感動がここにある!
内田剛氏 (ブックジャーナリスト・本屋大賞実行委員会理事)
「足かけ二年に渡る海上保安庁取材で見聞きした海上保安官の精神『正義仁愛』こそが、この本のテーマであり、矜持です」―吉川英梨(著者)

帰ってきたK2 池袋署刑事課 神崎・黒木
文芸(単行本)
シリーズ最新作!
TBS金曜よる10時~『キワドい2人-K2-池袋署刑事課 神崎・黒木』としてドラマ化決定!!
真面目な神崎、破天荒な黒木。
真逆な2人の最強のバディが帰ってきた!
池袋のアパートでシングルマザーの死体が発見された。
真っ先に現場に駆けつけた神崎と黒木は、残された幼い娘を前に犯人検挙を誓う。
ところが翌日、2人は突然、捜査本部から外されてしまいーー。
西武と東武の百貨店、サンシャインシティに大型家電量販店、そしてオタクの聖地、乙女ロード。
「池袋」だからこそ、起こる事件がある。
「池袋の治安を守るのが俺たちの仕事だ。困っている人がいたら見過ごすわけにはいかないだろ」
この街は、俺たちを眠らせない。

愛されなくても別に
文芸(単行本)
第42回吉川英治文学新人賞受賞作!!
時間も金も、家族も友人も贅沢品だ。
共感度120%で大反響、続々重版!
「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者が、息詰まる「現代」に風穴を開ける会心作!
遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。学費のため、家に月8万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす――そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する!
愛情は、すべてを帳消しにできる魔法なんかじゃない――。
息詰まる「現代」に風穴を開ける、「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者の会心作!

愚行の賦
文芸(単行本)
人はなぜ
愚行を怖れ
しかも魅惑されるのか
フローベール、ドストエフスキー、ニーチェ、バルト、そして谷崎潤一郎
愚行は西洋近代が考案した〈人間の宿命〉である
「愚」という尊き徳をめぐる最新長篇論考
愚行を地上から消滅させることは不可能であると認識していた者は、いつの時代にも少数だが存在していた。だが多くの者は、何らかの条件さえ整えば、人は愚行に対して勝利を収めることができるものだと考えていた。しかし今日にいたるまで愚行は消滅することなく、それどころかますます猖獗を極め、強固な構造として世界に遍在している。

Cocoon5 瑠璃の浄土
文芸(単行本)
昼は花魁、夜は鬼斬り。大人気和風ファンタジーシリーズ、ついに完結!
義理の兄・惣之丞の目的は、差別撤廃にあった。そのためには肉体も魂も売り、最強の鬼、将門の復活を目論む。惣之丞のやり方が許せない一方、「差別撤廃」という言葉に瑠璃の心は揺れる。一方で、瑠璃の身体は飛雷に乗っ取られようとしていた。瑠璃の過去と龍神たちの想いが明らかになり、最強の鬼との最終決戦を迎える、シリーズ最終巻。

隣人X
文芸(単行本)
第14回小説現代長編新人賞受賞作。
現代の社会が抱える問題と巧くリンクさせ、登場人物の置かれた環境や心情を通じて難民や移住外国人の受け入れ、違法労働について投げかけてくるところに作者の並みならぬ手腕を感じた。
――朝井まかて
小説の主軸は三人の女性それぞれの日常にある生きづらさの描写にあり、それが作者と地続きのテーマであるだけに、とてもよく描けている。
――中島京子
3人の女優が名演技を魅せる舞台劇のような佳作だ。突きつけられた問題は深い。
――出口治明 (APU学長)
異国の地で生まれたこの小説は、タフで真面目で意表をつく。
――筒井ともみ (脚本家)
それぞれの女性が何やら糸で繋がっている気配もよく描けていた。才気が随所に感じられた。
――伊集院静
人々の出来事や心の動きが丁寧につづられ、読んでいて好感を抱くものだった。
――宮内悠介
惑星難民に拘らず、今を生きる私たちの世相を風刺している。
――紀伊國屋書店福岡本店 宗岡敦子
20xx年、惑星難民xの受け入れが世界的に認められつつあるなか、日本においても「惑星難民受け入れ法案」が可決された。惑星xの内紛により宇宙を漂っていた「惑星生物x」は、対象物の見た目から考え方、言語まで、スキャンするように取り込むことが可能な無色透明の単細胞生物。アメリカでは、スキャン後に人型となった惑星生物xのことを「惑星難民x」という名称に統一し、受け入れることを宣言する。日本政府も同様に、日本人型となった「惑星難民x」を受け入れ、マイナンバーを授与し、日本国籍を持つ日本人として社会に溶け込ませることを発表した。郊外に住む、新卒派遣として大手企業に勤務する土留紗央、就職氷河期世代でコンビニと宝くじ売り場のかけもちバイトで暮らす柏木良子、来日二年目で大学進学を目指すベトナム人留学生グエン・チ―・リエン。境遇の異なる3人は、難民受け入れが発表される社会で、ゆるやかに交差していく。

償いの流儀
文芸(単行本)
正義の鉄槌?
なんて柄じゃないけど
オレオレ詐欺に遭った「角のおばちゃん」の仇を取ろうと
証拠をつかんだ詐欺集団を匿名で警察に通報したつもりが、
逆に逮捕を逃れた残党に居場所を知られ、復讐の標的に。
背後の組織をつかみ切れない奈美が選んだ窮余の策とは?
企業のトラブル請負という仕事をめぐって最愛の恋人・雪江と師を続けて亡くした西澤奈美は心の整理がつかず空虚な日々を送っていた。そんな彼女が親しみを寄せるタバコ屋の上井久子がオレオレ詐欺に遭う。
久子を慰める術を持たない奈美だったが、自分が入居する雑居ビルのオーナーから隣のビルに入った怪しげな会社が詐欺集団ではないかという見立てを聞き、密かに証拠をつかみ匿名で警察に通報する。しかしその後、逮捕を逃れた残党の影がちらつき、たびたび襲撃を受けるように。
奈美は、彼女が育った児童養護施設の後輩で雪江を慕っていたという松井の協力を得て久子を騙した犯人を突き止め、ついには自ら拉致されて敵地に辿り着くという無謀な賭けに出る……。
満身創痍の西澤奈美、絶体絶命!

夢魔の牢獄
文芸(単行本)
男は22年前の友人たちに憑依する。
迷宮入り殺人事件の真相を追って。
タイムリープ・ミステリの金字塔『七回死んだ男』を凌ぐ衝撃!
作家生活25周年を飾る長編ミステリ!!
教師の田附悠成は、過去へ遡って友人たちに憑依するという特異能力を持つ。
だが誰に憑くかは選べない。確実なのは、恩師の義理の息子が殺された22年前に戻ってしまうことだけ。
身をもって体験する友人たちや被害者の不可解な行動、そして隠された女の死。
迷宮入り殺人事件の“あの日”を繰り返す田附が辿り着いた驚愕の真相とは?

ぴりりと可楽!
文芸(単行本)
お笑い興行が禁止されて100年。旦那衆の道楽となった「お笑い」を、庶民の娯楽へと飛躍させた江戸落とし噺の元祖・三笑亭可楽のまっしぐら人生!
三宅裕司さん、春風亭昇太さん、大絶賛!
櫛職人の又五郎は「お笑い」好きの粋な旦那衆が揃う〈噺の会〉の下っ端ながら、大坂からやって来たお笑い芸人を向こうに回し、ここでやらなきゃ江戸っ子の名折れとしゃしゃり出る。が、急ごしらえの寄席はたった五日で店仕舞い。自分のあまりの不甲斐なさに江戸の街を飛び出した又五郎、百戦錬磨の芸人たちが集う街道沿いの宿場町、越ヶ谷・松戸で揉まれて丸二年。修業の末にようやく掴んだ前代未聞の即席芸〈三題噺〉で一世一代の大勝負に打って出る!
又五郎「確かにおいら、頭の軽い江戸っ子よ。いつも思い付きでおっちょこちょいをやっちゃあ、周りに迷惑をかけてきた。難しいことを考えるのは苦手だし、もとが無学な職人だ。だがなあ、この三題噺ってやつは、ただの思い付きじゃァねえ。今度は違うんだ。――おいらだけの創意工夫だよ」
於奈津「あたしを嫁にしたいだろう? じゃァ、いくらでも待ってやるから、かならずイイ男になって迎えに来て!」
源兵衛親方「いいか、又五郎。生きるってえのは、そりゃァ苦しいもんだ。若え頃に、心の中にある『言い訳』ってえ阿片に毒された半端モンはな、いつか必ず、生きる苦しさに負けて、あれやこれやと言い訳をしては楽に逃げこむ。女房子供を育てるてえ、お天道様との当たり前の約束から、言い訳まみれで逃げ出そうとしやがる。そういう半端なクソ男のせいで不幸になった女子供を、この町でたくさん見て来たんだ。於奈津だけは、そんな男にゃァ触れさせねえ」
小鉄「アニキは顔がよくって背が高い。粋でイナセな江戸職人で、何をやらせてもうまくやる。おいらを見ろ、奉公先ではバカ扱い、〈噺の会〉では下手扱い。女にゃモテず、顔も悪けりゃ屁も臭い。そんなおいらがガキの頃から一緒のアニキのためになんかやろうと思って何が悪いんだ!」
左団次「貴殿は拙者にとって師匠でござる。下谷稲荷での勧進のおり、酔客の狼藉に動揺した拙者をかばって舞台に飛び出し、師匠はおっしゃった。『あるもん全部さらして生きるしかねえんだよ。汚かろうが下手だろうが、面白かろうがツマらなかろうが、これが左団次だ』と。恥ずかしながら拙者そのものでござる。拙者、このような言葉をいただいたのは、生まれてはじめてに候。この感激、命を賭すに値すべきもの」
大田南畝「新しきものはバカが創ってきた。手前のような小賢しい年寄りは、なにかとうじゃうじゃ文句を付けて、新しきものをつぶしてしまう。今日登壇する奴らはわずかに二十代。正真正銘のバカであるゆえ、安穏に新しい事ができるのでございます」

アウア・エイジ(our age)
文芸(単行本)
第163回芥川賞候補作。
一緒に、塔を探しに行かないか?
生き迷う男。謎を残して死んだ女。…大学教師の私に届いた、学生時代にバイトをしていた映画館からの招待状。映写室の壁に貼られたままの写真に、20年前の記憶がよみがえる。

臆病な都市
文芸(単行本)
新型コロナ感染拡大の前に書かれた、新鋭による問題作。
鳥の不審死から始まった新型感染症流行の噂。
その渦中に首都庁に勤めるKは巻き込まれていく……。
組織の論理と不条理、怖れと善意の暴走を生々しく描く傑作。
組織の内部を描くという点で、物凄い洞察力を持った作家だ。
――亀山郁夫
コロナがこうなる前に書かれているというのに凄みを感じる。
――安藤礼二
まったく、なんだってあんな根拠のないものにそうすぐ振り回されてしまうのだろう。
それとも本当に、ただ自分のあずかり知らぬところで未知の病気が広まりつつあるのではないか、とも考えてみたが、やはり実感は湧かない。
家々から漏れる灯りがそこここに生活が在ることを教えてくれる。言い知れぬ不安が、影のように自分のあとを追ってきている気がした。 ――本書より

地検のS Sが泣いた日
文芸(単行本)
検察の機密情報が漏れている?
地検職員ながら、警察、政財界にパイプを持ち、
量刑をも左右すると噂の陰の実力者・伊勢雅行。
次期与党総裁候補にかかるヤミ献金疑惑への糸口を追う最中、想像を絶する“罠”が迫る!
策を弄して巨悪に切り込め!
手に汗握る傑作<検察>ミステリー!
国会議員・吉村泰二にかかる収賄疑惑。湊川地方検察庁が証拠固めを急ぐ中、金の受け渡しを目撃したホステス2人が行方をくらませる。歴代次席検事の懐刀と称され、総務課長ながら地検を陰で操る伊勢雅行は、盟友である事務官の久保信也と独自に調査を始めるが……。

オールドタイムズ
文芸(単行本)
「耳あたりのいいニュースには、必ず、裏がある」
長年勤めた会社を早期退職し、ウェブニュースの会社の設立メンバーとなった“不動のエース”元夕刊紙記者・不動優作。
だが、不慣れなネット環境と人材不足から発足早々、サイト運営は行き詰まる。
しびれを切らした出資者兼若手IT社長から、不動たちは「週に一度でいい、一週間バズり続けるスクープを取って来い」と命じられてしまう。
どんなスクープも二、三日で消費されてしまう今の時代に、ネットの素人集団は旋風を巻き起こすことができるのか。
イチかバチかーー起死回生の一手は「フェイクニュース」!
新聞やテレビ、大手マスコミで語られることのない真実。
出来たばかりのネットメディアだから。俺たち、忖度なし!
見極めろ。フェイクニュースの裏側を。弱小メディアが一発逆転、ニュースサイト界の覇権をとる!

法廷遊戯
文芸(単行本)
第62回メフィスト賞受賞! 森博嗣に憧れた天才司法修習生が描く、感動と衝撃の傑作ミステリー
読書メーター読みたい本ランキング1位(単行本部門 日間・週間2020/3/25調べ)
2020年ミステリランキングに軒並みランクイン!
「ミステリが読みたい!」2021年版(早川書房)国内篇3位&新人賞受賞
「このミステリーがすごい!」2021年版(宝島社)国内編3位
「週刊文春」ミステリーベスト10 文春図書館2020国内部門4位
「2021本格ミステリ・ベスト10」(原書房)国内ランキング9位
<あらすじ>
法曹の道を目指してロースクールに通う、久我清義と織本美鈴。二人の過去を告発する差出人不明の手紙をきっかけに不可解な事件が続く。清義が相談を持ち掛けたのは、異端の天才ロースクール生・結城馨。真相を追う三人だったが、それぞれの道は思わぬ方向に分岐して――?
<絶賛の嵐!>
たんにリーガル・スリラーだけの面白さだけではなく、青春の苦みも剔出していて印象に残る仕上がりだ。大胆な挑戦にみちた作品であり、将来が実に頼もしい新人でもある。――池上冬樹(文芸評論家)
裁判をめぐる議論がそのまま人間ドラマになだれこみ、制裁と救済が法と情で二重に語られる。注目すべき新人作家だ。――円堂都司昭(文芸・音楽評論家)
今年大注目の本格ミステリであり、必読のリーガル・サスペンスであり――そして自信を持って推薦する青春ミステリの佳作である。――大矢博子(書評家)
まさに本格ミステリの美が凝縮されており、圧巻の一言に尽きる。――末國善己(文芸評論家)
正面切って法の問題を扱いながら難解な箇所がなく、全篇を楽しめる。作者はエンターテインメントの作法をしっかり理解しているからだろう。――杉江松恋(書評家)
法律に関する知識や真摯な考察と、外連味たっぷりな劇的エンタテインメント性とを両立させているのだから、これは無敵と言っていいだろう。――千街晶之(ミステリ評論家)
リーガルミステリーの歴史に、新たな傑作が加わった。――吉田大助(ライター)
<著者より>
法律は、世界の見え方を変えてくれました。自堕落な生活を送っていた大学生の僕にとって、法律学との出会いはそれくらい衝撃的なものでした。堅苦しくないし、退屈じゃない。むしろ、その面白さや奥深さに魅了されて、気付いたときには法律家の道を志していました。「法廷遊戯」は、僕が知っている限りの法律の魅力を詰め込んだ小説です。読み終えたとき、法律や裁判の印象が変わっていたら、黒と白の間にある灰色について考えていただけたら、著者としては幸甚の至りです。よろしくお願いいたします!