講談社文庫作品一覧

妖怪
講談社文庫
悪の限りがはびこる室町時代頽廃期。6代将軍の落胤という熊野の源四郎は、「将軍になろう」と京へ上る。京は7代将軍足利義政の御台所日野富子と、側室の今参りの局の陰湿な権勢争いに明け暮れ、源四郎はその暗闘の虜となり唐天子の幻術に翻弄される。応仁の乱前夜の奇々怪々に乱れる京の風雲を描く――。

大将
講談社文庫
大きな耳にダンゴ花、茫洋としたなかに、強烈な個性を秘めた、130キロの巨漢――野呂内大太郎が、本篇の主人公である。 日本の敗戦で、ソ連の抑留生活から故郷の松山に還った大太郎は、340万円の遺産と、10ヵ条からなる亡父の遺書を胸に秘めて、松山市内での映画館経営を皮切りに、莫大な負債で倒産寸前の造船所を再建し、奥道後の温泉発掘に半生の運命を賭ける……。奥道後に万里の長城にみたてた巨大なホテルと純金の金閣寺を真似て建て、理想の大レジャーランドを建設した夢想の実業家=「四国の大将」をモデルに、波乱に富んだ半生を描いた、痛快な長編小説。

黄色い風土
講談社文庫
日本列島を北から南へ連続して起った6つの変死事件――奇妙な新婚旅行の男の変死と花嫁の失踪。この不可解な謎を内偵した週刊誌記者若宮四郎の取材活動は、事件の背後に暗躍する黒い集団の全貌を追及し、富士山麓の樹海に対決する。飽くなき記者魂と、現代社会に巣喰う悪への挑戦を描く本格推理の傑作。

「岩宿」の発見 幻の旧石器を求めて
講談社文庫
ひとつの土器片が、少年の目を黎明期時代に向けさせた。行商のかたわら赤城山麓周辺の遺跡を踏査し、遂に関東ローム層中の石器文化(岩宿文化)を発見、日本における旧石器文化研究の新分野を開拓した男の不屈の人間記録。1961年群馬県功労賞、1967年岩宿発見の功績により吉川英治賞受賞。

古典落語(続)
講談社文庫
日本人の笑いの無限の宝庫であり、また常に大衆と直結する生きた芸能として娯楽の王座を守りつづける伝統話芸の世界を完璧に再現する本格編集。上下巻に続き本巻では新たに上方落語の代表的名作10編を加える編成で、更に内容の充実を期した。総収録作品数35編、いずれも無削除の完全なテキストである。
日本人の笑いの無限の宝庫であり、また常に大衆と直結する生きた芸能として娯楽の王座を守りつづける伝統話芸の世界を完璧に再現する本格編集。上下巻に続き本巻では新たに上方落語の代表的名作10編を加える編成で、更に内容の充実を期した。総収録作品数35編、いずれも無削除の完全なテキストである。

体の中を風が吹く
講談社文庫
章子は、ぐうたらな夫と別れ、2人の子供をかかえて働く、婦人記者である。わが子の成長を楽しみに生きる章子にも、女としての心のひもじさに耐えきれぬ夜もあった。彼女には、年下の恋人・省吾がいた。誠実な彼は結婚を迫るが、章子は自分の境遇を負い目として応じられない。愛しあい、逢瀬を重ねながら、章子の心は、かたくなに閉されてしまう。そして、上役の世話で、省吾に若い笹子との縁談が起こるのだが……。年上の女の情熱と哀しみを主題に、定年を迎えた隣りの山崎家、そこに同居する共稼ぎの安川夫妻など、善意をもって生きる人々の生活の哀歓を描く、長編傑作。

苦海浄土 (わが水俣病)
講談社文庫
公害という名のおそるべき犯罪、“人間が人間に加えた汚辱”、水俣病。昭和28年1号患者発生来10余年、水俣に育った著者が患者と添寝せんばかりに水俣言葉で、その叫びを、悲しみ怒りを自らの痛みとし書き綴った《わがうちなる水俣病》。凄惨な異相の中に極限状況を超えて光芒を放つ人間の美しさがきらめく。
またふたたびの道
講談社文庫

わたしが棄てた女
講談社文庫
2度目のデイトの時、裏通りの連込旅館で体を奪われたミツは、その後その青年に誘われることもなかった。青年が他の女性に熱を上げ、いよいよ結婚が近づいた頃、ミツの体に変調が起こった。癩の症状である。……冷酷な運命に弄ばれながらも、崇高な愛に生きる無知な田舎娘の短い生涯を、斬新な手法で描く。

聖書のなかの女性たち
講談社文庫
血ぬられたキリストの顔を布で拭ったヴェロニカ、マグダラのマリア、大司祭長カヤパの女中、ヨハネの首を得たサロメ、良妻賢母型のマルタ、ローマ総督ピラトの妻等、聖書のなかから11人の女性を選び、“苦しみの連帯感”ともいうべき人間論を展開。遠藤文学の基調音を奏でた、感動を呼ぶエッセイ。(講談社文庫)
血ぬられたキリストの顔を布で拭ったヴェロニカ、マグダラのマリア、大司祭長カヤパの女中、ヨハネの首を得たサロメ、良妻賢母型のマルタ、ローマ総督ピラトの妻等、聖書のなかから11人の女性を選び、“苦しみの連帯感”ともいうべき人間論を展開。遠藤文学の基調音を奏でた、感動を呼ぶエッセイ。

階級
講談社文庫
現代社会の〈辺境〉とも言える廃鉱に遺棄され、痛憤の生存を強いられる人々の、熾烈をきわめる階級的憎悪の情念。内面までも風化解体に瀕した人間破壊の状況は、読者に異様な衝撃と戦慄を与える。〈辺境〉の外で惰眠する人間の、精神の荒廃を烈しく指弾した傑作。他に、炭鉱離職者をテーマにした「せむしたちの冬」を収録。

三匹の蟹・青い落葉
講談社文庫
存在の孤独と愛の倦怠のただ中にある「現代の生」。……そのこわれてしまった姿を、乾いた抒情のうちに残酷に啓示して、芥川賞を受けた「三匹の蟹」。それに、三部作〈構図のない絵〉〈虹と浮橋〉〈蚤の市〉より成る、もの憂さ漂う青春への訣別の詩「青い落葉」を収めた、大庭文学の不朽の名作。

暗夜行路
講談社文庫
不義の子として生まれ、父に冷遇され、祖父の家で育てられた主人公・時任謙作が、暗い運命に創作をもって立ち向かう自我発展の経過を、美しい自然描写とともに、明晰な文体で表現。祖父の妾で20も年上の女に恋する謙作の出生の秘密とは? 現代日本文学の記念碑とも称すべき名作長編。17年間を要した著者唯一の長編小説である。

司馬遷―史記の世界―
講談社文庫
歴史家は無為である、また為さざることなし――容易にみえて容易ならざる覚悟と執念で、司馬遷が記録した大著『史記』。司馬遷の歴史家としてのきびしい態度と、そこに描かれた世界の中心たる政治的人間たちを著者は浮き彫りにする。そして歴史と人間世界を空間的・全体的に把握しようと試みた古典的名箸。

北斗の人
講談社文庫
剣に賭ける周作の悲願は、古法の兵法から合理的な竹刀剣術への創始にあった。江戸表の他流に挑むや、天賦の才は忽ち冴えて並ぶ者なく、かつて苦渋をなめた馬庭念流と雌雄を決すべく上州へ乗りこんでゆく――。奥義にいう“それ剣は瞬息、心気力の一致”北辰一刀流開祖、千葉周作の生涯を描く傑作。

正法眼蔵随聞記
講談社文庫
仏教の根本教説に基づいて、生活全般から仏教者のあり方までを説き、人生の究極のあり方を示した、道元禅師の法話を、弟子の懐弉(エジョウ)が4年間にわたって書きとめ編して伝えた、正法眼蔵随聞記。ここに、東西の思想に造詣の深い哲学者によって、新たな視点からの道元の神髄に迫り、現代人の生活によみがえる。。本書は長円寺本を底本に、清新な現代語訳、懇切な注、解説は、東大哲学科の山崎正一教授の執筆になる。

オセロー
講談社文庫
シェイクスピア四大悲劇の一つ。勇猛なムーア人の武将オセローは、美しい公爵令嬢デズデモーナの愛を得て妻とするが、旗手イアーゴーの奸計に落ち、猜疑に狂って妻を殺害した後、妻の潔白を知る――。人間の多面的な性格像を鮮烈に彫り上げ、深刻な運命劇に凝縮させた不朽の名作の魅力に肉迫する、木下順二の名訳。
旗手イアーゴーの奸計に落ち、猜疑に狂って愛する妻デズデモーナを殺害するムーア人の武将オセローを主人公とする、シェイクスピア四大悲劇の一つ。原作の力強さを再現する最新決定訳。

楊貴妃伝
講談社文庫
玄宗皇帝の寵愛を受け、後宮の最上位を占めた後、皇帝の妃となった楊貴妃の運命的な短い生涯を、唐代の史実の中に掘り起こしながら、女の愛の不思議さと、権力者の非情な心のからみあう人間ドラマを、絵巻物のように浮かび上らせ、壮大な叙事詩として構築した名編。

女性の歴史(下)
講談社文庫
己れ性を凝視し、母性我に婦人問題の原点を見る、女性解放のための科学的書物。なぜ、男女の社会的不平等が存在するようになったのか? 「母系制の研究」「招婿婚の研究」を基底に、情熱的筆致で論考する。一貫して母性我に視点を据え、自然なる原始の母性我的母権社会への復帰を願い、平和を指向する。女性であるがゆえに、詩人の魂を持つがゆえに、はじめて可能であった、不朽の名著。
「原始女性は太陽であった」――自然なる原始の母性我的母権社会から、室町以降の男性の個人我の父権社会をへて、それの訂正、原始復帰への最初の叫び。重圧下の女権宣言を転機に新しい女の権利獲得運動、戦後現憲法下での男女同権の一応の実現を、さらに労働婦人の歩みと働く婦人の諸問題を分析、一貫して母性我に視点を据えた女性解放の女性史。同時代を生きた著者の『平和と愛の世紀』の展望。<上下巻>
幸福者
講談社文庫
快楽への誘惑と闘い、自然の大生命に身を投じて敢然と自己を昇華させてゆく「師」--。新約聖書的プロットのもとに「新しき村」の理想と情熱をこめ、熱烈な求道精神を結晶させたユニークな思想小説。