講談社文庫作品一覧

暗夜行路
講談社文庫
不義の子として生まれ、父に冷遇され、祖父の家で育てられた主人公・時任謙作が、暗い運命に創作をもって立ち向かう自我発展の経過を、美しい自然描写とともに、明晰な文体で表現。祖父の妾で20も年上の女に恋する謙作の出生の秘密とは? 現代日本文学の記念碑とも称すべき名作長編。17年間を要した著者唯一の長編小説である。

司馬遷―史記の世界―
講談社文庫
歴史家は無為である、また為さざることなし――容易にみえて容易ならざる覚悟と執念で、司馬遷が記録した大著『史記』。司馬遷の歴史家としてのきびしい態度と、そこに描かれた世界の中心たる政治的人間たちを著者は浮き彫りにする。そして歴史と人間世界を空間的・全体的に把握しようと試みた古典的名箸。

北斗の人
講談社文庫
剣に賭ける周作の悲願は、古法の兵法から合理的な竹刀剣術への創始にあった。江戸表の他流に挑むや、天賦の才は忽ち冴えて並ぶ者なく、かつて苦渋をなめた馬庭念流と雌雄を決すべく上州へ乗りこんでゆく――。奥義にいう“それ剣は瞬息、心気力の一致”北辰一刀流開祖、千葉周作の生涯を描く傑作。

正法眼蔵随聞記
講談社文庫
仏教の根本教説に基づいて、生活全般から仏教者のあり方までを説き、人生の究極のあり方を示した、道元禅師の法話を、弟子の懐弉(エジョウ)が4年間にわたって書きとめ編して伝えた、正法眼蔵随聞記。ここに、東西の思想に造詣の深い哲学者によって、新たな視点からの道元の神髄に迫り、現代人の生活によみがえる。。本書は長円寺本を底本に、清新な現代語訳、懇切な注、解説は、東大哲学科の山崎正一教授の執筆になる。

オセロー
講談社文庫
シェイクスピア四大悲劇の一つ。勇猛なムーア人の武将オセローは、美しい公爵令嬢デズデモーナの愛を得て妻とするが、旗手イアーゴーの奸計に落ち、猜疑に狂って妻を殺害した後、妻の潔白を知る――。人間の多面的な性格像を鮮烈に彫り上げ、深刻な運命劇に凝縮させた不朽の名作の魅力に肉迫する、木下順二の名訳。
旗手イアーゴーの奸計に落ち、猜疑に狂って愛する妻デズデモーナを殺害するムーア人の武将オセローを主人公とする、シェイクスピア四大悲劇の一つ。原作の力強さを再現する最新決定訳。

楊貴妃伝
講談社文庫
玄宗皇帝の寵愛を受け、後宮の最上位を占めた後、皇帝の妃となった楊貴妃の運命的な短い生涯を、唐代の史実の中に掘り起こしながら、女の愛の不思議さと、権力者の非情な心のからみあう人間ドラマを、絵巻物のように浮かび上らせ、壮大な叙事詩として構築した名編。

女性の歴史(下)
講談社文庫
己れ性を凝視し、母性我に婦人問題の原点を見る、女性解放のための科学的書物。なぜ、男女の社会的不平等が存在するようになったのか? 「母系制の研究」「招婿婚の研究」を基底に、情熱的筆致で論考する。一貫して母性我に視点を据え、自然なる原始の母性我的母権社会への復帰を願い、平和を指向する。女性であるがゆえに、詩人の魂を持つがゆえに、はじめて可能であった、不朽の名著。
「原始女性は太陽であった」――自然なる原始の母性我的母権社会から、室町以降の男性の個人我の父権社会をへて、それの訂正、原始復帰への最初の叫び。重圧下の女権宣言を転機に新しい女の権利獲得運動、戦後現憲法下での男女同権の一応の実現を、さらに労働婦人の歩みと働く婦人の諸問題を分析、一貫して母性我に視点を据えた女性解放の女性史。同時代を生きた著者の『平和と愛の世紀』の展望。<上下巻>
幸福者
講談社文庫
快楽への誘惑と闘い、自然の大生命に身を投じて敢然と自己を昇華させてゆく「師」--。新約聖書的プロットのもとに「新しき村」の理想と情熱をこめ、熱烈な求道精神を結晶させたユニークな思想小説。

古典落語(下)
講談社文庫
伝統と先人のみがきぬかれた名人芸によってささえられ、うけつがれてきた国民の文化的遺産、古典落語の真髄をここに再現。「寿限無」「転宅」「そこつの使者」「らくだ」など本巻収録作品30編はいずれも明治、大正、昭和の三代にわたる名人落語家の速記本を基に編集した全篇ノーカットの完全な笑いのテキスト。

二十四の瞳
講談社文庫
昭和3年、瀬戸内海小豆島の分教場に赴任してきた教育熱心な女教師。重く暗い時代に突入していく時期に、この先生と12人の教え子のさまざまな生活を描き、戦争批判、戦争被害者の生き方、教え子たちの暖い童心を、鮮明な郷土色と豊かなユーモアにより捉えた感動的名作。木下恵介監督らにより2度の映像化、黒木瞳ら主演で6回のテレビドラマ化、テレビアニメ化もされた不朽の戦後反戦文学。

黒い森林
講談社文庫
スターリンの死後から12年たった、1965年のモスクワ。彼の死後も根深く残る、個人の自由を圧迫するスターリン主義は、批判されても、なお厳然、恐怖感とともに残っている。強制収容所帰りの元作家を軸に、社会主義社会・ソ連における非合法の地下出版を描き、人間の原存在を脅かす凌辱を烈しく告発した、井上光晴の異色作。秘密地下出版と強制収容所に焦点をあて、人間性の剥奪を烈しく追究する!

桃太郎の母 ―ある文化史的研究―
講談社文庫
日本民俗学の成果を、比較民俗学的研究と結合することにより、歴史家の捨ててかえりみなかった昔話の中から、人類太古の大地母神の信仰を掘り出し、母性の姿を消しゆく過去の記憶から引き出して、人類文化史の重要な一側面に解明の光を投じた「桃太郎の母」ほか、「月と不死」「隠された太陽」「桑原考」「天馬の道」「穀母と穀神」の5編を収録。汎人類的な視野と精緻な方法論、豊富な文献の駆使によって、人類文化史の一側面に画期的考察を加えた名著。

女性の歴史(上)
講談社文庫
「火の国」の詩人・高群逸枝が、大正昭和の激動期に、「われらいかに生くべきか」……と、女性解放の学問的寄与を決意して、武蔵野の一隅「森の家」に20年あまり。「母系制の研究」「招婿婚の研究」を基底に、一貫して「母性我」に視点を据え、自然なる原始の「母性我的母権社会」への復権を願い、新しい女の権利獲得運動、戦後現憲法下での男女同権の一応の実現など、婦人の諸問題を分析し、自身の遺書として自らを燃焼し尽した、女性全史。著者の願いが永遠であるごとく、本書の価値も永遠である。〈上下全2巻 上巻〉

アラビア遊牧民
講談社文庫
「目には目を」の掟と極めて独自の略奪文化ともいうべき生活原理をもつ、砂漠の民・ベドウィン。日本や伝統ヨーロッパとは異質の文化が支配する彼らの生態を、比較文化論的視点から追究した本格ルポ。その鋭い洞察は文化人類学の大きな収穫との評価をうけ、絶賛を博した記念碑的な快作。
極めて独自の略奪原理をもち、日本や欧米とは異質の文化が支配する遊牧民族ベドウィンの生態を生々と捉えた、ルポルタージュの記念碑的書。文化人類学界の大きな収穫との評判が高い好著。

ソフィアの秋
講談社文庫

俄
講談社文庫
〈わいの生涯は一場の俄や……〉どづかれ屋から身を起した不死身の万吉は、“金こそ命”のド根性と勘で、侠客明石屋万吉となり、米相場破り、果ては幕末維新の騒乱に、親分から侍大将となり、場当り的に生き抜く。その怪ッ態な男の浮沈を、独得な史眼でとらえた異色の上方任侠一代。

夕鶴・おんにょろ盛衰記 ほか七編
講談社文庫
名もなき民衆の声なき希求と願望をこめた伝統民話を素材とし、未来への指向を含む現実のテーマとして作品化し、不朽の国民文学にまで高めた著者の民話劇と朗読用作品の代表作を新編集。「彦市ばなし」「龍が本当に現れた話」「陽気な地獄破り」「山の背くらべ」「女工哀史」「花若」など。
表題作のほか「彦一ばなし」「竜がほんとうに現れた話」「陽気な地獄破り」「山の背くらべ」「女工哀史」「花岩」「えんま大王の大しくじり」など、不朽の民話劇と朗読用台本の名作を収録。
愛と死
講談社文庫
小説家村岡と友人の妹夏子とのせつない愛の物語。やがて村岡の洋行の後、結婚を誓い合うふたりではあったが!?

平家物語(下)
講談社文庫
多年栄耀の地を灰燼と化し、西国へ落ちる平家。頼朝の旗挙げなど、東国は源氏の白旗にどよめく。いくたの果敢な、源平合戦の場が展開。ついにまだ春浅き西海に落日のごとく、一族の運命をになって滅びゆく、弱き人間存在の姿――。短調の調べに捉えられた、慟哭の一大叙事詩。巻7より諸行無常の縮図たる灌頂巻まで収録。

田園交響楽
講談社文庫
「もし盲目なりせば、罪なかりしならん」――スイスの片田舎の一牧師と盲目の少女、牧師の妻と長男の4人の愛情の葛藤を中心に、人間の自由と宗教の戒律の相剋をきびしく追求――自らの時代をもっとも誠実に生きた、巨星ジッド円熟期の名作。
白雪に輝くスイスの田園を背景に、牧師と盲目の少女、牧師の妻と息子の四人の愛情の葛藤を描き、福音書の自由解釈ときびしい戒律との対立を扱った悲劇。今世紀フランス文壇の巨星ジッド円熟期の名作。