講談社文庫作品一覧

黒水仙の夫人
黒水仙の夫人
著:北原 武夫,装丁:原 弘,装丁:山内 秀臣
講談社文庫
小説家・土岐亮は、仕事の疲れをいやすため、不意に思い立って京都を旅した。紅葉した東山の辺りから南禅寺へ向ったある日の午後、山門に佇む哀愁をおびた美貌の人妻・理恵に出会い、その魅力のとりことなった。その象牙色に冴えて冷たい光沢を放つ肌との肉体の会話に、土岐の炎が激しく燃えた。一方、理恵と4つ違いの腹違いの娘・暁子も、若さの魅力を武器に、土岐との情事に身を灼くのだった。熱く燃え沸る官能の炎、激しく求め合う水底の叫び、華麗な情事の構図と愛欲の翳りに、鮮烈な性の深奥をえぐる傑作「黒水仙の夫人」のほかに、「女の恥辱」「もの言わぬ官能」など4編を収録。
電子あり
投げ縄 秀
投げ縄 秀
著:川口 松太郎,装丁:原 弘,装画:川田 幹
講談社文庫
清元の師匠・お駒の妾の子として、父親の愛情を知らずに育った秀之助は、幼い頃から「縄」をおもちゃ代りに親しみ、「投げ縄秀」と異名をとるほどの名人となった。母親譲りの美声と男前な風貌で、清元の芸人としても人気者となり、お駒の一番弟子のお光と新世帯を持ち、幸せな日々を送るようになる。やがて、江戸の町に次々と起こる怪事件を、得意の早縄で解決した功により、一介の町人が武士に取りたてられ、生活が一変してゆく。江戸末期から維新の動乱期を経て、明治大正昭和の三代を、きびしい芸道の世界に身をおきながら、「縄」を心の支えに生きた芸人の、心情と波瀾の人生を描いた、傑作長編小説。
電子あり
聖女
聖女
著:戸川 昌子,装丁:原 弘,装画:朝倉 摂
講談社文庫
デウス天理教団の海外伝道尼僧・風間登代が、サンフランシスコS街の路上で、黒人に襲われた。登代は薄れゆく意識の中で、黒い腕にかわって白く輝く球体のようなものを認めた。〈ああ……聖なるお方が、わたしの前にあらわれている……〉登代はこの事件で妊娠してしまった。「私は大司教の御子を身籠った」と口走り、今夜も私のもとにいらっしゃると言う。登代を訪れる謎の男とは何者なのか? ……という女の業を描く表題作の他に、「黄色い吸血鬼」「蟻の声」「V定期便」「赤い的」「猫パーティ」「最後の一切れ」「蜘蛛の糸」の7編を収録。
電子あり
えろぐろ軟扇子
えろぐろ軟扇子
著:梶山 季之,装画:山下 昌也
講談社文庫
子供のころ、女体のグロテスクなことにびっくりしたあたいは、女よりも男が好きになっちゃった。学徒出陣をしているとき、ホモっ気のある中隊長につかまったのが、ゲイ道に入るきっかけよ。中隊長は権力であたいの処女性を奪ったの。戦後はGI相手に稼いだりした。外国人の囲われ者になったこともあるわ。そのうち、日本人の素敵なパトロンにめぐり合った。彼のおかげでいまあたいはゲイバーのマダムだけど……。と、その奇妙な人生を味のある独白調で語る標題作の他に、「やったぜベイビー」「あとの二人が損をする」「密造酒」など、全5編を収録する短編小説集。
電子あり
明治人物夜話
明治人物夜話
著:森 銑三,装画:K・B・K,装丁:亀倉 雄策
講談社文庫
明治天皇の御逸事、大西郷の一言、海舟邸の玄関、大隈侯の碁、広瀬中佐余聞、天下の記者山田一郎、尾崎紅葉雑記、荷風の思い出、狩野亨吉先生、三遊亭円朝など、日本の黎明期といわれる明治に輩出した、政治家・文人など50余人の、知られざる逸事・言行を、著者多年の研究資料により、その真実を描く。伝記に定評ある著者による、「近世人物夜話」に続く名著。
電子あり
どぼらや人生
どぼらや人生
著:黒岩 重吾,装画:永田 力
講談社文庫
儲けた株の大暴落と小児麻痺罹病で陥った、どん底生活。釜ケ崎での、その日暮し。占い商売でみた客の、数奇な人生。キャバレー勤めで見聞した、ホステスの哀歓――社会の底辺にいて、その生存を脅かされる人々と生活をともにしながら、小説家をめざす強固な意志と執念で、苦境を脱出した著者の、苦難時代の体験記である。
電子あり
わたしのなかのかれへ(上)
わたしのなかのかれへ(上)
著:倉橋 由美子,装画:栃折 久美子
講談社文庫
阿片戦争(下) 天涯編
阿片戦争(下) 天涯編
著:陳 舜臣
講談社文庫
勇将関天培の壮烈な死、軍機大臣王鼎の“屍諫”、官兵の軟弱に蹶起する山中の民。だが敗戦また敗戦……迫りくる植民地化への危険に慟哭の想いを噛みしめつつも、崩壊後に来る近代への確実な目覚めを感じて林則徐は野に下る。時代は変る、いや変えなければ――阿片に内憂外患の清朝末期を鮮烈に描く完結編。
古典落語(続々)
古典落語(続々)
編:興津 要,装画:原田 維夫
講談社文庫
明治・大正・昭和の三代にわたる落語家の速記本を基に、国民文芸としての落語の集大成を完全テキスト版で試みる画期的編集。本巻収録作品総数32編、東京篇、「子ほめ」「浮世床」「藪入り」「お神酒徳利」「味噌蔵」「田能久」「小言念仏」など25編、上方篇、「佐々木裁き」「あわび貝」「へっつい盗人」など7編。 明治・大正・昭和の三代にわたる落語家の速記本を基に、国民文芸としての落語の集大成を完全テキスト版で試みる画期的編集。本巻収録作品総数32編、東京篇、「子ほめ」「浮世床」「藪入り」「お神酒徳利」「味噌蔵」「田能久」「小言念仏」など25編、上方篇、「佐々木裁き」「あわび貝」「へっつい盗人」など7編。
電子あり
虚構の彷徨 ダス・ゲマイネ
虚構の彷徨 ダス・ゲマイネ
著:太宰 治,装画:司 修
講談社文庫
左翼運動への裏切りと鎌倉海岸での心中未遂、縊死未遂の告白を軸に、小市民的モラルを否定しながらも惨落と自負の意識に痛ましく引き裂かれていく青春の日々、その絶望の乱舞を、道化の言葉でつづった、「道化の華」「狂言の神」「虚構の春」という、いわゆる『虚構の彷徨』三部作。他に、芥川賞落選で精神的に追い込まれた同時期に書いた「ダス・ゲマイネ」も併録。
電子あり
わたしのなかのかれへ(下)
わたしのなかのかれへ(下)
著:倉橋 由美子,装画:栃折 久美子
講談社文庫
阿片戦争(上) 滄海編
阿片戦争(上) 滄海編
著:陳 舜臣
講談社文庫
内に人心荒廃し、外に中華思想を振りかざす清朝末期。産業革命後の英国新興資本は、市場を求める中国進出を企ていた。“阿片を認めるか否か”――暴利と保身に詭計をめぐらす特権商人、官僚達の渦中に、国を憂う清廉潔白な実力官吏林則徐と豪商連維材がいた。近代中国黎明のうねりを活写する大河小説。
阿片戦争(中) 風雷編
阿片戦争(中) 風雷編
著:陳 舜臣
講談社文庫
阿片鬼と化す人々に亡国の明日をみた林則徐の阿片厳禁論は、動揺する道光帝の心を掴む。一地方官吏から欽差大臣へ、積弊根絶に英国と対決すべく広東に乗りこむ彼の周囲に内外の敵。民族の誇りと将来のために“みごとに戦う”――武力行使に移る英国艦隊の面前で、その威力を知りつつ林は阿片を焼き捨てる。
江戸小咄
江戸小咄
編:興津 要,装画:アド・ファイブ
講談社文庫
時代の性格とニュースを知る上に貴重な文献であり、世相と一般の生活を如実にあらわしているといわれる咄本。江戸後期の咄本15冊を各種の原本にあたり、完璧な形で編集した好著ーー古典落語の原話として広く知られる咄本は、日本人の笑いの無尽蔵の大鉱脈であるが、また、その時代の世相を如実に映しており、庶民の生活を見る上での貴重な文献でもある。本巻では、現代人の感覚にもよく通じる江戸後期の作品群を主としてとりあげ、原文のまま紹介するものである。各編、解説、訳注を付す。<全2巻>
電子あり
青い小さな葡萄
青い小さな葡萄
著:遠藤 周作,装画:水谷 淳
講談社文庫
フランスのリヨンに留学した日本の一青年を主人公に、戦争で片腕を失ったドイツの神学生、拷問・虐殺をひそかに行った対独抵抗組織の内なる暗黒を描くことにより、人間と人間の疎外、異人種ゆえのコンプレックス、裁く者と裁かれる者の憎しみという問題を追究。遠藤文学の原点ともいうべき処女長編。
電子あり
夏の流れ 正午なり
夏の流れ 正午なり
著:丸山 健二,装丁:二見 彰一
講談社文庫
裁く者と裁かれる者の錯綜した心理、市民生活と犯罪、不条理ともいうべき人間の生と死を、囚人の処刑執行日を目前に控えた看守たちの日常生活の中で捉え、硬質な筆致で描いた、芥川賞受賞作品「夏の流れ」、都会での生活に敗れ、帰郷してきた青年の、人間と性を追求した「正午なり」など、全4篇を収録。
電子あり
高崎山のサル
高崎山のサル
著:伊谷 純一郎,装画:アド・ファイブ,装丁:亀倉 雄策
講談社文庫
日本のサル学として世界にその水準の高さを知らしめた好著ーー高崎山のサルの群れを、長期間にわたる徹底的なフィールドワークによって観察し、ついにその生態の全貌を捉えた、貴重な記録である。ボスザルを頂点とする群れの社会構造は、本著によってはじめて明らかにされ、世界の霊長類研究に先駆的業績をあげた。まさに「ニホンのサル学」を記念するにたるモニュメント的書である。
電子あり
絵のない絵本
絵のない絵本
著:H.C・アンデルセン,訳:毛利 三彌,装画・その他:藤城 清治,装丁:亀倉 雄策
講談社文庫
無邪気な者への共感、貧しさへの熱き同情、湖に漂う白鳥に托す詩情…。そっと月が話してくれた33の話。音楽がきこえてくるようなロマンティシズムに薫る、巨峰アンデルセンの、絵にも似た詩的散文ーー無邪気なもの、貧しいものへの熱い共感と、湖に漂う白鳥の孤影に託された詩情。ローマの廃墟から中国の寺院にまで及ぶ、そっと月が話してくれた三十三夜のおはなしは、憧れを懐くもののよろこびと悲しみを奏でて、豊かな詩的アラベスクをなす。新訳で贈る、北欧風ロマンティシズムの香り高い「絵画詩」とも言える名作。
電子あり
悲しき戦記
悲しき戦記
著:伊藤 桂一,装画:佐野 ぬい
講談社文庫
人間の感情や自由をいっさい剥奪され、戦争遂行の尖端に立たされた兵隊たち。彼らはいかに戦い、いかに生き、そして死んでいったか……。日中・太平洋両戦争に取材し、兵隊たちの死の道程を凝視して、戦争の真実の姿を厳しく捉えた、25編の挿話。戦死者たちの冥福を祈りながら描かれた「悲しき戦記」である。
電子あり
黒い樹海
黒い樹海
著:松本 清張
講談社文庫
仙台へ旅立った筈の姉が、意外や浜松のバス事故で急死!身分証明書が不明のため知らせが遅れ、笠原祥子は事故現場へとんだが手がかりは無い。新聞社へ勤めた彼女は、姉の交友関係の男たちを追求中同僚の婦人記者と、事件の鍵を握る女性の相次ぐ殺人事件に――。マスコミに潜む人間悪を抉る推理の傑作。