講談社文庫作品一覧

旅のない
講談社文庫
コロナ禍中の日々を映す4つのストーリー。
芥川賞作家・上田岳弘、初めての短篇集。川端康成文学賞受賞作「旅のない」収録!
【収録作品】
「悪口」
恋人と過ごすホテルでのゴールデンウィーク。「じゃあ、悪口の練習しよっか?」。僕は初めて彼女と会った時のことを思い出す。
「つくつく法師」
朝の散歩は4歳の息子との日課だ。午後、僕は古いPCで、昔書いた小説を読み返す。
「ボーイズ」
10歳と6歳のボーイズは、亀甲柄と市松模様のマスクでやって来た。弟の息子たちを預かることになった夫婦の夏。
「旅のない」
「作家さんなんですよね?」。出張先での車中、会話が途切れると取引先の村上さんが聞いてきた……。

私、産まなくていいですか
講談社文庫
鎌倉の海辺のホテルで、ウエディングプランナーとして働く美春。一つ年上の夫・朋希の40歳の誕生日に、ライカのカメラを奮発したことから二人の仲がぎくしゃくしはじめる。結婚するときに、子供はいらないと充分確認し合ったはずなのに、将来のために子供のことを考えたいと言い出したのだ。それからは母親の手術をきっかけに、不妊治療中の姉夫婦とも不仲になるなど、朋希との隔たりは一向に修復できないまま。そのあげく、二人は子どものことが原因で離婚に至るのだった……「独身夫婦」/結婚12年。夫が突然家を出ていき、義母と息子、友人カップルたちと鎌倉の古民家に同居することになり……「拡張家族」/再婚同士、43歳で結婚した花葉はどうしても二人のDNAをこの世に残したくなり、最新技術を求めて海外へ……「海外受精」──妊娠と出産をめぐって“女性の選択”を問いかける小説集!

魔眼の光 公家武者信平ことはじめ(十五)
講談社文庫
鉄の山に陰謀あり
優しき公家侍、立つ!
累計140万部突破!
これぞ江戸活劇!
実在した公家武者を描いた
大人気時代小説シリーズ!
☆☆☆
松姫を狙うも囚われた刺客・亮才、脱獄す。
安息の間もなく、備後布田藩の鉄山に異変。
武器密造の疑惑に、信平は狩衣と烏帽子を脱ぎ捨て、
変装での潜入を決行する。
愛しい妻と幼子を江戸に残した船旅の先に末のは、
瞳に魔眼の気配を宿した妖しき女だった。
実在した傑人を描く大人気時代小説

硝子戸のうちそと
講談社文庫
夜中にふと目が覚めた。そんなことはこの夜に限ったことではない。若いころなら枕に頭をつけた途端に寝入って朝まで目覚めないのが当り前のことだった。今はそうはいかない。何度寝返りを打っても睡れないときは睡れない。そういう日は手洗いに行き、睡眠薬を服用してから寝床に戻る。そうして何とか朝方まで寝入る。目覚めた時間が六時、七時だと起きてしまう日もあれば、それから九時、十時までぐっすり睡る日もある。
今夜は私一人である。隣りで寝息をたてたり寝返りを打つ音がまるで聞こえてこない。私は臆病だから私を取り巻く静寂な闇が、私を抑えつけて胸を圧し潰したりしないか、とビクビクしている。
でもその夜は一人きりのわりには、不思議なほどこわくなかった。もう老人だものなぁ。私がお化けになって人に恐がられる日も間近いのかもしれない。そんなことを考えた。
夫は今朝入院して、今はいないのである。……
夫が救急車で入院するのもおそらく珍しいことではなくなって、その回数も増えていくであろう。私がその都度うろたえないように、あわてないように、と神様が私に練習の機会を今日は与えて下さったのであろうか。
八十七歳と八十二歳の夫婦には、やがては無に帰する日が来るのであるが、その日が来るまで長く生きていくのは、それほど容易なことではない。試練はまだこれからか。とにかく年を取るということは、避けることができないだけに、大変な大仕事なのである。
年を重ねると同じものが別のように見え、かぎりなく愛しくなってくる。一族の歴史、近所のよしなしごと、仲間たち、そして夫との別れ。漱石の孫である著者によるエッセイ集。

人間であることをやめるな
講談社文庫
2021年1月12日に長逝された半藤一利さんが生涯の最後まで訴え続けたこと。それは「歴史に学べ」ということでした。本書は半藤さんがものした数多くの文章や講演から、そのエッセンスを集約したものです。
明治人のリアリズム、大正期の石橋湛山が示す理想のパワー、昭和天皇の懊悩、そして宮崎駿の投げかける問い。昭和史研究の第一人者が残した軽妙にみえて重い言葉です。

かなりあ堂迷鳥草子3 夏塒
講談社文庫
自分は捨て子。
そんなことは、些細なこと。
珍鳥の遊ぶ花鳥庭園を造る。
夢を抱く「かなりあ堂」のお遥。
彼女の「鳥」をめぐる謎解きの行方は?
気づかなかったあの人への想いは?
「鳥」をめぐる時代ミステリー
その年生まれた若い雀が一本の木を塒に定めて集まることがある。それが夏塒。
日が落ち寝入るまで雀たちが激しく鳴き合うさまは雀合戦。
他にも秧鶏叩く、百舌の速贄、鴨の浮寝……鳥たちをめぐる様々な言葉の裏にある謎を、江戸の飼鳥屋の看板娘お遥が解き明かしてゆく。
心温まる、時代ミステリー。〈文庫書下ろし〉

流言 武商繚乱記(三)
講談社文庫
吉川英治文庫賞作家・上田秀人がおくる
書下ろし時代小説、最新刊!!
世に怖きは噂の力。
見せよ! 町方同心魂
時は元禄、大坂では莫大な富を得た大商家・淀屋が隆盛をきわめる。
淀屋に借金をする大名が増えて、返済が滞る、さらにカネを借りるという悪循環に陥っていた。
もはや、淀屋は世を動かす重要な歯車になっていることに危惧を覚えた
幕府は、目付の中山出雲守を大坂東町奉行の増し役(ましやく)に任じ、淀屋を探らせることに。
大坂・東町奉行所の同心、山中小鹿(やまなか・ころく)は、
上役の娘だった妻の不貞を許せず、少々手荒に離縁したのを理由に東町奉行所内で孤立していた。
「淀屋を潰す証拠を見つける」という密命を帯びた中山出雲守は、気概あるはぐれ者の小鹿に目をつけて、
淀屋の監視を命じる。いっぽうの淀屋も密かに策を練っていたーー。
カネを駆使して武士を水面下で操ることに長けた豪商との争いに直面する
町方同心・山中小鹿は、持ち前の粘り強さでいかに立ち向かうのか。

ブロークン・ブリテンに聞け 社会・政治時評クロニクル2018-2023
講談社文庫
EU離脱、コロナ禍、エリザベス女王逝去。混迷する「五年一昔」の記録
ポスト・ブレグジットの英国もどうなるかわからないが、ポスト・エリザベス女王の英国も同じくらい不透明ーーそう記してから3年。EU離脱、女王逝去を経た「今」を伝える時評を文庫化に際し数多く収録。多様性とともに分断が進み、転換点を迎えつつある英国の姿が日本にも重なる、「地べたの社会学」決定版!
果たしてこれでいいのか、と誰もが思っている。
ではどうすればいいのか、と共に思考する一冊。
武田砂鉄(ライター)
英国の地べたから世界を見つめる傑作時評集、増補決定版!
「何かが壊れている」とみんな思っている。
この国が「ブロークン」の元凶に手をつける方向に動き出すとすれば、2024年はブリテンの修復が始まる年になるかもしれない。
英国だけでなく、世界が「ブロークン」の状態から抜け出すために、この記録が何らかのヒントになればと願っている。(本書より)

凜として弓を引く 初陣篇
講談社文庫
初めての試合!
自分で自分のことを認めてやらなくて、誰が認めてくれる?
大ヒット『書店ガール』著者の弓道“胸アツ”青春シリーズ、第3弾!
発足したばかりの武蔵野西高校(通称ムサニ)弓道同好会は、女子三人男子三人で初めて試合に挑む。
部長の矢口楓をはじめメンバーは調子の出ないまま試合を終える。
悔しさをバネにそれぞれ課題をもって練習に臨み、次の試合へ。
そして、ムサニ弓道の快進撃が始まる!?
青春“弓道”小説シリーズ!〈文庫書下ろし〉

夫には 殺し屋なのは内緒です 2
講談社文庫
日本橋本石町の薬種問屋・山口屋の手代が殺された。清七という色男で、女癖が悪かったらしい。金は盗られず、正面から一太刀で斬られているので武士の仕業か。読売は「辻斬り」と騒いでいる。隠密同心の要が捜査に乗り出し、清七が悪質な金貸しをやっていたことがわかる。そして、妻の月が殺し屋であることを知らない要は、捜査への協力を依頼する。顔が広まってしまうことを心配しながらも、麦湯売りに扮して情報収集をする月。だが、月には別の「殺しの指令」が……。

心霊探偵八雲 INITIAL FILE 幽霊の定理
講談社文庫
「自分の殻を破る
方程式は見つかったか?」
心霊現象を創り出す黒幕を前に
数学と推理で立ち向かう!
累計750万部突破 心に染みる優しいミステリー
☆☆☆
赤い瞳の大学生・斉藤八雲の元に
日々持ち込まれる心霊犯罪に異変あり。
幽霊マンション、女子学生寮を襲うポルターガイスト
……裏に潜むはハンドルネーム〈フェルマー〉と名乗る存在。
他者を操り「創り出された」心霊現象に、
八雲は天才数学者・御子柴岳人とともに立ち向かう!
750万部シリーズ最新文庫。

本が紡いだ五つの奇跡
講談社文庫
仕事に行きづまった編集者の津山は、本当に作りたい本を作るため、かつて自分が救われた小説の著者、涼元マサミに新作を依頼する。
そうして生まれた作品が、娘と縁が切れそうだった涼元から、余命宣告された装丁家、心に傷を抱えた書店員、そして自分の時間が止まっていた読者まで、みんなの人生を動かす。
本を愛するすべての人に!
本が生まれて、読者へとつながる「本に関わった五人の奇跡」を描く、感動の物語。

殿の幽便配達 幻想郵便局短編集
講談社文庫
あの世とこの世の橋渡しを担う登天郵便局には死者が残して行く手紙や、
生者の書いた届けられない手紙がたどり着く。
そして亡くなった人も。
幽便配達の登天さんは、郵便局を訪ねてきた「殿」と配達に出かけることに。
ウイルスや熊から平安貴族まで転生をくり返している「殿」の意外な正体は?
〈文庫書下ろし〉

北緯43度のコールドケース
講談社文庫
第67回江戸川乱歩賞受賞作
待望の文庫化!
異色の女性エリートノンキャリが、組織の闇に翻弄されながらも、未解決事件(コールドケース)の真相にせまる。
新たなヒロイン、新たな警察小説、ここに誕生!
「読者を翻弄するストーリーテリングの技は新人離れしている」宮部みゆき
(読売新聞2021年11月21日書評)
「ミステリ好きなひとにとって、至福の時だ。ああ、このお話、読んでよかった」新井素子
(解説より)
博士号を持つ異色の警察官・沢村依理子。
北海道警察で現場経験を積む沢村は凍てつく一月、少女死体遺棄事件の捜査に加わる。
発見された少女は五年前に誘拐され行方不明となっていた島崎陽菜だった。
容疑者死亡で未解決だった事件は沢村を呑み込むように意外な展開を見せる。
第67回江戸川乱歩賞受賞作。

揺籠のアディポクル
講談社文庫
孤立した無菌病棟に、少年と少女。
翌朝、一人だけになった。
☆☆☆
『ジェリーフィッシュは凍らない』の著者による
甘く切ない青春の痛みをまとった
本格ミステリ
☆☆☆
無菌病棟、通称《クレイドル》。
タケルと、コノハ、二人だけが入院する施設が、大嵐で貯水槽に通路を寸断され、外界から隔絶される。
不安と焦燥を抱え、日付を越えた深夜──。
コノハは胸をメスで刺され、死んでいた。
二人きりのはずの無菌病棟で、外気にすら触れられない彼女を誰が殺したのか?
震える結末!

卒業
講談社文庫
シリーズ累計500万部突破の大人気BL小説《タクミくんシリーズ》(角川ルビー文庫刊)。
「祠堂(しどう)」の名を冠する男子校の生徒たちの群像劇でもある同シリーズは、原作挿絵を担当するおおや和美によるコミカライズ、3度の音声ドラマ(ドラマCD20枚以上)化、舞台化、6度の映画化を経て、今なお関連シリーズが意欲的に発表されている一大コンテンツです。
シリーズ最初の作品が発表されて30年以上となる現在も、「BLのバイブル」「BL小説の金字塔」として、また多彩なキャラクター陣の成長を見守る壮大な物語として、ごとうしのぶファンのみならず、BLファンからの絶大な支持を得ています。
「タクミくん」シリーズ最終巻では、葉山託生(タクミ)の恋人・崎義一(ギイ)が、祠堂学院で卒業を迎えることなく姿を消し、読者に衝撃を与えました。が、本作『卒業』では、その後の恋人たちの感動的な再会と、仲間による感動のサプライズの様子、また人気サブキャラクターたちの関係の深まりが描かれていきます。アラサーとなった主人公たちを描いた「崎義一の優雅なる生活」シリーズとの間をつなぐ重要な物語として、タクミくんファン必携の一冊となっています。
・イラスト/おおや和美

逸脱刑事
講談社文庫
東京大学卒業のノンキャリ警察官の無紋大介は、都内の弁天代署の生活安全課で
派手な事件とは無縁な日々を送っていた。弁天代署に、本庁から女性キャリアが出向してくる。
この女性キャリア桐谷杏華のファッションが警察官らしからぬ派手めなスタイルで
署内がざわつく。その騒ぎのさなか、管内で数年ぶりに殺人事件が発生する。
衆議院議員の秘書がホテルで刺殺され、一緒にチェックインした女性の行方が分からないという。
あるきっかけから、担当外の無紋と杏華が「逸脱」捜査をすることに。
それほど役に立つとは思えなかった、無紋のこだわり性格とひとつのスキルが、
事件の背景に隠された特秘犯にたどりつく!

それでも前へ進む
講談社文庫
追悼・伊集院静。2000万人が泣いた伝説のエッセイ、待望の文庫化!
めぐる季節とともに思い返す、家族、友、仕事、人生――。誰よりも多くの出会いと別れを経験した著者だから語れる、優しさに満ちた魂のメッセージ。JR東日本の車内誌「トランヴェール」の歴代人気No.1連載「車窓に揺れる記憶」に加え、3.11後のこの国の風景を語った特別エッセイ、角田光代、池井戸潤、中島京子、朝井まかて、塩田武士、加藤シゲアキの6人による追悼エッセイを特別収録。
230万部突破の国民的ベストセラー「大人の流儀」シリーズに連なる、小説家・伊集院静の魅力満載。悩み、迷い、立ち尽くす――それでも前へ進むための、すべての大人たちへの魂のメッセージ!

朱色の化身
講談社文庫
事実が、真実でないとしたら。
累計80万部突破『罪の声』
本の雑誌が選ぶ2023年度ベスト10・第1位『存在のすべてを』につながる感動作
不条理な運命にもがいた、母娘三代の数奇な人生――
昭和31年、4月。福井・芦原温泉を大火が襲う。
「関西の奥座敷」として賑わった街は、300棟以上が焼失した。
60年後、東京。元新聞記者のライター・大路亨は、失踪した謎の女・辻珠緒の行方を追ううちに、
芦原出身の彼女と大火災の因縁に気づく――。
膨大な取材で時代の歪みを炙り出す、入魂の傑作長編。
◆◇◆◇各界から、絶賛の声!◇◆◇◆
ジャーナリズムの神髄を突いた展開に引きこまれて、ページをめくる手が止まらない。
――長野智子(ジャーナリスト)
真実は人の数だけある。複雑に絡み合い、繋がった結末に息を呑みました。
――小芝風花(女優)
圧倒的なリアリティを描き出した傑作。リアリティとは生の切実さであり、人間への敬意だと気づかされる。
――河合香織(ノンフィクション作家)
何度も何度も、熱風が頬を掠めた。「今、なぜ私はここにいるのか」という根源的な問いを突きつけてくる。
――武田砂鉄(ライター)
塩田さんの中でも新ジャンルを切り拓き、今の社会にとって、必要な作品を作り出した。
――石戸諭(ノンフィクションライター)
情報というものとどう向き合うか試されているのは、大路だけでなく、読者も、である。
――瀧井朝世(ライター)
その女は、戦後日本社会の化身。ファクトとドラマのかつてない融合がここにある。
――吉田大助(ライター)
フィクションとノンフィクションの狭間を揺るがす、新たなジャンル誕生!
――三宅香帆(書評家)

ダブル・トライ
講談社文庫
新ヒーローを獲得せよ。
ラグビー×円盤投の二刀流で五輪を目指す――。
天才アスリートの出現で、スポーツ用品メーカーの熾烈な戦いが始まる!
新ヒーローの登場に、日本中が沸いた。
7人制ラグビー男子日本代表・神崎が、円盤投の日本選手権で、日本記録に迫ったのだ。
球技と陸上の「二刀流」で五輪出場を果たせば、世界から注目される。
神崎と契約すべく、新興スポーツ用品メーカーの営業マン・岩谷は接近を試みるが……。
一発逆転エンタテイメント!