創文社オンデマンド叢書作品一覧

クザーヌスと近世哲学
創文社オンデマンド叢書
本書は、クザーヌスの思想と立場を近世哲学の諸展開への視線のうちで解明する研究である。クザーヌスの思想自体をルネサンスまたは近世初頭と呼ばれる新しい時代への過渡のうちに位置づけつつ、その眼差しのうちで彼の思想展開の諸相と同時代の思想背景を考察し、クザーヌス研究に新たな地平を指し示す。
同著者の『〈無限〉の思惟 ニコラウス・クザーヌス研究』の続編である。
【目次より】
序
I
第一章 近世的思考の原点 クザーヌスの「ドクタ・イグノランチア」をめぐって
第一節 「無知の知」について 第二節 ソクラテスの無知 第三節 デカルトの懐疑、カントの批判 第四節 比較による知 第五節 把握と抱握 第六節 知恵(真実知)の可能性 第七節 臆測について 第八節 科学の立場 第九節 科学と宗教
第二章 クザーヌスと「無限」の問題
第三章 近世哲学における神の問題 クザーヌスからカントへ
II
第四章 クザーヌスにおけるIdiotaの立場と〈ことば〉
第五章 ルネサンス的人間観の成立と意義
序 世界と人間の発見 第一節 キリスト教的人間観 第二節 ルネサンス的人間観の形成 N・クザーヌスの場合 第三節 ルネサンス的人間観の成立 ピコの場合 第四節 ルネサンス的人間観の特質 結び ルネサンス的人間観の意義
第六章 宗教における多元性と普遍性 N・クザーヌスの『信仰の平安』をめぐって
第一節 多元性の問題 第二節 多様な宗教と一なる神 第三節 一と多の論理 第四節 宗教における普遍性と多元性
第七章 -aemgmatica scientia-について 後期クザーヌスにおける知の問題
はじめに 第一節 緑柱石について 第二節 〈aemgmatica scientia〉について 第三節 人間知性と神的知性 第四節 〈species〉をめぐって むすび
第八章 〈non-aliud〉について 後期クザーヌスにおける神の問題
III
第九章 近世初頭における自然哲学と自然科学
はじめに 第一節 「神の書物」としての自然 第二節 自然と人間の解放 第三節 占星術と自然哲学 ポンポナッツィとピコ 第四節 魔術と自然哲学 テレジオとポルタ おわりに
第十章 ルネサンスの自然観について N・クザーヌスからJ・ベーメヘ
第一節 ルネサンスという時代 第二節 「自然」への関心 第三節 ルネサンス的自然認識の三つの方向 第四節 ルネサンス的自然の原像 N・クザーヌス 第五節 ドイツ自然哲学の特質 パラケルズス 第六節 ドイツ自然哲学の大成 J・ベーメ 第七節 結び ルネサンス自然観の特質
第十一章 〈神〉なき神の探求
註
初出一覧

近代自由思想の源流 16世紀自由意志学説の研究
創文社オンデマンド叢書
アウグスティヌス以来の自由意志論の発展を原典により跡づけ、近代的自由の原型を見事に解明した画期作。
【目次より】
序章 近代的自由の理念
1 中世末期と近代初期との連続性と非連続性 2 近代的人間の特質 3 自由の消極性と積極性 4 近代自由論の問題点
第一章 中世自由意志学説の発展
1 アウグスティヌス 2 ボエティウス 3 アンセルムス 4 ベルナール、ロンバルドゥス、ボナヴェントゥラ
5 トマス・アクィナス6 ドゥンス・スコトゥス 7 エックハルトとタウラー
第二章 オッカム主義の自由意志学説
1 オッカムの自由論 2 ガプリエル・ビールの自由意志学説
第三章 ルターとオッカム主義の伝統
1 オッカム主義の影響 2 オッカム主義の契約神学の受容と超克 3 自由の消極性と積極性
第四章 ルターのスコラ神学批判の視点
1 アウグスティヌス『霊と文字』の受容過程 2 新しい神学とスコラ神学批判
第五章 イタリア・ヒューマニズムの自由意志論
1 ペトラルカとルネサンスヒューマニズム 2 ヴァッラ 3 フィチーノ 4 ビコ・デラ・ミランドーラ 5 ルフェーヴルとコレット
第六章 初期エラスムスの思想形成
1 ヒューマニズムの神学 2 『ニンキリディオン』の人間学 3 情念論および神学的方法論 4 意志の無記性と自由
5 philosophia Christiの確立 6 哲学的神学の根本命題 7 キリスト論の特質
第七章 エラスムスの自由意志学説
1 『ロマ書注解』から『評論・自由意志』へ 2 自由意志の定義 3 人間の創造と堕罪 4 自由意志を排除しない必然性
5 契約神学の問題 6 恩恵と自由意志の共働説 7 キリスト教ヒューマニズムの特質
第八章 ルターと神学的決定論
1 神学的決定論についての疑義 2 隠れたる神と絶対的必然性 3 神の全能と自由意志との矛盾的対立
4 恩恵を受容する能力としての自由意志 5 不変の必然性と強制的必然性 6 人問学的比較考察
第九章 エラスムスによる再批判
1 『ヒペラスピステス』第一巻 2 自由意志の定義に対する弁護 3 モアヘの手紙 4 『ヒペラスピステス』第二巻 5 恩恵の受容力としての自由意志
第十章 近代自由意志学説の発展
1 ツヴィングリ 2 メランヒトン 3 カルヴァン 4 トリエントの公会議 5 パスカルとデカルト 6 ライプニッツ 7 カントと近代的自由思想の完成
あとがき
索引(人名・事項)
資料と参考文献

教会・神学・救い(長崎純心レクチャーズ) 新しい千年紀への展望
創文社オンデマンド叢書
二十世紀は進歩・革新・繁栄と同時に戦争・伝統的価値の崩壊・未来の不確実さという負の遺産を残した。こうした状況の中でキリスト教の現状を歴史的に位置づけ、諸宗教との対話など世界が一体化する中で教会と信仰が直面する困難と将来への展望を明快に論じた講演。アリストテレスおよびトマス研究者としての学識とローマ教皇庁での経験を踏まえた考察は、多くの知見と豊かな示唆に富む。
【目次より】
「長崎純心レクチャーズ」について 片岡千鶴子
序言
目次
第一日 西欧における教会の現状
I 序
II 歴史の流れのなかで起こったいくつかの危機
III 現代のキリスト信者の間に見られる誤謬の原因
1 時代精神ー主観主義・個人主義
2 近代科学の世界像
3 技術の発達と世俗化
4 宗教改革と知的相対主義
5 反キリスト教的イデオロギー
6 無神論と倫理的悪
IV 新しい精神態度
V 将来の予測 希望の徴し
第二日 カトリック神学の現状
I 短い歴史的序論
II 神学と教会の教導職
III 神学と哲学との関係
IV 歴史主義と解釈学に直面する神学
V 神学者の今日的課題
第三日 諸宗教の救済力に関する新奇な理論
1 序
2 宗教多元主義理論の中心主題
3 この理論に関する哲学的評価
4 神学的評価
5 超自然的信仰、救済のための条件
6 旧約聖書と諸宗教
7 新約聖書の証言
8 教父たちと諸宗教
9 教会の教説
10 神の言と聖霊
11 神の国と非キリスト教諸宗教
12 キリスト以外の仲保者か?
13 諸宗教間対話、宣教活動の新方法か?
14 アシジの宗教サミット、新時代の端緒?
15 結論
あとがき 稲垣良典
註
訳註 荒井洋一

貨幣と均衡
創文社オンデマンド叢書
貨幣という財がもっている経済的機能を一般均衡理論の見地から考察したものであり、前半部は主に貨幣が交換の一般的媒体として役立つという役割の面を、後半部では貨幣の価値の貯蔵手段ないし資産の持越し手段として用いられる面を解明する。貨幣の交換媒体と価値貯蔵の機能を総合的に考察、一般均衡論の中に貨幣を組み込むとともに非ワルラス均衡の諸相を展開した問題作。
【目次より】
まえがき
第1章 本書のプラン
第2章 交換過程の収束
第3章 交換手段としての貨幣
第4章 間接交換と貨幣
第5章 有効需要の失敗と貨幣
第6章 貨幣と重複世代モデルI
第7章 貨幣と重複世代モデルII
第8章 貨幣経済における一時的均衡
第9章 貨幣経済と債券
第10章 貨幣は中立的か?
付録A 均衡配分の達成不可能性定理
付録B 貨幣生成モデルの展望

学問と信仰(長崎純心レクチャーズ) 一法学者の省察
創文社オンデマンド叢書
日本国憲法をはじめ世界中で保障される基本的人権.今日われわれは,なぜそれを絶対的に且つ無条件に尊重すべきかという根拠を合理的に説明することができない.本書は,啓蒙時代以降自らを絶対化しオールマイティーとなった理性が,信仰を失ったことで現在どのように懐疑主義にむしばまれ、弱体化してしまったかを,自然法論の歴史を例証に説得的に描きだす.学問と信仰の相違点と共通点を明らかにする必要をとき,両者補い合ってこそ人間は真に豊かな知恵を授けられると語る,ユーモアにあふれた明快な講演.
【目次より】
「長崎純心レクチャーズ」について 片岡千鶴子
序言 稲垣良典
目次
第一日 学問の発展と理性
はじめに
言葉遣いと専門用語について
理性とは何か、その働き
理性の邪道
いかにして私たちはものを自然に認識するか
いかにして学問は発展するか
ディコトミーの四種類
各専門分野の方法論のディコトミー
研究されるもののディコトミー――その一、人間とペルソナ
学問の課題になったペルソナ概念の成立
法と道徳というディコトミー
存在と当為、現実と価値
その他、学問の内容に関するディコトミー
法的・社会的制度に関するディコトミーの増加
学問の可能性と限界
第二日 自然法論の歴史における理性と信仰の役割
はじめに
西洋文化における自然法論の登場
自然法(論)の第一段階の「神聖化」
自然法(論)の第二段階の「神聖化」(キリスト教化)
中世神学者とローマ法学者の自然法の異なる理解
理性と信仰を区別したスコラ学者の自然法の捉え方
自然法論の世俗化の最初の徴候
ホッブズの世俗化されていない思想とその自然法(論)
カントの「自然法」イコール「理性法」
理性による「聖」と「俗」の融合(ヘーゲル)
現在の理性の衰弱とその原因
世俗化と理性の衰弱の結果
自然法論は生き残るか
第三日 学問と信仰と人間
はじめに
学問の他に知恵もある
二種類の知識
信仰とは何か
信仰、信頼、信念
信仰と宗教
西洋の法律と法学の内容となったキリスト教的な要素
宗教を対象にする学問
宗教哲学という学問
弁神論と神学
「哲学的信仰」もあるか
日本人の「宗教なしの信仰」
信仰と学問に共通する点
学問に対する信仰の相違点と利点
注

オリゲネス 『ヨハネによる福音注解』研究
創文社オンデマンド叢書
2~3世紀に活躍したギリシアの神学者オリゲネスは、キリスト教の教義学を創始した、アレキサンドリア学派の代表的人物である。その人物と学に迫る。
【目次より】
序言
序説 教父時代におけるオリゲネスの評価
序章
第一章 オリゲネス生存中の評価
第二章 アレクサンドリアとカイサリアの「信仰教育学校」
アレクサンドリアの「信仰教育学校」
カイサリアの「信仰教育学校」
アンティオキア学派
第三章 サベリオスとサモサタのパウロス
第四章 アレイオス論争
第五章 カパドキアの三教父
第六章 エヴァグリオス
第七章 四世紀末から五世紀初頭にかけてのオリゲネス論争
エピファニオス
ヒエロニムスとルフィヌス
アレクサンドリアのテオフィロス
第八章 六世紀のオリゲネス論争
『ユスティニアヌスのメナスヘの手紙』
五五三年の十五ヶ条の異端宜言
福音の道キリスト オリゲネス『ヨハネによる福音注解』研究
序章 近年のオリゲネス研究の動向
第一章 キリスト者ヘラクレオン
第二章 グノーシス主義者ヘラクレオン(ヘラクレオンの教説)
第三章 グノーシス主義者オリゲネス?
補注 在在性と実在について
第四章 キリスト者オリゲネス(オリゲネスの教説)
一 オリゲネスのヘラクレオン批判
二 啓示者であり啓示そのものであるキリスト
a 聖書
b 神の像なるキリスト
三 救済者であり救いそのものであるキリスト
a キリストの諸相
b 救いの営みとしての諸相
四 信仰と覚知
a 信じることと聞くこと
b 観ることと知覚すること
結論
註
付録一 年表(オリゲネスの生涯)
付録二 相関図(オリゲネス支持者と反オリゲネス者)
文献(日本語のオリゲネス研究文献)
あとがき

意味・真理・場所 ハイデガーの思惟の道
創文社オンデマンド叢書
ハイデッガー全集をもとに三つの道しるべの視点より彼の思惟の全体像を提示する本格的研究。「存在と時間」への道、形而上学、存在の真理など「意味-真理-場所」という道しるべに従って、ハイデガーの思想の道を歩み返す。
【目次より】
序
凡例
目次
序章 意味・真理・場所
第一章 ハイデガーの思惟の道
第一節 思惟の道
第二節 転回
第三節 意味ー真理ー場所
第二章 『存在と時間』ヘの道
第四節 存在の問いの始元と展開
第五節 現象学
(a) ハイデガーのフッサールとの対決
(b) フッサールのハイデガーとの対決
第六節 時間への問い
第三章 存在の意味
第七節 基礎的存在論
第八節 存在の意味への問い
(a) 解釈学からの由来
(b) 「存在の意味への問い」の意味と射程
第九節 時間と存在
(a) 存在と真理
(b) 三つの差異
(c) 未完
第四章 形而上学
第十節 形而上学構想の成立
第十一節 三部作
(a) 現存在の形而上学
(b) 人間、自然、神
(c) 不安の喚起
第十二節 全体としての存在者
第五章 形而上学と神の死
第十三節 神の死
第十四節 ナチズム
第十五節 ニーチェと形而上学の終末
(a) 永遠回帰
(b) 神の到来への準備
(c) 形而上学
第六章 存在の真理
第十六節 ニーチェ解釈の途上性
第十七節 存在の真理への問い
(a) 存在の真理
(b) 性起と転回
第十八節 存在の歴史
第七章 存在の場所
第十九節 存在の場所への問い
(a) 存在の場所
(b) 存在の家
第二十節 性起への道
(a) 立て集め
(b) 言葉
第二十一節 思惟の道
あとがき

一般均衡理論
創文社オンデマンド叢書
現代経済学の中核をなす一般均衡理論の体系を均衡の存在、最適性、安定性、比較静学など全貌に亙り集大成した基本文献。日経賞受賞。
【目次より】
まえがき
第1章 序論
第2章 消費者均衡理論の基礎
第3章 消費者需要の法則
第4章 需要関数から効用関数へ
第5章 企業の均衡
第6章 競争均衡の存在 I
第7章 競争均衡の存在 II
第8章 パレート最適と競争均衡
第9章 コアと競争均衡
第10章 均衡の安定性 I 安定の一般理論
第11章 均衡の安定性 II 粗代替性と大域的安定性
第12章 均衡の安定性 III 粗代替性と局所的安定性
第13章 均衡の安定性 IV 非模索過程の安定分析
第14章 均衡体系の変化の法則
第15章 比較静学と定性経済学 I
第16章 比較静学と定性経済学 II
第17章 結論に代えて

甘え・病い・信仰(長崎純心レクチャーズ)
創文社オンデマンド叢書
著者が精神医学界に問うた「甘え」という新しい概念はその後、世界の学会に着実に受け入れられてきた。個の自立を強調する思潮に対し、人間関係の根底で「甘え」と信頼が果たす役割を明快に論ずる。さらに「甘え」の視点から聖書に光を当てて、愛されること、愛の受容がもつ深い意味を浮き彫りにし、癒されて在ることの真実の姿を示す、病める現代に送るメッセージ。
戦後、現代社会において「甘え」の経験を好ましくないとする風潮が生まれた。そこから引き起こされた社会的病理現象を明らかにするとともに、人間関係の根底で「甘え」と信頼が果たす意義と役割を論じる。
隣人愛に象徴される他者への愛が強調されてきたキリスト教の従来の見方にたいし、「甘え」の視点から聖書に光を当てて、愛されること、愛の受容がもつ深い意味を浮き彫りにし、癒されて在ることの真実の姿を示す。病める現代に贈る、甘えの大切さを語ったメッセージ。
【目次より】
「長崎純心レクチャーズ」について 片岡千鶴子
序言 稲垣良典
目次
第一日 甘えの話
「甘え」という言葉
甘えの心理
なぜ欧米語には「甘え」に相当する言葉がないか
甘えの移り変わり
妬みの心理
ニーチェの場合
聖書の読みと日本的発想
甘えを可能とするもの
「甘え」という概念
言葉の理解
甘えと縦関係
結婚生活と甘え
第二日 病いの話
病気とは何か
心と病気
心の病気の種類
病気と甘え
家庭の問題
なぜ治るのか
キリストの奇跡の意味するもの
悪霊の問題
「分かる」ことの危険
人の心が分かるとはどういうことか
日韓「甘え」の比較
甘え・しつけ・教育
第三日 信仰の話
聖書と甘え
イエスと甘え
神に対する甘え
聖フランシスコの祈り
愛することと愛されること
パウロの愛の讃歌
癒しについて
あとがき

アウグスティヌスの人間学
創文社オンデマンド叢書
4~5世紀にかけて活躍したローマ帝国時代のキリスト教の神学者、哲学者、説教者であるアウグスティヌスは人間をどう考えていたのか。その全貌に迫る。
【目次より】
序論 人間学的伝統の受容と変革
第一節 精神史的境位
第二節 新しい人間学の出発点
第三節 人間学的自覚の発展
第四節 新プラトン主義の人間学の影響
第五節 パウロの人間親の受容と解釈
第一部 アウグスティヌス人間学の形成過程
第一章 初期人間学の特質
第一節 哲学の主題としての魂の問題
第二節 人間の定義、理性と身体の理解
第三節 知的救済論とキリスト教的意識
第四節 回心と神への対向性
第二章 魂と身体
第一節 魂の不滅についての論証の問題
第二節 身体論(一) 感覚論の問題
第三節 身体論(二) 創造・受肉・復活
第四節 人間学的区分法の問題
第三章 理性と信仰
第一節 理性と信仰の問題と基礎経験
第二節 優位性の問題
第三節 神の像としての精神の知性的認識
第四章 超越 内面性の問題
第一節 哲学者の神とキリスト教信仰
第二節 悪の存在論的考察と実存の超越
第三節 アフェクトゥスの超越性
第四節 超越の道と命法
第五章 自由意志
第一節 自由意志に対する初期の解釈
第二節 自由意志と悪の問題
第三節 自由意志と神の恩恵
第二部 アウグスティヌス人間学の特質
第一章 「心」(cor)の概念
第一節 「不安な心」(cor inquietum)と頽落存在
第二節 心概念の実存史的考察
第二章 人間存在と時間
第一節 時間と歴史性
第二節 創造と時間の秩序
第三節 歴史と時間の秩序
第四節 救済史の問題
第五節 人間学的三段階説
第三章 社会的人間存在
第一節 キヴィタスの社会学的概念
第二節 キヴィタスの神学的・人間学的意義
第三節 キヴィタスと国家および教会との関連
第四節 キヴィタスと世代との転換
第四章 神の前に立つ人間
第一節 宗教的自覚の深化
第二節 「あなたの命じるものを与えたまえ」の意味
第三節 ローマ書第七章の解釈の転換
第五章 奴隷的意志の問題
第一節 アウグスティヌスからルターヘの継承
第二節 初期から中期にいたる奴隷的意志の展開
第三節 後期の「拘束された自由意志」の理解
第四節 自由意志と恩恵との関係の三類型
第五節 アウグスティヌスにおける弁証法的関係
あとがき

愛の秩序
創文社オンデマンド叢書
プラトン、アウグスティヌスを経て今日まで西洋文化に広範な影響を及ぼした「愛の秩序」の全体像を解明して、現代に問うた問題作。
【目次より】
I 愛には秩序があるか
1 愛の本質への問い
2 人間の全体的表現としての愛
3 人倫と愛の秩序
II 愛の諸類型について
1 エロースの諸形態
ホメロスからソクラテスまで プラトン エピクロス ルクレティウス オウィディウス
2 フィリア(友愛)
プラトン アリストテレス エピクロス派とストア派 キケロ プルタルコス
3 アガペーとカリタス
新約聖書のアガペー アウグスティヌスのカリタス
4 宮廷的恋愛
5 ロマンティックな愛
ダンテ ペトラルカ タッソからゲーテヘ
6 自然主義的愛
III 愛の秩序の思想
1 プラトン主義
プラトン プルタルコス プロティノス フィチーノとエラスムス
2 アウグスティヌス
「愛の秩序」の定義 三つの愛の順序 性愛の秩序 享受と使用 時間の秩序と愛の秩序の完成 火の論理
3 中世思想とルター
クレルヴォーのベルナール トマス・アクィナス ドゥンス・スコトゥス マルティン・ルター
4 パスカルとキルケゴール
パスカルと愛の情念 三つの秩序 キルケゴールの愛の三段階 隣人愛の概念
5 マックス・シェーラー
IV 愛の諸次元
1 身体の次元
2 心理の次元
3 精神の次元
4 人格の次元
V 愛の成長
1 愛の邂逅期
2 愛の相互期
3 愛の献身期
親の愛 恋愛 結婚 聖なる愛
VI 愛の射程
1 目的と手段
2 愛と価値合理性
3 近い地平と遠い地平
注
あとがき

経典釈文論語音義の研究(東洋学叢書)
創文社オンデマンド叢書
『経典釈文』「論語音義」は、何晏『論語集解』を軸として、『論語集解』諸本、『論語鄭玄注』など異本間の字句の異同、難解字への音釈、漢魏六朝間の論語説家の注釈を集成し、より正しいテキストと字音を示す目的で、六朝末に陸徳明(550-630)によって撰述された。中国では唐・開成2年(837)に建立された開成石経以後、論語本文はすべて開成石経に従うようになり、その結果、「論語音義」の記述とずれが生じ、「論語音義」修改の遠因となった。一方、日本には開成石経以前の論語古写本が伝存し、しかもそれら古写本には現在通行する「論語音義」に見えない多くの条目が書き入れられている。本書は、日本に伝わる鎌倉時代の論語古写本と開成石経系統の論語テキスト、さらに論語古写本から輯佚した「論語音義」と通行本「論語音義」を対比検討して、「論語音義」に関わる諸問題を解明する。日本古代における中国古典の学び方を知る上でも、多くの示唆を与える画期的業績。
【目次より】
凡例
序章 『経典釈文』「論語音義」研究の試み
一 陸徳明と『経典釈文』 二 『経典釈文』「論語音義」研究の目的と本書の構成
第一章 『経典釈文』「論語音義」の成書
一 「序録」に見える「論語』注釈書についての疑問 二 「序録」に見える『論語』注釈書の検討 三 「論語音義」の依拠した『論語』注釈書 四 「論語音義」所引の論語説と皇侃『論語義疏』
第二章 『経典釈文』「論語音義」を通じてみた『論語鄭玄注』
一 鄭玄による「魯論読正」記事 二 「論語音義」所引の『論語鄭玄注』
第三章 『経典釈文』「論語音義」を通じてみた『論語集解』
一 「論語音義」所引『論語集解』と『論語』諸本比校 二 「論語音義」が依拠した『論語集解』の分析
第四章 『経典釈文』「論語音義」の修改
一 「論語音義」に見える「本今作(無)」「今本」「今注」と『論語』諸本との比校 二 「論語音義」に見える「本今」とは 三 集解に「本今」が用いられる場合と用いられない場合 四 経に「本今」が用いられる場合と用いられない場合 五 「論語音義」の所引句が依拠した底本の解明 六 古抄本『論語集解』書き人れの「論語音義」より「本今」を考える
第五章 日本における経書研究と『経典釈文』の受容
(一) 藤原頼長の経書研究
(二)『経典釈文』と『全経大意』
(三) 鎌倉時代写『論語集解』断簡とその書き入れ
附論一 定州漢墓竹簡『論語』試探
附論二 『論語鄭玄注』は日本に伝来したのか
まとめ
あとがき
初出一覧

宮田光雄思想史論集5:近代ドイツ政治思想史研究
創文社オンデマンド叢書
本巻には、ルター、カント、ロマン主義に即して近代ドイツ政治思想の特質を探った、著者の研究初期から近年までの論考一二編を収録する。巻末には補章として、フンボルト財団研究奨学生「研究報告」のドイツ語論文を収載。本巻をもって〈宮田光雄思想史論集〉全八巻、ここに完結。
【目次より】
序章 思想史基礎概念
1 政治哲学 2 政治と倫理 3 抵抗権 4 寛容 5 ファシズム
I
1 ドイツ近現代史の中のルター像 神学的・政治学的考察
はじめに
一 近代ドイツ史の中のルター像
二 ナチ・ドイツ時代のルター像 《ルターとヒトラー》一九三三年
三 ナチ党リーダーのルター像
四 ドイツ敗戦後のルター像 《ヒトラーとルター》一九四五─四七年
五 おわりに 歴史的遺産の省察のために
2 カントの政治哲学についての一考察 ドイツ啓蒙主義の思想構造
はじめに
一 ドイツ啓蒙主義の一般的特質
二 カントの政治哲学 《フランス革命のドイツ的理論》
三 カントの政治哲学(続) そのドイツ的特質と限界
むすび カント哲学とドイツ啓蒙主義
3 ノヴァーリスの詩的国家論 初期ロマン主義の思想構造
はじめに
一 初期ロマン主義の思想的特質 《ロマン主義的イロニー》から《魔術的観念論》まで
二 ヴァーリスの詩的国家論
付論 精神と権力 近代ドイツ思想の構造的位相
II
4 近代化と文明化 D・ゼンクハース『諸文明の内なる衝突』を読む:
一 近代化による《諸文明の内なる衝突》
二 著者の研究足跡と平和構築の将来
付論 ドイツ国家主義の史的構造
5 近代デモクラシーの思想と制度
一 デモクラシーとは何か
二 基本的人権とデモクラシー
三 権力分立制とデモクラシー
四 代表議会制とテモクラシー
〔追記〕 《院外野党》運動の論理
6 現代都市と市民教育
一 現代都市と市民運動
二 市民教育の哲学
1) 啓蒙 2) 政治参加 3) 市民的不服従
三 市民運動と自己規律
III
補章 Die Struktur und Funktion des modernen Geistes in Deutschla. Ein Beitrag zur Frage der geistesgeschichtlichen Unterlage des Nationalsozialismus:…
あとがき 解説と解題に代えて

中国詩文の美学(中国学芸叢書)
創文社オンデマンド叢書
声律や対句などの技法により、緻密に構築された中国の詩と文。その表現形式を支える美の理念と原理に着目し、それが詩文の形式の創出にいかに生かされていったかを追跡。長い時間をかけて詩文形式が醸成されていくさまを俯瞰的に観察する。初めに、六世紀の文学理論書『文心雕龍』を美の原点にすえ、それが提起した問題点を、のちの理論家がどのように実践面で取り入れ形式美を創出していったかを、主に『文鏡秘府論』所収の文献から考察。その上で、律詩の形成過程を歴史的に考証して、五言律詩が漢代から六朝の宮廷詩人により形成される過程や、唐代の杜甫が試行錯誤を経ながら七言律詩を確立する過程に光を当てる。さらには、文に目を転じ、日本古代文学をも視野に、駢文文体の推移を論じる。明快な論述で文学創作形式の美に迫る必読書。
【目次より】
はしがき
一 創作技法論の展開 『文心雕龍』から『文鏡秘府論』へ
二 律詩の形成過程 句数と対句の側面から
三 五言八句詩の成長と永明詩人
四 四声八病から平仄対応ヘ
五 杜甫と七言律詩 ことに拗体詩について
六 遊宴詩序の演変 「蘭亭序」から「梅花歌序」に至る表現形式
あとがき

救貧看護とフィランスロピア(関西学院大学研究叢書) 古代キリスト教におけるフィランスロピア論の生成
創文社オンデマンド叢書
人間とは何か。キリスト教の発展とともに人間観に大きな変化が生じた。本書は、フィランスロピア(人間愛)という概念が二世紀以降どのように展開したのかを跡付け、ギリシア・ローマ世界に対して、受肉論をもとにレプラの病貧者を含む「貧者」を人間とする思想と実践がカッパドキア教父において展開したことを論じる労作。
【目次より】
まえがき
序論 問題としてのフィランスロピア 古代ギリシア・ローマ、古代ユダヤ思想、初期キリスト教
第一部 カッパドキア教父以前のフィランスロピア論の生成
第一章 使徒教父と弁証家におけるフィランスロビアの用法と救貧思想
第二章 アレクサンドリアのクレメンスにおけるフィランスロビア論の形成
第三章 疫病とフィランスロピア トゥキュディデス、ディオニュシオス、エウセビオス 第二部 カッパドキア教父における救貧とフィランスロピア
第四章 どうすれば貧者の苦しみがあなたには見えるのか 飢饉とカイサレアのバシレイオス
第五章 カイサレアのバシレイオスと「バシレイアス」 古代キリスト教における病院施設の一考察
第六章 ナジアンゾスのグレゴリオスとレプラの病伝貧者 第一四講話における救貧思想
第七章 フィランスロピアと終末論 ニュッサのグレゴリオスにおける救貧の思想
第八章 ニュッサのグレゴリオスにおける救貧と否定神学
第九章 なぜ神は人間になったのか 受肉論・フィランスロビア・救貧
結論
補遺一 新約外典文書におけるフィランスロピアの用例
補遺二 「キュプリアヌスの疫病」考
補遺三 ニュッサのグレゴリオスにおける「レプラ」の用法と意味
付録 バシレイオス説教「飢饉と旱魃の時期に」
あとがき
エウセビオス『教会史』におけるをフィランスロピア注合ならびに関連語の用例一覧
文献表
文献略号表

漢唐法制史研究
創文社オンデマンド叢書
秦漢帝国においてすでに相当なレベルに達していた中国の法律・刑罰制度は、三国時代、南北朝時代を経て八世紀の唐王朝でいっそう完成度を高め、東アジア、朝鮮、日本の法制に計り知れない影響を及ぼした。本書は、漢の法制が魏晋南北朝時代に継承されつつ改変され、唐の法制度に至る経緯を法・刑・罪という三つの要素から辿り、その変遷と意味を考察。中国前近代法制度の特徴と展開、中国古代法制と中世法制の相違を明らかにして、中国法制史の体系に独自の視点を提示する。中国律を母法とする日本の律・令の法思想を解明するとともに、日中の法文化の相違、さらには西洋と東洋との相違をも視野において、読者を広い歴史世界へと導く画期的業績。
【目次より】
凡例
序論
第一部 法典
第一章 晉泰始律令への道
I 令と令典
II 漢律の諸問題
III 曹魏の法令
IV 晉泰始律令の成立
第二章 漢律から唐律へ 裁判規範と行為規範
I 出土漢簡に見える漢律とその適用
II 唐律の引用とその実効性
III 漢律から唐律への編文化
第二部 刑罰
第一章 究極の肉刑から生命刑へ 漠~唐死刑考
I 漢代の死刑 その執行様態
II 魏晉の刑罰 棄市刑
III 北朝の死刑 絞殺刑の登場
第二章 徒遷刑から流刑
I 唐の流刑
II 秦漢の「流刑」
III 漢代徒邊刑の刑罰原理
IV 流刑の登場
第三章 笞杖の変遷 漢の督笞から唐の笞杖刑
I 秦漢の笞刑
II 魏晉の笞杖刑
III 北朝の笞杖
第四章 腐刑と宮刑
I 腐刑の新出資料
II 腐刑は反映刑か
III 腐刑の位置
IV 腐刑は、死刑に次ぐ刑罰か
V 肉刑の背景と放果
VI 腐刑、宮刑、淫刑
VII 宮刑の消滅と宦官
第三部 犯罪
第一章 儀礼と犯罪のはざま 賄賂罪をめぐって
I 賄賂罪に隅する唐律の規定
II 漢律に見える賄賂罪
III 漢ー唐における賄賂罪の変遷
IV 賄賂はなぜ罪になるのか 礼物と賄賂の間
第二章 男女間の性的犯罪 姦罪について
I 秦漢律にみえる姦・淫
II 「姦」「淫」の語義
III 分界の変化
IV 禽獣の別
第三箪 「正義」の殺人
I 復讐譚「彼は義士なり」 刺客豫譲の話
II 以後の復贄讀 歴代正史が伝える復讐事件
III 経典と復讐
IV 中国的復讐観の特徴
V 復讐の禁止 儀礼と刑罰
あとがき
英文要旨
英文目次

存在と秩序 人間を巡るヘブライとギリシアからの問い
創文社オンデマンド叢書
人間にとって存在と秩序はいかなる意味を持つのか、ひいては人間は存在と秩序についていかに思考してきたのか。このような問いが土台にある本書は、古代ギリシアとヘブライの思想が交叉し発展したヨーロッパ精神史の原点を再考する。本書はまず、ニュッサのグレゴリオスに目を向けることから始め、エウリーピデースやヘロドトス、トゥキュディデースらのテクストからアテーナイ民主政における説得と情念の意義を考える。次に、プラトンの後期対話篇から、人間の生と共同性の存続を探究した彼の晩年の思考を明らかにする。その上で、プロティノス中期の精華である『エネアデス』IV3-4〔27-28〕『魂の諸問題について』に焦点を絞り、コスモス(宇宙、世界)やテクネー(技術)と人間の関わりを巡る彼の思索を、中間性という概念を手がかりに丹念にたどる。さらに、『創世記』の族長物語とヨセフ物語における兄弟の逆説がもたらした情念の相克とその浄化を巡る考察を経て、神と人間それぞれにとっての情念と秩序という視座から『ヨブ記』を読み解く。最後に、ロゴスとパトスが交叉する『オデュッセイア』から、人間の秩序についての思想の展開を読み取る。従来、十分に論じられてこなかった、古代ギリシアとイスラエルの思惟が各々のあり方で、しかし共に問い接近しようとした地平の根幹に挑む。
【目次より】
はじめに
第一章 生き続けること 民主主義の原義と本質
第一節 アテーナイの民主政
第二節 説得と情念
第二章 プラトンにおける人間の生と共同性 後期対話篇を素材に
第一節 『ソピステス』
第二節 『政治家』
第三節 『法律』
第三章 プロティノスについての存在論的考察(一) 『エネアデス』IV三─四〔二七─二八〕
第一節 宇宙の魂による制作 IV四、一〇─一三を中心に
第二節 技術(テクネー)を巡る思惟の位相
第四章 プロティノスについての存在論的考察(二) 『エネアデス』IV三─四〔二七─二八〕
第一節 再論 存在への問いをプロティノスに見いだす意味
第二節 われわれの魂と中間的存在者たるわれわれ人間
第三節 中間的存在者としての人間と記憶
第四節 生成するものの存続と、中間的なるものの意義
第五章 情念とその浄化 『創世記』を巡る一考察
第六章 情念と秩序 『ヨブ記』
第一節 序曲と第一回討論
第二節 第二回討論
第三節 第三回討論
第四節 二八章から三一章まで(知恵の所在を問う歌およびヨブの独白)
第五節 神の弁論から終曲まで
第七章 言葉の行方 『オデュッセイア』第四巻を中心にして
『オデュッセイア』第四巻における話者とその視線
おわりに
註

ドイツ その起源と前史
創文社オンデマンド叢書
前著『ドイツ史の始まり――中世ローマ帝国とドイツ人のエトノス生成』で割愛した、第一部と二部の間に位置する歴史的・言語史的考察。deutschという語の起源をめぐるグリム以来の学説史の整理、「ドイツ(語)」の前段階の「フォルクの言葉」という普通名詞に留まっていた初期の語法の網羅的検討を通じて、「三つの神聖言語」を頂点とする多言語国家としての大フランク帝国の実相に迫る。
【目次より】
はじめに
第一章 ドイツ(deutsch)の起源 研究の現況と課題
一 問題の所在
二 語源、語義
三 語形成
四 theudisk / theodiscus / diutisk 語形成をめぐる言語史的・歴史学的議論
五 「起源の偶像」
第二章 ドイツ(deutsch)の前史 七八六年~九二〇年
一 問題の所在
二 theodiscus:七八六~八七六年(1):アルプス以北の語法
三 theodiscus:七八六~八七六年(2):イタリアの語法
四 theodiscusからteutonicusへ:八七六年
五 theodiscusとteutonicus:八七六~九二〇年(1):西フランクとアングロ=サクソン
六 theodiscusとteutonicus:八七六~九二〇年(2):東フランク
七 ドイツ(deutsch)の前史
第三章 『ザルツブルク大編年誌』九二〇年の項の「ドイツ人の王国」 中世盛期における「ドイツ王国成立論争」の始まり
一 政治史の経過と各種史料の証言
二 問題の所在
三 研究史の批判的検証と同時代性の否定
四 オットー『年代記』、『ザルツブルク大編年誌』、「オーストリア編年誌」(AGS)
五 「アルヌルフの国王計画」と「ドイツ人の王国」
あとがき
付録(図表、地図、系図)
注
主要参考文献一覧

秦漢出土文字史料の研究(東洋学叢書) 形態・制度・社会
創文社オンデマンド叢書
戦国末から魏晋に至る多様な出土文字史料を対象に、文字情報のみならず形状や出土状況をも視野に入れ、史料の形態論に先鞭をつけた研究成果。漢簡の側面に施された刻みを解読し、紙木併用期に特有の木簡の用法を分析することで、木から紙への書写材料の変遷に新たな角度から光を当てる。さらにテクストを読み解いて、地方統治を支えた官吏の姿や、統一法典不在のもとでの司法の実態に迫るとともに、漢の西北辺境という歴史世界の復元を試みる。中国出土文字史料研究の世界的水準を示す待望の一冊。
【目次より】
序章 出土文字史料研究の立場と方法
第一部 素材としての出土文字史料
第一章 刻歯簡牘初探 漢簡形態論のために
第二章 魏晋楼蘭簡の形態 封検を中心として空
第三章 簡牘・〓帛・紙 中国古代における書写材料の変遷
第二部 制度と習俗の復元
第四章 里耶秦簡と移動する吏
第五章 王杖木簡再考
第六章 長沙東牌楼出土木牘と後漢後半期の訴訟
第七章 漢代結〓習俗考
第三部 居延漢簡研究の地平
第八章 漢代エチナ=オアシスにおける開発と防衛線の展開
第九章 日本における居延漢簡研究の回顧と展望 古文書学的研究を中心に
第十章 爵制論の再検討
第十一章 皇帝支配の原像 民爵賜与を手がかりに
おわりに
コメント
あとがき

ヨーロッパ 時空の交差点
創文社オンデマンド叢書
ひとは、場所に教えられる。パリの街角で、文人や芸術家の筆音に耳を傾ける著者は、人里離れたトルコ南部の松林でローマ土器のかけらと出会い、村人の暮らしに想いを馳せる。皇帝ユスティニアヌスが帝都コンスタンティノープルに収集させたギリシャ古典群に学び、コペルニクスがイタリアで学んだギリシャ古典の来歴をたどろうとする。それは、ときと場所に縛られて生きるわれわれにとって、時空の交差点をめぐる旅となった。ビザンツ研究に始まる著者の「旅」は、国民国家の枠にとらわれない歴史と現代を巡る往還となる。その道すがら、ヨーロッパ=地中海世界の各地に、個性ある文化と歴史をたずねた。簡潔な文体で伝える「旅」のエッセイにして、興趣あふれる旅の手引き。英独仏に視野が限られがちなヨーロッパ観を、ローマ帝国および、アラブ・イスラム世界をも含んだビザンツ帝国へと導き、未知のヨーロッパ像を提示する。西洋史はもちろん、現代EUの課題を考える際にも豊かな示唆を与えよう。『創文』連載を全収録。
【目次より】
目次
I 文化の回廊
共生する空間
共鳴する魂
日溜まりの祝福
凜と聳える
平和の祈り
緋色の誓い
文化の回廊
女神の加護
集いの緑蔭
地上花あり
咲き映えり
仰ぎ見る峰
聖ニコラオスの島
II 聖者の祝福
聖者の祝福
憩う海辺の時
谷に翔る風
祝祭の広場
新緑の都で
異邦の民に
カロゲロス
聖堂の傍らで
継がれる想い
祈りと加護
フィロビブリ
III 帝国と慈善
ディダスカロス
境域に生きる
帝国と慈善
休息と安寧
馬上のキス
帝国の統治について
アンナの想い
燦然と
烈日のもと
秋霜に生きる
天への階梯
IV 大地の相貌
自然を友に
池の畔の蛙たち
地域を描く
大地の相貌
神々の山裾に
逸楽と超俗
コーラを想う
ブレヒ!
灯明の残り香
村の生活
満点の星々に
V 歴史の軌道
コペルニクスの転回
平和の架け橋
描かれた紫衣
揺るがぬ矜恃
時空の座標
時を刻むなかで
アクイレイアの残照
豊かな共生
エビデンス
歴史の軌道
オイノペドン
広場の平和
都市と慈善
大王の遺風
文化を運ぶ石畳
共鳴する偉業
富知のネクサス
地図
あとがき