創文社オンデマンド叢書作品一覧

近代日本の国際関係認識 朝永三十郎と「カントの平和論」
創文社オンデマンド叢書
この世界とは何か、を説明しようとする時、意識するとしないとにかかわらず、思い浮かべ、考えざるを得ない問いがある。それは、「人間とは何か」「国家とは何か」「国際関係とは何か」という3つの問いである。これらの問いが織りなす「世界のできあがり方」の構造を、本書は<自我・国家・国際関係>と呼ぶ。現在も世界の人々を拘束し続ける、この認識論的機制の近代日本における形成過程を、明治末から昭和前半期に活躍した哲学史家、朝永三十郎の「文脈設定者」としての思想的苦闘から描き出す。「国際関係とは何か」という、国際関係研究の根源への問いを問うには、世界国家の可能性を封じ込めた瞬間を把捉しなければならない。カントの『永遠平和のために』の単なる解説書とされてきた朝永の『カントの平和論』における、「国際」と「国家」の矛盾、という議論に、その瞬間は埋蔵されていたのである。学問領域を横断し、理論と歴史、思想と実証を交錯させて根源への問いへ挑み、21世紀の世界の見方、考え方を広く問いかける。
【目次より】
はじめに
第一部 背景と枠組
第一章 国際関係認識とはなにか
第二章 国際関係認識の研究枠組
第三章 カントと近代国際関係認識
第二部 朝永三十郎と『カントの平和論』
第一章 近代日本と朝永三十郎
第二章 『カントの平和論』の成立過程
第三章 自己申告上の契機
第四章 初期の朝氷 一九〇二~〇九年
第五章 留学とその後一九〇九~一六年
第六章「カントの平和論』前後及び晩年 一九一七~五一年
第三部 近代国際関係認識の原的形成
第一章 朝永三十郎の意味
第二章 カント解釈の系譜学 朝永以後
第三章 自我・国家・国際関係
あとがき
注
参考文献

コンスタンの思想世界 アンビヴァレンスのなかの自由・政治・完成可能性
創文社オンデマンド叢書
バンジャマン・コンスタン――19世紀フランス自由主義の代表的論者と目されながら、政治、道徳、宗教、文学など多岐にわたるその思想を総合的に捉えロジカルな構造を解明した研究書はいまだ存在しない。本書では、そうしたコンスタン自身のテクストが持つ多様性と歴史的コンテクストの複雑さを貫く一本の軸として、これまで等閑視されてきた彼のペルフェクティビリテ論に注目する。 共和政、帝政、王政のはざまで揺れ動くフランスにおいて、社会と人間とに透徹した眼差しを注ぎながら、個人の、そして人類の完成可能性に賭けたコンスタンの意図とは何だったのか? コンスタンの思想世界の全体像とともに、それが現実の政治空間でいかなる力と限界とを負っていたか、その「アンビヴァレンス」を見据えることで近代における「政治的なるもの」の姿を抽出する――歴史をより普遍的な主題と結びつけつつ問い返す本書は、思想史叙述の新たな可能性を模索する一つの試みである。
【目次より】
凡例
序論 問題の所在
第一部 問題史的コンテクストとコンスタンの政治思想
第一章 代表観念の歴史的展開と権力の問題
第二章 フランスにおける代表制と人民主権の問題
第三章 コンスタンの政治思想とその理論的構成
第二部 ペルフェクティビリテ論の基底性と統合的作用
第四章 ペルフェクティビリテ論 内面的ペルフェクティビリテを中心に
第五章 ペルフェクティビリテ論の総合的展開
第三部 テクストとコンテクストの交叉における闘争 二つの著作を中心に
第六章 『政治的反動論』を中心に
第一節 コンスタン カント虚言論争
第七章 『征服の精神』を中心に
むすび アンビヴァレンスの残響のなかで
あとがき
注
参考文献

首相の権力 日英比較からみる政権党とのダイナミズム
創文社オンデマンド叢書
本書は、現代デモクラシーに不可避的に伴う委任関係を捉える分析道具であるプリンシパル・エージェント理論を援用しながら、英国を中心に発展を遂げている執政府中枢研究と政党組織論の接点を探り、比較事例分析の手法を用いて首相の権力を決定づける要因が何であるのかを探究する。これにより、日英の首相を比較政治学の文脈に位置づけつつ、英国政治の脱神話化を図る。日英両国の首相が1970年代の政府内政策決定においてどのような権力のあり方を示したのかを分析することをとおして、議院内閣制が権力を創出しコントロールするその根源的なメカニズムの解明を目指す。
【目次より】
序章 問題の所在 日英比較分析の視座から
はじめに
第一部 首相職を位置づける 政党政治と執政政治との間
第一章 首相の権力とは何か 政党政治と執政政治との間に位置する首相職
第二章 首相と執政府中枢 一九七〇年代における日英両国の政府内調整メカニズム
第三章 首相を「操縦」する 一九七〇年代における政権党組織の比較分析
第二部 首相の権力を検証する 比較事例分析
第四章 委任とコントロール エドワード・ヒースと保守党(一九七三年一〇月~一九七四年一月)
第五章 競合するエージェントたち 田中角栄と自民党(一九七三年一〇月~一九七四年一月)
第六章 分裂する政権党・分裂する内閣 ジェームズ・キャラハンと労働党(一九七六年四月~一九七七年一一月)
第七章 党内抗争の激化と閣内の平和 大平正芳と自民党(一九七八年一二月~一九八〇年五月)
終章 議院内閣制と首相の権力
あとがき
註
インタヴュイー一覧・参考文献一覧

アメリカ法制史研究序説
創文社オンデマンド叢書
「英米法」と総称されるイングランド法とアメリカ法はきわめて近い関係にありながら、様々な分野で大きく異なる側面を持つ。本書は「比較歴史学」の方法を駆使してアメリカ法のイングランド法からの継受・分離・独立過程を解明、あわせてアメリカ本国およびわが国における「研究史」を調査、整理、評価した初の本格的研究。「アメリカ法制史学不在の現状」を打破すべく書かれた著者二十年の苦闘の成果。第7回天野和夫賞受賞。
【目次より】
序:わが国におけるアメリカ法制史研究不在の現状
第一 法形成の主体 アメリカ型法曹の醸成に関する歴史学的考察
第1篇 独立前夜マサチューセッツの法曹制度
I はじめに 問題の所在 II 予備的説明 III 「法律家団体」 IV 法学教育 V 「イングランド化」の阻害・限界要因 VI むすびにかえて
第2篇 独立前ヴァジニアの法曹制度
I はじめに 問題の設定 II 研究史の概略 III ヴァジニアの統治・権力構造における司法機構 IV 法曹資格試験及び法曹関係立法 V 一般管轄裁判所のアトーニ(GCA)の実態及び性格 VI むすび マサチューセッツ法曹との比較におけるヴァジニア法曹の特徴
第3篇 連合規約時代における「アメリカ型法曹」醸成過程
I 序 アメリカ法制史学不在の現状 II アメリカ法制史学に対するWarrenテーゼの意義 III 独立宣言当時における法曹制度 IV 連合規約時代マサチューセッツの法曹 V 連合規約時代ヴァジニアの法曹 VI 「アメリカ型法曹」醸成過程に関する理論的考察
第二 アメリカ的法制度の形成過程断片
第4篇 奴隷が行使する I聖職者の特権」 独立前ヴァジニアにおける「イングランド法継受」の一例
I 本篇の問題 II 奴隷が行使する聖職者の特権の実例 III 聖職者の特権制度の導入と奴隷への拡大 IV 聖職者の特権の実態と機能 V むすびにかえて
第5篇 独立前夜における陪審裁判の歴史的位置 マサチューセッツに見るその実像
I 本篇の問題 II 歴史的事実の文脈 独立前夜マサチュ ーセッツにおける「陪審裁判」のある実態 III 法制史上の文脈 IV むすびにかえて
第三 アメリカ法制史研究批判
第6篇 アメリカ法制史研究の回顧と展望 「アメリカ法制史学不在の現状」の根本問題
I 序
第1部
II アメリカ本国におけるアメリカ法制史研究概観 III わが国におけるアメリカ法制史研究概観
第2部
IV 本国におけるアメリカ法制史研究の批判的検討 V わが国におけるアメリカ法制史研究のあり方に関する批判的検討 VI アメリカ法制史研究 VII 跋
文献一覧
あとがき

ドイツ封建社会の構造
創文社オンデマンド叢書
11~13世紀における中部ライン河領域とモーゼル河流域の計34の城塞を取り上げ、城塞とその周囲に横たわる支配領域・支配権を考察。原典史料を博捜し、シャテルニーを示す用語を検出するとともに城塞支配権の実態的内実を究明することで、ドイツにも、公権力的機能を果たし封建社会の機軸をなしたフランス型シャテルニーが存在したことを明示する。フランス史学とは対照的に、従来シャテルニーに関心が希薄であったドイツ史学に一石を投じる業績。
【目次より】
凡例
序
第一章 研究動向の概観
第二章 城塞と支配
第三章 問題設定
第四章 中部ライン河流域・モーゼル河流域の城塞とシャテルニー
第五章 モンクレール城塞
第六章 レムベルク城塞
第七章 マールベルク城塞とキュルブルク城塞
第八章 マンダーシャイトの二つの城塞とケルペン城塞
第一節 オーバーブルク(上手の城塞、トリール大司教の城塞)
第二節 ニーダーブルク(下手の城塞、ヘレン・フォン・マンダーシャイトの城塞)
第三節 ケルペン城塞
第九章 ブリースカステル城塞とベルンカステル城塞
第一〇章 フーノルシュタイン城塞とベルンカステル城塞
第一一章 コッヘム城塞
第一二章 トライス城塞
第一三章 コーベルン城塞
第一四章 モンタバウアー城塞
第一五章 ナッサウ城塞
第一六章 フォン・ファルケンシュタイン=ミュンツェンベルクの城塞
第一節 カウプ(グーテンフェルス)城塞
第二節 ファルケンシュタイン城塞、ミュンツェンベルク城塞、アッセンハイム城塞、ドライアイヘンハイン城塞、ケーニヒシュタイン城塞、バーベンハウゼン城塞
(a) ヘルシャフト・ミュンツェンベルク
(b) ヘルシャフト・アッセンハイム
(c) ヘルシャフト・ケーニヒシュタイン
(d) ヘルシャフト・ドライアイヘンハイン
(e) ヘルシャフト・バーベンハウゼン
第一七章 ヘレン・フォン・エプシュタインの城塞
第一節 ハインハウゼン城塞とシュタインハイム城塞
第二節 エプシュタイン城塞
第三節 ホムブルク城塞
第四節 シュヴァールハイム城塞
第五節 ブラウバッハ(マルクスブルク)城塞
第六節 シュヴァープスブルク城塞
第七節 ヴィート城塞、オルブリュック城塞
第八節 クレーベルク城塞
第九節 ホイゼンシュタム城塞
終章
あとがき
地図
註
史料と文献
略記法

ユ信と六朝文学(東洋学叢書)
創文社オンデマンド叢書
【※ユ=まだれ+「諛」のつくり】分裂時代の社会的精神的危機を体験した作家達の表現行為を、彼らの倫理観・死生観との関係の中で考察すると共に、同時代の思想状況、特に流布し始めた仏教との関係を重視しつつ、六朝文学を独自の精神的課題をもった表現行為としてとらえ返す。修辞への偏重を精神史の中に位置づけ、修辞に過度に傾斜した人々、とりわけユ信が自己の文学に新生面をひらきえた理由と意味を解明。日本を含む東アジア全体の文化史を視野に収め、六朝後期文学の全体像を描く。
【目次より】
前言
序論 三国・六朝文学の課題
第一節 王粲の文学 宮廷詩人と流民の視座
第二節 阮籍「詠懐」詩の自我構造
第一部 東晉・宋代の詩人
第一章 陶淵明の文学
第一節 「形影神三首」詩と仏教
第二節 「雑詩十二首」における死生観
第二章 謝霊運の文学
第一節 謝霊運の資性と詩
第二節 謝霊運の「山居賦」の構造と仏教
第二部 ユ信の文学
第一章 ユ信の前半生の文学
第一節 前半生の銘と賦
第二節 南朝時代の詩の特質
第二章 「擬詠懐二十七首」の方法
第一節 「擬」と「詠懐」の方法
第二節 ユ信「擬詠懐二十七首」の方法
第三節 「擬詠懐」における自己像の形成
第四節 詠懐と叙事
第三章 後期の賦の特徴
第一節 「竹杖賦」における再生への希求
第二節 「哀江南賦」の表現構成 歴史と招魂
第四章 後期のユ信とその文学的立場
第一節 「擬連珠」四十四首の表現と論理
第二節 ユ信と北周勝王
第三部 ユ信以後の六朝文学
第一章 北周王族の文学と思索
第一節 北周趙王の文学 聖武天皇『雑集』を資料として
第二節 北周趙王へのユ信の影響
第二章 「羈旅の臣」の文学
第一節 江総の文学
第二節 顔之推の文学 「観我生賦」を中心に
あとがき

宮田光雄思想史論集別巻:ヨーロッパ思想史の旅
創文社オンデマンド叢書
ヨーロッパ各地を旅したフィールド・ノートと歴史的考察を五部二五編に収める。
【目次より】
目次
I 最初の出会い
1 ドイツの大学と大学町
2 ドイツの教会生活
3 ピエティステンの村
4 ドイツ教会闘争の旅
5 バルト先生の印象 スイスの旅から
II 同時代史の観察
1 ベルリンの危機と命運
2 ナチズムの虚像と残像
3 歴史教育にみるナチズム
4 学生運動における反動と革新
5 平和運動を支えるもの
III 東欧圏の国家と宗教
1 社会主義社会と宗教 東ヨーロッパの旅から
2 プラーハの街角で ヤン・フスとカフカの町
3 もう一人のルカーチ 社会主義ハンガリーの《対話の精神》
4 マルティン・ルターの足跡 東ドイツの旅
5 東ドイツの歴史意識 ルター像の変遷
IV アウシュヴィッツで考えたこと
1 ヒトラー支配の爪跡 ナチ・ドイツとヤスクニ
2 ナチと闘った父母と教師と教会 ノルウェーヘの旅
3 カイ・ムンク デンマーク反ナチ抵抗の説教者
4 アウシュヴィッツで考えたこと
5 希望の根拠はどこに ディッケンシートの村で
V 新しい回想の旅から
1 オーバーアンマーガウのキリスト受難劇
2 夏草生い茂りて ヒトラー支配の夢の跡
3 バッハ巡礼行
4 ルター伝説のトポグラフィー
5 バルラッハとナチズム
あとがき 解説と解題に代えて

カント哲学と最高善
創文社オンデマンド叢書
自律思想の成立過程を最高善の概念との関連で解明、カント哲学の全体像について新たな見方を呈示する。道徳における判定原理(規準)と実行原理(動機)という二種の原理の区別に着目しつつ、最高善がカントの実践哲学および哲学全体にとってもつ意味の変化を、『純粋理性の批判』から『道徳形而上学の基礎づけ』を経て『実践理性の批判』に至るまで辿る。自律道徳は第二批判において、道徳法則が自由の認識根拠とされるとともに、最高善が純粋実践理性の究極目的として規定されることによって確立する。最後に、形而上学と道徳と宗教との関係を、最高善と知恵と哲学との関係から明らかにし、最高善がカント哲学の核心をなすことを示す。カントにとって哲学の本質は、有限な理性的世界存在者の知恵という意味で理解された“Welt-weisheit”に見定められる。
【目次より】
序論
第一章 カントにおける自由意思の概念
第二章 『純粋理性の批判』における自由の問題
第三章 最高善の概念の予備的考察
第四章 規準論における実践哲学構想 道徳と最高善
第五章 『道徳の形而上学のための基礎づけ』における自律概念の成立
第六章 「基礎づけ」の展開
第七章 『基礎づけ』における道徳法則と自由
第八章 『実践理性の批判』における自律思想の確立
第九章 『実践理性の批判』における最高善
第一〇章 カント哲学と最高善
結び
あとがき
参考文献

明清文学の人びと(中国学芸叢書) 職業別文学誌
創文社オンデマンド叢書
明清時代、文学の創作者・享受者の層は飛躍的に拡大すると同時に、作品にも実に様々な人びとが登場した。本書は、職業分化の進展したこの時代の文学を、身分・階層・職業別という独自の切り口で観察し、人びとと文学との関わりに焦点を当てる。著者は明末通俗文学の作者馮夢龍への関心を出発点に、白話小説を中心とする幅広い資料を探り、多様な視線が織りこまれた明清文学の魅力に迫る。作品の背景をなす社会の様相をも浮かび上がらせた文学的明清社会史ともいうべき、新しい文学史。
【目次より】
はじめに
一 本書の目的と構成
二 明清という時代
三 明清の文学
四 「俗」文学の時代
五 大衆化、大量化の時代
第一章 皇帝
一 「文」の主宰者としての皇帝
二 清代皇帝の文学
三 感傷的な皇帝像
四 遊ぶ皇帝
五 皇帝を描くリスク
六 皇帝に寄り添う影 宦官について
七 宦官のプラス面
八 文学作品中の宦官
第二章 受験生
一 読書人
二 士と庶
三 科挙の受験勉強
四 科挙の階段
五 試験場のありさま
六 合格すれば
七 科挙をめぐる小説
八 家庭教師のこと
第三章 官僚
一 科挙合格から
二 官僚の仕事
三 赴任途中の事故
四 官僚の身の危険
五 郷紳になる
第四章 農民
一 文学作品の中の農民
二 裁判文書に見える農民
三 農村の歌
四 農村の祭りと藝能
五 農民の物語
六 『紅楼夢』の農民
第五章 職人
一 文学の中の職人
二 工藝品の役割
三 玉職人の物語
四 園林を守る植木職人
五 歌の歌い手としての職人
第六章 商人
一 中国の士農工商
二 客商の場合
三 商人の伝記
四 詩を作る商人たち
五 中商人
六 小商人
第七章 医者
一 医者の地位
二 医者と文学
三 医者の詩、傳山の場合
四 小説に見える医者
五 『金瓶梅』の医者
六 笑話の中の医者
第八章 江湖の人々
一 江湖とは?
二 『水滸伝』 江湖の小説
三 小説の中の易者
四 旅藝人
第九章 奴僕
一 力を労する者
二 旅の道連れ
三 明末の奴変
四 阿寄の伝
五 奴僕の物語
六 悪しき奴僕
七 物語の中の婢
第十章 僧侶
一 明代の詩と仏教
二 清初における僧侶の詩
三 小説の中の僧侶
四 笑話の中の僧侶
五 破戒僧の肯定
参考文献
あとがき

近世浅草寺の寺法と構造
創文社オンデマンド叢書
近世の日本に宗派・寺院の自治的支配を規律した寺法が存在したことは周知の事実であるが、個々の寺法については未だその内容は不明な点が多い。寺法の解明は、宗派や寺院の内部構造を知るためのみならず、近世法の性格や国制を理解するためにも不可欠である。本書は、長期に亙る寺務日記「浅草寺日記」を精緻に読み解き、江戸を代表する天台宗の大寺、金龍山浅草寺の構造とそれを支えた寺法の実態を解明し、近世寺法の体系的考察の端緒を拓く画期作。
【目次より】
まえがき
凡例
序論
第一章 日本近世寺法研究序説
寺法研究の背景 近世国家と寺法 近世社会と寺法
第二章 近世の浅草寺
裁判権について 浅草寺について
本論
I 近世寺法研究の沿革と論点
第三章 近世仏教と法制史研究
近世仏教研究の沿革 法制史家の研究
第四章 寺法研究の論点
中世寺法の研究 近世寺法の研究
II 浅草寺一山と寺法体系
第五章 浅草寺の寺法体系試案
寺法体系と浅草寺 浅草寺の寺法体系
第六章 浅草寺の「一山体制」
「一山体制」と本章の課題 浅草寺の「一山体制」
III 役僧と寺中住職の就任過程
第七章 別当代の就任過程
統理者(住職)とその任命 別当代の就任過程 歴代の別当代就任
第八章 役者の就任過程
浅草寺一山と役者 役者の就任過程 「役者選出寺法」の運用
第九章 寺中住職の就任過程
浅草寺一山と寺中住職 寺中住職の就任過程
IV 寺院経済の統制と借金銀寺法
第十章 幕府による寺院経済の統制
寺社奉行による寺院支配 「幕府寺法」による寺院経済の統制
第十一章 天台宗による末寺経済の統制
天台宗の本末関係 寛永寺による浅草寺支配 寛永寺への上納金
「宗派寺法」による寺院経済の統制
第十二章 借金銀寺法
幕府の寺院法度および寛永寺の掟 浅草寺一山借金銀寺法
V 僧侶の処罰
第十三章 『浅草寺日記』に記された寛政三年の僧侶刑罰法規
問題の所在 江戸時代の浅草寺と寺法 寛政三年僧侶刑罰法規の触れ出しとその内容 寛政三年僧侶刑罰法規の制定者について
第十四章 僧侶刑罰法と浅草寺の僧侶処罰
幕府の僧侶刑罰法と処罰 寛永寺の僧侶刑罰法と処罰 浅草寺の僧侶刑罰法と処罰
第十五章 執行機関の僧侶処罰に関する寺務
別当代および役者の寺務 僧侶処罰に関する寺務
結論
第十六章 浅草寺の寺法研究と今後の課題
浅草寺の寺法研究 時代区分論について 近世国家論について 今後の課題
あとがき
本書収録論文初出一覧

キリスト教修道制の成立
創文社オンデマンド叢書
今日世界各地に見られるキリスト教の修道院の源流は、3-4世紀の地中海世界、特にエジプトなどに求めることができる。本来人間が生きられない場所である砂漠への隠遁を敢行した「修道者の父」アントニオス、さらにその先駆者たちの試みがキリスト教修道制の端緒を成しているのである。その後の歴史に鑑みて、修道制の成立はキリスト教史上巨大な意義を有すると言うことができる。では、修道制はどのようにして成立したのか。これまでに提出された様々な学説を批判的に検討し、さらに修道生活とはそもそもどのようなものだったかを提示しつつ、修道制の成立という、古代キリスト教史研究上最もよく議論されてきた問題の一つに対して、新たな光を当てるのが本書の狙いである。
【目次より】
序言
凡例
第一部 修道制の成立をめぐる諸論点
第一章 「最初の隠遁者テーバイのパウルス」は実在したか?
第二章 『アントニオス伝』の史料価値をめぐって
第三章 無学な修道者アントニオス? 初期修道制研究の 動向
第四章 キリスト教修道制の成立とマニ教 エジプトとシリアの場合
第五章 エジプトにおけるキリスト教修道制の成宜をめぐる覚書
第六章 ローマ期エジプトにおけるキリスト教の普及をめぐって
第二部 キリスト教修道制の成立
第一章 『師父たちの金言』とポントスのエウアグリオス
第二章 古代末期におけるキリスト教修道制の成立
第三章 キリスト教修道制の成立をめぐる諸論点の詳論
補論 初期修道制と「主知主義」
第一章 グノーシス主義と修道制
第二章 なぜエウアグリオスは秘教的だったか?
註
文献略号表

中国の詩学認識 中世から近世への転換
創文社オンデマンド叢書
「中国詩学における唐宋変革」をテーマに掲げ、六朝・唐代より宋代に至る詩学認識、すなわち詩についての学問・認識の諸相を多角的に考察する。絵画や歴史記述といった異質なジャンルとの比較を行うとともに、文学作品のみならず、詩話、筆記、題跋、詩文集の序、更には歴史書や思想書などの文献を幅広く検討することで、長期に渡る全体的な転換過程を解明。作品論・作者論を主体とする従来の研究の枠組みを超えて、作品と読者の関係に焦点を当て、「いかに読まれたか」という受容論的視点から文学を論じた問題作。
【目次より】
序言 研究の視点・方法
資料の引用について
第一部 詩における風景と絵画
第一章 「天開図画」の系譜 六朝より宋代に至る風景認識
第二章 閏房の中の山水、あるいは瀟湘について 晩唐五代詞における風景と絵画
はじめに
第二部 詩と絵画
第一章 「詩中有画」をめぐって 宋代における詩と絵画
第二章 「詩中有画」と「宛然在目」 六朝・唐代における詩と絵画
第三章 「詩中有画」と「著壁成絵」 詩画同質論の唐宋変革
第三部 詩と現実
第一章 距離と想像 詩とメディア、メディアとしての詩
第二章 「形似」の変容 言葉と物の関係から見た宋詩の日常性
第三章 標題の詩学 宋代の「著題」論とその系譜
第四部 詩と歴史、詩と作者
第一章 文学の歴史学 宋代における詩人年譜、編年詩文集、そして「詩史」説
第二章 詩と「本事」、「本意」、ならびに「詩識」〓 作品の受容・読解過程におけるテクストとコンテクスト
第三章 作者の夢、読者の夢 宋代における詩の解釈学
第四章 「焚棄」と「改定」 宋代における別集の編纂あるいは定本の制定
第五部 詩における〈内部〉と〈外部〉、〈自己〉と〈他者〉
第一章 詩はどこから来るのか、それは誰のものか
第二章 「夢中得句」をめぐって
第三章 詩を拾得するということ、ならびに詩本、詩材、詩料 楊万里、陸滸を中心に
第四章 「売詩」、「売文」ということ
結語 詩的言語をめぐって
あとがき
初出一覧
引用書目

他者の甦り(長崎純心レクチャーズ) アウシュヴィッツからのエクソダス
創文社オンデマンド叢書
アウシュヴィッツは、過去となった悲劇の一例ではない。その全体主義の思想は、今日の人類的危機や破綻の原点となっている。それでは、この悲劇を脱出する思想的手がかりは、どのように求められるか。本書はまず、アウシュヴィッツの思想的温床を問うてギリシア哲学の系譜をたどり、他者の抹殺、すなわち人間の非人間化という問題が、アリストテレス・デカルト・ニーチェ・ハイデガーに至る存在神論に根差すことを明示する。その上でキリスト教の思索に目を転じ、古代教父ニュッサのグレゴリオスと中世の神秘家エックハルトの思想を考察、さらに旧約物語の解釈を通して、ヘブライ的伝統の中に他者に開かれてある人間の共生への手がかりを見出す。これまで著者が一貫して探求してきたヘブライ的脱在の思索を、初めて平易に書き下ろした講演。
【目次より】
「長崎純心レクチャーズ」について 片岡千鶴子
目次
序 現代の野蛮からの脱出
第一章 アウシュヴィッツとは何か
第一節 生をうばう
第二節 死をうばう
第三節 根源悪とは?
第二章 存在神論の歴史と現代におけるその根本的性格
第一節 アリストテレスから
第二節 デカルト
第三節 ニーチェ
第四節 技術学 総かり立て体制
第五節 技術的存在神論の超出にむけて
第三章 古代中世キリスト教思潮から
第一節 ギリシア教父ニュッサのグレゴリオス
第二節 西欧中世ドイツの神秘家マイスター・エックハルト
第四章 ヘブライ思想 エヒイェロギアの構築へむけて
第一節 アブラハム物語り 死と再生
第二節 出エジプト物語り ヤハウェとモーセをめぐって
第三節 ハヤトロギア・エヒイェロギア・存在神論
第四節 エリヤ物語り 沈黙の声と「イスラエルの残りの者」をめぐって
むすびとひらき
文献表
註
あとがき

経済学の新しい認知科学的基礎 行動経済学からエマージェンティストの認知経済学へ
創文社オンデマンド叢書
行動経済学の発展は、将来における認知諸科学と経済学のさらなる急接近を予感させるものである。しかし既存の行動経済学はもっぱら記述的分析を展開してきた関係上、現代認知科学の哲学的問いかけと既存の経済学の革新をリンクさせることに失敗している。本書はこの反省の上に立ち、認知科学の最先端を構成するエマージェンティストの視点から人間の文脈的認知の問題を考察し、既存の経済学が直面している理論的制約性を超える新たな方法論を構想する革新的野心作。
はじめに
序章
1 見えざる既存の知の壁 2 行動経済学の方法論をめぐって 3 本書の構成
第I部 批判:旅の前夜
第1章 記述論的行動経済学:概説
1 新古典派経済学と行動経済学 2 プロスペクト理論 3 アノマリー現象の記述論的分析 4 フレーミング効果と心の家計簿
第2章 行動経済学の理論的位置づけ:批判
1 呪縛からの脱出をめざして 2 フレーム問題について 3 ヒューリスティックスの分析:批判的検討 4 新古典派理論は規範理論たりうるか
第II部 模索:古い世界観からの旅立ち
第3章 自由論の再検討
1 新たな問題の提起 2 選択の自由:批判的考察 3 ハイエクの認識論・自由論
第4章 自由論の深化:内発性の考察
1 多相的な自由 2 自由の主体的条件 3 内発性とは何か:批判的展望 4 内発性研究の理論的意義 5 再説:人間=「マシン以上のもの」
第5章 能動性と意識ある心の起源
1 問題設定 2 アフォーダンス理論:展望 3 心物二元論を超えて 4 意識ある心の起源
第6章 意識ある心の機能
1 進化論的考察へ 2 内なる目と「天性の心理学者」 3 ドーキンスのミーム論 4 文化心理学的考察
第III部 見えてきたもの:旅の効用
第7章 社会的自我:意識の社会性と情報的機能
1 思索の旅のまとめと効用 2 ミー ドの社会的自我論 3 参照点依存型意思決定の認知的原型
第8章 自我と文脈的理性
1 文脈的理性と人間的賢さ:再論 2 理由に基づく選択モデル 3 社会的自我を原型とする意思決定理論
第9章 公正の経済モデルと行動経済学の立て直し
1 個人行動と個人間調整メカニズムの理由づけ 2 公正の経済学:批判的展望 3 公正概念と経済社会の調整メカニズム 4 行動経済学の立て直し:公正概念とプロスペクト理論
付論 認知脳科学の発展とニューロ・エコノミクス展望と批判
まとめとして:経済学の新しい展開をめざして
参考文献

宮田光雄思想史論集2:キリスト教思想史研究
創文社オンデマンド叢書
聖書と信仰に関する重要な課題、キリスト教と国家、政治との関わりなど、キリスト教をめぐる諸問題に社会科学的・問題史的視点を加味して多角的に掘り下げた学際的論考一二篇。
【目次より】
I
1 論争の中の《山上の説教》 解釈の歴史とその諸類型
2 予定説と万人救済説 宗教改革者、内村鑑三、カール・バルト
3 宗教改革の精神と現代
4 現代社会における教会革新
5 ローズンゲンの精神史
II
6 国家と宗教
付論 アウグスティヌスの政治宗教批判
7 自由への大いなる歩み M・L・キングの思想と行動に学ぶ
8 十字架とハーケンクロイツ ドイツ教会闘争の政治学
付論 祈ることと正義を行なうこと
9 宗教政党と政教分離 西ドイツの場合
10 社会主義社会の国家と教会 東ドイツの場合
付論 東ドイツ末期の国家と教会
11 無神論社会で《非宗教的》に生きる 東ドイツのボンヘッファー像
終章 エキュメニカルな一致を求めて 『義認の教理に関する共同宣言』をめぐって
あとがき 解説と解題に代えて

近世都市社会の「訴訟」と行政
創文社オンデマンド叢書
江戸時代、地方の人々が裁判のために多くの時間と労力を割いたことは数々の史料によって窺い知られる。しかし江戸の町人については、彼らが多くの訴えを提起したという司法統計は存在するものの、具体的にどのような訴訟制度が用意されていたのかこれまで充分には究明されてこなかった。本書は訴訟・許認可・処分などの措置を公権力へ求める制度「訴願」に焦点をあて、「吟味筋」(刑事裁判)「出入筋」(民事裁判)との関連や異同を明らかにし、近世都市社会の訴訟制度の特質をあざやかに描き出す。「裁判史料」のみならず、「町方史料」、「行政史料」をも駆使して近世社会の司法と行政に新たな光をあてた画期作。
【目次より】
序章 先行研究の整理と本書の課題
第一章 「訴願」手続きの整備と都市行政の展開
第一節 享保期の「訴願」手続き規定と都市行政 第二節 寛政の町法改正と「訴願」手続きの変更 第三節 町法改正と普請奉行管轄下の行政手続き 第四節 天保期における行政手続きの変更
補論一 「訴願」手続きの成立とその変遷
第一節 「欠落」に関する訴願手続き 第二節 「検使見分」に関する訴願手続き 第三節 「捨子」に関する訴願手続き
補論二 江戸の「訴訟」制度と公事宿、町役人の機能
第一節 「在方」と公事宿の関係と先行研究の再検討 第二節 江戸の「訴訟」と町役人の機能
第二章 「訴願」に対する町奉行所の対処方法とその特質 「内寄合」と「見分」を中心に
第一節 「御内寄合物一件」にみる「内寄合」と「見分」 第二節 「見分」と「内寄合」の過程における諸問題
第三章 町人の「訴願」と町奉行所・町年寄の利害調整機能 「正宝録」の「訴答之部」の再検討を通じて
第一節 「正宝録」の「訴答之部」の具体的内容 第二節 「坂本町旧記」と「江戸橋広小路井最寄旧記」にみる「返答書」関係の記事 第三節 訴願の「審理」における町奉行・町年寄の利害調整機能
第四章 「町触願」とその裁定をめぐる幕府の原則
第一節 「正宝録」の「訴答之部」にみる「町触流し願」 第二節 「町触願」の否定と「被仰渡」「申渡」 第三節 「申渡」「町触」「惣触」の触れ出しに関する審議
補論三 「訴願」の終結と「願下ケ」手続きの特色
第一節 「願下ケ」手続きの実態 第二節 「市中取締類集」諸願筋下ケ之部の内容
第五章 月行事の「訴願」と都市社会の行政
第一節 月行事の「訴願」と都市における「管轄権」や行政「管轄」の問題 第二節 月行事による町政の運営をめぐる訴願 第三節 月行事による都市行政への要望に関する訴願
終章 近世都市社会における「訴訟」と行政の特色
あとがき

日朝交易と対馬藩
創文社オンデマンド叢書
日朝通交貿易における対馬藩の役割を、「貿易立藩」独自の経済思想、経営戦略、外交、人材養成などの諸側面から浮び上がらせた労作。巻末に日・韓に複雑に所蔵される日朝関係史研究の基礎史料『分類紀事大綱』全項目の内容と収載先を明示した附録を付す。
【目次より】
第一章 対馬藩経済思想の確立
はじめに 問題の所在
第一節 日朝交易銀問題と雨森芳洲の役割
一 交易銀の変遷と人参代往古銀 二 新井白石の登場 三 対馬藩の危惧 四 雨森芳洲の江戸行き
第二節 白石・芳洲論争の展開
一 史料について 二 第一回対面(正徳四年十一月二十二日) 三 第二回対面(正徳四年十一月三十日) 四 第三回対面(正徳五年四月十六日)
第三節 「芳洲理論」構築の過程
一 「芳洲理論」成立の背景 二 正徳元年(一七―一)「芳洲理論」の内示 三 「覚書」と「日本朝鮮和好再興之次第」
第四節 「芳洲理論」の確立
一 「土地」の意味するところ 二 『隣交始末物語』の役割 三 交渉の成果 四 「芳洲理論」の活用
おわりに
第二章 朝鮮米輸入と「倭館桝」
はじめに
第一節 倭館への米搬入と和水の弊害
第二節 「加棒」撤廃要求と訳官のエ作
一 訳官提出文書 二 「加棒」撤廃要求をめぐる朝鮮側の動向 三 偽造文書をめぐる対馬の反応
第三節 朝鮮桝と日本桝
一 単位と計量法の相違 二 朝鮮桝の実寸と換算法 三 対馬藩の特殊用語と勘定仕法
第四節 「倭館桝」制度の成立
一 朝鮮の米計量慣習と「倭館桝」の必要性 二 「倭館桝」の変遷 三 宝永期(一七〇〇年代)「倭館桝」の実態 四 桝調査後の処置
おわりに
第三章 朝鮮語通詞の育成
はじめに
第一節 対馬の通詞動員数
第二節 通詞の家系 「六十人」商人との関連
第三節 通詞養成所の設置
一 通詞養成の必要と目的 二 稽古生募集と応募者 三 教師たち 四 稽古生の評価とその後
第四節 通詞中の改革
おわりに 異文化間の相互理解
第四章 近世後期日朝貿易の実態
はじめに
第一節 藩財政に占める日朝貿易
第二節 輸出入品の調達と販売
第三節 幕末期私貿易四品目の輸入と販売
第四節 「外向仕入口」による輸出銅割当と輸入実績
第五節 倭館貿易商人の活動
おわりに
第五章 宗家文書『分類紀事大綱』について
はじめに
第一節 編纂事業の開始
第二節 頭取役越常右衛門と附録の完成
第三節 『分類紀事大綱』の役割
終章 あとがきにかえて
初出論文一覧
附録 『分類紀事大綱』総合目録

宮田光雄思想史論集7:同時代史論
創文社オンデマンド叢書
1960年代から今日まで、総合雑誌、その他のために執筆した時評的論説の集成。たんなる状況批判にとどまらず、比較思想史的観点から原理的分析を試み、低きに流れる世の潮流に鋭く警鐘を鳴らす。
【目次より】
一九六〇年代
1 宗教政党と民主主義
2 現代日本の政治神話
3 デモクラシーの国民教育
4 現代デモクラシーの思想と行動
付論 制度を踏破する《長征》
一九七〇年代
5 良心的兵役拒否の思想
6 国家と宗教 ヤスクニ問題の思想的文脈
7 祖国のための死とは何か
一九八〇年代
8 いま日本人であること
9 新しい生き方を求めて
10 希望としての教育 若き教師たちへ
一九九〇年代
11 国家と宗教・再論 比較思想史の視点から
二〇〇〇年代
12 「日の丸・君が代」を考える 思想・良心・信教の自由の観点から
13 日本国憲法前文を読み直す
あとがき 解説と解題に代えて

独仏関係と戦後ヨーロッパ国際秩序 ドゴール外交とヨーロッパの構築 1958-1969
創文社オンデマンド叢書
今なお傑出した外交家として歴史に名を刻む仏大統領ドゴールの、政権復帰から退陣までのヨーロッパ秩序再編構想とその国際的反応を分析する本書は、欧州統合と大西洋同盟の二つの国際秩序において「ヨーロッパ」が立ち上がる様子を活写する。膨大な量の仏・独・米・欧州共同体等の一次史料から見えてくるのは、冷戦と分断という秩序を書き換え、組み直し、そして突き破ろうとしたアデナウアー、ケネディ、ブラントなどの思惑の交錯・衝突と、冷戦・欧州統合・脱植民地化・独仏関係が連関しながら展開される多国間外交の姿である。その外交の末に我々が目にするのは、冷戦構造を侵食する重層的なメカニズムの形成であった。従来の外交史研究では捉えきれなかった、国民国家を超える政治空間の構築を解明する、「ヨーロッパ構築史」の画期的な試み。第25回渋沢・クローデル賞本賞受賞。
【目次より】
序章 戦後ヨーロッパ国際関係史の再構築
第一部 「大構想」の実現を目指して 一九五八─一九六三:ドゴール=アデナウアー時代のヨーロッパ国際政治
第一章 アングロサクソン、アルジェリア、世界政策 一九五八─一九六〇:ドゴール政権復帰後のフランス外交
第二章 政治同盟交渉 一九五九─一九六二
第三章 米仏二つの大構想と西ドイツ外交 一九六一─一九六二
第四章 エリゼ条約の成立一九六二─一九六三
第二部 「大構想」後のヨーロッパ国際政治の危機とその克服 一九六三─一九六九:デタントと共同市場
第五章 ドゴール外交の「頂点」 一九六三─一九六六:自主外交とデタントヘの転回
第六章 ヨーロッパ・デタント 一九六三─一九六八:西ドイツによる東西関係変革の模索
第七章 ヨーロッパ統合の危機 一九六三─一九六五
第八章 ヨーロッパ共同体の定着 一九六五─一九六九
終章 統合されたヨーロッパと多極化された世界
あとがき
註
史料・参考文献一覧

宋詞研究(南宋篇)(東洋学叢書)
創文社オンデマンド叢書
宋詞は中国文学史において韻文文学として重要な地位を占めるが、わが国では唐詩と比べこれまで関心が薄かった。本書は前著『宋詞研究 唐五代北宋篇』に続き、南宋の詞を総合的に考究する。北宋より南宋への詞の変遷を概述し、かつ南宋詞に二つの流れ、すなわち現実派・士大夫の詞と典雅派・文人の詞があり、それぞれが北宋に淵源を持つことを指摘。その上で代表的な四人の詞人を取り上げ、それぞれの出身経歴、詞の特色、後世の評価、詞集の伝来などを考察する。前著と併せ宋詞の全貌を解明する、本邦初の学術的論著。恩賜賞・日本学士院賞受賞。
【目次より】
第一章 綜論
第一節 北宋詞と南宋詞
第二節 現実派、士大夫の詞
第三節 典雅派、文人の詞
第二章 辛稼軒詞論
第一節 官歴について
第二節 稼軒詞の諸相
一 稼軒の交遊とその詞
二 閑居の詞
三 農村詞
四 晩年の感懐
第三節 歴代諸選本における稼軒詞
第三章 姜白石詞論
第一節 「営行」と「別派」
第二節 その生涯と著述
第三節 周邦彦・呉文英と白石
第四節 周済『宋四家詞選』における白石詞
第五節 宋代の詞選における白石詞
第四章 呉夢窗詞論
第一節 出身と経歴
第二節 詞集の諸本
第三節 交遊と作詞
第四節 自度曲について
第五節 周邦彦と夢窗
第五章 周草窗詞論
第一節 家系と経歴およひ詞集
第二節 早期の詞 『蘋洲漁笛譜』
第三節 晩年の詞
附論
附論一 楊柳枝詞考
一) はじめに
二) 白居易と「楊柳枝」
三) 盛唐教坊の「楊柳枝」
四) 栄府「折楊柳」と「楊柳枝」
五) 中唐以後の「楊柳枝」
附論二 陶枕詞考 『全宋詞』補遺
一) はじめに 雅詞と俗詞
二) 白鶴美術館所蔵の陶枕
三) 陶枕詞の繹文
四) 詞牌「七娘子」について
五) 詞からみた陶枕の製作時期
六) もうひとつの陶枕
附論三 文人之最 万紅友事略
一) はじめに 文人とは
二) 万紅友略伝
三)『詞律』挙例その一 「三台」
四)『詞律』挙例その二 「醜奴児近」
五)『〓磯砕錦』について
六)『詞律』と『欽定詞譜』
附録
一の一 日本傅存《漱玉詞》二種
一の二 闊於《汲古閣未刻詞》知聖道斎本的討論(王水照・村上哲見)
二 日本収蔵詞籍善本解題叢編類
三 繹詞二題
あとがき