潜伏キリシタン 江戸時代の禁教政策と民衆

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潜伏キリシタン 江戸時代の禁教政策と民衆

センプクキリシタンエドジダイノキンキョウセイサクトミンシュウ

講談社選書メチエ

幕藩体制下に弾圧されたキリシタンは、明治政府によって解放された――。このように思われている「日本社会の近代化」は、歴史の真実なのだろうか。そもそも、「キリシタン」とは何なのか。非キリシタンであったにもかかわらず、領主の苛政に一揆を起こした民衆を「切支丹」として弾圧した事例や、問題化を避けるために、穏健なキリシタン百姓を黙認した事例などを取り上げ、歴史と宗教のかかわりに新しい視野を提供する。


幕藩体制下の禁教政策により、厳しく弾圧されてきたキリスト教徒=キリシタンは、江戸幕府が倒れ、明治新政府下では信仰の自由が認められ、解放された――。一般にこのように思われている「日本社会の近代化」は、歴史の真実といえるだろうか。そもそも、「キリシタン」とは何なのか。従来のような「ひとつの村が、近世初期から明治まで、ひたすら信仰を守り続けた隠れキリシタン」といった平板な理解に再考を促す。
例えば、非キリシタンであったにもかかわらず、領主の苛政への反発から一揆を起こした民衆を「切支丹」として弾圧した事例や、一方で、藩内のキリシタンの存在を隠すために、問題行動を起こさないキリシタン百姓を藩が黙認していた事例、また、キリスト教とはかけ離れた民間信仰でありながら「切支丹」とされた事例などを取り上げる。これらの事例を見ていくと、西欧語の訳語である「宗教」の名で人々の信仰が管理・統制されるようになった近代が、近世よりも解放されているとはいいきれないという。
「キリシタン」をめぐる宗教政策の変化と実態を丹念に探り、近世における宗教観、歴史と宗教のかかわりに新しい視野を提供する。


目次

序章 キリシタンを見る視座
第一章 「伴天連門徒」から「切支丹」へ
1 キリシタンの登場と近世日本の統一権力
2 「伴天連門徒」という認識
3 島原天草一揆の性格
4 宗門改制度の成立
5 踏絵の二面性
第二章 「異宗」「異法」「切支丹」
1 異端的宗教活動への規制
2 浦上崩れと天草崩れ
3 異端的宗教活動という枠組み
第三章 島原天草一揆と「切支丹」の記憶
1 近世社会における異端の象徴
2 「切支丹」イメージの貧困化
3 近世社会を相対化する手段
第四章 異端的宗教活動から「切支丹」への転回
1 「切支丹」の登場
2 「切支丹」たちの人生
3 京阪「切支丹」一件の位置
第五章 信仰共同体と生活共同体
1 潜伏キリシタンの信仰共同体
2 潜伏キリシタンの生活共同体――天草の場合
3 潜伏キリシタンの生活共同体――浦上の場合
4 属性の重層性
第六章 重層する属性と秩序意識
1 キリシタン禁制と「仁政」
2 信仰隠匿から信仰表明への転回
3 村社会における宗教的確執
4 キリスト教は解禁されたか
終章 宗教は解放されたか?

書誌情報

紙版

発売日

2014年05月10日

ISBN

9784062585774

判型

四六

価格

定価:1,815円(本体1,650円)

通巻番号

574

ページ数

256ページ

シリーズ

講談社選書メチエ

著者紹介

著: 大橋 幸泰(オオハシ ユキヒロ)

1964年、新潟県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院文学研究科史学(日本史)専攻博士課程後期課程満期退学。一橋大学非常勤講師、聖心女子大学非常勤講師を経て、現在、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。博士(文学)。専門は日本近世史。著書に、『キリシタン民衆史の研究』(東京堂出版)、『検証 島原天草一揆』(吉川弘文館)などがある。

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