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天皇と宗教
テンノウトシュウキョウ
大和王権の大王祭祀、皇祖神を祀る伊勢神宮や大嘗祭の起源を究明。古代律令制による神祇制度の変遷を辿り、宮中祭祀の諸相を解説。大日如来と一体化する即位灌頂を行った中近世から、明治維新による変貌、国体を結びついた戦前・戦中、そして敗戦で象徴とされるまで、天皇の核心を追求する。
■「神事を先とし、他事を後とす」
大和王権による大王祭祀から古代律令制の神祇制度、皇祖神を祀る神宮祭祀やいまも続く宮中祭祀まで、古代より天皇は神事と密接な関わりをもってきた。645年の乙巳の変でも「まず神祇を鎮めて、後に政事をはかるべし」との奏上があり、神に幣帛を奉るため使いが派遣された。鎌倉時代の順徳天皇が著した『禁秘抄』には「禁中の作法は神事を先とし、他事を後とす」とあり、江戸時代の後水尾天皇の教訓書にも「敬神は第一にあそばし候こと」と記されていた。神事優先の伝統がどのように築かれたのか、その変遷をたどり究明する。
■天皇と仏教との深い関わり
6世紀に受容され、国家護持の役割を担った仏教は、平安時代になると個人としての天皇を守る役割をもつようになり、祈願や追善を行う御願寺が建立された。天皇自身の信仰も深められ、神事だけでなく仏教色の強い祭儀も営まれた。なかでも即位時に行われた即位灌頂という密教儀礼は、鎌倉時代の伏見天皇に始まり、幕末の孝明天皇まで続く。また南北朝期の後光厳天皇から孝明天皇まで歴代天皇の葬儀は京都の泉涌寺でとり行われ、後水尾天皇以降、江戸時代の天皇14人がここに埋葬された。天皇家と仏教の密接な関係を詳述する。
■激変した近代以降の天皇と宗教
幕末には「古」を尊ぶ国学、水戸学が興り、王政復古、神武創業を謳う明治維新を迎え、神仏分離の嵐が吹き荒れる。皇族から僧侶を追放、宮門跡は還俗、御所内の仏間・御黒戸も宮中から排除された。明治天皇の即位式ではもはや即位灌頂はなくなり、仏教色は一掃される。やがて行き過ぎが軌道修正され、師号宣下や門跡号も復活したが、国家と宗教の問題はさまざまな問題を提起した。神道は宗教か。皇族に信教の自由あるのか。宮中祭祀は宗教か。政教分離と民主化がもたらした皇室制度の整備とは。戦前・戦中の現人神から敗戦で象徴とされるまで、激変した天皇と宗教の関係を追究する。
目次
第一部 「敬神」と「信心」と――古代~近世 小倉慈司
序
第一章 国家装置としての祭祀
1.大嘗祭の成立
2.令制前の大王の祭り
3.律令制と地方神祇制度の整備
4.伊勢神宮と斎宮
5.神社制度の変化
6.宮中祭祀の諸相
第二章 鎮護国家と玉体安穏
1.新たなイデオロギーの導入
2.王法と仏法
3.天皇と出家
第三章 「神事優先」と「神仏隔離」の論理
1.「神事優先」の伝統
2.「神仏隔離」の成立
3.神祇から仏教へ
第四章 天皇の倫理――象徴天皇制の原像
1.内省する天皇
2.皇室宗教行事の変容
第五章 神武天皇の末孫として
1.宮中祭祀と京の神社
2.皇室の葬礼と寺院
第二部 宗教と向き合って――十九・二十世紀 山口輝臣
第一章 祭政一致の名のもとに――十九世紀
1.天皇とサポーター
2.祈りの力
3.学者の統治
4.維新と、その後
第二章 宗教のめぐみ――十九世紀から二十世紀へ
1.キリスト教との和解
2.第三の道
3.明治天皇の「御敬神」
4.天皇のいる国家儀礼
第三章 天皇家の宗教
1.皇族に信教の自由はあるのか?
2.宮中に息づく仏教
3.天皇に宗教なし?
第四章 国体の時代――二十世紀前半
1.天皇に絡みつく神社
2.天皇制VS.国体
3.兄の格律、弟たちの反抗
4.国体を護持し得て
第五章 天皇制の果実――二十世紀後半
1.国体の行方
2.象徴を探して
書誌情報
紙版
発売日
2011年09月27日
ISBN
9784062807395
判型
四六変型
価格
定価:2,860円(本体2,600円)
ページ数
422ページ
著者紹介
(おぐら・しげじ) 一九六七年生まれ。東京大学文学部人文社会系研究科博士課程修了。宮内庁書陵部編修課主任研究官を経て、現在、国立歴史民俗博物館准教授。専攻は日本古代史。主な共編著に『近世朝廷と垂加神道』(ぺりかん社)、『延喜式 上』(集英社)などがある。
(やまぐち・てるおみ) 一九七〇年生まれ。東京大学文学部人文社会系研究科博士課程修了。高知大学人文学部を経て、現在、九州大学人文科学研究院准教授。専攻は日本近代史。主な著書に、『明治神宮の出現』(吉川弘文館)、『明治国家と宗教』(東京大学出版会)などがある。
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