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大いなる小屋 江戸歌舞伎の祝祭空間
オオイナルコヤエドカブキノシュクサイクウカン
- 著: 服部 幸雄

櫓、看板、積物、衣裳、橋、桟敷、幕、鼠木戸、船、紋……神と魔が出現する「戯場国(けじょうこく)」を生む美意識と心性を徹底解明する最高・最良の劇場論!
江戸時代と現代の歌舞伎との断絶。その最たるものが、劇場空間と社会的位置づけの違いである。辺境にある「悪所」は噎(む)せ返るほどの祝祭性を発散し、役者と観客は渾然一体となって別天地に酔った。歴史学、民俗学、人類学などの知見も総動員し、江戸時代の芝居小屋を活写再現する。「紙の上に劇場を建てた」(渡辺保)と評された劇場空間論の決定版。
老中水野忠邦は……劇場を指して「大造ノ小屋」と称している……為政者の命名による「大造ノ小屋」とは「物」(建物)としての劇場を指していた。しかし、近世都市民の精神史にあって、この「小屋」は、「物」の大きさをはるかに超える大きな存在であった。彼らは、その独特な空間において役者の肉体が創り出す、目くるめく劇的宇宙を幻想し、憧憬し、体験することにより、これを「偉大なる小屋」に転換せしめた。それは「大いなる小屋」の名で呼ぶことこそもっともふさわしかった。(「芝居小屋論序説」より)
※本書は、1994年に刊行された『大いなる小屋――江戸歌舞伎の祝祭空間』(平凡社ライブラリー)を底本にし、新たに雑誌『歌舞伎 研究と批評』(歌舞伎学会、発売・雄山閣)に収録された対談を付録として追加しました。
- 前巻
- 次巻
目次
芝居小屋論序説
1
都市の中の芝居町
櫓
積物・看板・提灯
鼠木戸
桟敷
上手・下手
橋・道
船
幕
稲荷町
2
役者の紋
役者の名
見得
3
讃州金毘羅大芝居訪問記
現代につくりたい「芝居小屋」
書誌情報
紙版
発売日
2012年05月12日
ISBN
9784062921114
判型
A6
価格
定価:1,540円(本体1,400円)
通巻番号
2111
ページ数
448ページ
シリーズ
講談社学術文庫
初出
1994年に刊行された「大いなる小屋―江戸歌舞伎の祝祭空間」(平凡社ライブラリー)を底本にし、新たに雑誌「歌舞伎 研究と批評」(歌舞伎学会、発売・雄山閣)に収録された対談を付録として追加した。
著者紹介
服部幸雄(はっとり・ゆきお) 1932-2007。名古屋大学卒業。千葉大学名誉教授。歌舞伎、芸能、文化史研究家。 著書に、『歌舞伎成立の研究』『変化論 歌舞伎の精神史』『市川団十郎』『歌舞伎のキーワード』『江戸歌舞伎』『江戸の芝居絵を読む』『歌舞伎歳時記』『江戸歌舞伎の美意識』『歌舞伎ことば帖』 『市川團十郎代々』『江戸歌舞伎文化論』『歌舞伎の原郷 地芝居と都市の芝居小屋』 『宿神論 日本芸能民信仰の研究』など多数ある。