
マイページに作品情報をお届け!
日本人の死生観
ニホンジンノシセイカン
- 著: 五来 重

仏教学に民俗学の方法を接続し、日本人の宗教を深く掘り下げた五来重。本書は、厖大な著作を遺した宗教民俗学の巨人の「庶民宗教論」のエッセンスを知るのに最適な1冊である。
日本人の死生観とは、すぐに連想される「ハラキリ」や殉死など、武士道的なものだけではない。貴族や武士の死生観、いわば「菊と刀」ばかりでなく、「鍬」を持つ庶民の死生観は、一体どんなものだったのか。本書では、教祖・教理・教団から成る西洋起源の宗教や、文献研究と哲学的思弁にこだわる仏教学ではなく、仏教伝来以前からの霊魂観や世界観が息づく根源的な「庶民の死生観」を明らかにしていく。
著者によれば、庶民にとってあらゆる死者は一度は怨霊となる。それは鎮魂によって「恩寵をもたらす祖霊」に変えなくてはならない。そのための信仰習俗や儀礼の有様を探索し、日本列島を歩きに歩いた著者の視線は、各地に残る風葬や水葬の風習、恐山のイタコと円空仏、熊野の補陀落渡海、京都の御霊会、沖縄のイザイホウ、遠州大念仏、靖国神社などに注がれる。
巻末解説を、『聖地巡礼』『宗教と日本人』の著者・岡本亮輔氏(北海道大学准教授)が執筆。〔原本:角川書店、1994年刊〕
ⒸTatsuko Yoshida
- 前巻
- 次巻
オンライン書店で購入する
目次
1
日本人の死生観
2
日本人と死後の世界
みちのくの神秘・恐山 その歴史と円空仏
口寄せ巫女
3
怨霊と鎮魂
4
死と信仰――補陀落渡海の謎
古来の葬送儀礼から見た現代の葬儀と葬具
仏檀
5
墓の話
解説(岡本亮輔)
書誌情報
紙版
発売日
2021年10月14日
ISBN
9784065257494
判型
A6
価格
定価:1,430円(本体1,300円)
通巻番号
2687
ページ数
288ページ
シリーズ
講談社学術文庫
電子版
発売日
2021年10月13日
JDCN
06A0000000000379789S
初出
本書の原本は1994年、角川書店より刊行されました。
著者紹介
1908年、茨城県久慈町(現・日立市)生まれ。東京帝国大学でインド哲学を専攻した後、京都帝国大学で史学を学ぶ。高野山大学教授、大谷大学教授を歴任。文学博士。専攻は仏教民俗学。著書に『高野聖』『仏教と民俗』『円空と木喰』『山の宗教 修験道案内』『踊り念仏』『葬と供養』『善光寺まいり』など多数。講談社学術文庫に『熊野詣』『石の宗教』『日本の庶民仏教』がある。1993年没。
オンライン書店一覧
関連シリーズ
-
蜘蛛 なぜ神で賢者で女なのか
-
日本の俗信
-
死と生の民俗
-
日本動物民俗誌
-
「大東亜民俗学」の虚実
-
風景の生産・風景の解放
-
弥勒 宮田登
-
今を生きる思想 宮本常一
-
包み結びの歳時記
-
女神誕生
-
世界の音 楽器の歴史と文化
-
女人禁制
-
埋もれた日本地図
-
日本の古式捕鯨
-
言霊の民俗誌
-
土葬の村
-
日本人の原風景 風土と信心とたつきの道
-
民俗学
-
神主と村の民俗誌
-
おとこ・おんなの民俗誌
-
江戸東京の庶民信仰
-
ニッポンの奇祭
-
氏神さまと鎮守さま 神社の民俗史
-
神々の精神史
-
言霊と他界
-
故郷七十年
-
滑稽の研究
-
「怪異」の政治社会学
-
日本古代呪術
-
金太郎の母を探ねて
-
霊山と日本人
-
魚の文化史
-
地名の研究
-
東北学/もうひとつの東北
-
民間暦
-
物語の中世 神話・説話・民話の歴史学
-
江戸滑稽化物尽くし
-
憑霊信仰論 妖怪研究への試み
-
明治大正史 世相篇
-
民俗学の旅
-
魔の系譜
-
年中行事覚書
-
日本藝能史六講
-
日本の鬼 日本文化探求の視角
-
東北学/忘れられた東北
-
生態と民俗 人と動植物の相渉譜
-
桃太郎の母
-
庶民の発見
-
蛇
-
子守り唄の誕生
-
山の神 易・五行と日本の原始蛇信仰
-
熊野詣
-
金枝篇
-
境界の発生
-
早川孝太郎 花祭
-
花の民俗学
-
塩の道
-
ももんがあ対見越入道 江戸の化物たち
-
ふるさとの生活
-
ニライカナイから届いた言葉 声に出して味わいたいウチナーグチ