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往生要集入門 悲しき者の救い
オウジョウヨウシュウニュウモンカナシキモノノスクイ
- 著: 石田 瑞麿

辛い現世を終えて、来世こそは阿弥陀仏のすまう極楽浄土に生まれたい――貴賤を問わず日本で幅広く、長きにわたって信仰されてきた浄土思想。すべては平安時代、一人の僧によって著されたこの書物から始まった。源信なくしては、法然も親鸞もない。
『往生要集』の訳・校注で知られる著者が、歴史的背景に始まりゆるやかに『往生要集』の構成に沿いつつ、親しみやすい現代語訳を随所に示しながら、源信の教えの真髄を平易に解き明かす。
「予が如き頑魯(がんろ)の者(わたしのような愚かなもの)」と自らを顧みた源信(942-1017年)。智慧や才にめぐまれた一握りの人ではなく、自身を含む多くの罪深い「悲しき者」が救われる道を模索した『往生要集』が、日本の思想・信仰に与えた影響ははかりしれない。
往生を目指すべき理由として描かれる等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄、阿鼻地獄など数々の地獄も、経典と源信自身の言葉を交えながら、恐ろしい責め苦が生々しく描き出され、それに対応する極楽の姿、そして現代人の想像をはるかに超える仏の姿もあざやかに示される。地獄、極楽、さらに仏の姿は、信仰のみならず、のちの思想、文学、芸術にも大きな影響を及ぼした。『源氏物語』や『栄華物語』、『梁塵秘抄』など、のちの文学作品にみられる『往生要集』の影響も示唆される。
『往生要集』は「集」というその名が示す通り、『無量寿経』、『観無量寿経』、『阿弥陀経』の浄土三部経をはじめ数多の経典や経典の注釈書の引用によって、往生の要諦を説いたものである。膨大多岐にわたる出典についての解説は、仏教学の泰斗たる著者ならではのものであり、源信が数々の経典のなかから何を重要としていたのかが、次第に浮かび上がってくる。
仏の姿を念じる「観相の念仏」を自らの思想の核とした源信が、「南無阿弥陀仏」と仏の名を口で称えるいわゆる「念仏」、「称名の念仏」に託したものとは何だったのか――。浄土思想の原点に触れる一冊。(原本:『悲しき者の救い――源信『往生要集』』筑摩書房(仏教選書)、1987年)
【本書の内容】
はしがき
第一章 『往生要集』の成立
第二章 迷いの世界
第三章 浄土へのねがい
第四章 正しい念仏
第五章 悲しき者の救い
源信略年譜
あとがき
付 参考文献について
選書版あとがき
解 説(岩田文昭)
ⒸTakashi Ishida
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目次
はしがき
第一章 『往生要集』の成立
第二章 迷いの世界
第三章 浄土へのねがい
第四章 正しい念仏
第五章 悲しき者の救い
源信略年譜
あとがき
付 参考文献について
選書版あとがき
解 説(岩田文昭)
書誌情報
紙版
発売日
2024年02月15日
ISBN
9784065348437
判型
A6
価格
定価:1,210円(本体1,100円)
通巻番号
2806
ページ数
256ページ
シリーズ
講談社学術文庫
電子版
発売日
2024年02月14日
JDCN
06A0000000000757691Q
初出
本書の原本『悲しき者の救い――往生要集〈源信〉』は1967年に筑摩書房から刊行され、1987年に『悲しき者の救い――源信『往生要集』』として再刊されました。本書は1987年版を底本とし、『日本仏教思想研究』第四巻「浄土教思想」(法蔵館 1986年)所収の「『往生要集』――悲しき者の救い」を参照しました。
著者紹介
1917-99年。東京帝国大学文学部印度哲学梵文学科卒業。文学博士(東京大学)。東海大学教授などを歴任。主な著書に『鑑真』(1958年)、『日本仏教における戒律の研究』(1963年)、『梵網経』(1971年)、『日本仏教史』(1984年)、『教行信証入門』(1989年)、『日本人と地獄』(1998年)、訳書に『親鸞全集』全4巻+別巻1(1985-87年)、『往生要集』(1992年)ほか多数。
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