文芸(単行本)作品一覧

雲雀の巣を捜した日
雲雀の巣を捜した日
著:車谷 長吉
文芸(単行本)
すさまじき小説家が作り事でない想いを綴り忌憚なく心の内を覗かせる! 私小説を断筆するとした「凡庸な私小説作家廃業宣言」、「私の思想」から「死のやすらぎ」、そして「言葉について」……。作家の覚悟と矜持を示したエッセイ集。 ーー私は三十八歳でふたたび東京へ来てから二十一年、ほとんどこの市九郎のごとき懺悔の執念で、私の私(わたくし)小説を書いて来ました。懺悔と言うのは、人間としてこの世に生れて来たことが、すでにそれだけで重い罪であるからです。(「凡庸な私小説作家廃業宣言」より)
電子あり
おまかせハウスの人々
おまかせハウスの人々
著:菅 浩江
文芸(単行本)
あるのだろうか――理想の家族、心安らぐ家 私たちは、「家族の肖像」を、どんな色に染めようとしているのか。近未来の日常を描く待望の作品集。 「純也の事例」 里親制度でやってきた純也は従順で賢く、夕香は親子ごっこに溺れてしまった。純也は、ユニバーサライズ分科会の早期返還の対象となり、別れの日は意外に早くやってきた……。 「ナノマシン・ソリチュード」 小枝子は、モニタに左手の小指を突っ込んでナノマシンのチェックをする。必死で働いてくれるものがある限り、孤独じゃない。サビシクナイ。 「おまかせハウスの人々」 掃除、洗濯、買い物まで目配りのきいた全自動住宅に住むモニターたち。あとは「おまかせ」で幸せを手にいれることができる。多少邪魔くさくても設定をいじり直せば……。 ほか、菅マジックが冴えわたる6編収録。
ポテト・スープが大好きな猫
ポテト・スープが大好きな猫
著:テリ-・ファリッシュ,絵:バリ-・ル-ト,訳:村上 春樹
文芸(単行本)
村上春樹が選んだ魅力的な猫の絵本! この冬、あなたの心を暖めるために。あなたの大好きな人へ贈るために。 この『ポテト・スープが大好きな猫』は、僕がある日アメリカの街を散歩していて、偶然みつけた絵本です。ぱらぱらとページをめくり、「うん、これはいいや」と思って買って帰り、机に向かってそのまま翻訳してしまいました。この本は、年取った雌猫好きの読者のみなさんには、きっと喜んでいただけるのではないでしょうか。――<あとがきより>
カーの復讐
カーの復讐
著:二階堂 黎人
文芸(単行本)
古代エジプトの秘宝≪ホルスの眼≫という名のメダリオン。この素晴らしさに心魅かれる男がいた。その名は怪盗アルセーヌ・ルパン。彼はそのお宝を頂戴するために、発掘者ボーバン博士に近づくが、博士の居城≪エイグル城≫で、ルパンを待ち受けていたのは奇妙な連続殺人事件だった。暗号文を手に死んだ老婆、財宝を荒らしたボーバン家への、生霊≪カー≫の復讐を口にする謎のエジプト人、城に出没するミイラ男、完全なる密室に置かれた脅迫状、そしてあらたに発生した連続殺人……。数々の事件を解決したルパンの頭脳をもってしても説明不可能な事件が続発し、人々を恐怖へおとしいれていく。果たしてこの前代未聞の難事件の犯人は誰なのか? ルパンはプライドをかけて事件に挑む!!
死の谷’95
死の谷’95
著:青山 真治
文芸(単行本)
暴力と死。その気配はエロスの霧となり意識を微睡みへ誘う。逃亡した獣だけが辿り着く場所、水底深く、暗闇の先に――。闇の中でシャーマンは、拒まれた者たちの歌を奏でる。生物の存在すらをも許さない、「死の谷」のほとりで。 喪失と孤独、その先の希望。人、絆の物語。 青山真治の新境地。「人の願い」その究極の姿を描き出した傑作長編小説。 「仮に次郎としておこう。次郎は何もしていない。少なくともいまは。」ある日、次郎のもとを兄が訪ねる。ある時期から疎遠になってしまった男。兄は、自分の妻の浮気調査を次郎に依頼する――。嫂(あによめ)の後ろ姿を追いながら、次郎はやがてその死へと誘われてゆく。黒々とうねる東京湾。そのほとりに暮らす者たちの喪失と孤独、そして愛。青山真治が切り開いた、新たなる小説のかたち「願いの物語」。
えんじ色心中
えんじ色心中
著:真梨 幸子
文芸(単行本)
――君のこと忘れたこと、なかったよ、これから先も、100歳になっても。 16年前に起きた『西池袋事件』。被害者は受験戦争を潜り抜けて超難関校に合格した中学生。加害者はその父だった……。歳月を超え、繰り返された悲劇と『西池袋事件』をつなぐものとは? あのときからずっと、僕は遺書を書きつづけているんだ。 人は、どうして生きるの。どうして、死んではいけないの。どうして、殺してはいけないの。生きる意味って。死ぬ意味って。殺す意味って。 君は、そういって、あの年代特有の勝気な視線で、僕を挑発した。「生きる意味」。それさえ口にすれば、すべての大人が口ごもる。「死ぬ意味」。それをいえば、世間を負かした気になれる。「殺す意味」。それを問えば、完全に君たちの勝利だ。――<本文より>
大停電の夜に
大停電の夜に
著:源 孝志
文芸(単行本)
映画『大停電の夜に』原作小説 クリスマスイヴ、光が消えた東京で、一夜だけの奇跡が起きる。 映画『大停電の夜に』監督・源孝志(『東京タワー』)が書き下ろした、感動のオリジナル・ラヴ・ストーリー。 12人の男女が暗闇の中で見つけたもの――。 10年間、忘れられない女がいる男/妻と恋人の間で揺れる会社員/ある秘密を抱える主婦/出所したての元ヤクザ/ワケありの妊婦/社内不倫中のOL/ホテルの中国人研修生/人工衛星マニアの少年/乳ガンを患うモデル/キャンドルショップの女主人/息子を捨てた母親/50年、妻を愛し続けた男
肝、焼ける
肝、焼ける
著:朝倉 かすみ
文芸(単行本)
第72回小説現代新人賞受賞作 31歳になった。遠距離恋愛中の彼は何も言ってくれない。 30代独身女性の「じれったい気持ち」を軽妙に、鮮烈に描く受賞作を含む短編5作を収録 文句なし。この作者は、ある種の男性から敬遠され、ある種の女性から熱烈に愛される小説を書いて行く人だと思う。――選考委員 山田詠美氏絶賛!! 「あー、そりゃキモ、焼けるわ」 歳下で遠距離恋愛中の彼氏に会うために、こっそり訪れた稚内。地元の人たちの不思議なパワーのおかげで、もやもやした気持ちが変化していく。「肝、焼ける」――激しいじれったさを表す方言が、真穂子を新たなステップに駆り立てた!? 選考委員、満場一致の受賞!期待の新人作家、鮮烈デビュー! 銭湯や寿司屋の場面にリアリティがあり、この作者の観察眼の鋭さを感じさせる。文章も、独特のリズムがあっておもしろい。――逢坂剛氏 これだけの軽みと描写の積み重ねで、歳下の男に心を寄せる、女の苛立ちや焦りのようなものを表現できたのは、感心するほどの力量である。――北方謙三氏 情景描写と会話だけでこれだけ登場人物の気配や息づかいまでをうまく表現できるのはたいした才能だと思う。――椎名誠氏
迎春花
迎春花
著:宍戸 游子
文芸(単行本)
母から子へ受けつぐ生命(いのち)のリレー ひとつの時代を築いた女性ファッションデザイナーが急逝した。それは悲しみを共有する同世代の友人達が、封印してきた幼い頃の戦時下の体験について語り始め、それぞれの心の傷を乗り越えていくきっかけともなった――。塗り残した季節へ、今、旅立つ。 「わたし達は空襲で亡くなった母親や、被爆しても命をかけて産んでくれた母親や、外地から命からがら引揚げてひとりで育ててくれた母親達の子なんよ。その母親達の分まで今をしっかり生きなくては申し訳ない。だから頑張って」「わかりました。描きます」わたしはひとつ大きく頷いた。同時にこれは幼い目で見た戦時下の、あるいは終戦後の風景であり物語でもあるのだと改めて思う。――<本文より>
てのひらの迷路
てのひらの迷路
著:石田 衣良
文芸(単行本)
耳元で囁くように、書きました。 石田衣良のパーソナルな声がきこえてくる、贅沢な、贅沢な24篇のショートショート。24のまえ書きつきです。 石田衣良のたどってきた道とその素顔をはじめて明らかにする極上の小説集。 いつか小説を書くことになったら、このことを書こう。集中治療室の外のベンチでぼくはそう考えていたのだ。だからこの本は、今はなき母に捧げようと思います。――<本文より>
ルーガ
ルーガ
著:小池 昌代
文芸(単行本)
女の心の奥の奥にある、言葉になりにくい美しいものが小説になった。 幸福というものは、ああ、幸福だと思ったとたん、なにかほかのものに変容する。幸福は一瞬のなかにしか生きられないもので、幸福という幻影を支えるのは、それ以外の、例えば退屈や不安や不幸といったものだ。そしてその退屈や不安や不幸こそが、人生のほとんどすべての要素であり、それらこそが現実をかたちづくるものである。幸福というのは、そのあいまに明滅する、奇跡のような錯覚にしかすぎない。――<「ニギヤカな岸辺」より>
サスツルギの亡霊
サスツルギの亡霊
著:神山 裕右
文芸(単行本)
あの「広大なる密室」で、裁かれなければならなかったのは、あなただ。 来てしまったら、もう逃げ場はない。 江戸川乱歩賞の「常識」をぶち破る、受賞第1作! 突然、舞い込んだ絵はがき。差出人は3年前に、南極で死んだ兄だった。法の手がはるか及ばない、美しく残酷な極寒の地。そこで、兄貴の亡霊が、おれを誘っている。 こんな途方もないミステリーを書く男はいなかった!最年少で江戸川乱歩賞を受賞して1年。あふれる想像力とエネルギーをすべてぶち込み、前代未聞の南極ミステリーを書き上げた!
シャネル
シャネル
編:藤本 ひとみ
文芸(単行本)
恋をしながら起業する 「シャネル」は、いかにして女性の憧れとなったのか。 恋と波瀾に満ちた生涯を描きその成功の秘密を解き明かしたシャネル決定版 私は特別な人間になりたい ココ・シャネルの「恋と真実」。そのステップ・アップの物語とは。 修道院で育ち、酒場の歌手から帽子のデザイナーに。ついにはパリ・ファッション界の女王となった波瀾万丈の軌跡。シャネルと深い親交のあった貴重な人物への取材により、知られざるエピソードを豊富に書き下ろした決定版。
千の風になって CDブック
千の風になって CDブック
著:新井 満
文芸(単行本)
聴いて、読む。より深まる感動! 喪失の悲しみをいやし、生きる勇気と希望を与えてくれる“死者からのメッセージ”にCDが付きました。 特別編集盤CD<発売から2年、30万部突破記念> (著者自身による作曲・歌唱・朗読)3曲入り 1.歌とピアノ 2.朗読とオーケストラ 3.オーケストラによるインストゥルメンタル
蝶舞う館
蝶舞う館
著:船戸 与一
文芸(単行本)
大地の精霊たちの声が聴こえる。戦え、と。 船戸与一が初めてベトナムを描いた、圧倒的長編小説! 日本人有名歌手の誘拐。犯行声明で名指しされた元ジャーナリスト。民族解放戦線に「呼び出された男」が、ベトナム戦争のかつての激戦地で見せつけられる、途轍もない現実!――おまえは、「行動者」たることを選べるのか?戦いの傷が癒えないアジアの人々と、戦いを知らない日本人に捧ぐ。魂を揺るがす大傑作!
南シナ海ドラゴン編 にっぽん・海風魚旅(5)
南シナ海ドラゴン編 にっぽん・海風魚旅(5)
著:椎名 誠
文芸(単行本)
沖縄ぐるり。熱風ひえひえ生ビール ついでにベトナムひとっ飛び。 沖縄本島泡盛熱風一周旅/タイムスリップ しまなみ海道/沖縄県 ふんばり島 瞥見(べっけん)記/日本海トロトロ寝ぼけ海岸を行く/風にころがる冬景色/寒風鮭(しゃけ)街道/ワンタンメン海道・日本海/西伊豆発作的団体旅行/熱風爆裂・ベトナム南海を行く
時空蒼茫
時空蒼茫
著:高橋 英夫
文芸(単行本)
永井荷風、クレー、吉行淳之介、そして、思い出の海――時空を超え、記憶と忘却の間(はざま)から紡ぎだされる随想(エッセー)・批評(クリティック)集 第44回藤村記念歴程賞受賞
亡命者 ザ・ジョーカー
亡命者 ザ・ジョーカー
著:大沢 在昌
文芸(単行本)
子供(ガキ)には理解不能の美学がある。 「最悪のトラブル」をたったひとりで引き受ける最後のプロフェッショナル。 着手金は100万、仕事は「殺し」以外のすべて――。 六本木裏通りのバーに持ち込まれる無理難題を解決するジョーカーのもとに、長身白髪の英国人男性が訪れた。彼は20年以上前、ジョーカーが先代を継いで2代目となった初仕事の依頼人だった。 裏世界を生きるトラブルシューターのプライドと美学を描く!
アトムたちの空
アトムたちの空
著:大城 貞俊
文芸(単行本)
文(ふみ)の京(みやこ)文芸賞最優秀賞受賞作! 『鉄腕アトム』は、みんなのヒーローだった。昭和30年代への郷愁も豊かに、沖縄の少年たちの成長をみずみずしく描く。 選考委員 青木玉氏、奥本大三郎氏、加賀乙彦氏 推薦! みんながアトムになった。一平たちも、アトムを真似た。好んでゴム長靴を履いた。両手を頭上にあげ、拝むような仕草で地を蹴り空を飛ぶ。そんな仕草が学校中で流行った。風呂敷のマントを首にかけて走り回る生徒たちもいた。――<本文より>
魔王
魔王
著:伊坂 幸太郎
文芸(単行本)
未来にあるのは、青空なのか、荒野なのか。 世の中の流れに立ち向かおうとした、兄弟の物語。 政治家の映るテレビ画面の前で目を充血させ、必死に念を送る兄。山の中で一日中、呼吸だけを感じながら鳥の出現を待つ弟。人々の心をわし摑みにする若き政治家が、日本に選択を迫る時、長い考察の果てに、兄は答えを導き出し、弟の直観と呼応する。 ひたひたと忍び寄る不穏と、青空を見上げる清々しさが共存する、圧倒的エンターテインメント!