文芸(単行本)作品一覧

翼をもった女
文芸(単行本)
バード、あなたのように、私も旅をした
120年前、日本の「奥地」を旅した英国の女性旅行家イザベラ・バード。その足あとに〈私〉の人生を重ねて描く、
〈女〉を大地にしがみついて動きたがらない生物、と規定した理由は何だろう。もちろん自分が居心地よく感じれば、だれだって動きたくないけれど、そうでなければ私たちがより居心地よい場所を探しにいくことはごく自然である。そこが自分に与えられた世界でただ1つの場所ではないのだとしたら、なぜそこにとどまる必要があるのだろう。私たちが根を張っているところは、いうなれば自分という土壌なのである。──(本文より)

星の国のアリア
文芸(単行本)
本格的オペラ小説
幻のオペラ《金鶏》復活とプリマ・ドンナ誕生のドラマ!指揮者・大野和士氏推奨「迫真的に描ききられている音楽家の“業”」
1905年、血の日曜日事件。この後に書かれたリムスキー・コルサコフの名作「金鶏」は、独裁者への風刺性が強いために、生み出された直後から、抑圧を受ける運命にあった。どうしても、この名作を自分の手で舞台にかけたい――。禁断のオペラに魅入られたロシアの人々は、地底で、奥深くちろちろと燃える火のように、この情熱をひた隠しにしたまま、いつとは知れぬ上演の日に向けて、準備を整えるのだった。そして、半世紀後の東京――。オペラとは何か。演奏家にとっては、人生そのものである舞台。作者のひのまどかさんが、演奏家であるからこそ、迫真的に描ききられている音楽家の“業”。華やかな舞台の裏側を知るうえでも、楽しめる小説である。――大野和士(フィルハーモニー交響楽団常任指揮者/ドイツ・バーデン州立歌劇場カールスルーエ音楽総監督)

昨日スケッチ
文芸(単行本)
伊集院ワールドへの招待“放浪”を生きる作家、珠玉の掌篇小説集。
男と女のことはどう書いても結論など出ないことはわかっている。男と女がわからないと言うより、私には自分のことが何もわかってはいないのだ。(中略)特殊な場合を除いて、女に興味がない男はこの世の中にそう数はいまい。それは女にとっての男も同じだ、と私は思っている。──(「あとがき」より)

リアルタイム日本史
文芸(単行本)
独創と直観!ものの見方の発明
歴史の謎、人間の謎を解く楽しみ!
●吉良・浅野、松之廊下刃傷事件の真相●武蔵坊弁慶の隠された顔とは?●豊臣秀吉は天才経済学者!?●西行法師の秘められた願望――ほか

警視庁刑事
文芸(単行本)
昔はですね、警察に協力すると見返りがあった。見返りというのは、たとえば交通違反などした場合、ある事件に協力して、そのとき知りあった刑事に連絡すれば、違反の紙を破いてくれる、といったような。人身事故とか重大事故は別として、スピード違反のようなものは被害者がいないわけですから。事件に協力したお礼に、免許証に署の警務係が署印を押すわけです。よく警察からもらった賞状は大事にしろ、というでしょう。軽微な違反を起こしたとき、賞状が物を言うわけ。1回だけ(笑)。今はもう駄目です。交通は交通、刑事は刑事ですから。交通はコンピューター処理だし。今しがた交通の罰金払ってきた人のところに、刑事が聞き込みに行ったって、誰が協力しますかね(笑)。昔は、警察はみんな一緒だと思っていてくれたんです。――はじめにより
無冠の華
文芸(単行本)
20名“無冠の花”の人生を描く短編小説集無名ながら優れた業績を社会に残した人物、著名な人物の意外な一面。在野の考古学者・塩野半十郎、離島の保健婦・荒木初子、政治家・伊藤正義などの魅力を描く。
山峡絶唱
文芸(単行本)
北上山地に気高く生きた女流歌人の歌と生涯知られざる歌人「西塔幸子」。生活に根ざした歌は啄木の再来と注目されたが、病いに倒れ三十七年の短い一生だった。小説現代新人賞作家が描く感動の書下ろし小説

蝕みの果実
文芸(単行本)
負け犬どもの狂宴が始まる。
冒険小説の第一人者が10年の歳月をかけて書きついだ作品集
べつに格別の意味があるわけではないが、ここに集められた短編にはふたつの共通項がある。まず舞台がアメリカ合衆国。次に、主要登場人物が何らかのスポーツに関係している。作品の執筆中はほぼ10年まえからぽつりぽつりと行われたもので、こうして7編を集めてみると、10年間の日米関係の変遷がおのずと浮かびあがる。それはそれで一興だろう。──著者のことば

組織に埋れず
文芸(単行本)
巨大旅行会社JTBのはぐれ社員がなぜヒットメーカーに変身したのか?
旅行会社JTBの内幕を描く長編経済小説。
「年金ツアー」などのヒットメーカーもかつては添乗員失格の烙印を押された落ちこぼれだった。経済小説の第一人者が巨大旅行代理店を舞台に描くミドルへの応援歌

自白の風景
文芸(単行本)
「俺は殺っていない!」
──獄死した男の痛哭の叫び。18年の時を経て、それはまったく皮肉な形で“再生”された。2つの冤罪事件に絡みつく情念!迫真のエンターテインメント!!
川喜多の胸には、前に「冤罪の構造」を読んでいるときから、そうした怒りとは別のある思い、感情も生まれていた。(中略)それらは、殺人犯の汚名を着せられたまま獄中で死んだ矢代の無念さ、悔しさ、怒りを想像するとき、川喜多の内でいっそう鮮明な輪郭を見せた。皮膚の下で自己増殖する棘(とげ)のように、彼の胸を内側からちくちくと刺した。──(本文より)

おさきに
文芸(単行本)
おさきに、と母親がいった
年老いた母の死──夢とうつつの間で揺れる心情を描いた短篇集。
かかさまの杖を、とわたしはいった。座椅子によりかかって坐っていた一の娘が、怪訝な目でみて、手にもたせましたよ、といった。母の頬につけて、わたしは横浜で買ったシュウマイの包みを、おいた。……中略……
お別れの水を、と葬儀社から派遣された青年がいった。わたしは母の唇に、木の葉の先から水をそそいだ。閉じた唇の間から、少しずつ、水が染みていった。──本文より

まぼろしの川
文芸(単行本)
死の淵を覗いた近年の大病をこえ、鮮烈な幼少年期の記憶が交錯する「私の履歴書」、友人・映画・世相などを綴って人生の深淵をかいま見せる「ひかりの中」、丸山真男・中野重治・円山応拳などの作品の興趣ある奥深さを論じたエッセイ等を収める。

心の海へ
文芸(単行本)
勇気ある提言最新エッセイ集
ようこそ、わが人生
いのちと共にある心の海の記憶から甦る幼い日のこと、青春時代の苦い体験、亡き父母の面影。時の動きをみつめ優しく勁く生きた心の軌跡
人が一生かけてできること。それはごくごくささやかなことだと思うようになった。ささやかになにをするか、なにができるかが問われている。小さな役割。人生を終るとき、悔いのないなにかをしたい。そう思う人の数がふえていったら、それは、確かな力になる。生きるって素晴しいと無理にも思いたい人間として、わたしは心の落ちつき場所をやっとみつけようとしている。――本文より

お市御寮人
文芸(単行本)
30余年ぶりに甦る華麗なる歴史長篇!
愛に殉じた信長の妹お市の方
巨匠のロマネスクな文体が鮮やかに謳いあげる。戦火のなかの激しい愛。信長・光秀・秀吉の大いなる歴史に秘められた長政・勝家の生命の賦!

群衆の悪魔
文芸(単行本)
笠井潔、作家・評論家としての総決算!
1848年、フランス。パリの市街は来るべき革命への予兆に沸き立っていた。国王の軍隊と民衆が一触即発の状態で対峙する中、無名詩人シャルルは、新聞記者の背に向けて銃弾を放とうとしている男を発見する。記者は射殺され、それを機に軍隊は民衆に襲いかかる。二月革命の幕開けだった。なぜ、最悪とも思える状況の中で殺人が行なわれたのか。疑念を抱いたシャルルは事件の解明を当時、パリで最も有名な探偵に依頼した。勲爵士オーギュスト・デュパンの登場である。デュパンとともに、シャルルはさらなる謎と怪異に出会うことになるのであった。
風のように・嘘さまざま
文芸(単行本)
著者の心の独白を伝える渡辺ファン必読の書夫婦別姓についての論争があるが、賛成反対両者の考え方ともにうなずくべきものがある。著者は別姓について賛成だがと言いつつ、現代日本の家族観に疑問を投げる

29歳
文芸(単行本)
「これは愛なのだろうか……」
留学生活と恋の間で揺れる29歳の心模様
舞台はアメリカ西海岸。大学生活のプレッシャーと男の裏切りを乗り越えて自己実現をめざす多希。その揺れる心をドラマチックに描いて、読むものに勇気を与える長編小説。

天正十年夏ノ記
文芸(単行本)
京都の青年公家が見た天下統一をめざす征服者・信長!
信長上洛の未曾有の混乱期をしたたかに生き抜いた天皇と公家たち。
家督を相続するため兄を殺し、弟を殺し、叔父を殺したと噂されるその武将は、公家が武者に抱く先入観を完膚なきまでに裏切っていた。信長の額は白く秀で、目は少し憂愁の色をたたえ、口許は引き緊まり、体つきなど、ほとんど華奢(きゃしゃ)といっていいくらいだった。
橋の中ほどで、信長はちらっとこちらに視線を投げてよこした。公家の立烏帽子(たてえぼし)がめずらしいのかもしれなかった。信長は晴豊の前を通過し、不意に、はっとしたように再びこちらを振り返った。精神がなにかに感応し、首をこちらに向けさせた、とでもいった振り返り方だった。──(本文より)

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文芸(単行本)
愛なんて、くつ下みたいなものだわ。
ずっとペアだと思っていたのに、ある日突然、片っぽだけになっちゃうんだから……ニューヨークを舞台にした、チョベリグ恋愛小説!!

容疑者
文芸(単行本)
動機も被害者のつながりも見あたらない連続殺人――。現場に残された赤い数字の秘密とは!?事件を追う2人の刑事の執念。
JR鶯谷駅近くのマンションで、人気弁護士が殺害され、現場には赤いマジックで数字の“1”が……。下谷(したや)中央署の刑事、八尋(やひろ)と知坂(ちさか)は現場付近の地道な捜査を続けるが、有力な手がかりはつかめない。難航する捜査をしり目に、今度は若いOLが殺害され、現場に数字の“2”が残されていた……。