講談社文庫作品一覧

ヘヴン
ヘヴン
著:川上 未映子
講談社文庫
2022年「ブッカー国際賞」最終候補作! かつて見たことのない世界が待ち受ける。 芸術選奨文部科学大臣新人賞・紫式部文学賞 ダブル受賞 <わたしたちは仲間です>――十四歳のある日、同級生からの苛めに耐える<僕>は、差出人不明の手紙を受け取る。苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。 ◆ニューヨーク・タイムズ " ……この小説の不協和音は息を呑むようなラストの完璧なビジョンになり、それは意味、美しさ、そして人生を肯定する根拠になる。川上のような複雑な作家による、稀にみるこの、深遠でありながら満ち足りた物語の終わらせかた。彼女の作品を読むと、彼女が何も恐れない作家だということがわかる " ◆ロンドン・レビュー・オブ・ブックス " 川上は、抽象的でとても大きな問題を奇妙なほど直接的で個別の問題であるようにひとつの皿の上に提示して見せる " ◆フィナンシャルタイムズ " ……終盤、読者はその直感的な細部と哲学的な複雑さに眩暈がするほど夢中になり、そして到来するツイスト、それは予想不能の奇妙な力であなたを襲う " ◆インディペンデント "『ヘヴン』を読むと、まるで美しくも残酷な10代の少年が自分の胸に座っているような気持ちになる" ◆オプラ・デイリー " 昨年、賞賛を浴びた『夏物語』の著者による思春期の呪われた洞窟を舞台にした痛烈なオデッセイ "
電子あり
純粋ツチヤ批判
純粋ツチヤ批判
著:土屋 賢二
講談社文庫
新天地・幼稚園にあこがれて失望した子供時代から、結婚生活、学問、と失望を繰り返してきた。数え切れない夢が破れ、今ではわずかに「大哲学者として尊敬を集めながら名ジャズピアニストとしても活躍する武術の達人」になる夢しか抱いていない。笑う哲学者ツチヤ教授が初めて語る、爆笑の失敗人生記。 「三法則」 (1)美人にかぎって性格が悪い。 (2)美人で性格がよい女にかぎって、男を見る目がない。 (3)美人で性格がよく、男を見る目がある女にかぎって、わたしを見る目がない。 ――本文より
電子あり
ダウン・バイ・ロー
ダウン・バイ・ロー
著:深町 秋生
講談社文庫
衰退を続ける地方都市に倦く女子高生・響子の目の前で、幼馴染の遥が電車に飛び込み自殺する。以来、響子の耳には死んだ遥の悲痛な囁きが聞こえてくる。続いて起こる児童惨殺と飼い犬殺し、男友達の失踪。ついに牙を剥く荒んだ町の暗部の正体は? 渇いたバイオレンスの深町節が炸裂する書下ろしミステリー。「ダウン・バイ・ロー」――アメリカの刑務所のスラングで「親しき友を見守る」という意味。(講談社文庫) 大型ショッピングモールに客足を奪われ、貧困と荒廃が進む山形、南出羽市。それに追い打ちを掛けるような震災の発生。女子高生・真崎響子は、幼なじみの遥から小遣いをまきあげ、憂さを晴らす日々だった。その遥が自分の目前で線路に突っ込み自殺してしまう。自殺の原因を疑われ、煩悶を続ける響子。その響子のまわりに連続しておこる不可解な事件と、謎の人物。死んだはずの遥が響子の耳元にささやき、響子はズブズブと、事件の泥流に絡め取られていく。
電子あり
零崎軋識の人間ノック
零崎軋識の人間ノック
著:西尾 維新
講談社文庫
電子あり
猿猴
猿猴
著:田中 啓文
講談社文庫
This is 伝奇! 田中啓文が世に問う伝奇小説。「猿猴、つひに蘇り、しかる後、人類を喰らふべし」……世界が崩れる!? ーー聖徳太子による「人類滅亡」を意味する預言は真実か? 冬山で遭難した奈美江(なみえ)が洞窟で見たものは? 望まぬ妊娠、殺人事件、不気味な宗教団体、秀吉の埋蔵金……その背後に見え隠れする奇怪な「猿」の影。運命の嵐に翻弄(ほんろう)される奈美江は、やがて世界の根源の謎に迫っていく。著者渾身の文庫書下ろし伝奇小説。
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密室の如き籠るもの
密室の如き籠るもの
著:三津田 信三
講談社文庫
旧家の猪丸(いまり)家に現れた記憶のない謎の女・葦子(よしこ)は、開かずの間だった蔵座敷(くらざしき)で“狐狗狸(こっくり)さん”を始める。だが、そこは当主・岩男(いわお)の前妻たちが死んだ場所だった。刀城言耶(とうじょうげんや)が訪れた日も“狐狗狸さん”が行なわれるが、密室と化した蔵座敷の中で血の惨劇が起こる。表題作他、全4編を収録した“刀城言耶”シリーズ第1短編集。(講談社文庫) 刀城言耶第1短篇集文庫化。旧家に現れた謎の女。彼女が来てから何かが……。凄惨な事件を刀城言耶が解明する表題作他、全4編収録。 旧家の猪丸(いまり)家に現れた記憶のない謎の女・葦子(よしこ)は、開かずの間だった蔵座敷(くらざしき)で“狐狗狸(こっくり)さん”を始める。だが、そこは当主・岩男(いわお)の前妻たちが死んだ場所だった。刀城言耶(とうじょうげんや)が訪れた日も“狐狗狸さん”が行なわれるが、密室と化した蔵座敷の中で血の惨劇が起こる。表題作他、全4編を収録した“刀城言耶”シリーズ第1短編集。
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引き寄せの法則
引き寄せの法則
著:マイケル.J・ロオジエ,監:石井 裕之
講談社文庫
“引き寄せ”ブームの決定版ついに文庫化! 注意と意識とエネルギーを向けるものは、良いものも悪いものもすべて、自分の人生に引き寄せられる! “欲しいものを引き寄せ、欲しくないものは遠ざける”。全米で社会現象にまでなったベストセラー『ザ・シークレット』の実践版が、ついに文庫化。なぜあの人は何もかもうまく行くのか? なぜ自分は何も望み通りにならないのか? 人生を変えたい人、幸せを引き寄せたい人のためのノウハウがここに! あなたがこの本にどういう気持ちで向き合うか――それがそのままあなたにとっての本書の値打ちとなります――<監修者まえがきより>
新装版 赤い人
新装版 赤い人
著:吉村 昭
講談社文庫
囚人たちの北海道開拓裏面史。明治十四年、赤い獄衣の男たちが石狩川上流へ押送された。無報酬の労働力を利用し北海道の原野を開墾するという国策に沿って、極寒の地で足袋も支給されず重労働を課せられる囚人たち。「苦役ニタヘズ斃死(へいし)」すれば国の支出が軽減されるという提言のもと、囚人と看守の敵意にみちた極限のドラマが展開する。(講談社文庫) 囚人たちの北海道開拓裏面史 「脱獄」か「死」か 苦役から逃れる方法は他にない 明治十四年、赤い獄衣の男たちが石狩川上流へ押送された。無報酬の労働力を利用し北海道の原野を開墾するという国策に沿って、極寒の地で足袋も支給されず重労働を課せられる囚人たち。「苦役ニタヘズ斃死(へいし)」すれば国の支出が軽減されるという提言のもと、囚人と看守の敵意にみちた極限のドラマが展開する。 二月下旬、かれらはやってきた。氷結した石狩川沿いにのぼってきたかれらは、足もほとんど動かぬらしく小刻みに雪の中を集治監の大門に近づいてゆく。朱色の獄衣も編笠も、雪におおわれていた。白い列は門を入り、獄舎にみちびかれた。かれらは言葉を発することもなく、房の中でうつろな眼を弱々しくしばたたいているだけであった。看守長の命令で、雑役の囚人が味噌汁と麦飯を入れた桶をはこび、椀に入れて配った。味噌汁を口にした囚人の一人が、「極楽」と、息をつくようにつぶやいた。――<本文より>
電子あり
軍師の挑戦 上田秀人初期作品集
軍師の挑戦 上田秀人初期作品集
著:上田 秀人
講談社文庫
桶狭間、忠臣蔵、桜田門……歴史を変えた事件にひそむ謎を大胆に解き明かしていく。推理する歴史探偵もまた、後世の歴史上の人物がつとめる。興趣あふれる厳選八編。 桶狭間の戦いで圧倒的有利な今川義元は、なぜ後退したのか? ーー秀吉の軍師黒田官兵衛が解く。 稲葉正休は親しい筆頭老中堀田正俊を、なぜ斬りつけたか? ーー六代将軍家宣の執政新井白石が解く。 田沼家と佐野善左衛門の遺恨にかかわりながら生き残ったのは? ーー太田備中守を一人の座頭が追い詰める。 吉良邸から逃げ出した寺坂吉右衛門が手厚く葬られた理由は? ーー浄瑠璃作者竹田出雲の達した結論。 茶聖千利休はなぜそこまで関白秀吉の怒りを買ったのか? ーー不昧公松平出雲守治郷が茶人として推理する。 京の近江屋で襲撃された坂本龍馬は誰に殺されたのか? ーー盟友勝海舟が龍馬殺しの暗部に迫る。 雪の桜田門外で井伊直弼襲撃を企てた背景にいた者は? ーー勝海舟の好敵手小栗忠順が真相に気づく。 最後まで抵抗した開陽丸の榎本武揚の真意とは? ーー榎本を英雄視していた福沢諭吉はある疑念を抱く。
電子あり
インフォメーショニスト<下・死闘篇>
インフォメーショニスト<下・死闘篇>
著:テイラー・スティーヴンス,訳:北沢 あかね
講談社文庫
新人ながらパブリックウィークリーのベスト10に躍り出て、世界で注目されているアクションスリラーの傑作。愛する男に「最強兵器」として育てられた美しきマンロー。言葉を操り、姿を変え、相手によって態度も変える「情報収集」力。その力を持ったゆえの孤独が切なく響く。 世界各国で絶賛、新人にしてベストセラーランキングに軒並みはいる筆力。上巻に続き、下巻もノンストップ! 「情報収集」を生業とする最強の女性ヒロイン、ヴァネッサ・マイケル・モンロー。自らが育ったアフリカで行方不明の女性を追ううち、その背景にある巨大な力の存在に気がつき始める。命を狙ったのは誰なのか、なぜそれが可能だったのか。そして行方不明の女性の命は?  報酬は500万ドル。舞台は故郷の中央アフリカ。4年前の行方不明事件を追いかける中で、マンローの言語能力、殺傷能力が培われた理由や、愛する男のもとを去った理由が明らかになっていく。彼女はクールな殺人兵器であり、情熱的な愛の女でもあった。事件の驚くべき真相は悲しい別れとともに明かされる!
インフォメーショニスト<上・潜入篇>
インフォメーショニスト<上・潜入篇>
著:テイラー・スティーヴンス,訳:北沢 あかね
講談社文庫
依頼された情報を集めるためには、セックスも、殺人も、なんでもする。そんなマンローへの次の依頼は行方不明の娘に関する情報収集。
彼の女たち
彼の女たち
著:江國 香織,著:井上 荒野,著:角田 光代,著:嶽本 野ばら,著:唯野 未歩子
講談社文庫
私たちは、確実に生きてきた――まりん、ノンコ、伊香、緑、マッキー。彼女たちがであったのは、18年前のライブハウス。ガーゼ・スキン・ノイローゼというバンドのボーカル、J(ジェイ)は、彼女たちの人生を変えた。強烈な出会いは、彼女たちになにを残したのか。江國香織、角田光代、井上荒野、嶽本野ばら、唯野未歩子という超豪華メンバーが、それぞれの作風でありながら、一つの小説を生み出した奇跡の連作小説。 私たちは、確実に生きてきた――まりん、ノンコ、伊香、緑、マッキー。彼女たちがであったのは、18年前のライブハウス。ガーゼ・スキン・ノイローゼというバンドのボーカル、J(ジェイ)は、彼女たちの人生を変えた。人生が歪められるほどの強烈な出会いは、彼女たちになにを残したのか。 江國香織、角田光代、井上荒野、嶽本野ばら、唯野未歩子という超豪華メンバーが、それぞれの作風でありながら、一つの小説を生み出した奇跡のジョイント小説。 忘れたくても忘れられない、そして忘れたくもない、あの夏。自分の生や性を彼女たちはどう確認してきたのか。名手たちの鋭い言葉遣いを堪能してください。 江國香織、井上荒野、嶽本野ばら、角田光代、唯野未歩子。それぞれがひとりのミュージシャン「J(ジェイ)」と出会い、人生が変わった女性たちを描く。それぞれの作風でありながら、多面的な、でも確実に一人の男が浮かび上がるのは見事。現代を代表する人気作家たちが、打合せのもとに連作小説を作り上げた。
新装版 ブラックペアン1988
新装版 ブラックペアン1988
著:海堂 尊
講談社文庫
1988年、世はバブル景気の頂点。「神の手」をもつ佐伯教授が君臨する東城大学外科教室に、帝華大の「ビッグマウス」高階講師が、手術の新兵器「スナイプ」を手みやげに送り込まれてきた。高階と真っ向から対立する「オペ室の悪魔」渡海。研修医の世良は、大学病院の激震に翻弄され……。『チーム・バチスタの栄光』につながる海堂ミステリーの原点!  ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 7月7日スタート! TBS日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』主演 二宮和也、待望の続編が今夏放送決定! 原作は海堂尊 著 「ブラックペアン」シリーズ! 前作のスケールと興奮を超えるメディカルエンターテインメントが再び始まる!
電子あり
断絶 交代寄合伊那衆異聞
断絶 交代寄合伊那衆異聞
著:佐伯 泰英
講談社文庫
確かに絶体絶命。だが、失うものはない。 はじめよう、ここから。 交易の願いを込めて就航した帆船レイナ一世号は南へ。座光寺藤之助(ざこうじとうのすけ)は井伊直弼に実権が移った江戸に舞い戻る。当主不在の咎(とが)で、お家断絶と当主切腹を迫られた座光寺家。江戸屋敷を引き払った面々を追い、藤之助も中山道、碓氷峠を目指し急追するが? 最大の危機に、藤之助は一族を救えるか!?<文庫書下ろし>
ショートショートの花束4
ショートショートの花束4
編:阿刀田 高
講談社文庫
固い頭をストンとほぐす60編! 最短1ページ、最長でも7ページに面白さ凝縮の傑作60編。いかにも現実にありそうな巧みな設定、妙にほのぼのした味わい、非合理な物語に潜む寓意、ありえないけど納得の展開、ひねりの効いた予期せぬ結末――短編小説の名手・阿刀田高氏による全作品への選評も収録した人気シリーズ第4弾。<文庫オリジナル>
新装版 ハーレムワールド
新装版 ハーレムワールド
著:山田 詠美
講談社文庫
彼女は気が向くとティエンの部屋に姿を現しては、性的な関係を結びたがって駄々をこねる--デビュー直後の書下ろし長編が新装版に!
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遠い響き
遠い響き
著:藤谷 治
講談社文庫
「これは罰です」と男は言った。 現代の「地獄めぐり」 嵐の夜、偶然、多摩川べりで出逢った男は、私と妻を相手に、長い奇妙な打ち明け話を始めた。男の勤めていた「マンガバベル」は、裏で極悪エロ同人誌を販売して急成長した会社で、パワハラを始め、ありとあらゆる理不尽が横行していたのだった。現代の狂気と闇を、胸の痛むような筆致で描く、挑戦的な小説。 となると当然、他に対する関心もなくなる。したがって低俗な興味・関心を抱くこともなくなるが、慈悲の心も人を好きになる気持ちもなくなって他者は単に肉欲と暴力の対象となる。無関心と暴力が世界に満ちる。本書にて作者が描いたのはそうした世界である。――町田 康(解説より) ※本書は「本の時間」2008年1月号~2009年3月号に連載され、単行本として2009年4月に毎日新聞社から出版されました。
カンナ 天草の神兵
カンナ 天草の神兵
著:高田 崇史
講談社文庫
出賀茂(いずかも)神社の跡取りで忍者の血を引く甲斐は、秘密の社伝『蘇我大臣馬子傳暦(そがのおおおみうまこでんりゃく)』を追って、巫女の貴湖(たかこ)らと九州・天草へ。そこでは、児童養護施設「ロザリオ園」のシスターが撲殺されるという事件が起こっていた。犯人は神父が匿っている、と睨む甲斐だが、その前に、“神の子”天草四郎出生の謎が立ちはだかる。(講談社文庫) 日本史の常識を覆す、新シリーズ第2弾! 神懸かりの美少年「天草四郎」は、実は男装の美少女だったのか? 果たして、その父は誰なのか? 出賀茂(いずかも)神社の跡取りで忍者の血を引く甲斐は、秘密の社伝『蘇我大臣馬子傳暦(そがのおおおみうまこでんりゃく)』を追って、巫女の貴湖(たかこ)らと九州・天草へ。そこでは、児童養護施設「ロザリオ園」のシスターが撲殺されるという事件が起こっていた。犯人は神父が匿っている、と睨む甲斐だが、その前に、“神の子”天草四郎出生の謎が立ちはだかる。 でも……。貴湖は首を捻った。やはり最後の幕府の仕打ち。“どうして、原城の人々を皆殺しにしなくてはならなかったのだろう……”これは単なる「キリシタン殲滅」とは考えられない。何しろ、女子供も一人残らず殺害して、なおかつ城を破壊し、完全に埋めたのだ。それは、一体どういう理由だったのか?――<本文より>
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かあちゃん
かあちゃん
著:重松 清
講談社文庫
同僚を巻き添えに、自らも交通事故で死んだ父の罪を背負い、生涯自分に、笑うことも、幸せになることも禁じたおふくろ。いじめの傍観者だった日々の焦りと苦しみを、うまく伝えられない僕。精いっぱい「母ちゃん」を生きる女性と、言葉にできない母への思いを抱える子どもたち。著者が初めて描く「母と子」の物語。 お母ちゃんは、笑うことを禁じた。死んだお父ちゃんの罪を、一生背負うために――。 同僚を巻き添えに、自らも交通事故で死んだ父の罪を背負い、生涯自分に、笑うことも、幸せになることも禁じたおふくろ。いじめの傍観者だった日々の焦りと苦しみを、うまく伝えられない僕。精いっぱい「母ちゃん」を生きる女性と、言葉にできない母への思いを抱える子どもたち。著者が初めて描く「母と子」の物語。 おふくろが、ものも言わずに、一心不乱に家族の写真をちぎっていく。家族三人の笑顔は、もう貼り合わせることもできないほど、小さなかけらになってしまった。(本文より)
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ポケットの中のレワニワ
ポケットの中のレワニワ
著:伊井 直行
講談社文庫
アガタは派遣先で再会した小学校の同級生ティアンに惹かれていく。が、町村桂子という日本名で「統括主任」の肩書きを持つ彼女は、好意を示しつつも「貧乏人同士は付き合えない」と言う。そんな彼女が同じベトナム系の女友達と会ってから様子が変になり、会社まで辞めてしまう。アガタの思いは届くのか? 内緒だけど、レワニワのこと知ってる? 物語(ファンタジー)なんだけどリアルな恋愛小説 アガタは派遣先で再会した小学校の同級生ティアンに惹かれていく。が、町村桂子という日本名で「統括主任」の肩書きを持つ彼女は、好意を示しつつも「貧乏人同士は付き合えない」と言う。そんな彼女が同じベトナム系の女友達と会ってから様子が変になり、会社まで辞めてしまう。アガタの思いは届くのか? いずれも劣らぬチャーミングな作中人物たちと、ハラハラさせながら最後は泣かせるアガタとティアンの恋の展開、そして何とも奇妙でひょうきんなレワニワ――。本書は誠に魅力たっぷりな長編小説である。何度読み返しても場面に引き込まれて、いいなあと溜息が出る。このたび文庫になったことで、もっとたくさんの読者に知ってほしいと願わずにおれない――清水良典「解説」より ※インドシナ半島の奥地に生息し、ベトナム難民とともに日本に渡ってきたという「レワニワ」。人の言葉を覚えて願い事をかなえ、その欲望を養分に巨大化して人食い鬼になると言われている――。
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