講談社文庫作品一覧

自伝的戦後史 下
講談社文庫
我々に抵抗と革命の意志を伝える予見者の書。戦中は獄中、戦後は市井の学究、また参議院議員として、一貫して知識人の背骨を貫きとおした著者が語る、抵抗と闘争と革命の現代史の証言。ーー最初に一人の人権が侵されたとき、すべての悲劇が始まった。……ファシズムの嵐が世界をおおいつくした戦中。そして戦後を通じ、自由の敵に対し孤高な闘いを挑んだ著者が、なぜ戦争が起こるか、戦争を防ぐために我々がなしうる事なさねばならぬ事は何か、を興味深いエピソードも交え、切々と訴える革命と闘争の書。<上下巻>

自伝的戦後史 上
講談社文庫
恐怖からの解放、自由と正義のための闘いの書。自由の敵・戦争の原因たるファシズムとの闘争に一生をかける著者の抵抗と革命への意志。たぎる情念が我々を闘いへと駆り立てるダイナミックな予見者の書。ーーアウシュビッツの大量虐殺が、なぜ起こったか? 本書は、この現代における人類の絶望からの解放なくして、人類の未来の希望はありえない、と偽りの平和を生きる我々に、忍び寄るファシズムの恐怖を訴え、自由と正義のための闘いに読者を駆り立てる、情念の書。また、困難な時代にこそ、繰り返しひもとかれるべき現代の聖書。<上下巻>

東海道中膝栗毛 上
講談社文庫
江戸者の弥次郎兵衛と喜多八の、少し品は悪いが気の良い憎めない小悪人が展開する、東海道の道中記。主人公の演じる失敗談におりおりの狂歌、各地の風俗、奇聞を織り込んで抱腹絶倒の旅はつづく。この滑稽本の名作を読み易くするため工夫配慮し、図版なども出来うる限り多数とりいれ、忠実に翻刻した。発端より四編下まで収録。<上下巻>

ムーミン谷の彗星
講談社文庫
長い尾をひいた彗星が地球にむかってくるというのでムーミン谷は大さわぎ。ムーミントロールは仲よしのスニフと遠くの天文台に彗星を調べに出発し、スナフキンや可憐なスノークのお嬢さんと友達になるが、やがて火の玉のような彗星が……。国際アンデルセン大賞受賞作家ヤンソンの愛着深いファンタジー。

やわらかな心
講談社文庫
「やはらかき 心をもちて まぬがれぬ」一事を待つというも、よしなし病に苦しみ、幾度か死に会い、なお素朴な自然人の心に生きた歌人の随筆集。あの大佛次郎が、「『やわらかな心』は他人には悲壮とみえる生活の血の色にじむ肉片である。明朗であって強靱である。誠実な心が溢れ、かいなでの随筆集とは異質の文章である。……読んで動かされぬ者はないであろう。」と、絶賛した名著。第1回釈迢空賞受賞作。

立原道造の世界
講談社文庫
優美な抒情、音楽との融合、青春の痛み……。「優しき歌」などで知られる四季派の詩人・立原道造の魅力は、数多く挙げられようが、それに加え、彼が夭折者であったことも、後世の若者に愛好される要素だ。その詩を含め、彼はすなわち青春なのである。本書は、「四季」派研究で知られる著者が、豊富な資料(新資料含む)と広い観点とで、立原道造の足跡を解いた、最良の研究書である。夭折した天才詩人の全貌を、その生い立ち、精神形成、詩法などの面からとらえ、新資料や彼の代表的作品を収める素晴らしい入門書!
浦上の旅人たち
講談社文庫

三重露出
講談社文庫
アメリカのスパイ小説「三重露出」を翻訳していると、作中に意外な人物が登場して、訳者の滝口を仰天させた。沢之内より子という日本娘で、滝口がよく知っている女性と同一人物らしい。しかも実在のより子は2年前、何者かに殺された。この小説は、その死の真相を告げているのではないか……。異色の設定で展開する、長篇ミステリーの名作。
アメリカのスパイ小説「三重露出」を翻訳していた滝口は、作中に自分がよく知っていた日本人女性が登場したのに驚いた。しかも実在の彼女は二年前に殺されていたはずなのだ。異色の設定から始まる長篇推理小説。

華やかな死体
講談社文庫
真夜中の散歩道、背後(せなか)に視線ーー白菊と曼珠沙華に飾られた、大手食品会社社長の死体が発見された。巨額の遺産めあてか、会社の権力争いの果てか……。美貌の未亡人と元社長秘書の間に、情事の匂いをかぎとった少壮検事・城戸。老獪な弁護士との、知力の限りを尽す熾烈な闘いが始まった。検事出身の弁護士であった著者ならではの迫力で描く、江戸川乱歩賞受賞作。

妖星伝 第三部 神道の巻
講談社文庫
江戸の鬼道衆のバックアップによって、田沼意次の権勢は巨大になり、それだけ腐敗がすすむ。鬼道の狙い通りである。一方、外道皇帝を名乗る主を2人もかかえた鬼道各派は、唯一無二の皇帝を求めて、熾烈な暗闘をつづけ、わずかながら統合のきざしをみせる。ますます興味たかまる、最大伝奇ロマン第3部。

古酒新酒
講談社文庫
酒にまつわる楽しく芳醇な話題のあれこれ。醗酵、醸造学の世界的権威が、半世紀をこえる研究の成果をふまえて、人類最高の叡智というべき酒の歴史と文化を説き、酒と人と詩を語る。

青春をわれらに
講談社文庫
婿の周吉に社長の椅子を譲った南部友助は、閑暇な日常がもの足らず、とかく小言幸兵衛になりがちだ。この上は茶飲み友達でもあてがおうと、周吉夫婦が見合いのプランを立てた。一方、友助が昔世話をした女性が、用事あり気に突然現れた。前社長の面目にかけてもと友助は胸を叩く。見合いも進行、用事も進行。友助に青春は蘇るか。
婿の周吉に社長の椅子を譲った南部友助は、暇を持てあまし気味。とかく小言幸兵衛になりがちだ。そこで周吉夫妻が立てたのは見合いのプラン。ところがそこに現れたのは、友助が昔世話した女‥‥。

海音寺潮五郎短篇総集(五)
講談社文庫
歴史小説の第一人者、海音寺潮五郎の傑作短篇80余篇を全8巻に編成。第5巻は、島津家仕置家老の秩父太郎一代記「梅白し」、男女の愛の機微を描く「河鹿の宿」、武士道に殉じた大山三次の「かたみの月」、薩摩の「兵児行状記」、馬術の達人「矢野主膳」、絵の中の美女を捜した倭寇物語「美女と鷹」、長崎外町代官「村山東安」、肥後藩士で暗殺の名手、河上彦斎の逸話「人斬り彦斎」など12篇を収録。

あの日この日(四)
講談社文庫
常に偽らざる自己を語って、変遷めまぐるしい今世紀を生きてきた、一私小説家の文学私史的自伝。野間文芸賞受賞作。現代文学を側面から解き明す、発見と手掛りにみちた書として、評価も高い。全四巻。本巻では、「暢気眼鏡」執筆前後から芥川賞受賞のこと、さらに暗い戦争の時代へ、そのさなか病にたおれ故郷に帰るまでのことが、綿密につづられている。
変遷めまぐるしい時代を生きつづけた一私小説家の文学私史的自伝。現代文学を側面から解き明かす手がかりと発見に満ちた名著。野間文芸賞受賞。〈全四巻〉 (四):なめくじ横丁の住人たち、「暢気眼鏡」執筆と芥川賞受賞のこと、さらに暗い戦争の時代にいたり、病に倒れ故郷に帰るまで。昭和十年前後から終戦直前の昭和十九年までの、綿密な私史的自伝の完結巻。

危険な関係
講談社文庫
大学生・世良高行のまわりに、奇怪な出来事が続いた。常用する薬のなかに毒薬、出生の秘密と暗い末路を予言する手紙、父の突然の死と、全財産を彼だけに譲るという父の遺言状。謎の中、再び伸びた魔手を脱した高行は、関係者をそろえ、犯人糾明のため偽装自殺を試みたのだが……。殺人者の心理、青春のおごりをきめこまかい文章でみごとに描いた、江戸川乱歩賞受賞作。

紅梅行燈
講談社文庫
江戸・深川の八百源の娘・お澄は、小町娘と評判の美人だが、柔術の手練でもあった。ある夜、3人の侍に襲われながら見事これを撃退した若侍・弓川金吾と知り合い、傷の手当をしたことから、ほのかな恋心を抱く。金吾の襲われたのは、南部藩の内紛、ご老公派と当主派の争いに、源を発していた。隠退した先代老公が、愛妾・お市の方にせがまれ、新御殿を作ろうとして無理な金策をし、それを引き受けた豪商・盛岡屋が、当主の妹・小夜姫を妻にと要求したのだ。江戸屋敷の小夜姫に、ご老公から国元への帰還が命じられた。無事に済むはずのない道中を思い、当主派は、姫の見替りにお澄を仕立てた。金吾、お澄の行手には……。

ロマンの寄木細工
講談社文庫
推理文壇の寵児・森村誠一が読者に贈る、待望のエッセイ集。山行を通し旅のロマンを語り、みずからの体験をふりかえり、現代の管理社会を厳しく告発しながら、人生の諸相をさぐる。そこには作家の確かな眼があり、躍動する自由で清新な精神がある。人生の探求者・森村誠一のすべてを盛り込んだ、魅力の書。自作の詩を巻末に併録。

同名異人の四人が死んだ
講談社文庫
流行作家・名原信一郎の中篇小説「囁く達磨」に登場する、作中人物と同名の男が変死した。最初は単なる偶然の一致と思われた事件も、同名の変死者が4人にもおよび、犯罪性をおびてくる。名原の小説を真似した殺人鬼の理由なき犯行か? 4人の変死者と名原をつなぐ接点が見い出せないままに、事件は謎を深めていく……

林の中の家
講談社文庫
音大生・仁木悦子と植物学専攻の雄太郎は、探偵マニアの兄妹だ。欧州旅行中の水原夫妻に邸の留守を頼まれているが、ある夜に怪電話がかかり、女の悲鳴とともに電話は切れる。そして「林の中の……」という電話の声を頼りに探し当てたその家には、血に染った女性の遺体が……。難事件に挑む兄妹探偵の推理が、知的興奮を誘う傑作ミステリー。

楽天大将
講談社文庫
修道女を志す若い保母・朝吹志乃は、みずから園児の身代りとなって、誘拐犯人・金山と逃避行をつづける。しかし、その金山は、白血病の宣告を受ける……。金山を、なんとかして人間の荒地から脱出させ、再生させようとする志乃の献身も、ほとんど空しかった。錯綜する人間関係の中に、無償の愛に生きる女性の姿を鮮烈に描いた、感動長編小説。