講談社文庫作品一覧

薬師寺への誘い
講談社文庫
大和路の静謐な空気は、美とロマンのかぐわしい香気を立ちのぼらせ、時代を超えて人びとを誘う。物で栄えて心で滅びる今日、なかでも、奈良・西ノ京薬師寺は、安息を渇望する現代人の心のふるさとともなっている。本書は、名僧・好胤師が精神のルネサンスを叫んで世に問う、名刹の歳月のあとさき、そして生きがいを語る著。

佐野洋推理傑作選 銅婚式
講談社文庫
中堅作家の波多亮、その夫婦の銅婚式の席上で、彼の元許婚者の死の真相を追及するという、とてつもない余興が始まった。招待客は各人それぞれの立場で推理を被露するのだが、夫婦の意図は測り難い。一人の記者が大胆な推理で、真相を暴露した。ところが彼は……。鬼才の処女作「銅婚式」ほか、つぶよりの好短編7編収録の傑作ミステリ短編集。

死の報酬
講談社文庫
社長令嬢で、元映画女優だった女性の突然の失踪、そして彼女と思われる変死体。同じ日、彼女を愛人にしていたテレビ俳優が、死体となって発見される。が、その死体は何処ともなく消えさってしまう。御存じ私立探偵・佐久と久里十八の名コンビが、男女の死体をめぐって大活躍をする、ユーモア・サスペンスのヒット作。

続 悲しき戦記
講談社文庫
人間の感情も自由も剥奪された兵士たちが、いかに戦い、いかに生き、死んでいったか……。戦死者たちの冥福を祈りながら、戦争の真実の姿を静かにしかも厳しく捉えた戦記。続巻には「通天門」「手榴弾」「遺品」「島の掟」「水の城」「二つの落下傘」「廬山の敵」「山のアカシア」など30編を収録。<正続 全2巻)……人間本来の心には、敵味方の区別はない。だが戦争は、人間としての感情や自由を許さない。その不条理の中で、巨大な圧力に押しつぶされた兵隊たちの生と死。苛烈な戦場にあっても、美しい自然に心を寄せ、人間の真情を謳う優しく柔らかい作者の眼。虚しく戦場に果てた幾多の魂への深い祈りをこめた、鎮魂の短篇集。

日本の唱歌(上) 明治篇
講談社文庫
多くの人々に歌い継がれ、愛唱されてきた唱歌は、なつかしい心のともしび……。上巻では、「庭の千草」「故郷の空」「港」「夏は来ぬ」「鉄道唱歌」「花」「箱根八里」「荒城の月」「春が来た」「われは海の子」などの、明治期の唱歌・163曲を年代順に編成し、詳細な解説を付けた決定版。全3巻。

丘は花ざかり(2)
講談社文庫
PTAのパーティで、ドンファン風の石山と知り合った信子の心は、完全に掻き乱された……。また妹の美和子も、中年の男性の魅力にとりつかれて……。美人姉妹の愛の遍歴は続く――。<全2巻・完結>

丘は花ざかり(1)
講談社文庫
人妻・信子は、婦人記者になった妹の美和子たち若者が自由に振る舞うのを、羨望の眼で見ていた……。美和子は、若いが頼りない同僚・野崎と親しくなったが、妻を亡くした野呂編集長に気持が傾いてゆく……。<全2巻>

歩みのあと 舞台・人形・そして忘れ得ぬ人
講談社文庫
誰が選んでくれたのでもない。自分で選んで歩き出した道ですもの――と「女の一生」布引けいのせりふそのままに歩く、女優の道。多くの人との心深い出会い、そして別離。幕の閉じる間もない人生の坂道で、いつも無言の微笑をくれた人形たち。信念に満ちた一人の女優の、烈しさの奥にゆらめく情感にふれる半生記。

詩集 おかあさん(3)
講談社文庫
好評の永遠の詩集「おかあさん1・2」に続く第3巻。自ら「おふくろ屋」と称した詩人サトウハチローが、母をうたった香り高い詩の花束。この巻には「しょうじんあげ」「しんこをこねる」「ピアノの上に」「背中を丸めて」「わさびをぬいて下さいね」「美しきものはみな哀し」など、127編を収録(全3巻完結)。心のふるさと、おかあさん。この世でいちばんやさしいおかあさんの喜びや願いをうたったこの詩集は、ふるさとのように暖かく、あなたを包んでくれます。

キューポラのある街(4) さくらさくら
講談社文庫
19歳になったジュン。進む道はそれぞれちがうが、キューポラの街の仲間とともに、恩師の教壇復帰運動に、若いエネルギーをぶっつけていく。それは、地下室に職場を移され、過重な労働をさせられているジュンにとって、自らを脱出させるものなのだ。懸命に生きる若者たちを描いた、異色大河小説の第4巻。吉永小百合の主演で映画化にもなった、日本児童文学者協会賞受賞の不朽の名作。<全5巻>

暗黒告知
講談社文庫
明治40年の栃木県谷中村。足尾銅山鉱毒事件をめぐり、官憲と立ち退き反対の農民側とが激しく対立するさなか、反対派の巨頭・田中正造の側近で谷中村土地収用反対派の残留農民の勝野が殺された。凶器は、鉱毒事件の告発者・田中正造の杖。はたして正造が犯人なのか、それとも巧妙なデッチあげによる官権の策謀か、はたまた反対派の内部抗争か……。歴史推理に社会問題を鮮やかに導入した傑作長篇。第20回江戸川乱歩賞受賞作。

私のなかの男たち
講談社文庫
強く、可愛く、哀れがあって、頼もしいのが<理想>の男……。愉快・痛快・爽快に、男の見方を教える、佐藤愛子の男性百科。「男のあわれ」「哀しき二枚目」「屹立すべし」「色道とは何ぞや」「知らぬは男ばかりなり」「男が泣くとき」「女が笑うとき」「男、このロマンチックなるもの」ほか、20篇を収録する、痛快エッセイ。

第二怪奇小説集
講談社文庫
霧ふかい冬のリヨンの実娘殺しを扱う「ジャニーヌ殺害事件」、夫の死を無意識に願う妻の内面を描く「共犯者」、屈折した女の復讐心をさぐる「偽作」、物に憑かれた人間の泥沼を抉る「憑かれた人」など、日常生活のひだの中に素材をもとめ、深層心理の陰影を自在な筆で掘り下げる、哄笑と怪奇の好短編9編。

くちづけ
講談社文庫
くみ子と健二は大学の同級生でカンニング仲間。健二はくみ子にとって、弁当をのぞき込み、お菜を分けてもらっても少しも悪びれない好ましい青年だ。 やがて二人は……。「デンスケ」「レポート」など、珠玉作全6編の短編集。

美しい暦
講談社文庫
「高等学校の学生には女学生たらしの不良が多いから……」というある先生の発言を聞きつけた学生たちは、その女学校に抗議を申し込んだ。その代表に主人公・貞子が山登りで知り合った田村邦夫の姿が……。仙台の女学校を舞台に描かれる若者たちの息吹き。戦後、二度にわたり映画化されている。

風と樹と空と(2)
講談社文庫
雪国K町の高校を3番で卒業しながら、大学にも進学せず、会社にも就職しないで、お手伝いさんを志望した多喜子。そんな彼女は、「新二郎さん、私のここに接吻してもいいわ」と言って、自分の唇をとんがらせた。若い白い丈夫な歯と歯がぶつかり合ってカチカチと音がした……。平凡な幸せを願う2人の夢は大きくふくらんで……。傑作青春小説、全2巻・完結編。

風と樹と空と(1)
講談社文庫
雪国K町の高校を3番で卒業しながら、大学にも進学せず、会社にも就職しないで、お手伝いさんを志望。快活で健康的で人々に愛され、明るい笑いをふりまくお手伝いさん・多喜子を描いた、傑作青春小説、全2巻。青春のさわやかな息吹きが胸を打つ!

光の肌
講談社文庫
晴海埠頭で1台の自動車が引き揚げられたが、運転者の死体は出てこなかった……。Mデパートの店員・野上美樹子は、妊娠処置のことを、銀座のクラブに勤める友人に相談した。そのとき、英会話と車の運転ができる美樹子に、ある会社の秘書にならないかとの話がでた。そして美樹子は、大竹通産の専務秘書になった。高価なドレスや和服を着せられ、高級レストランや料亭につれ歩かれた。数か月後のある夜、大竹通産の社運をかけた取引がおこなわれた。相手は、東南アジアのQ国使節団。座には芸者もきて賑やかだったが、代表格の男は、美樹子にしか関心を示さなかった。その数日後……。

小屋
講談社文庫
自殺した知人の遺品を遺族に届けた19歳の青年は、その村に居ついて、村人や遺族の異様な光景に出会う。戦争にいって廃人同様になった父親。そして、その妻のモノローグを通じて、戦後25年経ったいまも、戦争の傷を癒せぬ、夫婦の戦慄的生活が現われる。暗い時代の深暗部を照し出した力作。他に「小泊海岸の犯罪」と「雪」を収録。

詩集 おかあさん(2)
講談社文庫
永遠の詩集「おかあさん」の第2巻。ママ、おかあさん、おふくろ――呼び方は違っても、母を思う気持ちは同じです。その気持ちを、サトウハチローが詩に結晶させた、バラエティ溢れる不滅の名品。この巻には「母の日記は二十八冊」「クリスマスを待ちかねて」「かあさんのくせ」「雨はわが母のソバカス」など125編を収録。心のふるさと、おかあさん。この世でいちばんやさしいおかあさんの喜びや願いをうたったこの詩集は、ふるさとのように暖かく、あなたを包んでくれます。