講談社文庫作品一覧

詩集 おかあさん(1)
講談社文庫
少年時代、無類の腕白坊主だった詩人・サトウハチローが、母を偲び、母と子の情愛の美しさ、深さをうたいあげた、永遠の詩集・全3巻。どの詩も読む人の共感を呼び、心に深い感銘を与えます。この第1巻には「ちいさい母のうた」「おかあさんの匂い」「秋風に母の声がある」「この世でこよなく美しきもの」など125編を収録。心のふるさと、おかあさん。この世でいちばんやさしいおかあさんの喜びや願いをうたったこの詩集は、ふるさとのように暖かく、あなたを包んでくれます。
虹への旅券
講談社文庫

匂う肌 佐野洋推理傑作選
講談社文庫
友人を羽田空港に見送っての帰りに会った、正体不明の女との一夜の奇妙な体験を、SF的手法で描いた表題作「匂う肌」ほか8編を収録。各編、緻密な構成と破綻を見せぬ鉄壁のプロットから成り、作者の周到な計算は、知的娯楽としての推理小説の味わいを満喫させる。佐野洋の多彩かつ華麗な創作活動を示す好短編群。

名探偵なんか怖くない
講談社文庫
かの3億円強奪事件をそっくり再現させて、それを世界的名探偵に推理させようという酔狂な企画。立案者は財産をもて余す成金。招かれた探偵は、メグレ、ポワロ、クイーン、明智の豪華版。お膳立てが整い、監視されているとも知らぬ犯人は行動を起したが、意外や意外。巧みな構想に支えられたパロディの秀作。

大和路のこころ
講談社文庫
近代化の波を憎み、美しい自然に憧れ、いにしえびとの深い思いに焦点を当て続けた、著者30余年の労に、第24回菊池寛賞が贈られた。幸静かに降り、霞たなびき、春を謳う花の群れ、その瞬間瞬間が、古代の幻を見るようにあでやかで哀しい。奈良に生まれ奈良を愛した市井写真家だけが持つ心意気が輝やく、珠玉の作品集。

ハンカチの上の花畑
講談社文庫
幻想のイメージを鮮明に美しく描いて、独自のファンタジーの世界を形成する、安房直子の童話集。正直者の良夫さんは、二つの約束とともに古い壺をあずかります。壺には、ハンカチの上に菊の花をさかせておいしい菊酒を造る小人が住んでいて……という「ハンカチの上の花畑」ほか、「空色のゆりいす」「ライラック通りの帽子屋」の2編も収録。

空洞の怨恨 傑作短編集(四)
講談社文庫
小笠原は、友人・海野の恋人を奪い、彼を狂気に追いやり、あげくは彼の原稿までも盗み、職業作家の地位を手に入れた。失意の海野は、山小屋に一編の詩を遺し、南アルプス山中に消えた。詩を手がかりに、海野の行方を追う大塚刑事の執念の捜査の前に、事件の全貌が……。小説現代読者賞の表題作「空洞の怨恨」ほか、「二重死肉」「鈴蘭の死臭」「集合凶音」「密閉島」「崩落した不倫」の力作5編を収録。小学校時代は番長だった新進作家と、失踪した作家志望の同級生の過去は……。

妖星伝 第一部 鬼道の巻
講談社文庫
異端とそしられ、黒魔術と怖れられながらも、日本史の裏側に陰影のごとく貼りついてきた「鬼道」は、江戸時代に不在の盟主を求め、各派が一斉に跳梁をはじめた。血と淫液にまみれ凄絶な争いがくり返される。そこへ、超能力を具えた宇宙星人の出現!空前のスケールで伝奇小説の頂点をめざす長篇第1部。

病める人間像
講談社文庫
健康な人は、「健康とは」と問われても返答に窮する。だが、一旦健康を失った人は、失われた健康というものが痛切に意識できる。病める人間像を識ることは、これと似た意味をもつという。――長年、統合失調症に接し、それを人格の病として捉えた著者が、創造の病理や自殺に至る病など、多くの例を上げ、さらに人間の変容を迫る現代社会の症候群を引き、「人間とは何か」を独特の風合に織り上げた名著である。
現代の病理的症候を描く精神医学者の文明論現代社会の人間像の変貌を、現代の病める人間像―人格の深みから孤立化していく人間像を描き、もう一度健康で自然な人間を捉え直そうとした一冊。

彼の故郷
講談社文庫
幼年の頃、青年の頃の忘れがたい光景……それは「故郷」という地獄である。「浩」と呼ぶ少年の成長の過程を、夢と現実の巧みな交錯の中に描き、硬質な抒情の世界を創る半自伝的短編連作集。
「いわゆる生い立ちの時期に自然と注意が集まって行った。で、特に意識させられたことは、自分の奇妙な姿勢であった。幼年期から青年期の始めにかけての記憶と現在との間には遠い距離がある。私は、普通に眺めれば広い視界の、ごく限られた一劃に望遠鏡のピントを合わせ、陽炎のかなたを見ようとして呼吸を整えるといった具合だった。」(後記より)

二十四歳の憂鬱
講談社文庫
K商事の支店長で妻子ある青地を恋する滝沢みき子は、悪いこととは知りつつも、彼との逢瀬に溺れてゆく悦楽には勝てずにいる。一方、会社の若い同僚・三森は、みき子に思いを寄せ求婚を公表している。――ときに青地の身辺には、大きな転機が訪れてきた。人生の曲り角に立たされたみき子。同じことがひろ子、由利子にも……。若いOLの愛の苦悩、24歳の危険な年齢を描く傑作長編。
K商事支店長で妻子ある青地を恋する滝沢みき子。彼女に思いを寄せ求婚する会社の同僚三森。人生の岐路に立たされたみき子と同じことが、友人のひろ子、由利子にも‥‥。若いOLの愛の苦悩を描く長編。

ヒットラーの遺産
講談社文庫
チョコレート戦争
講談社文庫

キューポラのある街(3)―赤いらせん階段―
講談社文庫
17歳の誕生プレゼント「赤いらせん階段」は、津村ノブ子にとって、思想と行動の自由の象徴のはずだった。ところが、長髪禁止の問題、高校生の横のつながりを求める動き、その連帯を断ち切ろうとするもの……が、ノブ子たち高校生を「よういならぬ時間と空間」の、危険な状況の中に捲きこんでいく。話題を呼んだ異色大河小説の第3巻。吉永小百合の主演で映画化にもなった、日本児童文学者協会賞受賞の不朽の名作。<全5巻>

孤独の罠
講談社文庫
推理小説史上、特異な位置を占める、幻想の詩人・日影丈吉の代表的長編。舞台は、榛名山に近い寒村。縁の薄かったわが子の火葬に立ち会った仰木は、そこで奇怪な事件に巻き込まれた。1体のはずの乳児の骨が、2体も出てきたのだ。忌わしい事件を仕組んだ犯人の意図は? 閉鎖的因習や錯綜した人間関係を追いながら、謎を探る。

無常ソング
講談社文庫

てのひら島はどこにある <佐藤さとるファンタジー童話集5>
講談社文庫
「ぼくのてのひら島はどこにあるのかな」……太郎は、いたずらのお仕置の跡のある手を見ながら、考えます。そのてのひら島で、虫の神さま――太郎そっくりのいたずら虫クルクル、双子の姉にそっくりの泣虫アンアンとシクシク、太郎が偶然会った女の子ヨシボウに似たおこり虫プンなどが活躍……現実と空想の織りなす名品「てのひら島はどこにある」ほか、「タツオの島」「マコト君と不思議な椅子」を収録。

猫の舌に釘をうて
講談社文庫

ひめゆりの塔
講談社文庫
太平洋戦争の末期、死闘をくり返す沖縄に於て、女学生ばかりで結成された姫百合部隊200人余の大半が、米須(こめす)の洞窟で玉砕するまでの悲惨な90日を濃密に描く。乙女たちを中心に、死の行進を強いた戦争指導者への深い憎しみと怒り、戦場に散った若い生命への愛惜が全篇を貫く感動の名篇。(講談社文庫)
太平洋戦争の末期、死闘をくり返す沖縄に於て、女学生ばかりで結成された姫百合部隊200人余の大半が、米須(こめす)の洞窟で玉砕するまでの悲惨な90日を濃密に描く。乙女たちを中心に、死の行進を強いた戦争指導者への深い憎しみと怒り、戦場に散った若い生命への愛惜が全篇を貫く感動の名篇。

風貌
講談社文庫
顔には歴史がある。喜怒哀楽にまみれて自らの道をひた走る、この映像の主役たちの一瞬の表情。「玄関払いを喰わせるような手強い相手ほど却っていい写真が撮れる」と語る、写真界の巨匠。――これは、決定的瞬間に人生を賭けた鬼才の、遮二無ともいえる魂と、魅力溢れる主役たちの魂とが奏する絶唱を聴く、古典的名著。