異常の構造

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異常の構造

イジョウノコウゾウ

講談社現代新書

精神異常の世界では、「正常」な人間が、ごくあたりまえに思っていることが、特別な意味を帯びて立ち現われてくる。そこには、安易なヒューマニズムに基づく「治療」などは寄せつけぬ人間精神の複雑さがある。著者は、道元や西田幾多郎の人間観を行きづまった西洋流の精神医学に導入し、異常の世界を真に理解する道を探ってきた。本書は現代人の素朴な合理信仰や常識が、いかに脆い仮構の上に成り立っているかを解明し、生きるということのほんとうの意味を根源から問い直している。

「全」と「一」の弁証法――赤ん坊が徐々に母親を自己ならざる他人として識別し、いろいろな人物や事物を認知し、それにともなって自分自身をも1個の存在として自覚するようになるにつれて、赤ん坊は「全」としての存在から「一」としての存在に移るようになる。幼児における社会性の発達は、「全」と「一」との弁証法的展開として、とらえてもよいのではないかと私は考えている。分裂病とよばれる精神の異常が、このような「一」の不成立、自己が自己であることの不成立にもとづいているのだとすれば、私たちはこのような「異常」な事態がどのようにして生じてきたのかを考えてみなくてはならない。――本書より


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目次

●現代と異常
 自然の合理性という虚構
●常識の意味
 共通感覚から常識へ
●常識の病理としての精神分裂病
 精神分裂病とは
●妄想における常識の解体
 世界の二重構造
●異常の根源
 社会的存在概念としての「全」と「一」

書誌情報

紙版

発売日

1973年09月20日

ISBN

9784061157316

判型

新書

価格

定価:924円(本体840円)

通巻番号

331

ページ数

182ページ

シリーズ

講談社現代新書

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