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聖武天皇と仏都平城京
ショウムテンノウトブットヘイジョウキョウ
- 著: 吉川 真司
元明天皇、元正天皇ら女性天皇が護った天武直系の皇統。期待とともに即位した聖武天皇を待ち受けていた天災と政変。疫病大流行に苦悩する天皇は仏教に深く帰依し、平城京は仏都の彩りを濃くしていく。そして空前の専制君主・称徳天皇、聖武朝の否定者・桓武天皇が新時代を切り開いた。都は平城京から平安京へと遷る。波乱に満ちた古代天皇の生涯と宮都の実像を活写する。
■天武直系の皇統を護った女帝と聖武天皇の苦難
天武天皇の崩御後、持統、元明、元正という女性天皇によって護られ、聖武へと継承された天武直系の皇統。太上天皇として天皇を後見した女性太上天皇の役割とは何かを説く。
即位した聖武天皇を待ち受けていたのは、相次ぐ地震、凶作、そして全国で150万人近くの死亡者を出した疫病大流行だった。国家の危機に瀕した天平年間、疲弊する人々を救済するため苦悩する聖武は仏教に帰依し、社会復興、国力回復を願って、全国に国分寺建立を命じ、大仏建立の詔を発する。東大寺大仏開眼へと続く天皇の苦難の道をたどる。
■仏都平城京に広がる民間布教
聖武天皇による仏教宣揚とともに、民間布教に心血を注いだ仏教者たちによって、仏都平城京は形作られた。特筆すべきは行基集団の活動で、その窮民救済活動など仏教による社会救済の様相を描き出す。
■専制君主・孝謙女帝と桓武天皇による天智系への皇統転換
聖武皇女は史上初の女性皇太子となり孝謙として即位。譲位、出家して道鏡を重用、淳仁天皇と不和になるとこれを廃して重祚、尼姿のまま称徳天皇となった。仲麻呂の乱を鎮圧する一方で神仏の混交をすすめ、道鏡を太政大臣禅師、さらに法王とし、仏教に奉仕する王権を目指した。しかし専制君主・称徳が死去すると道鏡は下野薬師寺に左遷され、天智天皇の孫に当たる白壁王が即位し光仁天皇となる。やがて光仁の皇子・山部親王が即位して桓武天皇となり、天武系から天智系へ皇統が大転換した。元明、元正天皇、藤原不比等など常に後見者に支えられた聖武に対し、百済系渡来氏族出身者である高野新笠を母にもつ桓武は自己の権威付けのため天智直系皇統を称揚し、さらに母方氏族の権威を高める作業にとりかかった。「聖武朝的なるもの」を否定し、平安京に都を遷した桓武が創りだした新時代とは何か。平城、嵯峨、淳和、仁明と続く歴代天皇の治世と平安京の爛熟を描く。
■廃都後の平城京のゆくえ
平安遷都後、次第に水田化してゆく平城京跡。天皇の所領地はどう管理され、利用されたのか。平城の地に立つ寺院はその後どのように法灯を保ったのか。奈良の都の原像を探る。
目次
序章 天皇の都・仏の都
1 二月堂の夕景
2 大伽藍本願聖武皇帝
3 仏と神と御霊
第1章 飛鳥から平城へ
1 天智天皇と天武天皇
2 天武朝の転換点
3 天武直系皇統の創出
4 飛鳥・藤原・平城
第2章 平城宮の儀礼と政務
1 平城宮のすがた
2 内裏と大極殿
3 二つの朝堂院
4 朝堂と曹司
第3章 聖武天皇
1 皇太子首親王
2 聖武天皇と光明皇后
3 天平の疫病大流行
4 変乱と遷都
第4章 行基と知識と天皇
1 仏都平城京と行基
2 大野寺土塔
3 難波・狭山・昆陽
4 疫病大流行の前後
5 盧舎那大仏
第5章 四字年号時代
1 陸奥産金のインパクト
2 光明皇太后と藤原仲麻呂
3 空前の専制君主、称徳天皇
4 変貌する王宮とイデオロギー
第6章 桓武天皇
1 光仁から桓武へ
2 百済王氏と交野
3 平城京との訣別
4 平安の新京
第7章 平安京の王権
1 平城天皇の功罪
2 嵯峨天皇
3 爛熟と転換
第8章 仏都の命脈
1 廃都後の平城京
2 七大寺の法灯
3 東大寺と興福寺
書誌情報
紙版
発売日
2011年01月12日
ISBN
9784062807326
判型
四六変型
価格
定価:2,860円(本体2,600円)
ページ数
390ページ
著者紹介
(よしかわ・しんじ)は一九六〇年生まれ。京都大学大学院博士後期課程修了。現在、京都大学教授。専攻は日本古代史。 主な著書に『律令官僚制の研究』(塙書房)、『飛鳥の都』(岩波新書)、編著に『京都府の歴史』(山川出版社)、『東大寺成立過程の研究』(科研報告書)、『日本の時代史5 平安京』(吉川弘文館)、『列島の古代史3・7・8』(岩波書店)などがある。
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