天皇と摂政・関白

マイページに作品情報をお届け!

天皇と摂政・関白

テンノウトセッショウカンパク

清和天皇の外祖父・藤原良房から始まった摂関政治。醍醐・村上両帝の延喜・天暦の治や藤原道長の栄華で繁栄を謳歌する宮廷世界の陰では、菅原道真の失脚など政争もうち続いた。王権をめぐる姻戚関係を台頭する藤原北家が支配するなかで、天皇は「生身の権力者」から幼帝でもよい「制度」へと変貌していった。皇統と外戚である摂関家が並び立つなか、天皇のみがなしえたこととは何かを追究する。


■藤原北家はいかにして権力を握ったか? その時、天皇家は?
「天皇の歴史」03巻では、9世紀半ばの文徳天皇から11世紀半ばの後冷泉天皇まで16人の天皇の時代を取り上げます。藤原良房・基経の摂政・関白就任から、道長と頼通の栄華へと続く藤原北家の全盛時代です。この「摂関政治」は、「藤原氏が天皇の意向を無視して行った恣意的・専制的な政治」と捉えられがちですが、これは「天皇親政」を至上とする戦前の歴史観の影響にほかなりません。本巻では、天皇と摂関を従来のように対立的に捉えるのではなく、天皇と摂関が総体としてどのような王権を形づくっていたのか、そのなかで「天皇のみがなしえたこと」とは何かを見ていきます。
■錯綜する姻戚関係のなかで、皇統が並立するメリットとは?
「皇位継承のルール」が確立していなかったこの時代、藤原氏は「天皇の母方の祖父」すなわち「外戚」の地位を得るために、娘たちを次々と天皇家に入内させました。現代の目から見れば「ここまでやるか!?」というほどの外戚戦略の結果、家系図は複雑になり、皇統は並立します。度重なる謀略と政争の元凶ともいえるこうした危うい状況は、しかし、貴族たちにとっても、天皇家にとっても、実は大きなメリットがあったのです。
■幼帝の誕生と「神器」の継承。現代に連なる「天皇のあり方」。
失脚した菅原道真の怨霊、平将門・藤原純友の乱など、決して「平安」とは言えない醍醐・村上帝の時代は、なぜ後世「延喜・天暦の治」と称されるのでしょうか。また、繁栄を極めたかに見える藤原頼通以後、なぜ摂関政治は衰えるのでしょうか。天皇が「生身の権力者」から「制度」へと変貌し、後の「院政」へと道を開く、約200年間を通観します。


目次

序章 天皇の変貌と摂関政治     
第一章 摂政・関白の成立と天皇     
1 最初の摂政、藤原良房     
2 関白基経と阿衡事件      
3 光孝皇統の成立と皇太子     
第二章 「延喜・天暦の治」の時代       
1 宇多天皇と「寛平の治」      
2 道真の怨霊・将門の乱・内裏炎上      
3「延喜・天暦の治」の評価と実態      
第三章 摂関政治の成熟       
1 皇統並立と外戚     
2 藤原道長と三人の天皇     
3 摂関政治の黄昏     
第四章 摂関政治の時代の王権           
1 太上天皇      
2 皇后と母后       
3 蔵人所・殿上人・検非違使      
第五章 儀式・政務と天皇           
1 即位儀礼と「神器」      
2 摂関の政務と天皇の政務      
3 饗宴と君臣関係       
第六章 仏と神と天皇       
1 国家の仏事・天皇の仏事       
2 祭祀と行幸      
3 穢れと怨霊       
第七章 摂関期の財政と天皇       
1 受領のもたらす富     
2 蔵人所と天皇の食事・料物       
3 天皇家の財産      
終章 天皇像の変容

書誌情報

紙版

発売日

2011年02月15日

ISBN

9784062807333

判型

四六変型

価格

定価:2,860円(本体2,600円)

ページ数

390ページ

著者紹介

著: 佐々木 恵介(ササキ ケイスケ)

(ささき けいすけ)は1956年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。現在、聖心女子大学教授。専攻は日本古代史。主な著書に『受領と地方社会』(山川出版社)、主な論文に「9-10世紀の日本ー平安京」(『岩波講座日本通史5 古代4』岩波書店、共著)、「古代における任官結果の伝達について」(笹山晴生編『日本律令制の展開』吉川弘文館)などがある。

既刊・関連作品一覧

関連シリーズ

BACK
NEXT