明治天皇の大日本帝国

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明治天皇の大日本帝国

メイジテンノウノダイニッポンテイコク

幕末の混乱の中で皇位についた16歳の少年は、いかにして「建国の父祖」の一員へと成長したか。京都を離れて江戸城跡に新宮殿を構え、近代憲法にその存在を規定された天皇の政治への意思とは。神道の主宰者にして「欧化」の象徴であり、巡幸と御真影でその姿を見せ続け、国民国家の形成とともに「万国対峙」を追求した「我らの大帝」の時代を描く。


■天皇は薩長の「操り人形」だったのか? 生身の政治家としての成長を追う。
「王政復古の大号令」の夜、小御所会議で「幼冲の天子」と揶揄された16歳の少年は、その後、伊藤博文ら元勲たちと信頼関係を結び、「建国の父祖」の一員として自ら重要な決断を下していくようになります。幕末の混乱のなかで皇位につき、現実政治の厳しさに直面した若き天皇は、いかに鍛えられ、成長していったのでしょうか。その成長の過程をつぶさに辿ります。

■最初の「東京の天皇」は、復古の象徴でありながら、欧化の体現者でもあった。
京都の公家社会を離れて東京にうつり、新たに「宮中」を創設した明治天皇。和風建築でありながら、儀礼の空間は洋風に装飾された明治宮殿。国学的な尊王論に支えられた神道の主宰者ながら、髷を切り、西洋料理を食した天皇は、歴史上初めて、「憲法」というものによってその地位を規定されることになっていきます。

■「見られる存在」となった天皇・皇后。国家の成長と「我らの大帝」の時代。
明治以前の天皇が、決して人々の前に姿を見せなかったのに対し、明治天皇は欧化の象徴として、全国への巡幸や「御真影」で国内外にその存在をアピールしていきました。洋装の皇后も天皇とともに姿を見せ、慈善活動や女子教育に新たな役割を見出していきます。西南戦争を経て、国会開設から日清・日露戦争へと向う国民国家建設の時代、この国に住む人々に「我らの天皇」という意識が生まれてくるのです。


目次

序章 欧化と復古を生きた「大帝」   
第一章 小御所会議の「幼冲の天子」
 1. 「江戸時代」の皇子        
 2. 幕末政治の中で          
第二章 京都の天皇から東京の天皇へ    
 1. 東京奠都             
 2. 政府の強化と廃藩置県      
 3. 宮中改革と洋装の天皇      
 4. 「現実政治」との直面      
第三章 明治憲法と天皇
 1. 侍補の教育と天皇親政運動    
 2. 明治十四年政変         
 3. 明治天皇と伊藤博文       
 4. 憲法の中の天皇          
第四章 立憲君主としての決断       
 1. 新宮殿と洋風儀礼 
 2. 洋装の国母・美子皇后       
 3. 天皇と元勲たち          
 4. 日清戦争の決断 
 5. 政友会の成立と立憲政治の安定
第五章 万国対峙の達成
 1. 日露戦争と戦後の天皇像
 2. 皇室制度の再整備と波紋
 3. 「明治の精神」の葬列
終章 君主の成長と近代国家
 1. 大正天皇の課題
 2. 明治天皇が維持した帝国日本

書誌情報

紙版

発売日

2011年07月29日

ISBN

9784062807371

判型

四六変型

価格

定価:2,860円(本体2,600円)

ページ数

398ページ

著者紹介

著: 西川 誠(ニシカワ マコト)

(にしかわ まこと)は1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。現在、川村学園女子大学教授。専攻は日本近代政治史。主な共編著に、『日本立憲政治の形成と変質』(吉川弘文館)、共著に、『明治天皇と政治家群像』(吉川弘文館)、『皇室事典』(角川学芸出版)、論文に、「大正後期皇室制度整備と宮内省」(『年報近代日本研究20 宮中・皇室と政治』山川出版社)、また、『木戸孝允関係文書』(東京大学出版会)の編纂にも携わる。

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