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第三の精神医学 人間学が癒やす身体・魂・霊
ダイサンノセイシンイガクニンゲンガクガイヤスカラダタマシイレイ
- 著: 濱田 秀伯

本書の表題に掲げられた「第三の精神医学」とは、いったいどのようなものなのか、と思われることでしょう。それは、長年にわたって第一級の精神科医として臨床経験を重ねてきた著者が、われわれに向けて投げかける重要な提案です。
著者は言います。「10年、20年と診療を続けるうちに、さまざまな年齢の患者さんたちが、教科書に記されているような症状の背後に、若いころから同じ悩みを引きずっていることに気づき、私はこれこそが精神病の本質であるとの確信を抱くようになった」。では、その「精神病の本質」とは何でしょうか。それは動物実験や脳の分析では決して明らかにならない「人間本来の価値」であり、「生きる意味」そのものだ、というのが答えです。
当たり前のことに聞こえるかもしれません。しかし、18世紀後半に開始された近代的な精神医学の歴史を振り返るなら、その当たり前のことに到達できずにいた現実が分かります。本書は、フランスのフィリップ・ピネル(1745-1826年)に始まる歴史をていねいにひもときながら、1) エミール・クレペリン(1856-1926年)によって確立された、脳を観察する神経組織病理学と疾病分類学に基づく身体・自然科学的な精神医学、2) ジークムント・フロイト(1856-1939年)に代表される、個人心理学としての心理・精神分析的な精神医学、という二つの大潮流を跡づけていきます。その上で、これらのいずれにも与しなかったカール・ヤスパース(1883-1969年)に「第三の道」を見出し、その可能性を最大限に引き出そうと試みるのです。
第三の精神医学では、人間は「身体」、「魂」、「霊」という三つの層が折り重なった存在として捉えられます。本書は、それぞれの層を分かりやすく解説するとともに、それぞれの層に生じた障害への対処法をも紹介します。その結果、「心の病気」の「治療」とはいったい何をすることなのかが本当の意味で明らかになるでしょう。
多くの人が心の問題に悩まされ、苦しんでいる今日、本書はささやかな、しかし力強い希望の光を放っています。
[本書の内容]
序 章 精神医学と世俗化
第一章 宗教的存在としての人間
第二章 人間の精神構造
第三章 愛の秩序
第四章 心の病気とは何か
第五章 心の病気の治療
終 章 エマオへの道
ⒸHidemichi Hamada
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目次
序 章 精神医学と世俗化
第一章 宗教的存在としての人間
1 人間学の課題
2 シェーラーの人間学
3 フランクルの人間学
4 キリスト教の人間学
5 聖なるもの
6 哲学的人間学の展開
第二章 人間の精神構造
1 体精神層のしくみ
2 魂精神層のしくみ
3 霊精神層のしくみ
4 心身二元論から人間学的三元論へ
第三章 愛の秩序
1 エロスとフィリア
2 アガペー
3 愛の秩序の形成
4 自己愛と隣人愛
5 愛の秩序の解体
6 愛の秩序の再構築
第四章 心の病気とは何か
1 ジャクソン学説と新ジャクソン学説
2 侵襲学説
3 霊的精神力動論
4 精神病における霊と愛
第五章 心の病気の治療
1 体精神層
2 魂精神層
3 霊精神層
4 すべての人に向けて
終 章 エマオへの道
註
文献一覧
あとがき
書誌情報
紙版
発売日
2021年06月10日
ISBN
9784065238240
判型
四六
価格
定価:1,760円(本体1,600円)
通巻番号
749
ページ数
216ページ
シリーズ
講談社選書メチエ
電子版
発売日
2021年06月09日
JDCN
06A0000000000325600R
著者紹介
1948年、東京都生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。医学博士。フランス政府給費留学生としてパリ大学付属サン=タンヌ病院に留学したあと、慶應義塾大学医学部精神神経科学教室准教授、客員教授、群馬病院長を歴任。現在、六番町メンタルクリニック・精神療法センター長、日本精神医学史学会理事長。専門は、臨床精神医学、精神病理学、フランスの妄想研究、キリスト教人間学。 主な著書に、『精神症候学 第2版』、『ラクリモーサ――濱田秀伯著作選集』、『精神病理学臨床講義 第2版』、『精神医学エッセンス 第2版補正版』(以上、弘文堂)など。 主な訳書に、G・ランテリ・ロラ『幻覚』(監訳、西村書店)、E・ジョルジェ『狂気論』(監修、弘文堂)、ポール・セリュー+ジョゼフ・カプグラ『理性狂』(監訳、弘文堂)、香川修庵『一本堂行余医言 巻之五 癇とその周辺』(監修、創元社)など。
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