きみの脳はなぜ「愚かな選択」をしてしまうのか 意思決定の進化論

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きみの脳はなぜ「愚かな選択」をしてしまうのか 意思決定の進化論

キミノノウハナゼオロカナセンタクヲシテシマウノカイシケッテイノシンカロン

 古典的経済学者は「人間は合理的」と考えた。だが、現実の人間は状況を見誤り、損な選択をしてばかりだ。今では行動経済学者に「バイアスもちの愚か者」と見なされている。では愚かな人類が繁栄できたわけは?
 本書は、まったく新しい進化心理学を基礎に目からウロコの議論を展開する。動物にとっては、遺伝子の複製を増やす行動こそ合理的だ。進化がきみの脳に授けた愚かなバイアスは、じつは優れた仕組みだった!

【自殺するウミガメ】
 愚かにも自殺するウミガメがいる。ふ化すると海ではなく道路に飛び出す。といっても、死を望んでではなく、本能に従ってのことだ。ウミガメは進化の過程で、真夜中にふ化し、明るい方へ進む本能を得た。夜の砂浜近くの明るい場所といえば、昔は月や星の光を反射する海だけだったから合理的だ。しかし、人工照明が出現し、その光に惑わされた海の賢者は愚か者となった。
 人間はどうか? 現代人の脳は原始人のものとほとんど変わらない。太古の合理的な脳は現代の光に惑わされ、愚かな選択をしてしまう。

【合理的な転落人生】
 無一文から大金持ちになり、破産を迎える人は少なくない。破天荒に生き、大金を一瞬で使い切る。堅実な人から見れば愚かだが、正しい使い道は?
 ネズミとゾウのエネルギー投資が参考になる。ネズミは自らの成長よりも生殖に多く投資する。いつ死んでもいいように出し惜しまない破天荒タイプだ。ゾウは堅実タイプで、成長に多くを投資した後、じっくり子育てする。
 貧しく不安定な幼少期を過ごした人にとって、明日失いかねない金は今使うのが正解だ。安定した幼少期を送った人は慎重になる。死にかけて、堅実から破天荒へ宗旨替えする人もいる。人の行動は合理性の表れではなく、それぞれがおかれた環境で懸命に生きようとした結果だ。

【原著について】
本書は、2013年にBasic Booksから出版されたThe Rational Animal: How Evolution Made Us Smarter Than We Thinkの翻訳である。ミラー、ゴールドスタイン、チャルディーニなど著名な意思決定科学者に賞賛された。アリエリー『予想どおりに不合理』やカーネマン『ファスト&スロー』より深く「人間とは何か」を考察した知的興奮の書。


  • 前巻
  • 次巻

目次

はじめに  キャデラック、共産主義者、ピンクのフーセンガム
(エルビスが自分のキャデラックのホイールキャップに金めっきをしたのはなぜか?)
第1章  合理性、不合理性、死んだケネディたち
(テストステロンで発情したスケートボーダーとウォール街の銀行家の共通点は何か?)
第2章  七人の下位自己
(マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは多重人格障害だったのか? きみはどうか?)
第3章  家庭の経済学とウォール街の経済学のちがい
(ウォルト・ディズニーが後継者と対照的なやり方をしたのはなぜか?)
第4章  心のけむり感知器
(真実を追求するのがなぜ危険なのか?)
第5章  現代の原始人
(ハーバード大学の賢人がだまされる問題に無教育のジャングル住人が引っかからないのはなぜか?)
第6章  生き急いで若くして死ぬ
(無一文からいきなり金持ちになった人がよく自己破産の申し立てをすることになるのはなぜか?)
第7章  金色のポルシェ、緑の孔雀
(人は同じ理由で派手なポルシェを買ったりエコなトヨタのプリウスを買ったりするか?)
第8章  性の経済学――彼の場合、彼女の場合
(メスが得をしてオスが損をするのはいつか?)
第9章  深い合理性に寄生するもの
(ペテン師はどうやって深い合理性を食い物にするか?)
おわりに  旅の記念品
(おれにどんな得がある?)

書誌情報

紙版

発売日

2015年01月24日

ISBN

9784061567030

判型

四六

価格

定価:2,640円(本体2,400円)

ページ数

352ページ

著者紹介

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