文芸(単行本)作品一覧

出雲願開舟縁起
文芸(単行本)
悪疫退散!!
四国は吉野川上流から流した小舟が出雲に辿り着くまでの1,000キロを、江戸時代の思想経済庶民史みんなぶち込んで描く文学的冒険
同じ約束ごとが願開舟にもあります。誰かが、何かが、舟に込めた送り手の願いを届けてくれる筈です。しかし、吉野川の上流から出雲国まで願開舟を流したという故事は、九郎左衛門もいまだ聞いた例しがありません。この本山村から吉野川河口まで三十余里(百十八粁(きろめえとる))。さらに出雲国までの海道は、最短の瀬戸内海を通るとしても長州・馬関まで百数十余里。関門海峡を響灘へ抜けて日本海をさらに六十余里。延べて二百数十里(千粁)のはるかな水の旅路です。――<本文より>

クールス
文芸(単行本)
愛する気持ちは止められない
平凡なOLサエが好きになった相手は、女性だった。レズビアン仲間と結成したソフトボールチーム「クールス」に込めた思いは「Kiss Only One Lady」
「何考えてるの?」星空を見上げたままボーッとしているわたしにトモコが尋ねた。「うんとね、Kiss Only One Ladyの意味……」「生涯あなた1人だけを愛する?」「うん、そう。それってさ、それだけじゃなくて……」わたしは、当たり前なのに当たり前じゃない、その言葉を心で噛み締めるように言った。「この世にただひとりの存在であるあなたを愛する、っていうことなんだね」――<本文より>

埴谷雄高
文芸(単行本)
その文学と思想のオリジナリティーによって戦後日本に屹立する埴谷雄高。同じく独自の思考によって日本の思想界をリードしてきた著者の半世紀の集大成。
孤高の文学者・埴谷雄高と『死霊』への徹底的追究!
三輪家の子どもたちが、嫡出子と婚外子の区別なく共有するものは、うまれてこないほうがよかったという気分である。そのなかで主人公三輪与志は、しかしうまれた以上、あたらしい生をみずからつくることなく、すでにうまれたものを殺すことなく、自分をおわりまで味わってみよう、という考え方にむかう。(中略)その過程で、生きることにともなう不快を味わうことを、自分が生きる原動力にしたいと思っている。――<「『死霊』再読」>
加藤典洋「六文銭のゆくえ――埴谷雄高と鶴見俊輔」(書き下ろし58枚)

白い息 物書同心居眠り紋蔵
文芸(単行本)
居眠り紋蔵、町へ出張る
盗んだ弁当を食べた男が変死した。附子(毒薬)を買ったのは誰だ? 念願かなって定廻りに任じられた紋蔵が、人生の哀歓を噛み締める。

花畑
文芸(単行本)
生の残酷とぬくもり
長野の山村を背景に人生の奥深さを描いた遺作。水上作品の真髄を示す純文学小説。
療養のために長野の山間の村へと移り住むことになった<センセイ>と呼ばれる主人公。その村で暮らす老人たちと、出稼ぎのために日本へと来たタイ人女性たち。さまざまな現実の問題を抱えながらも生きる姿を、どこかユーモラスにあたたかな視線で描いた遺作。<生、そのもの>をみつめた、水上文学の到達点ともいえる長編小説。

飆風
文芸(単行本)
作家になることは悪人になることだ。生きることで他人を傷つけ、小説を書くことで自らをも痛めつけてゆく。すさまじい作家が、己の精神を追い込み、崩壊していく様を曝した、最後の私小説ーー「靴と下駄とスリッパが空中を飛んでいるんだ。ほら、そこに。」「くうちゃん、何言ってるの。何も飛んでいないじゃない。」「いや。飛んでいるんだ。階段も廊下も流れているし。」「変ねェ。何も流れていないじゃない。いつもの通りじゃない。」「ああ、俺は気が狂った。アロエの毒を呑まされた。」「誰に。」「誰だか分からない。俺の頭の中を風が吹いていくんだ。」「風?」(本文より)

ふしぎな図書館
文芸(単行本)
村上春樹と佐々木マキが贈る 大人のためのストーリー 魅力溢れる絵
ぼくは「図書館」から、脱出できるのだろうか?懐かしい“羊男”も登場!
「いかような本をおさがしになっておられますかな、坊ちゃん?」「オスマントルコ帝国の税金のあつめ方について知りたいんです」とぼくは言った。老人の目がきらりと光った。「なあるほど、オスマントルコ帝国の税金のあつめ方、ですか。それは、ああ、なかなか興味ぶかい」

グランド・フィナーレ
文芸(単行本)
芥川賞受賞作
文学が、ようやく阿部和重に追いついた。
「神町」そして、ふたたび……。
土地の因縁がつなぐ物語。終わりという名のはじまり。
表題作「グランド・フィナーレ」ほか3篇を収録。

h+α
文芸(単行本)
ふたりきりの時間は、全身全霊で愛しあいたい
想いを冷凍して、互いの時間を止めてしまおう。会った時に解凍すれば恋情はずっと、ずっと続いていく。夫婦ではなくとも。
彼女のすべての動きが、快感を引き出すものに感じられた。それは会えなかった3週間という時間の中で溜め込んできた彼女の強い想いが込められているように思えた。それはつまり、冷凍して固めていたはずの気持が、3週間のうちに溶け、そして成長していたということを意味していた。――<本文より>

傷口にはウオッカ
文芸(単行本)
女の人って、いつも傷を抱えてるようなもんじゃない? ここに。
こころの傷口にウオッカを吹きかけ、痛みをたしかめながら生きていく。永遠子、40歳の恋愛遍歴。
40歳の今、恋人である寿一郎を手放せばもうあとがない、とも思う。でもそれは焦りからくるものじゃあない。それならそれでいいのだ。もうそれで恋愛というものが終わるとわかっているならば。しかし恋愛は思いがけずしてしまう。自分でも予定していないとき、不意に。――<本文より>

末世炎上
文芸(単行本)
闇の御導師(おんどうし)が都を焼き尽くす
記憶を失った髪奈女(かみなめ)、名門に生まれながらも無為に生きる音近(おとちか)、風見(かざみ)――平安京に降り立った「この世ならぬもの」に導かれ、3人は付け火に怯える都の危機に立ち向かう。
末法界に生きる民人どもよ、我は不動明王にとって代わる怨堕羅夜叉明王の化身なり。我に倣え。狂え、吠えろ、暴徒と化せ。御導師の心の叫びに呼応するように、ひときわ高く煙が立ち昇る。洞のごとき髑髏の眼孔に怪しい光が宿る。――<本文より>

私の人生 ア・ラ・カルト
文芸(単行本)
可笑しくって切ない、「ドジな女」の波乱の人生。
パリ、中東、アフリカ、ハリウッド、日本……。女優、作家、ジャーナリスト、そして母、娘、妻として駆け抜けてきた、ひたむきで真摯な生き方がここにある。

ローレライ、浮上
文芸(単行本)
未曾有の大作映画完成までの全軌跡を語り尽くす
小説家vs映画監督。異なるジャンルの表現者ふたりの出会いによって『ローレライ』は始動した。まったく新しいエンターテインメントの台頭を予感させる対談集!

肉体と読書
文芸(単行本)
肉体が思考する。言葉が歓喜する。
<時代の意志>とシンクロし、その体感を洞察する。スピード、皮膚の温度、すべてが<官能の言葉>になる。朝日新聞の人気連載「モードの風」を含む100編の交感。赤坂真理、待望のファースト・コラム集。

レジスタンス
文芸(単行本)
この小説には、著者が選んだ新しい「生き方」が書かれている。抗って生きよ。
かつてエリートと呼ばれた銀行員の、6つの「反乱」
「頭取無惨」
経営破綻の夜、頭取が急死。その時、広報部長はなにをしたか。
「役員寸前」
銀行員の夢まであと一歩まで上り詰めた矢先に、部下が使い込み!
「実直な男」
総会屋担当30年。挙げ句の退職金カット。ベテラン総務部員の捨て身の選択とは?
「いつかの、本番のために」
金融庁調査での不祥事を押しつけられた若手行員の将来は?
「抵抗する生き方」を選んだ男と女を描く、目からうろこの画期的経済小説!

ラスト・マッチ
文芸(単行本)
もう一度、勝利の拳をかかげたい!
止まるな、前に出ろ。血を流し、眼をふさがれようとも、決してマットには沈まない。
リングに生きた男が、凄絶な戦いを描く。
今だ!福永は無意識に動いた。パンパンパパパーン!左から右をまっすぐ叩きつけ、左を薙いでフックを返し打ち、まっすぐ右から左を薙いでフックでとどめをさす得意の五連打。福永は全身全霊を傾けて戦った。疲れは極限に達しようとしている。攻撃に威力はない。動きにしまりもない。それでも、懸命に手を出した。当たっていようがいまいが、格好が悪かろうがお構いなしに、必死に手を出した。
勝つために、勝利の手を挙げるために、左右の拳を繰り出した。自分の存在が、ボクシングそのものになっていた。

月下妙剣
文芸(単行本)
魔の瞳を持つ鬼――柳生十兵衛三厳。
柳生新陰流とは、裏の世界を束ねる「闇の剣」なのか。身を剣尖に晒して活路を見出す「生残の剣」なのか。

ソナタの夜
文芸(単行本)
あなたが必ずどこかにいる。愛しているから、それぞれに秘密のある7つの危険な恋愛、私が、嘘をついた。隠された、さらなる「たくらみ」。
「おかしいわよ、あなたの奥さん」国枝の表情が険しくなる。「真穂、きみは分かっていないんだ」私は黙って国枝を見た。「夫婦が寝なくなるのは、不仲だからとは限らないんだよ」――<「ソナタの夜」より>

日暮らし(下)
文芸(単行本)
ああ、読み終えるのがもったいない。
ついに現れる「真実」。下町時代小説、佳境!
これぞ「小説の力」。人情の深みを描く、長編時代小説、結末へ!
「過去の嘘と隠し事」の目くらましに、迷って悩む平四郎。夜ごとの悪夢でおねしょをしても、必死に「謎」と向き合う弓之助。
ねえ叔父上、ここはひとつ、まっさらに戻して考えてみてはいかがでしょう?

日暮らし(上)
文芸(単行本)
宮部みゆきは、「進化」する。
早くも「著者時代小説の最高傑作」と言われる長編、登場!
まさに格別の味わい。『ぼんくら』に続く、待望の下町時代小説!
本当のことなんて、どこにあるんだよ?
江戸町民のまっとうな日暮らしを翻弄する、大店の「お家の事情」。ぼんくら同心・井筒平四郎と、超美形少年・弓之助が、「封印された因縁」を、いよいよ解きほぐす。