文芸(単行本)作品一覧

在日ヲロシヤ人の悲劇
在日ヲロシヤ人の悲劇
著:星野 智幸
文芸(単行本)
孤独ってのは何だかわかる?1人っていうことだけじゃない、歴史を忘れてしまうってことなんだよ。 日本を生きるという空疎。国家、政治、思想、世代、個人、さまざまな問題意識を重層的に取り込み展開される、新しい「家族小説」。 あんた、自分みたいな人間を再生産したい?こんな質の悪い孫コピーのさらにコピーを作りたい?孫コピーのコピー、さらにそのまたコピーって繰り返していくうちに、かすれてやがてただの白紙になるんだから。 NGO「ヲロシヤン・コネクション」の主宰者でハンガーストライキの果てに死んだ好美。夫の浮気が原因の離婚後に自殺してしまう、貴子。1人右翼を名乗り孤独に活動を続ける、純。妻・貴子を失い、娘・好美を亡くした父親、憲三。 過去と現在を縦横に繫ぎ、ヲロシヤ国、露連、アナメリカ、日本、架空の世界に描き出されたある家族の姿。世界、社会の問題をひとつの家族の中に描き出す、著者の新しい到達点ともいうべき傑作長編小説。
夏の吐息
夏の吐息
著:小池 真理子
文芸(単行本)
世界のどこに行っても地の果てにいても私はあなたを待っている 豊饒の時を迎えた女たち 6つの愛のかたち この世のものは、こんなふうにすべて自分になじんでいるのだ、とわたしは思った。カズや浅丘はもちろんのこと、いろいろとうまくいかない仕事や人間関係にしたって全部、それなりにわたしになじんでいる。手垢のついた家具みたいになっているし、今はそうでないものも、そのうちきっと、そうなっていくに違いないのである。――<「春爛漫」より>
黍の花ゆれる
黍の花ゆれる
著:植松 三十里
文芸(単行本)
いつかは鹿児島に帰ってゆく“流人”西郷隆盛を、強く、いさぎよく支えた奄美の島妻・愛加那。凛として、生きる。 安政6年、西郷吉之助は、“流人”として奄美大島に降り立った。島の名家・龍家の縁戚にあたる愛加那は、西郷の島妻となった。出会いの時から西郷に拒否され、また、いずれ別れが来ることを承知している愛加那だったが、西郷が、心静かに過ごせるようにと尽くしているうちに、2人の心は通い合うようになっていった。黍の花は穂を垂らさず、天に向かい、まっすぐに立つ。強く、いさぎよい花――西郷が黍の花に託した想いを、愛加那は胸に刻みつけて、奄美で生き抜いた。
浄土
浄土
著:町田 康
文芸(単行本)
THIS IS PUNK! いま、ここに浄土があらわれる。破天荒なる暴発小説集 あなたはどぶに立ち汚辱にまみれて立ちつくしている一個のビバカッパをちゃちゃちゃんと見なければ。凝視して、そして笑わなければあかぬかったのだ。――<『どぶさらえ』より> ●高慢な男の虚飾がはがれた瞬間……『あぱぱ踊り』 ●建て前が存在しないすがすがしい街……『本音街』 ●ありふれたオフィスで起こったとんでもない事件……『自分の群像』――他、全7編収録
地上生活者 第2部 未成年の森
地上生活者 第2部 未成年の森
著:李 恢成
文芸(単行本)
ローティーンの時期を経て成長した愚哲は、やがて札幌のある高校へ進学する。彼の特技は、失敗すること。けれども朝鮮戦争のあとさきに、哲学し行動するさまざまな友人や教師から生きる知恵をまなんで民族の自覚を目指すが、脆くも挫折していく。貧しい家庭の内部に渦巻く欲望と呪詛の根源を見据え、歴史の隠蔽と文化の掠奪を告示する重層的な文体。 「我輩は朝鮮人である」と初恋の人に告白する豚屋の息子、愚哲少年のみずみずしい思春期。 冷戦構造下の「戦後民主主義」の死角を「在日」の目をとおして検証し、戦後60年と未来を見つめようとする新しい知的営為。 ローティーンの時期を経て成長した愚哲は、やがて札幌のある高校へ進学する。彼の特技は、失敗すること。けれども朝鮮戦争のあとさきに、哲学し行動するさまざまな友人や教師から生きる知恵をまなんで民族の自覚を目指すが、脆くも挫折していく。貧しい家庭の内部に渦巻く欲望と呪詛の根源を見据え、歴史の隠蔽と文化の掠奪を告示する重層的な文体。労働する「愚哲」と「ぼく」との二人三脚は、日常生活と非現実の夢を紡ぎ、さり気ないユーモアとアイロニーの連続の中で展開されていく。地上に生きるすべての人へ、その眼差しは向かうが……。
電子あり
地上生活者 第1部 北方からきた愚者
地上生活者 第1部 北方からきた愚者
著:李 恢成
文芸(単行本)
日本の植民地時代、樺太・真岡町まで流転していった一朝鮮人家族。愚哲は国民学校5年生のときに皇国少年として日本の敗戦を迎えるが、ソ連の侵攻後、一家はユダヤ人の協力を得て辛くもサハリンを脱出する。一族離散のこの体験と歴史の非情は、愚哲少年にはかり知れぬ罪意識を植えつける。在日朝鮮人としての自己形成がうまくいかぬこの未成年者と朝鮮戦争の勃発。戦後日本の、欺瞞と忘却の中で生きる愚哲の希望とは何か。 歴史の表面から消された樺太と、サハリンにおけるスターリン時代の朝鮮人の実存を、嘘泣き少年・愚哲の目をとおして奔出させた面白くて滑稽な、心を洗われる現代小説。 この現代小説こそ、大いなる人間の物語の復活である。 日本の植民地時代、樺太・真岡町まで流転していった一朝鮮人家族。愚哲は国民学校5年生のときに皇国少年として日本の敗戦を迎えるが、ソ連の侵攻後、一家はユダヤ人の協力を得て辛くもサハリンを脱出する。一族離散のこの体験と歴史の非情は、愚哲少年にはかり知れぬ罪意識を植えつける。在日朝鮮人としての自己形成がうまくいかぬこの未成年者と朝鮮戦争の勃発。戦後日本の、欺瞞と忘却の中で生きる愚哲の希望とは何か。
電子あり
陽気な幽霊 伊集院大介の観光案内
陽気な幽霊 伊集院大介の観光案内
著:栗本 薫
文芸(単行本)
京都の闇が名探偵を飲み込んだ! ミステリーツアーにかり出された伊集院大介。シナリオ外の出来事に混乱する旅行客を前に、「本物の」探偵の推理が冴える。 伊庭緑郎(いばろくろう)に騙されるような形で「名探偵とゆく 京都ミステリーツアー」のゲストになった伊集院大介。だが旅行会社の仕込みとは思えぬリアルな事件の続発に参加者たちはうろたえ始める…
物語の娘
物語の娘
著:川村 湊
文芸(単行本)
芥川龍之介と松村みね子(片山廣子)、堀辰雄と宗瑛(片山總子)。師と弟子、母と娘との2代にわたる“文学的”な「軽井沢の恋」のゆくえは……。 日本の近代、現代文学史において特異な閨秀作家の「謎」を探る知的冒険。 芥川龍之介と片山廣子、堀辰雄と宗瑛(片山總子)。いわば「軽井沢の恋」ともいえるこの2組のカップルの女性側は母と娘であり、男性側は文学上の師と弟子である。――<本文より>
命のことば
命のことば
著:瀬戸内 寂聴
文芸(単行本)
かけがえのない命を、輝かせて生きるために。先人の智恵を選りすぐり、寂聴尼があなたに贈る珠玉の「ことば」集。 カラー挿画 榊莫山 目次より いのちと申すものは――日蓮 過去を追うな――『中部経典』 一筋に正直の道を――鈴木正三 春の種を下さずんば――空海 一切の迷いは――盤珪永琢 万法は無より生じ――一遍 わが心にまかせずして――蓮如 和敬清寂――利休 罪の重き軽きあり――至道無難 我昔所造諸悪業――『華厳経』 親切で慎み深く――マザー・テレサ 己が長を恃むことなし――最澄 他を利するとは――ナーガルジュナ 治生産業、もとより布施――道元 人と人との間に――山田恵諦 今生は一夜のやどり――敬仏 人生における老年は――キケロ この世は美しい――釈尊 ほか全65篇
スパイラル・エイジ
スパイラル・エイジ
著:新津 きよみ
文芸(単行本)
身ごもった殺人者との共同生活。囚われの身は彼女、それとも私? 私は、なぜ匿うのだろう。殺人者と自分とはどこが違うのだろう。心を共振させながら、新たな生命を育んでいく。 30代女性の“心の変容”を描いた書き下ろし長編小説 ――確実に、彼女の中で胎児は育っているのだ。おかしな話だが、美樹の目には、犯した罪の大きさと妊娠によって、雪乃が何か特別な力が宿った人間のように映るのだ。 スパイラル・ポイント――30代後半の女性の心と体に劇的な変化が訪れる時期。 罪を犯した女、匿う女、暴こうとする女――3人は何を産み落とすのか?
声にして楽しむ源氏物語
声にして楽しむ源氏物語
編:NPO日本朗読文化協会,訳:瀬戸内 寂聴,その他:児玉 朗,その他:高橋 俊三
文芸(単行本)
声にすれば、「源氏」はもっとおもしろい! 瀬戸内寂聴の現代語訳『源氏物語』より朗読・音読にふさわしい名場面をダイジェスト。日本語の美しさと古典の魅力をより深く味わうために、読みやすくわかりやすい最適のテキストになりました。 『源氏物語』の書かれた千年前の王朝時代には、物語は、作者自筆の原稿を廻し読みしたり、書き写したりして拡まっていったのです。複数の人々が集まり、その中で声のいい朗読の上手な1人が、物語を音読すると、そこに集った人々が同時にみんな耳で聞き、目で読む以上に、自分の頭に刻みこんでしまうのです。そうして読まれ、広められていくのが、物語の運命でした。ひとりで読む時も、グループで読む時も、このテキストが『源氏物語』の導き手となって、あなたを雅びやかな王朝の世界に案内してくれることでしょう。――瀬戸内寂聴
空は青いか
空は青いか
著:花村 萬月
文芸(単行本)
孤独ってみじめだけど、孤独にならないと先に進まないこともある。 おやぢギャグまみれの過激な日常の中から独自の美意識、小説観が立ち上がってくるエッセイ集。 …枕許に抛(ほう)りだされたちょっとエッチな週刊誌(自慰未使用)の背に「空は青いか」と書き記されていることに気づいたのだ。ちゃんと「 」でとじてあるんだけど科白(せりふ)のつもりなのかなあ。とにかく水性ボールペンによる殴り書きにしては弱々しい文字は間違いなく俺の筆跡で、けれど、どういう意味があるのかは我ながらわかんない。いつ、書いたのかも記憶にない。――<本文より>
追跡
追跡
著:千野 隆司
文芸(単行本)
追い詰めろ。仇を取れ。真犯人はあいつだ! 父の死から18年後――生き残った菊右衛門を奈落の底に落とすことが、遺児・磯市の生きるよすがとなっていた。 角次郎と乙蔵は、「菊田川」で、ともに将来を嘱望される板前だったが、ある日、角次郎は永代橋の欄干から落ちて、死んでしまった。乙蔵は、角次郎の妻子の面倒を見続け、また「菊田川」を継いで、深川でも指折りの料理屋にした。が一方で、あの事件は、乙蔵の陰謀だったという噂が、まことしやかに流れていた。事件から18年後、角次郎の遺児・磯市は取り立て屋になっていた。磯市は噂を信じていた。菊右衛門を破滅させることが、唯一の生きる目標であった。
サージウスの死神
サージウスの死神
著:佐藤 憲胤
文芸(単行本)
群像新人文学賞優秀作 God does not play dice 頭蓋の中に数字を飼い、紅玉髄(サージウス)を皮膚の下にもつ男。回転盤(ルーレット)が魂の旋律を刻む。 男が地面に激突する直前、俺はそいつと目を合わせた。そのときから俺の頭の中に<数字>が住み着いた。ある日を境に、ルーレットへのめり込んでいく男。狂気の果てにたどり着いた場所「REPTILE」。<破壊と疾走>新鋭作家の放つハイブロウ小説。
狐寝入夢虜
狐寝入夢虜
著:十文字 実香
文芸(単行本)
第47回群像新人文学賞受賞作 現代社会に女性として存在することの新しい難しさ。ひとりぼっち――この世界のたった1つの哀しみを、深く潔い語りの力で描く、魅力的な才能の登場! 「狐寝入夢虜」には、深く潔い語りの力があった。この語りの力で、既成の作品の構造が壊れている。そのひとりぼっちの感じに、チャームがある。やっぱり小説はこうでなくちゃ。――加藤典洋 冒頭から言葉のリズムが面白い。言葉が描写の道具に使われてたまるかと初めから張り切っているのだ。現代社会に女性として存在することの新しい難しさを「悩む」という仕草を捨ててリズミカルに探求した作品。――多和田葉子 <選評より>
高橋たか子の「日記」
高橋たか子の「日記」
著:高橋 たか子
文芸(単行本)
高橋たか子の初公開の日記 2002年11月末から2004年9月末までの未公開の日記を中心に、高橋たか子の魂の軌跡を紐解く 窓をあけると、格子ごしに南天の若葉のそよぎがありたったこれだけのことなのに私の生に、そよ風が通る 今の日本は見たくもないのでずっと自分を幽閉していたが窓を、ふと、あけてみると若葉と微風とが、それだけがあるのなら、窓をあけていよう 見たくもない日本とは別などこか見えないところから風が、私へ、入ってくる――<本文より>
千々にくだけて
千々にくだけて
著:リービ 英雄
文芸(単行本)
アメリカ人日本文学作家が、9・11体験の核心から現代世界の変容と危機を鮮烈に描きだす「ノンフィクションを超えたフィクション」。 「9・11」に対峙する、新しい文学の誕生! 南の塔が崩壊したあとに、北の塔も、たやすく、流れ落ちた。見ているエドワードの耳に、音が響いた。ちぢにくだけて、broken,broken into thousands of pieces 2001年の夏の終わり、20年来定住している日本から母国アメリカへと旅立った主人公は、同時多発テロ発生により経由地カナダで足留めされる。すべての国境が閉鎖され、アメリカへも日本へも帰ることができない状況の中、砕け散った世界のおぞましくも新しいイメージが襲いかかる……。国境を越えて日本語の可能性を開拓してきた作家が、「9・11」後の世界に提示する傑作小説。 第32回大沸次郎賞受賞
にっぽん・海風魚旅(4)大漁旗ぶるぶる乱風編
にっぽん・海風魚旅(4)大漁旗ぶるぶる乱風編
著:椎名 誠
文芸(単行本)
南の島から北の港、どこでも新たな発見が待っていた ぼんやりぐるぐるふたつ島/鳴門から淡路島をぬけて神戸に行った/南北おもしろ不思議島/下北半島おののき旅/ひかる街道くねくね行脚/にっぽん南島今どきのむかし話/厚岸番小屋生牡蠣騒動/えべっさんの雨降り島/和歌山南進悲喜こもごも旅/壱岐のそれなり七不思議/日本の北のタカラ島
異物
異物
著:玄月
文芸(単行本)
自己存在を安穏と肯定できぬ者の焦燥と破壊。かつて住民の半数が朝鮮人だった町。そこで育った者と、新たに半島から移り住む者とのイントレランスな状況から「事件」は起こった。謎を追い疾走する傑作長編。 自己存在を安穏と肯定できぬ者のあまりにも危険な焦燥と破壊 凄絶に疾走する長編小説 町には、この十数年のあいだに、韓国や中国東北部の朝鮮族自治州からきた人たちもかなりの数住み着いた。かれらは不況の日本でもとくに深刻な大阪で、しぶとく小金を貯め、日本人や在日韓国人と結婚して堂々と家を持つ。この町は昔から、少なくとも80年前には住人の半数近くが朝鮮人であった。かれら5人にしても、日本人ふたり、在日韓国人二世がひとり、三世がひとり、朝鮮籍の二世がひとりという構成で、みんなこの町で生まれ育ったのだ。――<本文より>
電子あり
上陸
上陸
著:五條 瑛
文芸(単行本)
ようこそ、密航天国へ。 同居しながら建設現場を渡り歩く金満、安二、アキム。どこにでもいそうなダメ男3人は、過去にある大きな秘密を抱えていた。 貴様らが浮かれている間に、この国にはどんどん違う民族が入ってきて、生活基盤を築いていくんだ。これが、本当の国際化ってやつだ。せいぜい、いまを楽しむがいい。2000年になってこの国がどんなふうに変わるのかなんて、誰も予測できないんだからな。――<「1999年12月 上陸」より>