文芸(単行本)作品一覧

上陸
文芸(単行本)
ようこそ、密航天国へ。
同居しながら建設現場を渡り歩く金満、安二、アキム。どこにでもいそうなダメ男3人は、過去にある大きな秘密を抱えていた。
貴様らが浮かれている間に、この国にはどんどん違う民族が入ってきて、生活基盤を築いていくんだ。これが、本当の国際化ってやつだ。せいぜい、いまを楽しむがいい。2000年になってこの国がどんなふうに変わるのかなんて、誰も予測できないんだからな。――<「1999年12月 上陸」より>

暁の旅人
文芸(単行本)
幕末、そして維新。変革の日本を舞台に語られる感動の長編小説。吉村文学の真髄がここに。
日本近代医学の開祖・松本良順。信念を生きた、波乱と孤高の生涯。
幕末の長崎で西洋医学を学び、維新に揺れる日本を医師として自らの信ずる道を歩んだ人、松本良順。新撰組に屯所の改築をすすめ、会津藩で刀傷、銃創者の治療を指南し、さらには榎本武揚に蝦夷行きを誘われる――。医学の道に身を捧げた彼の数奇な運命に光を当て、その波乱と孤高の生涯に迫る感動の歴史長編小説。

『恐怖の報酬』日記
文芸(単行本)
祝 第26回吉川英治文学新人賞受賞!第2回本屋大賞受賞!
初のエッセイ集、受賞後第1作
イギリスとアイルランドにはとても行きたい。だが、飛行機には乗りたくない。
いよいよ迫ってきた搭乗時間に、廊下を歩いていった私はそこで完全に立ち止まってしまった。そこには、大きな窓があった。そして、その外には、大量のあの乗り物が蠢いていたのである。ひえー、あんなにいっぱいあの乗り物がっ。信じられないっ。オーマイガッ。空港なんだから当たり前だが、博多でも羽田でもこんなに沢山の飛行機を見たことはなかったのだ。さーっと全身から血が引いて、抜けた。私は完全に思考停止に陥った。――<本文より>

昔日より
文芸(単行本)
あの時、己の半身(はんみ)を棄(す)ててきた。
家康の寵妾(ちょうしょう)にも、渡中間(わたりちゅうげん)、牢屋同心にも……容赦なく歳月は過ぎてゆく。吉川英治文学新人賞作家が隈(くま)無く描く江戸三百年、8つの生きざま。
「黄鷹(わかたか)」とは名ばかりの老忍とひっそり暮らしていた清雲院のもとに裸足の町娘が駆け込んできた。想い人を追って伊勢へ行きたいという…。[第2話]
武士の意地を通したため国を追われ、中間に身を落とした弥次右衛門。匿(かくま)ってやった走込人(はしりこみにん)は矜持など持たぬ「似非侍(えせざむらい)」に見えるが。[第3話]
――ほか全8篇。

あの戦場を越えて
文芸(単行本)
現在の文学と切り結ぶ<批評の核心>とは何か!
ふやけた文学状況へ鋭く切りこみ、様々な問題点を整理し、未来への可能性を深く論じた鮮烈な評論集。
おそらく架空の「現在」という想像的な視点は、そのような欲望から生まれる。そしてそのような視点から、わたしたちは現実の断面を取り出すために「線を引くこと」をする。それは自由へと向かうために、わたしたちがいま手にしている現在の不自由さを見きわめる「法を措定する暴力」である。だとすれば、その「法を措定する暴力」が「法を維持する暴力」に転化して、不自由なものとして機能してしまうのは本末転倒だと言わなければならない。――<本文より>

希望
文芸(単行本)
8月9日 運命の時から絶望が始まった。しかし被爆者たちにも、一筋の希望の光がみえた。

『別れる理由』が気になって
文芸(単行本)
現代日本文学の最高傑作か、こんな破天荒な小説は見たことがない! 毀誉褒貶の激しい小島信夫の家族小説『別れる理由』。刊行から20余年、初めて本格的に論じられる根源的で異様な作品世界の全貌。天下の奇書か!
『別れる理由』はそういう時代との「同時代」性を持った尖端的な作品であるのだ。しかも、小島信夫は、例えばその勉強振りをすぐに作品に反映させる大江健三郎や安部公房らと違って老獪だから、それを明らさまに見せつけない。文章もごく普通の散文である。だから、ごく普通にその意味をたどって行こうとすると、いつの間にか、多重的そして多元的な意味の迷宮にさ迷い込んで行くことになる。だがその迷宮感覚はけっして不快なものではない。そこにこそ1つの、小説を読む喜びがある。――<本文より>

孤虫症
文芸(単行本)
第32回メフィスト賞は、バイオ・サイコ・ホラーだ!!
「ひりひりした文章が癖になって、早く明日の続きを読みたくなります」
「私の中にあるどろどろとした感情の肩代わりをしてくれて、読み終えると清々しさに包まれます」
「こんなに先を読みたくなる小説は10年ぶりくらいです!」
「シドニィ・シェルダン以上のスリルを味わっています」
この作品は携帯サイト The News で2005年1月4日~3月29日に配信されました。
「助けて欲しいの。いますぐうちに来てほしいの」私は携帯電話をきりきり握り締めた。『駄目よ、仕事中だわ』「お願い、お願い、聞いてほしいことが沢山あるの。お願い!」『すぐには無理だわ。だから水曜日はどう? 私、休みなの』「水曜日なら、必ず会ってくれるの?」『ええ、必ず』「忘れないでね、水曜日よ!」 携帯電話を握り締める私の手。ここにも、ここにも、ブツブツが! もう我慢できない。我慢できない。ああ、痒い、痒い、痒い、体中が痒い! 何? 今度はなんの音? 電話? 電話が鳴ってるのね。あああ、でも、痒いの、痒いの、それどころじゃないの、痒いのよ! ――<本文より>

日本はじっこ自滅旅
文芸(単行本)
死んでやろうか
北の半島、南の島……酒で身体を壊しに行くのが目的みたいにさすらって、吐血、離婚に鬱、吐血。希望の光はどこにある?

青春とは
文芸(単行本)
歳を重ねただけで人は老いない 夢を失ったときはじめて老いる
戦後の日本人に勇気と希望を与え、高度経済成長の原動力にもなったサムエル・ウルマンの名詩『Youth』、そのオリジナル詩が大胆な自由訳で甦りました。
入学、進級、卒業、就職、昇進、結婚、定年、還暦のお祝いに。企業研修会のテキストに……。

ホテル・クロニクルズ
文芸(単行本)
7つの場所の物語
「場所と存在」その間を彷徨う、私的連作短篇小説集
日常の隙間に潜む闇。その存在に気づいたとき、狂気とエロスが私を包む。
<収録作>
(1)ブラックサテン
紀州、南紀線
(2)交響
那覇、ビーチサイドホテル
(3)砂浜に雨が降る
ランカウイ、タンジュン・ルー・リゾート
(4)Radio Hawaii
ホノルル、カハラ・マンダリン・オリエンタル
(5)蜘蛛の家
金沢、ニューグランドアネックス
(6)地上にひとつの場所を!
ソウル、ソフィテルアンバサダー
(7)白猫
横浜、グランドインターコンチネンタル
場所がつなぐ人。人がつなぐ場所。7つの土地、ホテルを巡る連作短篇小説集。

ともだち刑
文芸(単行本)
「あなた」と「わたし」2人のバランスがくずれるとき、ともだちは、別のなにかに変わる。
この物語から目を背けてはいけない。
ともだちだったはずの「あなた」と「わたし」。ある瞬間、その関係は支配と被支配に変わる。地方にある中学校を舞台にくりひろげられる凄惨な現実。大人になっても消すことのできない痛み。誰もが経験する人間関係のあやうい緊張を切なく描いた長編小説。

灰色の北壁
文芸(単行本)
すべての謎は、あの山が知っている!
天才クライマーに降りかかった悲運の死。標高7000mの北壁で、彼が見たものは何か。
『ホワイトアウト』から10年。渾身の山岳ミステリー
世界のクライマーから「ホワイト・タワー」と呼ばれ、恐れられた山がある。死と背中合わせのその北壁を、たった1人で制覇した天才クライマー。その業績に疑問を投じる一編のノンフィクションに封印された真実とは……。
表題作ほか全3編。山岳ミステリー集
第25回新田次郎文学賞受賞作

元禄いわし侍
文芸(単行本)
えいえいえい。鰯あっての、元禄の世。
お犬様が闊歩した華やかな時代を支えていたのは、鰯の大豊漁だった。干鰯(ほしか)問屋の用心棒・半九郎が、美貌の女主人を助けながら大活躍!
元禄トリビア満載、注目の新・時代小説!
「笹森さまは、あの犬が中野の御用犬屋敷で何を餌に与えられるかご存じですか」「はて、犬は家人の食物の残りを与えられるのが常だが、犬屋敷で何を食べているのであろう。考えたこともなかったし、8万匹の犬の餌となると想像もつかぬ」以登の問いに半九郎は首を捻った。「笹森さまもよくご存じのもの、干鰯でございますよ。炊きあげた白米に味噌汁をかけ、それに干鰯を添えた餌を朝夕2回与えているのです」――<本文より>

銀閣建立
文芸(単行本)
この身が滅んでも、何百年の命を得るものを建てる!先の将軍・足利義政のためでなく、己のために。
松本清張賞作家の気鋭が放つ書き下ろし時代長編。
応仁の乱で疲弊した京。のちのちまで残る、そういうものを建てたい。身が滅んでも、建物は残る。自分が生きてきた証として。木材の見立て。設計図を描いて、墨打ちをする。壁塗りや屋根葺きについても完璧でなければならない。そう考えた番匠・橘三郎右衛門は、棟梁として心を傾け、技の限りを注いで銀閣の造営にかかわった。

風のように・女がわからない
文芸(単行本)
「愛の流刑地」で話題沸騰!渡辺淳一の珠玉のエッセイ集
鋭い視点と本音で綴った超人気シリーズ「風のように」ここに完結。
本当の意味で、男と女が心底からわかり合えることはないだろう。男と女は、まったく違う生き物だからである。なぜ、と首をかしげる人がいるかもしれないが…

授乳
文芸(単行本)
その場限りの目新しさなら、もういらない。「文学」をより深めて行く瑞瑞しい才能がここにある。
群像新人文学賞・優秀作
「こっちに来なさいよ」そう私に命令され、先生はのろのろと私の足下にひざまずいた。私は上から制服の白いブラウスのボタンを1個ずつ外していった。――<本文より>
私のブラジャーは少し色あせた水色で、レースがすこしとれかけている。私はそういうぞうきんみたいなひからびたブラジャーになぜか誇りを感じている。まだ中学生とはいえ、自分の中にある程度腐った女があることの証明のように思えたのだ。――<本文より>

イトウの恋
文芸(単行本)
「旅の時間は夢の時間」とあの女(ひと)は言った。人生はいつも誰にも不可思議なもの――。
ヴィクトリアントラベラーに恋した男の手記をめぐる、心暖まるラヴストーリー。
『FUTON』に続く会心の書き下ろし第2弾!
「ちっちゃな/ニッポンジン/そのクルマ 仔馬に/引かせて/カタカタと 歩いて/走って/丘を越えて やがて/消えてく/ヨコハマへ」
彼女があの不思議な物語を読んでいて、私がそばにいって、なにが書いてあるの、と訊ねると、彼女は昔、昔のお話、と答えたものだ。昔、昔、ヨコハマのお話、と。昔、昔、ヨコハマのお話?そう。昔、昔。ヨコハマのお話。ちっちゃなニッポンジンの話? と私が言うと、彼女は私を抱き上げて笑った。そう。昔、昔、ヨコハマの、ちっちゃなニッポンジンのお話よ。――<本文より>

恋するスターダスト
文芸(単行本)
キラキラッと、ときめいて、せつない。
携帯メールが織りなす、流れ星みたいな恋の物語。
携帯電話の画面は君の窓辺だから 僕はその窓明かりを眺めながら 電子のセレナーデを歌おう 心が宇宙なら、言葉は星 どうか僕の流れ星で 君の宇宙が一瞬きらめきますように 今宵も地上では 無数の星々のように 恋人たちの携帯電話が瞬く――<本文より>

人生ベストテン
文芸(単行本)
直木賞受賞第一作
13歳のあの夏から、私に会いにきたひとは――?
どこにでもいる男たちと女たちの<出会い>が生みだす、ちいさなドラマ。おかしくいとしい6つの短篇。
「床下の日常」 水漏れ工事に向かったマンションで、陰気な人妻から食卓に誘われたぼくは――
「観光旅行」 恋人と訣別するためイタリア旅行中の私は、観光地で母子喧嘩に巻き込まれ――
「飛行機と水族館」 アテネ帰りの飛行機で隣り合った泣き女が、なぜかぼくの心にひっかかり――
「テラスでお茶を」 男とのねじくれた関係を刷新すべく、中古マンション購入を決意した私だが――
「人生ベストテン」 40歳の誕生日を目前に、恋すらしていない人生に愕然とした私は――
「貸し出しデート」 夫以外の男を知らない主婦の私が、若い男を借り出してデートに挑むが――