文芸(単行本)作品一覧

開化奇譚集 明治伏魔殿
開化奇譚集 明治伏魔殿
著:野口 武彦
文芸(単行本)
歴史の大きな変わり目には、社会は流動化し、人間関係にも平時には起こりえず、想像もつかない変動が生じる。そんなときにひょっこり生まれる人びとの予想外の取り合わせは、貴重な“歴史の偶然”として現出するが、多くの場合たちまち短命に消え失せてしまい、人びとに記憶されず、ましてや記録として書き残されることもない。筆者(わたし)がこれから書こうとしている物語は、ことによったら歴史の流れを異なる水路に導いたかもしれないひとつのエピソードである(「明治天皇の馭者」より)。 文明とは、ある可能性の粉砕であり、開化とは、挫折した夢と怨みの上に咲いた花である。新時代の到来に必然はない。ありえたかもしれない未来と希望のもつれを解きほぐす、5つのネオフィクションの試みが見せる光景とは?
電子あり
今日よりもマシな明日 文学芸能論
今日よりもマシな明日 文学芸能論
著:矢野 利裕
文芸(単行本)
「群像」誌上に発表し、話題となった傑作文芸批評をまとめた試みの作家論集。 序論 町田康論 いとうせいこう論 西加奈子論 ほか小山田圭吾、みうらじゅんにも言及。 「自分ならざる者を精一杯に生きる」   “今日よりも少しはマシな明日を迎えるために” ――《芸能》の核心は、この「ウソ/本当」の二分法を貫く、一生懸命で心を込めたいとなみに宿っている。このような意味において、小説もまた《芸能》のいち形態である、と言える。小説もまた、音楽や映画や漫画といった他の表現と同様、ここにはない喜びを、悲しみを、憎しみを、愛しさを現前化しようとする。  小説とは、わたしたちが生きる日常とはまったく異なる出来事が上演される場所だ。作中人物たちはゆたかな世界を演出すべく、小説の舞台を動きまわり、読者の気を引こうとする。そして、彼らの行動を追い、彼らに感情移入さえする読者は、ほんのつかのま、読書行為を通じて、普段の自分とは違う何者かになる。もしかしたら、読むまえと読んだあととでは、世界が一変しているかもしれない。すぐれた《芸能》とはおうおうにして、そういうものだ。  大事なことは、《芸能》の世界が少なからず、現実の世界なり社会なりと異なっている、ということだ。逆に言えば、現実の社会を追認するような《芸能》は物足りない。退屈な社会を生きるわたしたちが、ほんのひとときでも、《芸能》に触れて日常から抜け出す。その逸脱による解放的な喜びこそ、明日以降を生きるための活力となるのだ。  いち生活者の僕は、だからこそ、小説を読む。だからこそ、音楽を聴く。明日以降の生活を少しでもマシなものにするために。――(本書序論より抜粋)
電子あり
奇跡
奇跡
著:林 真理子
文芸(単行本)
発売たちまち10万部突破! amazon(本・売れ筋ランキング2.19調べ)1位! オリコンランキング文芸書(2.21-27)1位! 一気に読み切った後の温かい愛の余韻を、 今も感じている。    都倉俊一(作曲家) パリの友人Tは、がんじがらめに繋がった世界に、 愛とアートで奇跡のスキマをあけた。    隈研吾(建築家) 「奇跡」というタイトルとは裏腹に、 自分のすぐ身近で起きた出来事のようで 圧倒的なリアリティにページをめくる手が止まらなかった。    藤田晋(サイバーエージェント代表取締役) 愛ってなんて尊くて美しくて強いんだろう。 愛というものについてとてつもない勇気をいただきました。    JUJU(歌手) こんな恋がしたいと憧れる人がいれば、 ただの不倫でしょ!と目を背ける人もいるでしょう。 羨望、嫉妬、軽蔑……。 全てを引き受ける林真理子さんの筆が奇跡です。    井上由美子(脚本家) 漫画家やってると「私の人生を漫画にしてよ」とよく言われるものですが、 こんな物語だったら……そりゃ描きたくなりますよ!!!    東村アキコ(漫画家) 男は世界的な写真家、女は梨園の妻 「真実を語ることは、これまでずっと封印してきました」 生前、桂一は博子に何度も言ったという。 「僕たちは出会ってしまったんだ」 出会ってしまったが、博子は梨園の妻で、母親だった。 「不倫」という言葉を寄せつけないほど正しく高潔な二人ーー。 これはまさしく「奇跡」なのである。 私は、博子から託された”奇跡の物語”をこれから綴っていこうと思う。 数々の恋愛小説を手掛けた林真理子が、一生に一度描かずにはいられなかった ”本当にあった”愛の物語。 38年ぶりの書き下ろし!
水納島再訪
水納島再訪
著:橋本 倫史
文芸(単行本)
離島と沖縄。埋もれていた近現代史が見えてくる4泊5日の旅の記録。 沖縄のやんばるにある「クロワッサン・アイランド」と呼ばれる小さな島・水納島。開拓、戦争、産業、海洋博、そして現在……。再訪を重ねてきた気鋭のライターが綴る、エッセイ・ノンフィクション。 目次 1 夕日 2 庭先 3 井戸 4 桟橋 5 校舎 6 灯台
電子あり
誰かがこの町で
誰かがこの町で
著:佐野 広実
文芸(単行本)
「王様のブランチ」で大反響、大重版! ゾクゾクが止まらない、読む前には戻れないミステリー! 高級住宅街の恐ろしい秘密。住民たちが隠し続けてきた驚愕の真実とは? 人もうらやむ瀟洒な住宅街。その裏側は、忖度と同調圧力が渦巻いていた。 やがて誰も理由を知らない村八分が行われ、誰も指示していない犯罪が起きる。 外界から隔絶された町で、19年前に何が起きたのか。 いま日本中のあらゆる町で起きているかもしれない惨劇の根源を追うサスペンス! 江戸川乱歩賞受賞第一作。 変だと思っている者はあまりいないかもしれない。 「この町ではそういうものなのだから、従うのが当たり前だ」 と、周囲から言われ、そのうちになにも違和感を感じなくなる。 わたしにしても、特に生活に支障がないかぎり、なんとなくそうなっているのを認めているといってもよかった。 良子さんのようにあらためて口にすると角が立つからだ。 (本文より)
ブラックボックス
ブラックボックス
著:砂川 文次
文芸(単行本)
第166回芥川賞受賞作。 ずっと遠くに行きたかった。 今も行きたいと思っている。 自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。 自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。 昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。(本書より) 気鋭の実力派作家、新境地の傑作。
戒厳
戒厳
著:四方田 犬彦
文芸(単行本)
 ソウルの大学への就職話というのもそれほど悪いものではないかもしれない。なにしろ自分はこの2年というもの、横文字ばかり読んできて、すっかり頭が欧米向きになってしまった。フランス語も英語も存在しない、この不思議な文字の連なりからなる国に足を向けるというのも、考えようによっては面白いに違いない。焼肉もキムチも好きだ。焼肉は食べ放題だっていうではないか。きっとこれは真の意味で冒険となるだろう。何しろまったく予備知識のない社会に、白紙同然の状態で行こうとするのだからな。となれば、ぐずぐずはしていられない。今すぐパスポートを申請し、ヴィザの発給を受け、この文字に少しでも親しんでおくことだ。わたしはそう決意した。わたしはパスポートを受け取ると、その足で南麻布にある大韓民国大使館に向かった。  1970年代に日本人が韓国を訪問するには、理由と期間の如何を問わず、ヴィザの発給を受ける必要があった。とりわけわたしの場合には、観光や就学のヴィザではない。一年間を外国人教師として過ごすには労働ヴィザを取得しておかねばならない。それは極めて稀なことだったのである。…… 「ところで皆さん、韓国に行ったことはありますか。」宴会のなかで梁さんの発したひと言が「わたし」の運命を大きく変えた。20代前半の「わたし」は日本語教師として、ソウルの大学に赴任し、そこで朴正煕大統領暗殺、戒厳令の施行に遭遇する。『ソウルの風景』(岩波新書)の著者による渾身作。
電子あり
サンセット・サンライズ
サンセット・サンライズ
著:楡 周平
文芸(単行本)
在宅勤務なら「お試し移住」してみよっかな? 選んだ場所は魅惑の“楽園”だった! 地方創生は「行政任せ」から「ビジネスモデル」へ 初代地方創生担当大臣 石破茂 三陸の食と空家と人情が、日本を救います 岩手県知事 達増拓也 築9年、3LDK、家具家電付き――なのに家賃8万円!? 大手電気機器メーカー「シンバル」に勤務する西尾晋作は、海釣りが大好き。 コロナ禍でテレワークが当たり前になったことを機に、海に近い田舎に移住を考え始めると、宮城県に家具家電付きの神物件を発見する。家賃の安さに惹かれ、「お試し移住」を始め、夢のような山海の幸に大満足。地域民とのいざこざを経験し、晋作はこの楽園で、ある新事業を思いつく――。
石を黙らせて
石を黙らせて
著:李 龍徳
文芸(単行本)
名も知らない女性の人生を、尊厳を傷つけた。 過去の強姦を告白し、婚約者と家族から断絶された男は、 謝罪のために事件を公表し、被害者探しを思い立つ。  せめて罰を受けさせてくれ 罪とはなにか。その罪に許しはあるのか。 『死にたくなったら電話して』の著者が突きつける、このうえなく深い問い。 「謝るというのはある種傲慢な行為であって、自分の本来の気持ちばかりがどうしても滲み出てくる。 それを含めて書いているのが巧みだと思った」           高山羽根子 「性被害については、どうしても被害を受けた女性側が語る立場に置かれることが多い。男性側がポロッと発語することで露わになってしまうもの、発語した瞬間に生じる社会との摩擦といったものがちゃんと書かれている点を最大限に評価したい」           倉本さおり 「この作品には、出来事を終わらせないことの倫理観はあった」           矢野利裕
電子あり
オン・ザ・プラネット
オン・ザ・プラネット
著:島口 大樹
文芸(単行本)
第166回芥川龍之介賞候補作。 「終わったのかな」「なにが?」「世界?」 同じ車に乗り込んだぼくら四人は、映画を撮るために鳥取砂丘を目指す。 注目の新星が重層する世界の「今」を描く、ロード&ムービー・ノベル。 「これからぼくらが話すことは、人類最後の会話になるかもしれない。 そうやって考えるとき、皆は何を話したい?」 記憶すること、思い出すこと、未来に向かって過去をみつけ直すこと。 現実と虚構の別を越えて、新しい世界と出会う旅。 群像新人文学賞受賞のデビュー作『鳥がぼくらは祈り、』に続く、23歳の飛躍作!
電子あり
寂聴さんに教わったこと
寂聴さんに教わったこと
著:瀬尾 まなほ
文芸(単行本)
追悼 瀬戸内寂聴さん 66歳年下の秘書が、誰よりも近くで見つめつづけた寂聴さんの最期の日々と、愛の教え。 寂聴さんの素顔を伝える写真多数収録。 「10年間、私が見てきた寂聴先生の素顔と、先生から私が教わったこと、先生の情熱と愛溢れる生き方が、 この本を読んだ人に伝わってくれたらうれしい。」(本文より) ・まえがきより―― 2021年11月9日、瀬戸内寂聴先生が亡くなった。私は今も先生がこの世にもう存在しないことが理解できていない。 先生は寂庵にずっと帰りたがっていた。「死ぬのは寂庵がいい」、そう言っていた。帰る準備もしていたのに、それを待たずして先生の容体は急変し、逝ってしまった。 「先生のそばに最後までいる」と決めていたけれど、そんなに簡単なことではなかった。大切な人の死に直面するということは私が想像していた以上にきついことだ。 「瀬尾さんの声を一番よく聞いていたし、慣れているから先生は理解しやすいんだね」と入院中によく言われた。会話は出来なくとも、先生は耳が聴こえていて私の言うことは理解していたし、相槌も打ってくれた。 先生が亡くなる前日、私は先生と二人きりになれた。私が一方的に話していたけれど、息子の話をすると先生が笑った気がした。いや、絶対笑った。まさかその時が先生との最後の会話になるとは思わなかったけれど、その時間が持てたこと、今でも本当に良かったと思う。 先生との時間はいつか終わりがくるとしても、こんなに急にくるとは思いもせず、私の半身がどこかへもぎとられていくような気持ちになる。温かくひだまりのような先生の笑顔がもう見られないと思うと、私の心は寒く心細くなってしまった。 けれど友人が教えてくれた言葉に、「失くしたものより残ったものを数えろ」という名言があって、私もそうしようと思う。 先生との日々は尊いものであり、私にとって宝物であったことを強く感じている。 ――瀬尾まなほ
その日まで
その日まで
著:瀬戸内 寂聴
文芸(単行本)
99歳、最期の長篇エッセイ。 切に愛し、いのちを燃やし、ペン一筋に生き抜いた。70余年にわたる作家人生の終着点。 「結局、人は、人を愛するために、愛されるために、この世に送りだされたのだ。 充分、いや、十二分に私はこの世を生き通してきた。」 三島由紀夫、萩原健一、石牟礼道子ほか、人生でめぐり逢った忘れえぬ人々、愛した男たち、そして家族の記憶。99歳まで現役作家としてペンをふるった著者が、自らの老いに向きあい、「その日」をみつめて綴りつづけた、最後の自伝的長篇エッセイ。 ・本書よりーー 私は自分の「その日」を、どのような形で迎えるのであろうか。 九十九歳とは何と長い、そして何と短い時間であっただろう。 百歳近く生きつづけて、最も大切なことは、自分の生きざまの終りを見とどけることだけであった。 戦争も、引揚げも、おおよその昔、一通りの苦労は人並にしてきたが、そんな苦労は、九十九年生きた果には、たいしたこととも思えない。 生きた喜びというものもまた、身に残された資産や、受けた栄誉ではなく、心の奥深くにひとりで感得してきた、ほのかな愛の記憶だけかもしれない。 結局、人は、人を愛するために、愛されるために、この世に送り出されたのだと最期に信じる。 充分、いや、十二分に私はこの世を生き通してきた。
黛家の兄弟
黛家の兄弟
著:砂原 浩太朗
文芸(単行本)
第35回山本周五郎賞受賞作! 第165回直木賞、第34回山本周五郎賞候補『高瀬庄左衛門御留書』の砂原浩太朗が描く、陥穽あり、乱刃あり、青春ありの躍動感溢れる時代小説。 道は違えど、思いはひとつ。 政争の嵐の中、三兄弟の絆が試される。 『高瀬庄左衛門御留書』の泰然たる感動から一転、今度は17歳の武士が主人公。 神山藩で代々筆頭家老の黛家。三男の新三郎は、兄たちとは付かず離れず、道場仲間の圭蔵と穏やかな青春の日々を過ごしている。しかし人生の転機を迎え、大目付を務める黒沢家に婿入りし、政務を学び始めていた。そんな中、黛家の未来を揺るがす大事件が起こる。その理不尽な顛末に、三兄弟は翻弄されていく。 令和の時代小説の新潮流「神山藩シリーズ」第二弾! ~「神山藩シリーズ」とは~ 架空の藩「神山藩」を舞台とした砂原浩太朗の時代小説シリーズ。それぞれ主人公も年代も違うので続き物ではないが、統一された世界観で物語が紡がれる。
最終列車
最終列車
著:原 武史
文芸(単行本)
 いま、新型コロナウィルスが猖獗をきわめていますが、これもいつかは終息することでしょう。しかし、コロナは日本人の生活の形式(エートスといっていいかもしれません)を確実に変えました。  コロナ禍が終息し、国内外の観光客が戻ってきても、日本の鉄道はかつての姿を取り戻すことはないでしょう。通勤客が以前と同じ程度にまで戻ることはなく、出張のための移動も減るに違いありません。ある調査では、3割程度の会社員が感染終息後もリモートワークを続けるという見通しが出されています。  正確にいえば、すでにコロナ禍の前から、少子高齢化による通勤客の減少や、それにともなうラッシュ時の混雑率の低下が都市部の多くの鉄道で少しずつ起こっていました。これは「小林一三モデル」の崩壊といえるでしょう。  阪急の創業者、小林一三は、1910(明治43)年に箕面有馬電気軌道(現・阪急宝塚線および箕面線)を開業させたのと同時に、沿線の池田に分譲住宅地を開発し、梅田までの通勤客をつくり出すことで、私鉄会社の経営を軌道に乗せました。この手法は後に、東急など多くの私鉄が模倣するようになり、世界でも珍しい私鉄経営のビジネスモデルとして称揚されました。ところがコロナ禍によって、一世紀以上にわたって続いてきたこのモデルが通用しなくなる時代が本格的に到来したのです。  戦争も自然災害も鉄道に甚大な被害をもたらしたが、復旧すれば客が戻ってきました。一方、コロナ禍は利用客の完全な回復を困難にした点で、戦争や自然災害を上回る危機を鉄道業界にもたらしたことになります。  では、コロナ禍という未曽有の危機から脱却し、鉄道業がふたたび脚光を浴びる可能性はあるのでしょうか。ポストコロナの時代にふさわしい新たな価値を、鉄道は創り出すことができるのでしょうか。  著者の原氏は2019年まで講談社のPR誌『本』(2020年休刊)「鉄道ひとつばなし」を長期連載し、多くの読者を楽しませてくれました。本書は同連載のうち単行本化されていないものを収録し、あらたに「ポストコロナ時代の鉄道」についての考察を加えたものです。鉄学者原氏にとって本書は、文字どおり「最終列車」であると同時に、氏の思索の「ダイヤ改正」と「始発列車」の予告となるものです。
松尾芭蕉を旅する 英語で読む名句の世界
松尾芭蕉を旅する 英語で読む名句の世界
著:ピーター・J・マクミラン
文芸(単行本)
英語で読めば、古典はもっとよくわかる!アイルランド出身の詩人・翻訳家で日本の古典に通じた著者が、「奥の細道」をはじめ春夏秋冬の旅で詠まれた芭蕉の名句80句を精選。的確で美しい英訳とともに、現代語訳と、わかりやすい解説で芭蕉の新たな魅力を発見する。最良の古典ガイドブック! 【芭蕉の句】 旅人と我名よばれん初しぐれ 【英訳すると⇒】  First winter showers! call me by my true nameー Traveler! 【解説より抜粋】 「(旅人と)よばれん」という表現には、旅に生きた先人と同じく、旅人になろうとする決意が込められている。初冬の景物である時雨とともに旅立つ以上、これから厳しくなっていく寒さに耐えながら進まなければならない。英訳では、旅人として生きる覚悟が伝わるように、「call me by my true name―Traveler!」とした。意訳ではあるが、結果としてこの句の真髄に迫る訳になったと思う。

電子あり
ビザール学園
ビザール学園
著:前川 裕
文芸(単行本)
【bizarre 怪奇な、奇妙な】 奇怪な学園ドラマを読み進んでいくうちに、いつの間にかモラルや正義や良心が解体され、私の心の中に本物の地獄が形成されていた。―黒沢 清(映画監督・「クリーピー 偽りの隣人」、2020年度キネ旬ランキング1位・ベネチア映画祭監督賞「スパイの妻」〉ブックデザイン:坂野公一(welle design) 学園にはびこる陰鬱とした空気感と生徒たちの間で囁かれる不気味な噂を巡って、どんどんスト-リーに引き込まれていきます。―人気YouTuber キリン考察系〈チャンネル登録数185万人〉 実を言うとこんな学園で教えるのは、私も嫌だ。『クリーピー』よりも、もっと“ビザール”で恐ろしい世界を描いてみた。そんな恐怖に満ちた学園の雰囲気をお召し上がれ。―前川裕(著者) 名監督・黒沢清で映画化された衝撃的デビュー作『クリーピー』以来、 一貫して猟奇事件/サイコな人間をえぐるショッキングなミステリー作品を発表し続ける著者が放つ、 虚飾と嘘に塗れた進学校を舞台にした、薄気味悪さ最高の学園猟奇ミステリー。 大手予備校の人気講師から転身し東京郊外の進学校・綾西学園へ転任した男性教師・三隅。 赴任時に彼を迎えた校務員・高木の嫌な雰囲気に、三隅は過去のトラウマ的記憶を呼び起こされる。 学校の実態は、理事長の下僕のような管理職や体罰肯定の体育教師が幅を利かせる表向きとは正反対の時代遅れな組織。 さらに生徒たちに蔓延する、この学園は呪われているという噂。 噂の裏には学校敷地内での忌まわしい未解決事件があった。 そしてついに女子学生がその禁忌の場所で、むごたらしく死んでいるのが発見される……
心霊探偵八雲 INITIAL FILE 魂の素数
心霊探偵八雲 INITIAL FILE 魂の素数
著:神永 学
文芸(単行本)
【特殊能力探偵二人が夢の競演!】 著者のもう一つの代表作「確率捜査官」シリーズの毒舌天然数学者・御子柴岳人が、大学の担当教官として斉藤八雲とスリリングな推理合戦を展開。死者が見える八雲・確率で事件を解く御子柴の心霊×科学=最強バディはミステリーの常識を軽々と凌駕する! 累計700万部超、八雲シリーズのさらなる進化に注目せよ。ブックデザイン:坂野公一(welle design)イラスト:遠田志帆 収録作:「亡霊のバイアス」「魂の素数」「呪いの解法」
卒業
卒業
著:ごとう しのぶ,絵:おおや 和美
文芸(単行本)
シリーズ累計500万部突破の大人気BL小説《タクミくんシリーズ》(角川ルビー文庫刊)。 「祠堂(しどう)」の名を冠する男子校の生徒たちの群像劇でもある同シリーズは、原作挿絵を担当するおおや和美によるコミカライズ、3度の音声ドラマ(ドラマCD20枚以上)化、舞台化、5度の映画化を経て、今なお関連シリーズが意欲的に発表されている一大コンテンツです。 シリーズ最初の作品が発表されて30年以上となる現在も、「BLのバイブル」「BL小説の金字塔」として、また多彩なキャラクター陣の成長を見守る壮大な物語として、ごとうしのぶファンのみならず、BLファンからの絶大な支持を得ています。 「タクミくん」シリーズ最終巻では、葉山託生(タクミ)の恋人・崎義一(ギイ)が、祠堂学院で卒業を迎えることなく姿を消し、読者に衝撃を与えました。が、本作『卒業』では、その後の恋人たちの感動的な再会と、仲間による感動のサプライズの様子、また人気サブキャラクターたちの関係の深まりが描かれていきます。アラサーとなった主人公たちを描いた「崎義一の優雅なる生活」シリーズとの間をつなぐ重要な物語として、タクミくんファン必携の一冊となっています。 ※巻末に、完全新作の書き下ろし短編が収録されます。  ・イラスト/おおや和美 【初出(一部)】 ごとうしのぶ個人誌 『真冬の麗人2016』 『真冬の麗人2017』 『春風の麗人2018』 『初夏の麗人2019』 『春風の麗人2020』ほか 上記同人誌収録作を、統合のうえ、大幅加筆修正しています。
葛藤
葛藤
著:文縞 絵斗
文芸(単行本)
愛して、恨んで、それが人。 生まれたばかりの我が子を誘拐され、失意を拭えぬまま夫婦だけの生活を続けてきた三好紗英は、16年後ある女子高生と出会う。少女は誘拐された自分の娘なのではないか? しかし、たとえ我が子だったとしても、今さら名乗り出ては少女を混乱させ心に傷を負わせてしまうかもしれない。 少女の幸せと、喪失を抱え生きてきた自分の希望を天秤にかけ、紗英がとった行動は……。
電子あり
パラソルでパラシュート
パラソルでパラシュート
著:一穂 ミチ
文芸(単行本)
第165回直木賞ノミネートで話題をさらった『スモールワールズ』著者、感動の長編小説!「できること、やりたいこと」何もない――。大阪の一流企業の受付で契約社員として働く柳生美雨は、29歳になると同時に「退職まであと1年」のタイムリミットを迎えた。その記念すべき誕生日、雨の夜に出会ったのは売れないお笑い芸人の矢沢亨。掴みどころのない亨、その相方の弓彦、そして仲間の芸人たちとの交流を通して、退屈だった美雨の人生は、雨上がりの世界のように輝きはじめる。美雨と亨と弓彦の3人は、変てこな恋と友情を育てながら季節は巡り、やがてひとつの嵐が訪れ……。