文芸(単行本)作品一覧
義なくば立たず
文芸(単行本)
人を動かす、この荒業に生きた感動の長編!明治維新という回天の事業を支えたものは何か。――資金であり「義」であった。幕末長州藩の巨額の負債を返済し、維新を成功させる人と資金を準備した男の生涯!

甲比丹物語
文芸(単行本)
未完に終わった森瑤子の絶筆(『甲比丹』)その遺志を継ぎ、実父が紡いだ新たなる本格的時代小説
「出島の三色旗を降ろすな!」――亡国の危機に臨み、幕府を欺き続けた1人のオランダ商館長がいた。

花の歳月(新装版)
文芸(単行本)
「史記」の中で最も美しく感動をよぶ物語!
漢の王室入りした姉とさらわれた弟の運命的再会を、格調高い文体で描く名品!
「姉はわたしどもを残して西へ去るとき、伝舎で別れました。姉は洗髪の道具を借りうけて、わたしの髪を洗ってくれました。また、食べ物を請うて、わたしに食べさせてから、去ってゆきました。」広国(こうこく)がそういったとき、衝立(ついたて)の倒れる音がした。たまらなくなった猗房(いぼう)は、衝立にもたれかかり、それを倒すと、「広国――」と、嗄れた声で呼びかけながら、あたりの者はまるで目にはいらず、ひたすら弟に走り寄ってかれを抱きしめた。「姉さん」広国の声が感激でふるえた。――侍御(じぎょ)左右、皆、地に伏して泣き、皇后の悲哀を助く。
と、司馬遷は「史記」で描写している。――(本文から)

謎の毒薬 推究帝銀事件
文芸(単行本)
毒薬は青酸カリではなかった
帝銀事件から半世紀──今明かされる毒薬の謎。30年の歳月をかけて遂につかんだ真実。そこには事件の本当の姿が見える。
衝撃の書下ろしノンフィクション

台風娘
文芸(単行本)
その夏、僕は台風娘と恋をした!
南の島でダイスケの胸に生まれた小さな恋の竜巻は、コンピュータや人工衛星を駆使しての予測を裏切り、超弩級の台風になっていく。いま注目の気鋭が描く大歓喜図。

零の力
文芸(単行本)
芥川賞作家の文学観を示す初の評論集。ボルヘス論(「群像」新人賞)を含む渾身の全5篇
私の関心をひく文人は本書にある通りボルヘスばかりではないが、最初に活字にしてもらう機会を与えられたのがボルヘス論だったためだろう、東洋人みたいにいつも錯覚してしまうこの〈詩・批評・物語〉サンミイッタイの文学者は私にとって一種の守護神的存在となり現在に至っている。――「あとがき」より

雪蛍
文芸(単行本)
「探偵は職業ではない。生き方だ」
行方不明の17歳の娘を捜してほしい。――旧友の依頼に心をかきたてられる私立探偵・佐久間公(こう)。だが、行く手には深い闇が……

官僚たちの志と死
文芸(単行本)
「公」のため志に殉じ命をけずった官僚たちの毅然たる人生と壮絶な死。
いま、ありうべき官僚像を問う渾身のノンフィクション
官僚に対する風当たりが強い。大蔵省の中枢を歩いていた中島義雄や田谷廣明等のタカリの実態を知れば当然であり、私自身、今日の住専スキャンダルを招き寄せた銀行局長歴任者の土田正顕、寺村信行等の愚策や無策については厳しく批判しているが、しかし、官僚のすべてが彼らのようであるわけではない。ここに取り上げた山内豊徳、田辺俊彦、川原英之、そして元官僚の伊東正義の各氏は、まさに彼らの対極に位置する官僚である。その「詩と死」に焦点を当てて、私はありうべき官僚像をさぐった。――(「あとがき」より)

三月生まれ
文芸(単行本)
少年たちの心の揺れをみずみずしく軽やかに描いた作品。淡い初恋、大人の男女間に流れる波紋、出会いそして別れの予感。――ちょうど同じ時間、兄の中子充は安直な片思いの恋に落ちようとしていた。(中略)思いがけず川並由佳が振り返って自分を見ていた。川並由佳が自分の名前を知っていた。知っていたばかりか、彼女の方から中子君と呼びかけてきた。たったこれだけのことで、充の片思いは始まったのだ。――本文より

ウィ-ンの密使
文芸(単行本)
新視点から描く革命の真実
マリー・アントワネットを洗脳せよ!
革命の陰にうごめくオーストリアの謀略。密命を受け、狂乱のパリにむかう青年士官の野望。

玄
文芸(単行本)
女王(クイーン)を愛した私。その美しさにふさわしい言葉は白昼堂々。現代の最先端を描く傑作小説。
みんなは大声でしゃべりながら歩いていた。しゃべり散らしながらだ。すべて男の声だ。……(中略)……彼らがほんものの女でないことはすぐに判った。ひとりひとりでいるなら、彼らはもっと女に見えた。――(本文より)

蘭と狗
文芸(単行本)
第6回時代小説大賞受賞作
放火して小伝馬町から脱獄した蘭学者・高野長英。焼死した女房の残した音の出ない鈴を手に執念の鬼となって追う岡っ引・瓢六……。
あいつだ!板橋宿で牙をむいた狗。「もういっぺん、てめえを檻ん中にぶち込んでやるぜ」と獰猛(どうもう)に吼えた岡っ引の、悪鬼のようなあの顔だ。だが、なぜ?なぜ江戸の岡っ引がここまで追ってくるのか。途方もない時間と労力をついやして、おれを追い続ける理由は?あの男の執念を支えているものは?相手の腹の底が見えぬだけに、長英にはいっそう不気味さが募った。
歌垣の王女
文芸(単行本)
日本初の女帝推古天皇の知謀と美貌の半生。日本書紀に「進止軌正 姿色端麗」と記されている日本史上初の女帝の恵まれた美貌を生かした謀略の人生と歴史上での役割を、いきいきと描く著者得意の古代史小説

虚構の天体 谷崎潤一郎
文芸(単行本)
空虚朦朧礼讃
巨大な謎の天体・谷崎潤一郎を、近代文学の呪縛から解き放ち、その真価を立体的に捉えなおした本格評論。

原阿佐緒
文芸(単行本)
傷ましくてもどかしくせつなく愛しい
男や社会に翻弄されながらも歌に恋に奔放無垢に生きた美貌の歌人
明治に生れ、大正、昭和を生きた女性のなかには、男社会であった当時の社会の眼によって、真実の人柄とはちがった女性のように評価され、それが定着してしまっている気の毒な人物がいると思います。原阿佐緒はその中の最たる1人です。いつか、誰かが、ほんとうの彼女を、今日の公正な眼で見直して、ありのままに描くことによって、真実の姿を正しく評価しておくことが必要だと考えます。──「あとがき」より

氷海の幻日
文芸(単行本)
激動するあの時代、日本を離れて極北の地アラスカを彷徨った青年の魂の軌跡。
あえてレッテルを張るなら、青春逃亡小説ともいうべきこの物語で、時代からの逃亡者が、はからずも体験した冒険の数々を、読者に楽しんでいただければありがたい。──著者の言葉

江戸群炎記
文芸(単行本)
時代小説大賞受賞第1作
無明三段斬りの名手早野小太郎の剣が冴える書下ろし伝奇ロマン
新しく石を配したばかりの殺風景な庭先に、蓬髪の旅僧が悄然として立っていた。「これが、「火の砦」の招いたものか」旅僧は光圀に背を向けたまま、口の中で低くつぶやいていた。――本文より
超恋愛論
文芸(単行本)
恋をたのしくスリリングに、翔ベ女性たち!結婚のための恋愛論はもう読みあきた…時代は変わった。女と男の恋も変わる。世紀末をいかに生きぬくかは、いかに恋愛するかを問うことだ。男女の為の恋愛30章

ピピネラ
文芸(単行本)
ある日突然、体が小さくなった妻。謎に満ちた夫さがしの旅。
仕事や恋愛などをうまくこなしているようでも、人は自分の本当の欲望のありかについては何も知らない。『ピピネラ』はそれに気づいたひと組の男女が、それぞれの方法で自分の欲望の所在をつきとめようとする「心の旅」の物語である。そしてその不思議な旅が終わったときふたりにもたらされるものこそが、“真の結婚”なのだ。──香山リカ[精神科医]

夢幻の宴
文芸(単行本)
エッセイ36篇+小説2篇1986~95年の倉橋文学の宴
普通、作家たるものには、時代の雑踏の真ん中にいて、まわりの声を拡大して叫び、時には人々の先頭に立って踊り狂うことまで期待されたりします。この期待にとても添えそうにない人間としては、現役の作家たることを止め、冥界に籍を置いて、時折、誰の手になったものかわからない、つまり鬼の手になる作品を雑踏の中に投げ入れて、物好きな人間が拾って読むのをひそかに愉しむ、という悪戯でもするほかありません。──本文より