講談社学術文庫作品一覧

アイヌの世界観 「ことば」から読む自然と宇宙
アイヌの世界観 「ことば」から読む自然と宇宙
著:山田 孝子
講談社学術文庫
動植物を神格化し、自然も神も人も、すべては平等である――! アトゥイ(海)、アペ(火)、コロ(支配)、カラ(創造する)、ウク(受取る)・・・・・・。驚くべき自然観察者であるアイヌ。その、名付けの意味、語源、語彙素構成や使用法を丹念に拾いながら、彼らの宇宙観、霊魂観、動植物観を言語学的に分析。認識人類学的アプローチで、”アイヌ文化”を旅します。 本書は1994年から長らく講談社選書メチエの一冊として刊行されてきました。今回、学術文庫に収録するにあたり、補章として「現代に生き続けるアイヌの世界観」を追加しています。 *コ「ロ」、カ「ラ」、ウ「ク」=「 」内字は小文字です 目次 プロローグ 第一章 アイヌの宇宙観 1 モシリ(世界) 2 アイヌ・モシリ(人間の世界)の誕生 3 カムイ・モシリ(神々の世界) 4 ポクナ・モシリ(下方の世界) 5 アイヌの他界観 6 相補二元的宇宙観 第二章 霊魂とカムイ 1 霊魂の観念 2 カムイの概念 3 語彙素構成からみる神性の認識 4 人間的なカムイ像 5 カムイとジェンダー 6 人間との関係 第三章 アイヌの植物命名法 1 植物名が語る認識のプロセス 2 基本名からみる命名のプロセス 3 対照名からみる命名のプロセス 4 類別的認識 5 植物観と神格化 第四章 動物の分類と動物観 1 動物の個別名と包括名 2 個別化の原理 3 類別カテゴリーの外延 4 類別化の原理 5 動物分類と空間分類の連繋 6 動物のシンボリズムと神格化の基盤 第五章 諸民族との比較 1 日本上代における世界観との比較 2 北方諸民族における世界観 3 アイヌの世界観 第六章 世界観の探究――認識人類学的アプローチ 1 言語と文化 2 イーミックな観点とエスノ・サイエンス 3 「もの」の名称から認識の体系へ 4 象徴体系としての世界観 5 メタファーとしての動物 6 言語の象徴表現と世界観 7 認識人類学の意義 補章 現代に生き続けるアイヌの世界観 あとがき 学術文庫版あとがき 索引
電子あり
神主と村の民俗誌
神主と村の民俗誌
著:神崎 宣武
講談社学術文庫
氏神から産土神、株神を祀る。集落や同族、一家で神々を招くたびに役割を果たす神主の仕事とは? 祈祷・祭りと村の暮らしを描く。
電子あり
箴言集
箴言集
著:ラ・ロシュフコー,訳:武藤 剛史,解説:鹿島 茂
講談社学術文庫
われわれの美徳とは、偽装された悪徳にほかならない―― 17世紀フランスの激動を生き抜いた公爵にしてモラリストが、人間の本性を見事に言い表した「箴言」。 鋭敏な洞察と強靱な思考、そして豊かなユーモアによって紡ぎ出された一行が、神からの自立を果たした近代人の抱える「自己愛」という宿命を撃ち抜き、さらには現代のわたしたちの心に深く刺さる。原文が醸す空気までをも伝える新訳。 【訳者まえがきより】 彼の人間を見る目、そして自分自身を見る目は鋭く、個人的体験のいかんにかかわらず、神からの自立をとげ、人間中心主義を標榜する近代人の本質、本性を早くから見抜いていたと思われる。彼は、自分自身、そして自分の個人的運命さえも客観視できるだけの強靱な精神、心の余裕、ユーモアさえ備えており、だからこそ、彼の人間観察は現代にも通用する普遍性を獲得しているのである。 【主な内容】 書肆から読者へ 道徳的考察 削除された箴言 没後収録の箴言 さまざまな考察 ラ・ロシュフコー自画像
電子あり
戦国時代
戦国時代
著:永原 慶二,解説:本郷 和人
講談社学術文庫
大名はいかに戦ったか。 民衆はいかに生き抜いたか。 日本はいかに変容したか。 戦後日本史学の巨人が、戦国時代というものの全体像を描き出した決定的論考。 戦国大名たちはいかに統治し戦ったか。人々はいかにして戦乱の時代を生きたか。新技術によって木綿や鉄砲が普及し何が変わったか。 後北条氏の台頭から豊臣政権まで、時代の全体像と動因を、明晰かつ生き生きと描き出す! ―四つの「時代を見る目」で読み解く― 第一に、群雄だけでなく全社会層の動き構造的にとらえる。 第二に、動乱のもたらす社会変動を、もっとも深奥から考える。 第三に、革新と創造の時代として描く。 第四に、世界史的な視野の中で見通す。 解説(本郷和人・東京大学史料編纂所教授)より― 永原の研究成果は、対峙する人間を選ばない。どんな立場から歴史を研究するにせよ、それが実証的であれば必ず、彼の到達に直面する必要に迫られる性質のものである。研究者は永原の提示した推論に学ぶ。それを学んで、乗り越えるべく努力を重ねていく。ある研究者は、努力の末に、永原論のある部分を乗り越えることに成功するだろう。ある研究者は懸命に挑戦しても、永原論の確かさを追認するだけにとどまるだろう。ともあれ、彼の研究業績は、後からやってくる研究者のチャレンジを静かに待っている。乗り越えられることを待っている。この意味で永原は実にフェアーで、尊敬すべき先達なのだ。中世史の良心というべき偉大な研究者、それが永原である。 ※2000年刊『戦国時代 16世紀、日本はどう変わったのか』(小学館ライブラリー)上下巻の合本復刊 【主な内容】 戦国時代の開幕 惣・一揆と下克上の社会状況 「世界史」の成立と新技術 関東・東北の争覇戦 中国・四国の戦い 軍事力の構成 領国経済体制 都市と商人 九州の情勢とキリシタン大名 畿内政権と京・堺 大名国家と日本国 織田信長の進出 一向一揆と本願寺 「天下布武」
電子あり
満鉄全史 「国策会社」の全貌
満鉄全史 「国策会社」の全貌
著:加藤 聖文
講談社学術文庫
明治40年(1907)、「10万の生霊と20億の戦費」といわれる犠牲を払って獲得した南満洲の地に誕生した一鉄道会社は、「陽に鉄道経営の仮面を装い、陰に百般の施設を実行する」実質的な国家機関として大陸政策を牽引した。しかし必然的に政官軍の縄張り争いと対中・対ソ事情の変化、そして場当たり的な政策の影響が直撃する位置に置かれた組織は、図らずも近代日本を体現する存在として日本の支配政策のお粗末さを象徴する存在として現代に伝えられている。 日露戦争から敗戦まで「日本の生命線」の表舞台に立ち続けた組織の足取りを正確にたどり、「国策」という言葉が包含する曖昧さと無責任さを炙り出す。年表、首脳陣人事一覧、会社組織一覧付き。(原本:講談社選書メチエ、2006年刊) プロローグ――「国策会社」満鉄とは何だったのか 第一章 国策会社満鉄の誕生 第二章 「国策」をめぐる相克 第三章 使命の終わりと新たな「国策」 終 章 国策会社満鉄と戦後日本 エピローグ――現代日本にとっての満鉄 関連年表 歴代満鉄首脳陣人事一覧 南満洲鉄道株式会社組織一覧
電子あり
四字熟語の教え
四字熟語の教え
著・編:村上 哲見,著・編:島森 哲男,著:小川 陽一,著:小野 四平,著:莊司 格一,著:清宮 剛
講談社学術文庫
「その言葉の歴史の中には、人々の思いや経験や知恵がつまっています。辞書を調べれば言葉の意味は書いてありますが、そこにつまっているいろいろな歴史や人々の思いはなかなか書いてありません。そういう空白をこの本ではうずめようとしています」。 480点を春夏秋冬の四章に収録。気楽に読める・わかる・使える! 生きた四字熟語に出会える名著。
電子あり
本能寺の変
本能寺の変
著:藤田 達生
講談社学術文庫
2020年大河「麒麟がくる」を100倍楽しむ! なぜ光秀は信長を殺したか。研究最前線からの回答! なぜ、明智光秀は、あのとき、織田信長を討ったのか――古来より数えきれぬほど繰り返し問われてきたこの問いに、本流の歴史学的思考が真っ向から取り組んだ画期的論考が、最新の研究を反映する大幅増補をくわえて文庫化。 信長は何と戦い、何に負けたのか。この日本史上最大の政変の核心を衝く試みは、"戦国時代とは/室町幕府とは/日本の中世・近世とは/何か"という根本的な問いへと至る。 本格的歴史学研究でありながら、歴史小説・大河ドラマファンも楽しめる、驚きと発見に満ちた知的挑戦! 【本書より】 連年の発見によって、本能寺の変を挟む約三週間における重要人物の動向の詳細が判明し、変に関する研究は格段に前進し、一定の方向へと収斂されつつある。現段階の研究状況は、二〇一四以前の百家争鳴的な段階を完全に脱却している―― 【目次】 はじめに プロローグ:1 「本能寺の変」の人脈/2 戦国時代 第一章 明智光秀が背いた原因はなにか?:1 足利義昭――将軍をめざす/2 明智光秀――栄達から危機へ/3 織田信長――「国王にして内裏」/4 政変への道 第二章 画策する足利義昭:1「西国公方」義昭/2 政変迫る/3 政変断行 第三章 「秀吉神話」を解く:1 備中高松城の水攻め/2 「奇跡」の中国大返し/3 山崎の戦い/4 信長を継ぐ者は誰か エピローグ おわりに 補章「本能寺の変」研究の現在:1 北国情勢と光秀与同勢力/2 政権を揺さぶる派閥抗争/3 光秀の政権構想 参考文献 文庫版へのあとがき 関連年表
電子あり
ジャンヌ・ダルク 超異端の聖女
ジャンヌ・ダルク 超異端の聖女
著:竹下 節子
講談社学術文庫
 痛快で、やがて悲しい――。ジャンヌ・ダルクの生涯を一言であらわすならば、このようになるでしょうか。  時は15世紀、英仏100年戦争の末期。フランスを二分する未曾有の国難のなか、パリを追われた失意の国王シャルル7世のもとに彗星のごとくあらわれたのが、ジャンヌ・ダルクです。甲冑を身にまとい馬上の人となった彼女は破竹の勢いで敵方を打ち破り、またたくまにシャルル7世をランスでの戴冠に導きます。しかし華々しい栄光もつかの間、ジャンヌはイギリス軍に引き渡され、異端者として生きたまま火あぶりにされてしまうのです。「声」に導かれるまま生まれ育った村を旅立ったのが16歳、火刑台に立たされたときには19歳でした。  本書は、100年戦争の政治的背景から、中世におけるお告げや聖女の系譜など、彼女が生きた当時の世界を浮かび上がらせることで、ジャンヌ・ダルクの全体像をあざやかに、しかも親しみやすい筆致で描きだします。  名もない羊飼いの娘だったジャンヌを突き動かした「声」、ついにはシャルル七世をも動かし、フランスを熱狂させたものとは、いったい何だったのでしょうか。カトリックの聖人は数多くいますが、異端者として火刑にまでなりながら、500年後に聖女として認定されたのは彼女だけです。「普通の女の子」が国を救い、国家意識を創ることを可能にしたヨーロッパ中世とは、そして彼女を「守護聖女」として今なお現役で生かしているフランス人の心性とはいったいどのようなものなのでしょうか。異端にして聖女、華やかで苛烈なジャンヌ・ダルクの世界に、あなたも飛び込んでみませんか?(原本:講談社現代新書、一九九七年) 【本書の内容】 プロローグ 序 章 ジャンヌ・ダルクとはだれか 第1章 ジャンヌ・ダルクの先駆者たち――カリスマと聖女 第2章 神の「声」を聞いた少女 第3章 中世の政治と宗教――少女戦士はいかにして誕生したか 第4章 戦場の乙女 第5章 ジャンヌの最期 エピローグ あとがき 学術文庫版あとがき おもな参考文献
電子あり
国民主権と天皇制
国民主権と天皇制
著:尾高 朝雄
講談社学術文庫
惜しまれながら急逝した不世出の法哲学者・尾高朝雄(1899-1956年)、初の文庫版。 本書の原本は、1947(昭和22)年10月に国立書院から出版されました。その5ヵ月前には日本国憲法が施行されています。大日本帝国憲法から日本国憲法への移行は、前者の改正手続きに基づいてなされました。そうして「天皇主権」から「国民主権」への大転換を遂げた新しい戦後日本には「象徴天皇」が残されました。 国民主権と天皇制ははたして両立可能なのか? もしそこに矛盾があるのなら、戦前から戦後の移行はいかにして根拠づけられるのか? これらの疑問は、単に憲法学の問題であるだけでなく、戦後の繁栄を支えた日本の新しい形は正当な根拠をもつものか、というすべての日本国民に関わる問題でもあります。 本書は、この問題を解きほぐしてくれるものです。改正手続きの具体的な経緯をたどり、その過程で起きた「国体」をめぐる論争に触れつつ、「主権」とは何なのか、という問いを追求します。誰にでも理解できるよう、ていねいにたどられていった考察の末、「国民主権」と「天皇制」を両立させる「ノモス主権」が提示されます。 本書が発表されたあと、憲法学者・宮沢俊義(1899-1976年)が異論を唱え、二人のあいだに論争が繰り広げられました。本書は、宮沢の批判に対する応答として書かれた二篇を増補して1954(昭和29)年に青林書院から刊行された版を底本とし、その内容を追えるようにしました。 「ノモス主権」の概念は、長らく忘れられてきました。しかし、ここには今こそ考えるべき問いがあります。学術文庫『立憲非立憲』に続き、唯一無二の憲法学者・石川健治氏による渾身の「解説」を収録した本書は、新しい時代の日本にとって必須の一冊となることでしょう。 [本書の内容] 序 言 はしがき 第一章 新憲法をめぐる国体論議 第二章 主権概念の批判 第三章 国民主権の原理 第四章 天皇統治の伝統 第五章 新憲法における国民主権と天皇制 第六章 ノモスの主権について 第七章 事実としての主権と当為としての主権 解 説(石川健治)
電子あり
ビールの教科書
ビールの教科書
著:青井 博幸
講談社学術文庫
麦芽やホップの役割とは? エールにラガー、ピルスナー。ドイツにチェコ、ベルギー、日本……それぞれどこが違う? 「生ビール」は何が「生」か? 「キレ」「コク」の正体は? そして何より、おいしく飲むためには――。自ら醸造会社を率いていた著者が、「一回きりのビール人生を楽しんでもらいたい」と起源、歴史、製法、見分け方、飲み方を余すところなく指南。この一杯のために生きている人すべてに捧げます。
電子あり
楊貴妃 大唐帝国の栄華と滅亡
楊貴妃 大唐帝国の栄華と滅亡
著:村山 吉廣
講談社学術文庫
唐6代目皇帝、玄宗(712-756在位)。100万人都市を築いた名君は、56歳のとき、22歳の楊玉環(のちの楊貴妃)と出会う――。唐王朝の権力闘争、玄宗による華麗なる「開元の治」、安史の乱、国家転覆までの100余年を、『旧唐書(くとうじょ)』『新唐書』『開元天宝遺事』『唐会要』といった文献や、白居易、杜甫の詩歌など豊富な原資料や図版から、詳細なエピソードを採取、検証。平安時代より清少納言、紫式部をも魅了した”世界三大美女”の生涯を、唐の歴史とともに読み解く! *本書の原本は、一九九七年、中公新書より『楊貴妃 大唐帝国の栄華と暗転』の書名で刊行されました。 目次 はじめに 第一章 玄宗とその時代  玄宗登場/花は舞う長安の春 第二章 玉環から楊太真へ  鉄牛につながれた橋/女の闘いの渦/女道士楊太真となる 第三章 楊貴妃の栄華  三千の寵愛一身にあり/楊氏六家の栄え/宮中の行楽 第四章 天下大乱  安禄山反す/李林甫と楊国忠/滝関の攻防 第五章 玄宗蜀幸  馬嵬事変/国破レテ山河アリ/安史の乱の背景 第六章 長恨歌の世界  玄宗の晩年/比翼連理の誓い 第七章 余聞・遺事  楊貴妃の最期/日本渡来伝説/宦官高力士/『梅妃伝』をめぐって/画題となった玄宗・楊貴妃 第八章 楊貴妃と文学  楊貴妃と中国文学/楊貴妃と日本文学 玄宗・楊貴妃略年表 学術文庫版あとがき
電子あり
トクヴィル 平等と不平等の理論家
トクヴィル 平等と不平等の理論家
著:宇野 重規
講談社学術文庫
ポピュリズム、ポストトゥルース、グローバリズムに直面する今こそ読む――“アメリカのデモクラシー”その根源への探究 デモクラシーこそは歴史の未来である――誕生間もないアメリカ社会に トクヴィルが見いだしたものは何か。歴史的名著『アメリカのデモクラシー』では何が論じられたのか。「平等化」をキーワードにその思想の今日性を浮き彫りにする、鮮烈な思考。あらゆる権威が後退し混沌の縁に生きる私たちは、いまこそトクヴィルに出会い直さなければならない! いま日本の思想界をリードする著者が、第29回(2007年) サントリー学芸賞(思想・歴史部門)を受賞し、現在に至る地位を築いた好著の文庫化。文庫化にあたり、現在の政治・思想状況をふまえた「補章」を増補。 トクヴィルの「今日的意義」は増すばかりである。ある意味で、「トクヴィル的」とでも呼ぶべき状況がますます強まっている―(「補章」より) 【本書の主な内容】 第一章 青年トクヴィル、アメリカに旅立つ 第二章 平等と不平等の理論家 第三章 トクヴィルの見たアメリカ 第四章 「デモクラシー」の自己変革能力 結び トクヴィルの今日的意義 補章 二十一世紀においてトクヴィルを読むために
電子あり
日本語と西欧語 主語の由来を探る
日本語と西欧語 主語の由来を探る
著:金谷 武洋
講談社学術文庫
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」(川端康成)は英語で「The train came out of the long tunnel into the snow countory」(サイデンステッカー)。世界を表現する際の「視点」 の違い。英語は「神の視点」を得ることによって主語の誕生を準備したが、「虫の視点」を持つ日本語にはそれは必要なかった。英語の歴史を踏まえ両言語と文化の違いを考察。
電子あり
雨の科学
雨の科学
著:武田 喬男
講談社学術文庫
「雲から雨が降る」という、一見あたりまえの自然現象の仕組みと奥深さを探究した、気象学の入門書。  なぜ雨は、滝のようにつながって落ちてこないのか。雨粒はどんな形をしているのか。小雨の雨粒と、大粒の雨粒は、どのくらい大きさが違うのか。雲粒と雨粒の境目はどこにあるのか。なぜ、雨が降りやすい雲と、降りにくい雲があるのか。水蒸気が凝結するための「雲粒の種」とは。自己増殖し、自己組織化して雨を降らせる、生物のような積乱雲の生涯とは――。  傘とレインコートで日常的な雨対策をし、冬にも豪雪に見舞われる日本列島の降雨事情は、地球上でも特異なものだという。その地形的特質から、近年多発する集中豪雨のメカニズムとエルニーニョ現象、温暖化のカギを握る雲の種類、さらに、「人類の夢」である人工降雨や気象の人工調節の可能性まで、雲・雨・雪の研究に尽くした第一人者が、平易に解説する。北海道大学名誉教授・藤吉康志氏が巻末解説を執筆。〔原本:『雨の科学――雲をつかむ話』2005年5月、成山堂書店刊〕 〈目次〉 1 地球に降る雨のミクロな特徴 第1章 雨粒の形と大きさ 第2章 雨の強さと雨粒の大きさ分布 第3章 雨が降る雲、降らない雲 第4章 多くの雨は雪が融けたもの 第5章 雨の降り方は人間活動によって変わる 2 雲の組織化 第6章 積乱雲の生涯 第7章 生物のような積乱雲 第8章 集中する豪雨 第9章 人工衛星から観る雲の群 第10章 地形の働きによる降雨の強化と集中 3 雨の気候学 第11章 気候域と雨量 第12章 亜熱帯域の降雨 第13章 雨のテレコネクション 第14章 雨の経年変化 第15章 水惑星の水問題 解説            藤吉康志 索引
電子あり
物質と記憶
物質と記憶
著:アンリ・ベルクソン,訳:杉山 直樹
講談社学術文庫
フランスを代表する哲学者アンリ・ベルクソン(1859-1941年)が残した主著の一つである『物質と記憶』(1896年)については、すでに7種もの日本語訳が作られてきた。そのすべてを凌駕するべく、第一級の研究者が満を持して新たに訳出した本書は、簡にして要を得た「訳者解説」と相俟って、日本語でベルクソン哲学の真髄を伝える、文字どおりの「決定版」である。今後、本書を手にせずしてベルクソンは語れない。 フランスを代表する哲学者アンリ・ベルクソン(1859-1941年)が残した主著の一つである『物質と記憶』(1896年)については、すでに7種もの日本語訳が作られてきた。1914年に初版が刊行された高橋里美訳(星文館。1936年には岩波文庫に収録)のあと、戦前には北れい吉訳(新潮社、1925年)が、そして戦後になると、田島節夫訳(白水社、1965年)、岡部聰夫訳(駿河台出版社、1995年)が続いたあと、近年は、合田正人・松本力訳(ちくま学芸文庫、2007年)、竹内信夫訳(白水社、2011年)、熊野純彦訳(岩波文庫、2015年)が数年おきに刊行されてきている。 そのような状況の中、ここに生み出された新訳は、19世紀フランスに見出される唯心論の潮流をもフォローしつつベルクソン研究を最先端で支える第一級の研究者が満を持して送り出すものである。既訳のすべて、そして公刊された原文のエディションすべてを比較・検討した上で、日本語としての読みやすさへの配慮はもちろん、「単語単位での一対一対応の翻訳」を徹底的に排して「ベルクソンの議論や論証の流れをできるかぎり正確かつ明晰に写す」ことを目指して造り出された訳文は、どの既訳とも異なる、まさにベルクソンの思考の息吹きを伝えるものとなった。 学位論文『意識に直接与えられたものについての試論』(1889年)のあと、ベルクソンが「イマージュ」を軸に据えて展開した思考は、どこへ向かうのか? 本書では、簡にして要を得た「訳者解説」で読解のための道標を立て、1. 主観ないし意識とは、閉じたカプセルのようなものではない、2. 主観と客観は、時間的スケールに関して区別される、3. 過去の実在論、4. 前進的生成、「記憶力」と「記憶」というポイントを提示する。このあと『創造的進化』(1907年)、『道徳と宗教の二つの源泉』(1932年)へと展開されていくベルクソン哲学の真髄を伝える本書の「決定版」を、今ここにお届けする。
電子あり
元号通覧
元号通覧
著:森 鴎外
講談社学術文庫
令和元年5月1日刊行。  「明治」は10回も元号候補になっていた――。文豪森鴎外(1862-1922年)が、最晩年に宮内省図書頭森林太郎として執筆した本書をひもとけば、「大化」にはじまり「大正」までの240を超える元号が列挙され、その典拠から不採用になった候補に至るまで、日本の元号が一望できる。繰り返し挙がる人気候補は何か、どんな理由で改元されるのかなど、知的好奇心を存分に満たしてくれる一冊!(解説:猪瀬直樹)  「明治」は10回も元号候補になっていた――。「大化」にはじまり「大正」に至るまでおよそ1300年、240を超える元号をすべて網羅しています。『書経』や『文選』などの出典や改元の理由はもとより、候補に挙がった元号も出典とともに示した本書は、まさに日本の元号が一望できる、元号の辞典といえるものです。  世にも稀なこの一冊を執筆した人物こそ、文豪森鴎外(1862-1922年)でした。森鴎外、本名森林太郎は、陸軍軍医の最高位にあたる陸軍軍医総監、陸軍省医務局長を辞したのち、1917年に帝室博物館総長兼宮内省図書頭として再び官職につきました。歴代天皇の諡号(おくりな)の出典を考証した『帝謚考』(1921年)を刊行したあと、文字通り最後の命を燃やしながら取り組んだ仕事が本書(原題『元号考』、文庫化にあたって改題)です。実に病没する数日前まで手を入れ続けたものの未完に終わりますが、晩年に歴史小説さらに史伝に転じた鴎外の考証学的執念もうかがえます。  本書をひもとけば「明治」同様、「大正」も採用までに3回、候補になっていることがわかります。また15世紀に初めて候補になった「明治」に対し、江戸時代の元号「天明」や「天保」は古代から繰り返し提案されていることもうかがえます。人気の元号候補はなにか、それはどの典籍からの引用なのか。あるいは時代によって典拠の流行りすたりがあるのか。即位以外に大災害や飢饉、疫病などでも改元されますが、いつどんな理由で改元されたのか……。『天皇の影法師』(1983年)で本書に光を当てた猪瀬直樹氏による解説とあわせて、元号をめぐる知的好奇心を存分に満たしてくれる一冊です!
電子あり
完訳 ブッダチャリタ
完訳 ブッダチャリタ
訳・その他:梶山 雄一,訳・その他:小林 信彦,訳・その他:立川 武蔵,訳・その他:御牧 克己
講談社学術文庫
誕生からその死、遺骨の分配まで――。ゴータマ・ブッダの全生涯を、仏教詩人・アシュヴァゴーシャが華麗なる美文で綴った、インド文学史の名著『ブッダチャリタ』。 仏教思想の深い造詣に支えられたその作品は、仏伝資料としての価値も高く、数世紀に亘ってインド仏教界で称えられてきた。しかし、1893年に出版された14章までのサンスクリットテキストはのちに和訳、出版されていたものの、後半14章は長年、欠落したままだった。 その完結をみるべく、4人の仏教学者が完訳に取り組んだのが本書である。チベット訳、漢訳を丹念に補足しながら全28章を、可能な限り原典に忠実に再現。もっとも古く、もっとも美しい、仏教叙事詩の完訳、誕生。 学術文庫版解説:馬場紀寿(東京大学東洋文化研究所教授) 本書の原本は1985年12月、「原始仏典」第10巻『ブッダチャリタ』と題し、小社より刊行された。 目次 第1章 王子の誕生 第2章 宮廷の生活 第3章 苦悩 第4章 幻滅 第5章 出城 第6章 馬丁を出す 第7章 苦行の森 第8章 後宮での嘆き 第9章 大臣と宮廷祭官の説得 第10章 シュレーニャ・ビンビサーラの来訪 第11章 人の欲しがっているものを否定すること 第12章 アラーダの科学 第13章 マーラに対する勝利 第14章 成道(前半) 第15章 成道(後半) 第16章 転法輪 第17章 諸弟子の回心 第18章 アナータピンダダへの教え 第19章 父子相見 第20章 ジェータヴァナを受く 第21章 教化活動の進展 第22章 アームラパーリーの園林を[ブッダが]ごらんになること 第23章 [仏が自らの]余命の長さを決意されること 第24章 [ブッダが]リッチャヴィ族を哀れまれること 第25章 入涅槃 第26章 大般涅槃 第27章 涅槃の讃嘆 第28章 ご遺骨の分配 解説 梶山雄一 学術文庫版解説 馬場紀寿
電子あり
あいうえおの起源 身体からのコトバ発生論
あいうえおの起源 身体からのコトバ発生論
著:豊永 武盛
講談社学術文庫
目と芽、鼻と花、歯と葉、身と実。身体と事物とのあいだに語の共通性があるのはなぜなのか。また、幼児が最初期に発する p 音、 m 音 などが世界的に同じように見られるのはなぜか。古代語における二音節動詞の語尾「ふ」「ぶ」「む」などが持っていた原初的意味を分析する一方、語頭音となっている「あいうえお」などの五十音が身体の部位・生理に由来することを解明し、コトバの発生と世界分節の起源を探る。
電子あり
江戸東京の庶民信仰
江戸東京の庶民信仰
著:長沢 利明
講談社学術文庫
かつての江戸、そして現在の東京にみられるさまざまな庶民信仰・民間信仰の具体的な実情を、民俗学の立場から調査・集成。民間信仰や呪術の息づく世界は、山深い農村ばかりではない。現代の大都市の中心部においてさえ、その土俗的世界の展開するさまをみることができる。むしろ、都市こそは人々の願望が濃い密度で渦巻き、そこに集約された願望成就のエネルギーは農山村以上に多彩な民間信仰を生み出している。たとえば「ギャンブル必勝」「クイズ番組入賞」「離婚成就」「航空安全」など、多様な願望が信仰に結びついているのだ。 取り上げる民間信仰は、小石川の牛天神境内にまつられた貧乏神の伝承、東京各地に出回ったさまざまな「宝船絵」、浅草と新宿の「カンカン地蔵」、板橋宿の縁切榎、豪徳寺の招き猫伝説、関東の稲荷総社ながらつつましい佇まいの湯島・妻恋神社、「いもあらい」の地名と一口坂の関係、下谷・虎ノ門・新橋・羽田など都内に11か所を数える「飛行機の神・仏」・・・などなど。 調査にあたっては、随筆や地誌、寺社に伝わる古文書や縁起などの記述資料はもちろん、寺社の住職や宮司、氏子信徒や檀家の古老、地元の旧家などへの聞き取り取材を丹念に行い、おもに1970年代から80年代の東京の口碑記録としても、貴重な一書となっている。 〔原本:1996年11月、三弥井書店刊〕 〈目次〉 庶民信仰と願かけ 江戸の貧乏神 狸の守護神 東京の宝船 巡礼とお砂踏み 化粧地蔵・白粉地蔵 カンカン石・カンカン地蔵 迷子の石標 鬼の信仰 縁切榎――板橋区本町 豪徳寺の招き猫 妻恋稲荷の信仰――文京区湯島 いもあらいの神――千代田区太田姫稲荷神社 針供養と奪衣婆――新宿区正受院 身代り地蔵の巡行――杉並区東運寺 飛行機の神 自動車のお守りにみる民間信仰 港区の民間信仰 あとがき
電子あり
名字の歴史学
名字の歴史学
著:奥富 敬之
講談社学術文庫
一族の歴史と想いが込められているはずの「名字」は、古代から階層意識、職制、地名、出自などさまざまな要素を取り込みながら陰に陽に使われ続け、明治維新後に公称が義務化されるに至ったものである。氏姓制度、臣籍降下、律令制、源平合戦、惣領と庶子、幼名、通字、偏諱――名字の成立過程と変遷を通して日本の歴史を通観し、現代に続く起源を探ってゆく。
電子あり