講談社文庫作品一覧

空白を満たしなさい(上)
講談社文庫
ある夜、勤務先の会議室で目醒めた土屋徹生は、帰宅後、妻から「あなたは3年前に死んだはず」と告げられる。死因は「自殺」。家族はそのため心に深い傷を負っていた。しかし、息子が生まれ、仕事も順調だった当時、自殺する理由などない徹生は、殺されたのではと疑う。そして浮かび上がる犯人の記憶……。
死者たちが生き返ってくる世界を、息を呑む圧倒的なリアリティで描き出し、現代における「自己」という存在の危機と、「幸福」の意味を追究して、深い感動を呼んだ傑作長編
<内容紹介>
ある夜、勤務先の会議室で目醒めた土屋徹生は、帰宅後、妻から「あなたは3年前に死んだはず」と告げられる。死因は「自殺」。家族はそのため心に深い傷を負っていた。しかし、息子が生まれ、仕事も順調だった当時、自殺する理由などない徹生は、殺されたのではと疑う。そして浮かび上がる犯人の記憶……。
安西は、腕組みして、背もたれに体を預けると、神妙な顔で徹生を見つめた。
「なあ、土屋、――いいか? 人間一人死ねば、その一人分の穴が開く。大きい穴もあれば、小さい穴もある。けど、その穴をいつまでも放っておくわけにはいかんだろう。みんなで一生懸命埋める。じゃないと、一々その穴で躓(つまず)くことになる。――な?」
「……。」
「仕事の穴、家族の穴、遺された人の心の中の穴。――お前は、それがちょうど、塞(ふさ)がったところに戻って来てる。無理に抉(こ)じ開けようとすると、破れてしまうぞ。」
――本文より

ヒトイチ 画像解析 警視庁人事一課監察係
講談社文庫
「蒲田署内で拳銃自殺だ」。遺体は強姦痴漢事件の犯人を追いつめていた腕利きの巡査部長。警視庁人事一課監察係、通称ヒトイチのエリート榎本博史が真相究明に乗り出すと、警察のデータサーバーには防犯カメラから転送された驚きの画像が――「警察が警察を追う」シリーズ、絶好調第二弾! 〈文庫書き下ろし〉

少女不十分
講談社文庫
悪いがこの本に粗筋なんてない。これは小説ではないからだ。だから起承転結やサプライズ、気の利いた落ちを求められても、きっとその期待には応えられない。これは昔の話であり、過去の話であり、終わった話だ。記憶もあやふやな10年前の話であり、どんな未来にも繋がっていない。いずれにしても娯楽としてはお勧めできないわけだが、ただしそれでも、ひとつだけ言えることがある。僕はこの本を書くのに、10年かかった。

レイク・クローバー(下)
講談社文庫
驚くほどの出血、無数の穴が空いた歯茎、ミイラ状の全身。感染者は死に際、周囲に襲いかかる。米CDCから派遣された寄生虫セクション研究者の鷲尾は、現地で文明とは無縁の穏やかな暮らしを送る回遊民に出会った。彼らはなぜ発症しないのか? 探査サイトに残された男たちを救う手だては見つかるのか?

レイク・クローバー(上)
講談社文庫
水道も電気も来ていないミャンマーの僻地で米国最大手のコングロマリットが極秘に行なっていた天然ガス探査。それは企業群全体に莫大な利益をもたらし、米国そのものにとっても対中国戦略の切り札となるはずだった。発症からわずか六時間で死をもたらし、しかも致死率百パーセントの寄生虫が発生するまでは。

超聴覚者 七川小春 真実への潜入
講談社文庫
九歳の時に受けた遺伝子治療によって聴覚が異常に発達した小春は、勤めていたブラック企業の過酷さに耐えきれず辞職した。再就職が困難を極める中、寿命遺伝子治療薬発売を予定する巨大企業の事業部長から、正社員になる条件として発売阻止を目論む子会社への潜入を持ちかけられる。『真実への盗聴』改題。

レジェンド歴史時代小説 大奥婦女記
講談社文庫
愛と憎しみ、嫉妬、野望……将軍を中心として、女たちのさまざまな思いや情念が渦巻く江戸城・大奥。寵愛、世継ぎ、派閥争い―ーそれは、権力をめぐり激しく火花”を散らす女の合戦”。乳母将軍・春日局の権勢から桂昌院、絵島生島の悲劇まで、その真実の姿を清張史観で描ききった異色時代小説のロングセラー。

そんなに、変わった?
講談社文庫
“負け犬”ブームから早や十年。晩婚や晩産が当たり前の今、もはや贅沢となった看取られ死、企業化するEXILE、旧外観そのままの新歌舞伎座etc. キョンキョンの役柄が、独身中年から母親に変わるほどに、はたして自分は変わったのか? あおられる激変ムードに棹さして書き継いだ「週刊現代」人気連載第8弾。

ふくろう
講談社文庫
将軍世嗣の住まいである西丸の書院番に引き立てられ心浮き立つ伴鍋次郎だが、両親は喜ぶどころか狼狽し、不安すら覗かせる。
町で会った老武士には、初対面にもかかわらず「許してくれ」と土下座される始末。
しばらくして、同じ老武士にこんどは橋の上で遭遇する。酔いつぶれかけていた老人は、鍋次郎の姿を認めるや否や何事かを叫んで橋から飛び降りてしまう。老人の名が「神尾五郎」ということまではわかるが、不審は募るばかり。
そんな矢先、家で書物の整理をしていると、「鍋次郎」と記された自分の名前の位牌と、父の昔の日記を見つける。
日記には、鍋次郎が生まれたころの記述だけが欠落していた。自分は養子だったのだ。ほかにも自分の出生に関して何か秘密があるにちがいない。意を決した鍋次郎は、義父の高萩惣吾のもとを訪ねる。
疑念をぶつけた鍋次郎に、惣吾は鍋次郎の本当の父親「松平外記」の名を告げる。外記は惣吾の親友だったという。
惣吾の口から、松平外記の時を超えた悲しい物語が始まった。傑作長編時代小説。

NO.6 beyond〔ナンバーシックス・ビヨンド〕
講談社文庫
西ブロックに稀な、春の日のような穏やかな一日。NO.6崩壊後にNO.6に留まった紫苑。風のようにさすらうネズミ。そして、紫苑の父の秘密―。惜しまれつつ完結した物語に、さらなる命を与え、それぞれの生の一瞬を、鮮やかに切り取る。

欠落
講談社文庫
特殊犯捜査係に異動してきた同期の大石陽子は立てこもり事件の身代わり人質となってしまう。直後に発生した死体遺棄事件を捜査しながらも刑事・宇田川は彼女の安否が気にかかる。難航する二つの事件の捜査。幾つもの「壁」に抗いながら、宇田川は真相にたどりつけるのか? 今野敏警察小説集大成『同期』待望の続編、シリーズ第2弾、遂に文庫見参!
今野 敏、怒濤の長編警察小説。
『同期』待望の続編!
姿を消した二人の同期を探せ。
意外驚愕の展開が待つ! 疾走する長編警察小説。
特殊犯捜査係に異動してきた同期の大石陽子は立てこもり事件の身代わり人質となってしまう。直後に発生した死体遺棄事件を捜査しながらも刑事・宇田川は彼女の安否が気にかかる。難航する二つの事件の捜査。幾つもの"壁"に抗いながら、宇田川は真相にたどりつけるのか!? 『同期』待望の続編。長編警察小説。

レジェンド歴史時代小説 見知らぬ海へ
講談社文庫
戦国末期、武田水軍の海将・向井正綱は、留守中に城が徳川軍の攻撃を受け、父と義兄を失う。彼は父の遺志を継ぎ、北条水軍との駿河湾決戦で奮戦、水軍の長として汚名を返上する。そんな正綱の元に父の仇、徳川軍への誘いが来た。家康からも一目置かれた海の侍の活躍を描く隆慶一郎、未完の海洋時代小説!

神子上典膳
講談社文庫
下野国で、重臣による謀反の難から逃れた領主の娘・澪姫と小姓が追手に囲まれた時、黒い長羽織姿で長身痩躯の男が二人を助ける。男の名は神子上典膳、剣聖・伊藤一刀斎より印可を受けた一刀流の達人。逃避行を続ける典膳らに絶体絶命の危機が迫る! 剣戟あり、謎ありの娯楽時代小説。(『一刀流無想剣 斬』改題)

Question 謎解きの最高峰 ミステリー傑作選
講談社文庫
稀少な古書マンガをめぐる、三十年前の出来事の「真実」とは? 超人気「ビブリア古書堂」シリーズの一篇、三上延「足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)」。マンションのエレベーターを題材としたホラー仕立ての快作、石持浅海「三階で止まる」。全7篇収録。

ガール・オン・ザ・トレイン(下)
講談社文庫
ロンドンに向かう通勤電車とその車窓から見える家を舞台に起こる犯罪を、女性三人の独白により描くサイコミステリー。2015年1月に刊行。英米他、ドイツ、オランダ、フランス、スペイン、イタリア、ロシア、ノルウェー、イスラエル、ギリシャ、チェコ、セルビア、台湾などで刊行が決まっている。また、ドリームワークススタジオがマーク・プラット制作で映画化権を取得した注目の作品。

たからもの 深川澪通り木戸番小屋
講談社文庫
江戸・深川澪通りの木戸番小屋に住まう夫婦、笑兵衛とお捨。二人のもとには、困難な人生に苦しみ、挫けそうな心を抱えた人々が日々、訪れる。傷ついた心にそっと寄り添い、ふんわりと包み込む。その温かさに癒され、誰もが生きる力を取り戻していく。人生の機微をこまやかに描く、大人気シリーズの最終巻! 著者没後2年。ついに文庫刊行!

月と太陽
講談社文庫
太平洋上の島に招待されてホラー作家はその双子と会った。皆既日食を見た後、弟のほうが言う。「ぼくらが世界を変えてやるよ」(「絆」)。きみは誰かの獲物になる――奇妙な男にかつて予言された女性からの連絡が絶えた。顔のわからない篤志家は敵だったのか(「瞬きよりも速く」)。圧倒的な想像力で未来の夢を描く傑作!

水鏡推理
講談社文庫
正義感を発揮するあまり組織の枠をはみ出してしまう文科省ヒラ一般職事務官・水鏡瑞希。役所は彼女をもてあまし、研究費の不正使用を調査する特別チームに配属する。税金目当てに悪事がうごめく臭いに敏感に気付く瑞希。彼女は果たしてエセ研究開発のねつ造を見破れるか? 「抜群のひらめきと推理力を持つ美女公務員の下剋上エンタテインメント!爽快で痛快な知恵比べ、しかし芯は骨太社会派ミステリ。」―大矢博子(書評家)
『万能鑑定士Q』『探偵の探偵』に続く、松岡圭祐による新シリーズが講談社文庫にて開幕! 面白くて知恵もつく「殺人のないミステリ」。
正義感を発揮するあまり組織の枠をはみ出してしまう文科省新米女性一般職・水鏡瑞希(みかがみみずき)。役所は彼女をもてあまし、研究費の不正使用を調査する特別編成チームに配属する。税金目当てに悪事がうごめく臭いに敏感に気付く瑞希。彼女はエセ研究開発のねつ造を見破れるか? 抜群のひらめきと推理力が霞が関を震撼させる、美女公務員の下剋上エンタテインメント!
『水鏡推理』で描かれているのは、単なる「正義の味方の名探偵」ではない。そんな問題が起きる背景と仕組みまで鋭く抉り、人を救う科学技術へのピュアな期待を込め、今ここにある苦労や不幸を目に入れずに利権と保身に走る行為を糾弾する。そんな骨太な社会派テーマを、膝を打つ謎解きと丁々発止の駆け引きでくるみ、二転三転する意外な展開で驚かせ、最後にはスカッとするエンターテインメントに仕上げた。おまけにラブコメ要素までちょっぴり入ったりもする。『水鏡推理』は、全方位に楽しめる、なんとも贅沢な一冊なのである。―大矢博子(書評家)
本書では殺人が起きない。しかし数々の詐欺行為が暴かれることなく、数十億数百億という予算が実現不可能な装置や機械に投入されたらどうだ。必然的に余所の予算が縮小・消滅することになる。本書の中で瑞希がいうように、それによって本来なら助けられる命が失われるかもしれない。(中略)
現実は厳しい。だからこそ、水鏡瑞希が必要だ。鋭い推理力と一途な行動力で、自分の信じる正義を貫く。日本という国のために求められる、究極のヒロインがここにいる。―細谷正充(文芸評論家)
豪華装丁の単行本版も同時期刊行です。

レジェンド歴史時代小説 高杉晋作(下)
講談社文庫
高杉晋作が尊王倒幕の運動に奔命したのは、五年に過ぎない。五年の運動によって、盤石の徳川幕府はゆらぎ、倒壊は時間の問題となるに至った……。若すぎた死がさまざまな伝説を生んだ長州の英雄・高杉晋作。その五年の歳月、晋作の客気を描いた歴史小説。死が訪れる最後の最後まで、晋作は革命を決して諦めなかったのだ。その生には感動しかない。

レジェンド歴史時代小説 高杉晋作(上)
講談社文庫
吉田松陰に十八歳で出会って教えを乞い、以降維新革命にその生涯を捧げた高杉晋作。さらに江戸留学を経て、攘夷から開国・統幕へと戦略を変更。周囲を巧みに導き、時代を切り開こうと動く。混乱の時代を的確に読み、駆け抜けた型破りな晋作が二十八歳でこの世を去るまでを、晋作自身の視点を通じて描く、読み始めると止まらない歴史小説!