講談社文庫作品一覧

風を見た人(二)
講談社文庫
愛する男の子供を産んだが、入籍を拒まれ、悲嘆に暮れた真崎ちよを救ったのは、料理屋の女将・榎本みつ。が、愛する男は戦死。やがて終戦を迎える。ちよは芸妓になり、たちまち売れっ子になるが、しょせんは鵜匠の鵜に過ぎない。その頃、著名な劇作家に見染められたちよは、幼い弥千枝を捨て、東京に走る。冷酷な運命に抗し、つかの間の愛に燃える、第2巻。〈全5巻〉

ゆき
講談社文庫
雪ん子のゆきは、天と地をまっ白な雪で清める、雪のじんじい・ばんばあの一人娘。ある日、じんじいのいいつけで下界に降りたゆきは、百姓の味方になって、野盗や地主・侍軍と戦い、最後に百姓たちの心の中に生きる魔神に挑戦する……。戦国時代の東北の農村を舞台に、立ち上がる農民を力強く描いた、幻想味豊かな力作

ヒロシマの歌ほか
講談社文庫
名作「肥後の石工」の著者今西祐行の短編集。広島で原爆にあい母を奪われた幼児と、その子を救った水兵との交流を通して、戦争の悲しみと平和への願いを描いた「ヒロシマの歌」ほか、「ゆみ子とつばめのお墓」「一つの花」「鐘」「ハコちゃん」「ポールさんの犬」「なたね地ぞう」「聖エレーナの島」など10編収録。

孤独なアスファルト
講談社文庫
玉川上水で、日東グラスウールの常務・郷司が殺害された。転職のことが原因で郷司と対立していた、東北出身の田代少年が疑われる。田代は内気で言葉の訛をからかわれるのがいやで、職場でも孤立している青年だった。後日発見された凶器の紙バンドも田代の工場の物とわかり、彼への容疑は深まる。寄る辺ない青年の孤独を描く傑作推理。第9回江戸川乱歩賞受賞作。

風を見た人(一)
講談社文庫
強い季節風の吹き下す、新潟県の石曾根で生れた真崎ちよは、幼い頃に父を失い、貧しい娘時代を過す。しかし、不幸な青春の中にあって恋を知り、やがて妊娠する。だが、愛する男は軍隊におり、男の両親はその責任から逃れようとする。「別れ」の人生を送ってきたちよが、誰にも恥じない陽の下道を選んで生きようとする、哀切きわまりない長篇ロマン。<全5巻>

柴錬捕物帖 岡っ引どぶ
講談社文庫
どぶは飲む、打つ、買うの3拍子揃ったとんでもない岡っ引。そのどぶの度胸と推理力と行動力を買ったのは、盲目の与力、町小路左門。本郷の怨霊屋敷で名刀が消えた「名刀因果」、将軍の娘にまつわる猟奇事件「白骨御殿」、怨恨の女ミイラ事件「大凶祈願」と、江戸に続出する奇怪な事件を描く柴錬捕物帖。

京まんだら(下)
講談社文庫
できれば僧衣をまとい、頭をすがすがしくした自分の、ちんまりした晩年の姿をそこに思い描いてみたりもする……。女は北嵯峨に住みつこうとしている。“「京まんだら」が瀬戸内さんの「源氏」だといっても誤りではなく、そして、これもまた男には書けない小説”(戸板康二氏)といわれる本篇は、祇園「竹乃家」30周年の秋に華麗に幕が下ろされる。
狐狸庵VSマンボウ
講談社文庫

色めぐり
講談社文庫
ジーンズ・メーカー社長の森崎は、30代で独身である。マンションの一室をアジトにして、大胆かつ臨機応変な手法で、次から次へと女を誘惑している。向かい部屋にいた湯川奈美とは、全裸写真を盗み撮りして糸口を作ったし、高校教師の松野輝子のときは、教え子の件で相談を受けたその日にホテルに連れ込むことに成功した。女たちの年齢や職業はさまざまで、雑誌記者、テレビ司会者、高校生などである。ハプニングな性の実現に最大のよろこびを覚え、華麗な情事体験を続ける一人の男を通して、現代人の赤裸々な愛の姿と性の深淵を、巧みなタッチで描く長編。

一揆論 情念の叛乱と回路
講談社文庫
鮮烈な詩魂と曇りない批評精神で、独自の創造世界を築く、異才・松永伍一が、一揆を題材として、民衆の情念の暗部を探った好著。いわゆる一揆の研究書ではなく、詩人の鋭い直観で、新たに発掘された史料に新たな角度から光を当て、叛逆を志向する日本人の心的構造と土俗的エネルギーの原質を解明。人間の反逆の心の回路をさぐり、その肉声をみごとに捉えた、意欲の論考全4章――鋭い直観力で、新たに発掘された史料の裏面を照射し、民衆の情念の暗部と、日本人の土俗的エネルギーの核心・原点を浮き彫りにした、問題の書!

名なしの童子 <佐藤さとるファンタジー童話集2>
講談社文庫
「そこなし森の話」に続く、佐藤さとるファンタジー童話集の第2巻。建築家の卵、太郎の頭の中から飛びだしたふしぎな童子が、太郎の長年の憧れを叶える「名なしの童子」ほか、「水のトンネル」「箱の中の山」「ろばの耳の王様後日物語」「かくれんぼ」「海が消える」「ネムリコの話」など、現実の向うの神秘な世界を垣間見せてくれる、魅力あふれる名品12編収録。

天使の傷痕
講談社文庫
武蔵野の雑木林でデート中の男女が殺人事件に遭遇した。瀕死の被害者は「テン」とつぶやいて息をひきとった。意味不明の「テン」とは何を指すのか。デート中、直接事件を目撃した田島は新聞記者らしい関心から周辺を洗う。「テン」とは天使と分ったが、事件の背景には意外な事実が隠れていた。第11回乱歩賞受賞。 (講談社文庫)
武蔵野の雑木林でデート中の男女が殺人事件に遭遇した。瀕死の被害者は「テン」とつぶやいて息をひきとった。意味不明の「テン」とは何を指すのか。デート中、直接事件を目撃した田島は新聞記者らしい関心から周辺を洗う。「テン」とは天使と分ったが、事件の背景には意外な事実が隠れていた。第11回乱歩賞受賞。

京まんだら(上)
講談社文庫
祇園に生きる女たちの情と恋を経糸に、京都の四季の移ろう美しさを緯糸にして華やかな、まんだらに織りあげた名作。

ぐうたら愛情学 〈狐狸庵閑話〉
講談社文庫
象牙の塔的2枚目文化も、道化役的3枚目文化も、現実をふまえた2枚目半文化の前には影が薄れる。男女同権とは男女分権であり、姑のイジワルは女性を本来の姿にもどすものであり、雌鶏に刻を告げさせて眠っていることに亭主の幸せはある等々。憎まれ口の裏に、女性へのやさしさを隠した、痛快無比な愛情論。

重き流れに(下)
講談社文庫
固い絆で結ばれ、自分だけのものだと信じていた夫に、愛人がいた。夫の外泊は公然化し、幸福な日々は過去のものになった。夫をとり戻し、互いの心が一つに融けあえる日は、再び来るのだろうか? 夫を深く愛するゆえに、いっそうつのる悲嘆を胸に、夫との肉体的妥協を拒み、四半世紀に及んで孤閨を貫いた、女の愛と生を描く。明治末年から敗戦に至る日本の運命を背景に、女の愛と非嘆の生きざまを描く長編小説。

重き流れに(上)
講談社文庫
大陸の植民地に夢と野望を賭ける青年に嫁ぎ、夫と大陸に渡った16歳の幼な妻。夫を愛し、夫だけを頼りにして暮らす外地の生活は、新鮮であり、幸福に満ちていた。だが、夫から見知らぬ女に宛てた一通の手紙が、夫婦に翳りをもたらした。自己の全存在を夫への愛に賭けて、歴史の激流を生きぬいた、女の一生を描く。

寝業師
講談社文庫
二流商社の平社員・村中陽吉は、会社の将来に対して痛烈なレポートを書いたがために、単身ニューヨークへ飛ぶ破目になった。支店を開設しろ、というのである。英語もろくにできない村中はセントラル・パークで途方にくれた。英語の勉強でも、と思って大衆小説をひろげていると、思いがけず隣りにすわった白人女性が声をかけた。50がらみのその女性は「うちへいらっしゃい、本が沢山あるわ」と誘った。村中はその誘いに応じたのだが、縁は異なもの、そこから彼は大変な見つけものをする。快人物の一代を描く標題作のほか4篇を集めた、さわやかな作品集。
<歴史ロマン傑作選> 侍たちの風雪
講談社文庫
1955年から1975年までに発表された歴史・時代小説傑作選。池波正太郎、海音寺潮五郎、早乙女貢、司馬遼太郎、杉本苑子、戸板康二、新田次郎、村上元三、山手樹一郎、山田風太郎、山本周五郎を収録。

井上ひさし笑劇全集(下)
講談社文庫
自由に飛翔する発想が創り出す、斬新な笑劇。ことばの組合せによる可笑しさや面白さを、遺憾なく発揮した会話の妙。微笑させ、苦笑させ、哄笑させる「運び」の快テンポ。ここには時代をとらえ、人生の機微を衝く、したたかな視点がある。発想の意外性・会話のテンポ・諷刺・オチの小気味よさ――すべてが逸品。登場人物たちの緊迫した「対立」が迫真のドラマを生み、笑いの宇宙を無限にする。小説に戯曲に「笑い」を探求する井上ひさしの原点を示す150余編から、精選した笑劇群80篇中、下巻では42篇を収録した、笑劇決定版全集。〈上下 全二巻〉

美と宗教の発見 <創造的日本文化論>
講談社文庫
西洋哲学に専念していた著者が、ひとたびその眼を日本の思想・文化に向けたときに見た、正しい日本文化論の不在。日本人の心に根深く巣食うさまざまな偏見から我々を解放し、日本の文化を見つめる正しい眼をつちかうため本書は書かれた。物質主義に対し、自然にも生命を見、生きとし生けるものの魂の復活を求める、みずみずしい創見と熱情に満ちた著者の処女論文集。