講談社文庫作品一覧

快男児・怪男児(下)
講談社文庫
木下藤吉郎をめざす留吉は順風満帆、キャバレーの経営者となるが、美貌の女優に裏切られて恋を失う。一方、結核で倒れた久保に、献身的助力を惜しまなかったエイ子も、久保の「友田賞」受賞を契機に見棄てられる。他人を信じ、そしてその果てに裏切られていきつつも、常に上を向いて歩む人間を描いた感動的作品。<上下巻>

快男児・怪男児(上)
講談社文庫
青雲の志を抱き秋田から上京した中村留吉は、生き馬の眼を抜く東京に足を踏み入れたとたんに、盗難にあい無一文になる……。一方、女優志願で、やはり秋田から上京したエイ子は、額縁ショウの女優になるが、脚本家志望のアルバイト学生・久保直樹に恋心を覚え、結核に倒れた久保に献身的助力を惜しまなかった……。純情多感な留吉とエイ子の夢と現実を軽妙な構成で描く感動的長編小説。<上下巻>

幸福という名の不幸(上)
講談社文庫
父母の慈愛を春の曙のように受けて生まれた娘・榎並黎子は、17の時に父を失う。不幸がその姿を現わし、黎子は、ある外国系紅茶会社の東京支社長・余語の秘書として、社会に出る。幸福な結婚を夢みる彼女の心に、さまざまな波紋を投げかけ現われ消えてゆく、さまざまな男たち。その遍歴の中で男たちへの、社会への目は、深く、陰影を含んでゆくのだった。<上下巻>
さらばモスクワ愚連隊
講談社文庫

裂けた風雪 傑作短編集(一)
講談社文庫
北アルプスの山荘経営者の事故死に隠された謎を追う、銀行員の無惨な運命を、登山ルートに仕組まれた巧妙なトリックとアリバイ崩しの中に描いた表題作「裂けた風雪」、時刻表を使い、新たな角度から不可能犯罪に意欲的にとり組んだ「殺意の接点」、命をかけた女の復讐譚「“自殺”殺人事件」など、秀作5編収録の短編選集。

祇園女御(下)
講談社文庫
巷は天変地妖に衆徒の強訴に脅え、侍は覇を競い殿上を争う。治天の君として、天下に君臨する白河法皇。王朝に咲いた大輪の花の面影はすでになく、山里にこもる皇后道子。この、交わることのない生涯を結ぶ宿命の糸は、数奇な人生を辿る祇園女御、あかね、傀儡子(くぐつ)の鷲丸、そして、皇弟三の宮たちの運命を手繰り寄せ、縺れてゆく。大治4年夏、法皇の崩御で物語は終る。
治天の君として、天下に君臨する白河法皇。王朝に咲いた大輪の花の面影はすでになく、山里にこもる皇后道子。この、交わることのない生涯を結ぶ宿命の糸は、数奇な人生を辿る祇園女御、あかね、傀儡子(くぐつ)の鷲丸、そして、皇弟三の宮たちの運命を手繰り寄せ、縺れてゆく。大治4年夏、法皇の崩御で物語は終る。

涙は拭かずに
講談社文庫
商店街のPR誌の編集者・相良道子は、雑誌のスポンサーである服部から、ブーツをプレゼントされた。はいてみせてくれ、という服部の注文に応じた道子は不自然な体勢のところを襲われ、あやうく犯されそうになる。道子はかねて編集長の伊賀に好意をよせていた。伊賀も同様らしい。しかし人生は皮肉だ。道子は姉の夫・前田英一に強姦同然で処女を奪われてしまう。ショックは道子を一時的に自暴自棄に追いこむ。さまよう彼女の明日は? 処女喪失が女性をどう変貌させるか、をテーマに描くロマン大作。

見知らぬ橋(下)
講談社文庫
妻の生命を助けようとザイルに刃を当て、クレバスに命を絶った並河。そして彼への熱い想いを彫り込めた因縁深き能面「孫次郎」を胸に、アラスカのメンデンホール氷河に消えた並河に殉じる名緒子――網走の氷原からアラスカの氷河に終わるまで、壮大なスケールに鮮烈な自然描写をおりこんだ本格長編ロマン、完結編。
かつて信州の山中で会い、忘れ得ぬ人だった並河と、流氷の網走で再会……。全生涯を賭けて激しく燃えた京都の夜。妻子ある男との愛に生きる能面師魚住名緒子が求めた永遠の慕情とは……。サンフランシスコ、アラスカへと広がる愛の行方に待ち受けているものは……。恋人たちが最後にたどりつくメンデンホール氷河は愛の聖地なのだろうか。壮大なスケールに鮮烈な自然描写を織りこんだ本格長編ロマン。

仮面法廷
講談社文庫
琵琶湖をのぞむ時価10億円の高台の土地売買をめぐるトラブルで、仲介の弁護士と不動産屋が殺害される。事件の蔭に暗躍する謎の女。法律を盾に、虚々実々の駆け引きに辣腕を揮いながら、甘い利権に群がる地面師。専門知識を活かして、民事裁判の実態をえぐる、法廷ミステリの傑作。江戸川乱歩賞受賞作。

論語
講談社文庫
全人類への遺産『論語』。訳注者独自の見解も交え、親しみやすく工夫された新訳で、他本には見られぬ注釈と解説が最大特徴。詳細かつ丁寧な注釈。孔子の生涯や「仁」を根幹とするその思想を詳述し、『論語』の成立や現代的意義を指摘した解説。中国本土での烈しい孔子批判とも関連させ、いま『論語』をどう読むかを示唆した画期的な注釈書。他本には見られぬ注釈と解説を最大特徴とする、いま『論語』をどう読むか、示唆にとんだ画期的一冊。

見知らぬ橋(上)
講談社文庫
かつて信州の山中で会い、忘れ得ぬ人だった並河と流氷の網走での再会……。全生涯をかけて激しく燃えた京都の夜。妻子ある男との愛に生きる能面師・魚住名緒子が求めた永遠の慕情とは……。サンフランシスコ、アラスカへひろがる愛の行方に待ち受けているのものは……。恋人たちが最後にたどり着くメンデンホール氷河は愛の聖地なのだろうか。壮大なスケールで描く自然描写を織りこんだ本格長編ロマン。〈上下 全二巻〉
能面師を父に、自らも面を打つ魚住名緒子は、網走の流氷を前に、かつて信州の山中で会い、忘れ得ぬ人だった並河に再会する――二人をめぐって起るさまざまな人間関係を背景に、“無償の愛”に生涯を賭ける名緒子と並河との姿に、現代における純粋な愛の形を追求した長編ロマン。

ピタゴラス豆畑に死す
講談社文庫
幻の動物・ツチノコを求めて、大和で変死した、セイケンの高校生。死因は、ツチノコによる咬毒死? 古老は、ツチノコの祟り説を譲らない。続発する変死の謎を解く鍵は、意外や意外、ピタゴラスの定理と江戸小咄にあるというのだが……。現代の高校生群像を描いては他の追随を許さない、乱歩賞作家の青春推理第2弾。

祇園女御(上)
講談社文庫
藤原氏専横の世と武士擡頭の世の間に、束の間花開く院政をしく一代の専制君主白河法皇。その東宮のころにこの物語は始まる。延久元年、藤原道子は28歳で東宮妃として入内(じゅだい)するが、愛の日は短く、東宮の心は間もなく若い新しい妃、賢子に移ろってゆく。やがて数奇な運命の美女たまきが、法皇の寵を一心にあつめ、祇園女御とよばれるようになる……。王朝末期に生きた、女の愛と哀しみを、流麗に描く傑作長編。
藤原氏専横の世と、武士擡頭の世の間、束の間院政をしく専制君主白河法皇が東宮であった時、藤原道子は28歳で東宮妃として入内(じゅだい)する。東宮は間もなく若い賢子に心を移し、やがて運命の美女たまきが、祇園女御と呼ばれて一身に寵をあつめる……。王朝末期に生きた、女の愛と哀しみを、流麗に描く傑作長編。

それはないよ
講談社文庫
かなり大きな出版社の出版部門の部長である茂木は、通勤の地下鉄電車の中で、ユキ子に声をかけた。小柄で、やわらかそうな肉付で、構造も当然小さめ……と茂木は確信していたのだが、いざラブホテルで二人っきりになってみると、意外に楽々と彼は迎え入れられていた。こうしたゆるめの構造に、彼は弱いのだ。〈それはないよ〉という気持で、茂木はユキ子と別れたが、半月ほどたって、二人がばったり再会したのは、会社の廊下でだった。彼女こそ、会社の噂の女であったのだ……。という表題作のほか、「男の初夜」「手切れ金」「バラの日々」「色細工」「すぐ眼の前に」の5篇を収録する官能小説集。

奇妙な人たち
講談社文庫
小池サクが女性実業家として異能を発揮しはじめたのは、彼女が中年の未亡人になってからである。彼女は生前、夫の放蕩に泣かされていたが、頭脳は男以上に良かった。サクが着目したのは、当時珍らしいコンドームの製造。だが、昭和初めである。苦労して作ったものの、販売と宣伝がむずかしい商品だった。彼女は自ら薬局をまわる。だが、反応は思わしくない。サクは、軍隊に目をつけた。うまく当り、海軍省ご用達に。さあ、急に大量注文がきた――。コンドーム産業の創成期に活躍した女傑を描いた「さっく一代」ほか、奇人伝6篇を収める異色小説集。

おくのほそ道
講談社文庫
旅に生き旅に死んだ俳聖芭蕉の、日本の紀行文学中の最高峰といわれる『おくのほそ道』。素竜清書本を底本とし、現代読者のために読みやすく表記を改め、随所に創見をとりいれた脚注補注と現代語訳を付した。巻末には近代の作家の筆になるゆかりの地の紀行随筆を数多く収め、類書にない魅力ある1巻とした。

かれらの中の海
講談社文庫
あらゆる生命の源である海。人間の暴力で死に絶えんとしている海。……苛酷な生存競争に疲れ、死を決意して沖へ向った一人の青年を救い、訓練の後、再び地上へ送り返したのが。銀河連邦から派遣された宇宙よりの使者……。人間には、海を甦らせる事が、はたして可能なのか? SFの手法を駆使し、物質文明を断罪する、警告の書。

第二ユーモア小説集
講談社文庫
美人の新入社員にケチ学の特訓を課しハートを射止めんとする男の秘作戦「男と女」、ウン勢にまつわる風流滑稽譚「大坂の陣異聞」、良家の子女にでたらめな知識をつぎ込んだ上司2人が結婚披露宴で仇討ちをされる「娘たちはこわい」など、独自の世界をひらき、笑いとペーソスにあふれた快小説12編を収録。

海からの光
講談社文庫
海のある風景を背に、ひそやかにはじまる光と闇の物語。海からのあふれんばかりの光は、心の闇に忍びこむ……。光みなぎる海。死の予兆をはらんだ海。さまざまな海からの光が、心の奥にわだかまる暗い淵に射し込むとき、浮かび上がるひとつの青春、そして生のかたち。彫琢された透明な文章が奏でる水晶の響き、背後の沈黙の深さは、まさに現代の神話。小川文学の全体を示す作品集。「青年司祭」「地中海の漁港」「鞭打苦行者」「父と子」「海からの光」を収録。

見事な娘
講談社文庫
お転婆で男勝りの桐子は、ミス丸の内と呼ばれるOLである。溌剌としているけれども、悩みがないわけではない。結婚後に家出をした兄、事業に失敗した父のことで、心は曇る。それでも不幸な恋愛で傷手を受けた同僚には、献身的な助力を惜しまない。青春の哀歓を見事に生きる、OLの典型を描いた傑作長篇。
お転婆で男勝りだが、ミス丸の内と呼ばれるOL桐子。はつらつとしているけれども悩みがないわけではない。結婚後、家出をした兄、事業で失敗した父のことで心はくもる……。OLの哀感を描く傑作長編。