講談社文庫作品一覧
徳川家康(十四)明星瞬くの巻
講談社文庫
奥州の伊達政宗と蒲生氏郷の不和により秀吉と利久の仲はさらに険悪になる。弟秀長を喪った秀吉は、ついに利久を聚楽第から追放。奥州問題の処理に成功した家康は江戸に戻ってその経営に専念する。関白職を甥の秀次に譲った秀吉は、肥前名護屋から朝鮮へ出兵。が、水軍は敗れて、戦勢は次第に不利となった。
徳川家康(十三)佗茶の巻
講談社文庫
九州征伐に成功した秀吉は、小田原の北条氏攻略に着手する直前、家康に関東への移封を言い渡し、縁戚にあたる北条討伐の先鋒を命ずる。天正十八年七月、小田原は降伏、翌月、家康は江戸へ。その頃、秀吉の傲慢さに怒りを燃やした千利休は、茶道のため、おのれを曲げず秀吉と争う決意を固めるのだった。

火の国の女の日記(下)
講談社文庫
〈女性解放に根拠を与えるもののとして女性史学〉を夫婦一体化の中に樹立した、高群逸子の自叙伝。1963年69歳、病床に起筆、翌年急逝後は夫・憲三によって捕結した作品である。高群逸子は、1931年37歳、森の研究所に面会謝絶の札を懸け〈女性史学事始〉を始め、与えられた道を歩み始める――机上に本居宣長「古事記伝」ただ一つ。「最も良き後援者となろう」と誓う夫・憲三とただ二人で。〈1日10時間〉の読書をおのれに課し、生涯無名の一坑夫に終ることを望みつつ……。ついに古代系譜に多祖を発見、日本母系制社会を実証し、婚姻史・女性史へと結実する。いわば白熱の時代、そして終焉という、急逝する70歳までの30年余の生を語る、彼女の生きよう、全体像を最もよく伝える名著。〈上下 全2巻〉

残虐な抱擁
講談社文庫
誤りの戦死公報を受けて再婚していた妻を、復員後20余年たって殺すにいたった男の「戦後」。女子挺身隊員の記憶を胸に、10年以上も結核の療養生活を送っている女の「青春」……戦争の暗影をひきずりながら、現実から脱落して陰のように過去に生きるしかない二つの人生。斬新な手法を駆使して、「戦後」の意味を問う問題作。

ひっぴい先生遊蕩日誌
講談社文庫
美しく魅力的な教え子と結婚したいという、ごく簡単な動機から、安永は、都心から1時間ほどの所にある公立高校の英語教師となった。女の子の数は、たしかに多い。しかし、どこか生ぐささの感じられる女子高校生たちは、安永の趣味には合わなかった。そこで、「ひっぴい先生」と異名をとる彼が、みずからの好みに忠実に繰りひろげる遊蕩日誌に登場する美女たちは、教え子の姉でデパートガールの田原泰子、他校の英語教師・徳山紀子、ボクシング部の猛者のうら若い義母・末松広子、喫茶店のウェイトレス・西田葉子など……。健康で豊艶なエロスあふれる、現代風ユーモア連作小説。
みずから我が涙をぬぐいたまう日
講談社文庫
国体護持を信奉する右翼の父と大逆事件被告の娘を母とする二つの血筋の交差点に立つ少年の敗戦時の原光景に現れる天皇体験――。著者年来の切実なテーゼ「純粋天皇」を追及した表題作と、関連作「月の男」を収録。

尻啖え孫市
講談社文庫
鉄砲は名人、女好きは日本一。スケールの大きい戦国武士のうちでも、とりわけ異彩を放つ雑賀孫市。藤吉郎との奇妙な友情のうちに、紀州雑賀衆の頭目として鉄砲の腕にもの言わせ、無敵の信長にみごと“尻啖(しりくら)わせた”痛快さ!戦国の世を縦横に生きた奇男児の豪快な一生を描く、著者会心の長編。

さむらい山脈
講談社文庫
丹波亀山5万石は当主・伊勢守忠光が3年前に病死したため、弟の忠之が家督を継ぎ、後室・お茂の方は、深川・小名木川ぞいの小宅に住んでいる。お茂の方はまだ若く、すぐれた美貌だったため、その美しさに執心した忠之が、里方へ帰さなかったからだ。当主の邪恋の隙を狙ったのが、側用人・黒崎重四郎。江戸藩邸に黒崎党をつくって、一手に藩政をおさえようと野望に燃える。かくて、亀山家はお家騒動になるが、ここに敢然と立ち上ったのが青年創士・鶴田礼三郎だ。礼三郎は家老の息子だが、藩の危機を救うため、浪人の身となって、騒動のまっただなかへ乗りこんでゆく。剣が走り恋が咲く時代長編。
徳川家康(十二)華厳の巻
講談社文庫
家康は秀吉の妹朝日姫を正妻にすると、秀吉の生母大政所と対面したのち、後事を本多作左に託し、総勢二万の大軍を率い、関白の弟として上洛、ついに両雄はかたく連携する。浜松に戻った家康が、待望の駿府城に入って東国経営にのりだすとき、秀吉は後顧の憂いなく、勇躍して九州征伐に向かう。
徳川家康(十一)龍虎の巻
講談社文庫
秀吉は、家康に臣礼をとらせて天下統一を呼号するため、佐治日向守秀正の内室になっている妹朝日姫を離別させて本妻のない家康に嫁がせようとする。朝日姫の嘆きと秀正の憤死‥‥。が、間に立った石川数正の身を捨てての奔走によって縁組は成立し、秀吉と家康との和解がようやく実現の緒に就いた。
秀吉は、家康に臣礼をとらせて天下統一を呼号するため、佐治日向守秀正の内室になっている妹朝日姫を離別させて本妻のない家康に嫁がせようとする。朝日姫の嘆きと秀正の憤死。が、間に立った石川数正の身を捨てての奔走によって縁組は成立し、秀吉と家康との和解がようやく実現の緒に就いた。
氷川清話
講談社文庫
激動する幕末から明治にかけて政治の表も裏も知りつくし、回想と現状との比較から歯に衣着せずとび出す痛烈な時局批判そして人物評論の数々。現代に再評価される海舟像の全貌を知る名著。

渓流
講談社文庫
夫と離別し、一家の要として肉親の愛憎や葛藤を一身に引きうけるいっぽう、共産党の運動方針や除名問題というさまざまな体験や苦労を味わいながらも、党や文学団体との関わりの中に、自らの生き方を求める安川友江。内憂外患の情勢下で、思想的にも人間的にも誠実に生きようとする一女流作家の真摯な生を描く。

円地文子 女の繭
講談社文庫
菱川佳世は、銀座「丸藤」専属の若い和服デザイナー。彼女の染めた衣裳を、一流会社の社長夫人・菅野三千代が着ると、人目をそばだてる。生家が西陣の帯地問屋と織元という関係で、三千代の方が年上だが、二人は幼い頃から姉妹のように親しかった。佳世の兄・豊喜は太平洋戦争の軍医で、ある夏、突然帰国する。彼は抑留中のいまわしい経歴から、虚無的な影のある男となっており、佳世はそんな兄の底知れぬ冷たさに幻滅するが、彼の帰還を10年待ち暮して今は人妻の三千代の瞳は、妖しく燃えるのだった。人間に絶望した男を愛のちからで蘇らせる、京おんなの激しくも哀切な恋を描く傑作。

新選組始末記
講談社文庫
著者長年の実地調査を基に、幕末の風雲狂乱の渦中にあって誠心一徹の生涯を貫いた男たち。近藤勇、土方歳三、沖田総司らの人間像を描破、新選組の全容を史実の壁に彫り刻んだ子母澤寛の代表作ーー幕末、江戸幕府の浪人対策の一つとして結成された浪士組は、本拠を京都・壬生に置いて、禁門警護の任につき、市中見廻りの役に当たった。勤皇か佐幕か、開国か攘夷か、国論はまっ二つに割れ、世はまさに日本国あげての動乱の時代であった。この時期、幕府への至誠一徹、暗殺剣の名をほしいままにし、尊攘志士をふるえあがらせた「新選組」の隊士たちは、その青春をいかに生き、その命と魂をいかに燃焼させたのか……。著者みずから長期にわたって新選組所縁の地を訪ね、あるいは古老の談を聴取して得た記録を基に、新選組結成から最後までの真のすがたを史実の壁に彫り刻んだ会心の力作。
高層の死角
講談社文庫
徳川家康(九) 碧雲の巻
講談社文庫
光秀を討って主君の仇を報じた秀吉、武田の旧臣をことごとく随身させて勢力を伸ばす家康――両雄の宿命的な対決の期は迫る。女遊びに韜晦する家康の噂に、秀吉は後顧の憂いなく、越前北の荘へ柴田勝家討伐に。敗れた越前では、浅井長政の遺児を逃がして自らは勝家の妻として死ぬ信長の妹お市の方の悲劇が!

火の国の女の日記(上)
講談社文庫
「女性解放に根拠を与えるものとしての女性史学」を、無から夫婦の同志的結合の中に打ち立てた高群逸枝の自叙伝。1963年、69歳、病床にあり起筆、64年急逝後は夫憲三が補結。彼女の生きよう、全体像を最も良く伝え、今や華やかなる女性論も色褪せる。まさに「女性の自叙史、それが女性史」であった。上巻は火の国の女の凜性を自覚し、原型をなす37歳までを収録。
徳川家康(十) 無相門の巻
講談社文庫
大坂に築城して天下に覇を唱えようとする秀吉に対して織田信雄が起つと、家康は義によって織田方に味方して小牧長久手に戦うが、双方とも、相手を滅ぼすことの不利を悟り、和を講じる。が、秀吉からの、家康の二男於義丸(結城秀康)の人質要求が、勝ち戦だったと思い込んでいる家康の家臣達を起こらせた。

ミステリー傑作選(2) 殺人現場へどうぞ
講談社文庫
謎解き、心理スリラー、ハードボイルド、社会派推理、スパイもの、SFミステリー、と多様化した推理小説の珠玉の作品14編。絶好の推理界ガイド。
-収録作家-生島治郎・梶山季之・黒岩重吾・小松左京・笹沢左保・佐野洋・高木彬光・多岐川恭・陳舜臣・戸川昌子・星新一・松本清張・三好徹・結城昌治

虚無への供物
講談社文庫
戦後の推理小説ベスト3に数えられ、闇の世界にひときわ孤高な光芒を放ち屹立する巨篇ついにその姿を現す!井戸の底に潜む3人の兄弟。薔薇と不動と犯罪の神秘な妖かしに彩られた4つの密室殺人は、魂を震撼させる終章の悲劇の完成とともに。漆黒の翼に読者を乗せ、めくるめく反世界へと飛翔する。