講談社文庫作品一覧

ふなくい虫
講談社文庫
ふなくい虫。流木に喰いつき、ひとり、隣の虫にぶつかりそうになると、慌てて折れまがり、暗い木のなかを、ばり、ばり、と喰いすすむだけの一生。相手の顔も見ず、尻っぽの先をひらひら泳がせ、孤独に受精するという。孤独のホテルのけだるい倦怠に身を任せる5人の男女は、人類断絶の時代の開始を告げるのか。錯綜する愛欲関係に精神の孤絶感を刻み、現代の予感する終末の世界を、詩的に、残酷に謳いあげた、荒地のものがたり。
孤独のホテルのけだるい倦怠に身を任せる五人の男女は、いま、人類断絶の時代の開始を告げるのか。錯綜する愛欲関係に精神の孤絶感を刻み、現代の予感する終末の世界を、詩的に、残酷に謳いあげた傑作。

色即回帰
講談社文庫
男の女遍歴を、浮気などといって非難するのは大間違い。そういう気持の強い男こそ、女陰回帰の志、母のもとへも戻りたいという、いわば母を求めて三千里、真実鈴ふり巡礼心の持主なのだ。――山陰は皆生温泉、風呂番の老人が人生哲学を語った「色即回帰」ほか、野坂文学の真骨頂を発揮した作品7編を収録。
老若男女を問わず、我と我が身を忘れ、色に狂う人の世のあさましさ。ああ、この哀しき煩悩――。山陰は皆生温泉、風呂番の老人が人生哲学を語る表題作「色即回帰」ほか、「色指南」「色法師」など七編を収録。
虚構の空路
講談社文庫
徳川家康(十五)難波の夢の巻
講談社文庫
文禄四年七月、名護屋から帰った秀吉は、粗暴の振る舞い多く、「殺生関白」と怖れられていた秀次を高野山に自刃させた。上洛した家康が、秀頼への忠誠の誓紙をとられたのは、その翌月のことである。そして慶長三年八月、秀吉は、秀頼の前途を案じつつ「浪花のことは夢の又夢」の辞世をのこして永眠した。
徳川家康(十六)日蝕月蝕の巻
講談社文庫
豊太閤の死後、石田三成は家康に対抗しようとあせった。秀吉に後事を託された家康が、朝鮮からの撤兵を無事に終えるころ、諸将の間に家康に異心ありの噂がひろがり、派閥抗争が激化する。やがて、武断派の加藤清正らにうとまれた文治派の光成はなぜか家康のもとに難を避けてきた‥‥。
海を見ていたジョニー
講談社文庫

砂絵呪縛後日怪談
講談社文庫
父と母の愛を結びつけた砂絵を唯一のたよりに、父を求めて江戸に来たとみは、極道者の手で殺され、5人の男に回春のための仏なぶりにされる。美しい鈴の音が流れ、砂絵が届けられると、5人の男たちの家々に地獄図が繰りひろげられていく。怨念の炎が華麗なまでに燃上る、怪奇幻想の世界「砂絵呪縛後日怪談」、ほか5編。
回春の秘法“仏なぶり”の犠牲となっ美貌の娘とみ……。だが、奇怪にも、その亡骸から女児が誕生した。怪奇幻想の世界を描く表題作ほか「へのへの茂平次」「継小袖」など四編収録の凄絶な時代小説集。

ミステリー傑作選(4) あなたの隣に犯人が
講談社文庫
百花斉放のミステリーの諸ジャンルを一望にし、その醍醐味を1冊に凝縮した名短編推理15編を収録。
-収録作家-黒岩重吾・生島治郎・三好徹、結城昌治・樹下太郎、筒井康隆・戸川昌子・笹沢左保・佐野洋・佐賀潜・多岐川恭・松本清張・戸板康二・星新一・菊村到

ミステリー傑作選(3) ちょっと殺人を
講談社文庫
斬新なアイデアのもとに技巧の粋を凝らして贈る、ミステリーの名匠15人の魅力あふれる短編推理の宝庫。
<収録作家>黒岩重吾・陳舜臣・三好徹・笹沢左保・佐野洋・生島治郎・高木彬光・星新一・結城昌治・松本清張・多岐川恭・小松左京・仁木悦子・梶山季之・戸川昌子

どっこいショ
講談社文庫
戦争の傷痕がいまだに疼き、おどおどと人生を送っている父親と、そんな父親に反抗する戦争を知らぬ世代の息子。誤解と断絶から生まれる様々なトラブルを通して人間らしさの真実を追求した、ペーソスあふれる長篇小説。

モッキンポット師の後始末
講談社文庫
食うために突飛なアイディアをひねり出しては珍バイトを始めるが、必ず一騒動起すカトリック学生寮の“不良”学生3人組。いつもその尻ぬぐいをさせられ、苦りきる指導神父モッキンポット師──ドジで間抜けな人間に愛着する著者が、お人好し神父と悪ヂエ学生の行状を軽快に描く笑いとユーモア溢れる快作。

花氷
講談社文庫
不動産ブローカーの粕谷は、元愛人の登代子と銀行員坂本の仲に目をつけ詭計で支店長黒川を脅迫する。粕谷が狙う一攫千金の野望は国有地の払下げである。資金のメドのついた彼は、臆面もなく政界実力派の代議士に接近……。腐敗する政界裏面と、飽くことのない欲望に奔走する男の黒い構図を描く異色作。
徳川家康(十四)明星瞬くの巻
講談社文庫
奥州の伊達政宗と蒲生氏郷の不和により秀吉と利久の仲はさらに険悪になる。弟秀長を喪った秀吉は、ついに利久を聚楽第から追放。奥州問題の処理に成功した家康は江戸に戻ってその経営に専念する。関白職を甥の秀次に譲った秀吉は、肥前名護屋から朝鮮へ出兵。が、水軍は敗れて、戦勢は次第に不利となった。
徳川家康(十三)佗茶の巻
講談社文庫
九州征伐に成功した秀吉は、小田原の北条氏攻略に着手する直前、家康に関東への移封を言い渡し、縁戚にあたる北条討伐の先鋒を命ずる。天正十八年七月、小田原は降伏、翌月、家康は江戸へ。その頃、秀吉の傲慢さに怒りを燃やした千利休は、茶道のため、おのれを曲げず秀吉と争う決意を固めるのだった。

火の国の女の日記(下)
講談社文庫
〈女性解放に根拠を与えるもののとして女性史学〉を夫婦一体化の中に樹立した、高群逸子の自叙伝。1963年69歳、病床に起筆、翌年急逝後は夫・憲三によって捕結した作品である。高群逸子は、1931年37歳、森の研究所に面会謝絶の札を懸け〈女性史学事始〉を始め、与えられた道を歩み始める――机上に本居宣長「古事記伝」ただ一つ。「最も良き後援者となろう」と誓う夫・憲三とただ二人で。〈1日10時間〉の読書をおのれに課し、生涯無名の一坑夫に終ることを望みつつ……。ついに古代系譜に多祖を発見、日本母系制社会を実証し、婚姻史・女性史へと結実する。いわば白熱の時代、そして終焉という、急逝する70歳までの30年余の生を語る、彼女の生きよう、全体像を最もよく伝える名著。〈上下 全2巻〉

残虐な抱擁
講談社文庫
誤りの戦死公報を受けて再婚していた妻を、復員後20余年たって殺すにいたった男の「戦後」。女子挺身隊員の記憶を胸に、10年以上も結核の療養生活を送っている女の「青春」……戦争の暗影をひきずりながら、現実から脱落して陰のように過去に生きるしかない二つの人生。斬新な手法を駆使して、「戦後」の意味を問う問題作。

ひっぴい先生遊蕩日誌
講談社文庫
美しく魅力的な教え子と結婚したいという、ごく簡単な動機から、安永は、都心から1時間ほどの所にある公立高校の英語教師となった。女の子の数は、たしかに多い。しかし、どこか生ぐささの感じられる女子高校生たちは、安永の趣味には合わなかった。そこで、「ひっぴい先生」と異名をとる彼が、みずからの好みに忠実に繰りひろげる遊蕩日誌に登場する美女たちは、教え子の姉でデパートガールの田原泰子、他校の英語教師・徳山紀子、ボクシング部の猛者のうら若い義母・末松広子、喫茶店のウェイトレス・西田葉子など……。健康で豊艶なエロスあふれる、現代風ユーモア連作小説。
みずから我が涙をぬぐいたまう日
講談社文庫
国体護持を信奉する右翼の父と大逆事件被告の娘を母とする二つの血筋の交差点に立つ少年の敗戦時の原光景に現れる天皇体験――。著者年来の切実なテーゼ「純粋天皇」を追及した表題作と、関連作「月の男」を収録。

尻啖え孫市
講談社文庫
鉄砲は名人、女好きは日本一。スケールの大きい戦国武士のうちでも、とりわけ異彩を放つ雑賀孫市。藤吉郎との奇妙な友情のうちに、紀州雑賀衆の頭目として鉄砲の腕にもの言わせ、無敵の信長にみごと“尻啖(しりくら)わせた”痛快さ!戦国の世を縦横に生きた奇男児の豪快な一生を描く、著者会心の長編。

さむらい山脈
講談社文庫
丹波亀山5万石は当主・伊勢守忠光が3年前に病死したため、弟の忠之が家督を継ぎ、後室・お茂の方は、深川・小名木川ぞいの小宅に住んでいる。お茂の方はまだ若く、すぐれた美貌だったため、その美しさに執心した忠之が、里方へ帰さなかったからだ。当主の邪恋の隙を狙ったのが、側用人・黒崎重四郎。江戸藩邸に黒崎党をつくって、一手に藩政をおさえようと野望に燃える。かくて、亀山家はお家騒動になるが、ここに敢然と立ち上ったのが青年創士・鶴田礼三郎だ。礼三郎は家老の息子だが、藩の危機を救うため、浪人の身となって、騒動のまっただなかへ乗りこんでゆく。剣が走り恋が咲く時代長編。