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2021.10.08発売
神々の岩壁
南は、ハーケンを打つ右手に、異常を感じた。手ごたえが甘い。垂直300メートルに屹立する衝立岩にとりついて3日目、最後の一滴の水もつきていた。バランスを失って、危うく墜落しそうになる。もはや彼の心には、岩に対する憎しみだけがあった。登攀不可能といわれる衝立岩は、神々の手に守られて、人間を拒んでいるかに思える。それでも、南は危険な垂直の前進をやめようとしない! 少年の日、登山家を夢見ていらい、ヒマラヤを志して精進を続けた、天才的クライマーが、魔の谷川岳、衝立岩に挑む姿をえがいた実録小説「神々の岩壁」はじめ山岳小説4篇。

2021.10.08発売
砂に濡れた女
「あんた、わたしが好きなんでしょ、だったら、抱いてもいいわよ」自分のヌード写真に陶酔しながら、亜矢子は気軽にそう言い放った……。写真家・織本信吉がヌードを撮った新進女優・原亜矢子は、美しい肢体の持主だった。少女のあどけなさと年増女の爛熟味を兼ね備えた身体! その妖しい肉に酔い痴れた信吉は、彼女と婚約するが、ヌード写真が評判になり映画の主役に抜擢された亜矢子は、信吉を裏切る。その後、映画に失敗した亜矢子が、失意の彼の前に現われ、信吉は再び欲情の虜となってしまう……。現代の愛と性、女の哀しい虚栄を鮮烈に描いた表題作ふくむ7編を収録。

2021.10.08発売
告白 女心遍歴
幾度も職業を変え、貧に悩み、さまざまな傷心を、人の何倍か味わった水上勉は、人間のおそろしさにおののき、しかも人間を愛さずにはいられない。「女心遍歴」という言葉の中には、理想の女を求め、裏切られ、やはりそれを思うことをやめられない男の、せつない祈りがこめられている。また、みずから破戒坊主と称して、女性とのもつれ合いを「告白」するとき、水上勉の心には、愛へのはげしい願いが、こみあげてくる。……自伝的な、この2つの異色作は、著者の作品群の中で印象的な位置を占め、著者の心の記念碑ともいうべき、美しくかなしい物語である。

2021.10.08発売
見事な獣
美しく悪賢い、見事な獣が、狂おしく昂ぶり、あえぐ……。溶ろけるように深く柔らかな肌に、熱く絡み合った男の復讐劇! 12年前、友人に妻を奪われ、心の傷手を負った佐伯信吾は、その友人の女遊びの話を聞いた。冷ややかな好奇心に駆られて、女に会いに行った信吾が見たのは「見事な獣」だった……。繊細でエキゾティックな感じと野性的な妖しさが入り混った不思議な魅力……。友人をとりこにした女・房江は、信吾を一夜の情事に誘い、陰湿で奇妙な復讐を信吾に果たさせるのだった……。愛憎とセックスの世界を鮮烈に描いた表題作のほか10編を収録。

2021.10.08発売
女 色見本帖
あの夜の奇妙な情事! 女の隠微な体臭や樹液の味わいまで知りながらも、なぜか営みを果たすことが許されずに終わった、残酷な愛撫……。ただ一度の情事が忘れ難く、女に会おうとしても会えず、その肢体を生々と苛立たしく思い起こしていた男の前に、ついに女が現われた。しかしそれは悪夢のような一幕だった……。第1話「悪夢を秘めた女」から第10話「暁子のついた嘘」まで、現代の「いろ鮮やかな」愛とセックスのかたち、大都会に生きる男女の、欲望にからむ心理のあやを、鮮烈なエロティシズムの中に描き、奔放な愛の世界を大胆に抉った力作。

2021.10.08発売
プレイボーイ日記
膃肭獣(オットセイ)を思わせて、ぬめぬめと光り、しなう葉子の肢体。……官能の異常な深さも、これほどとは! 土岐は賛嘆し、溺れる……。だが、次には、あっけにとられた……。銀座でプレイ・ボーイの虚名を頂戴する洋画家・土岐も、足許にも及ばぬ見事な「チョコレート色の獣」葉子。という、甘美な性と陶酔のうしろに、現代の不毛をのぞかせた表題作のほか、独りの愉しみに溺れる若い妻を描く『告白の夜』、地下酒場の鋭い性を秘めた少女を描く『青春の穴倉』、飢えた美しい妻が燃える『背徳の目ざめ』など、現代人の性の生態を余すところなく描いた5編を収録。

2021.10.08発売
皇女和の宮
有栖川宮熾仁親王と婚約するも、公武合体・尊王攘夷で揺れる幕末の、江戸幕府と皇室と複雑な関係から、将軍・徳川家茂に降嫁することになった和の宮。大政奉還の後、二人は再会するが……。巨匠・川口松太郎が描く、幕末のヒロインの物語。TVドラマ化もされ、またこのドラマが縁で平幹二朗と佐久間良子が結婚へ向かったことでも話題になった作品。

2021.10.08発売
歌舞伎剣法
15歳の美少年・山三郎は、蒲生氏郷に召し抱えられたが……という表題作はじめ、五味康祐、柴田錬三郎とともに、剣豪小説を支えてきた著者による傑作8編。

2021.10.08発売
慶長大判
関ヶ原の戦いの翌年、徳川家康は江戸大判座で大型金貨を鋳造し、日本で初めての全国的流通金貨とした。その金貨を届けるために男たちは……という表題作はじめ、人情や愛嬌のある人々を描いた、8作品の短編集。

2021.10.08発売
この子の父は宇宙線
11人の女性だけを月に送り込んだ国と、9人の男性ばかりを送り込んだ国があったが……、という表題作はじめ、山岳小説で有名な著者が描いた、貴重な4つのSF小説。現在の電気通信大学卒で気象学者という、理系の作者だと実感できる。

2021.10.08発売
じゃが太郎兵衛無惨帖
日光と上野にある輪王寺を守る宮様に仕え、快剣・南蛮刀法を自在に操るじゃが太郎兵衛は、義経の後胤説もある、神出鬼没の動きをする剣客。泰平の御世を喰い物にする水野出羽守忠成とその一味を相手に、胸のすく大活躍をする! テンポのいい文体で描く連作短篇集。

2021.10.08発売
鮮血洋燈
洋燈(ランプ)に隠された、ロマノフ王朝最後の王女・タチアナの宝石を巡って、ロシア、満洲、日本を舞台に繰り広げられた殺戮と惨劇。だが、実はその宝石は、ある日本人が軍に供出していた品で、ある日本の大臣が秘匿しようとしていたことがわかり……。元・日本探偵作家クラブ会長の手による、戦争が生んだ狂気を描いた傑作ミステリー。

2021.10.08発売
脚光
ヤジマ製薬の宣伝部に働く大道輝子は、中流家庭にのびのびと育った明朗な現代娘。気まぐれに無名の劇団アシカビに加入し、たまたまヤジマ製薬提供のラジオ番組にサクラ出演したのが縁で、連続ドラマのヒロインに選ばれる。こうなると、本人の意志に関係なく、マスコミはスターの座におしあげていく。周囲の醜い嫉視、許婚者との愛の破綻に傷つきながら、輝子は次第に女優としての意識にめざめ、主役に抜擢されたT座公演の初舞台に、新生の第一歩を踏みだすのだった……。平凡なビジネスウーマンが一躍華やかな脚光を浴びて女優となる、現代の夢に愛と真実の意味を問う傑作長編。

2021.10.08発売
夜と昼と
静子は過去に一度結婚したが、夫に女ができると自ら身を引いて別れるような、内気なやさしい性質であった。姉の愛子の家に、妹の珠子とともに身を寄せているが、姉たち夫妻のいまだに新婚気分の漂う幸福そうな様子、バレエに打ち込む珠子に較べ、女としての自分の幸福を夢みることもあった。静子は姉の夫の弟の和夫に親しみを感じていたが、和夫の方も共かせぎを続ける妻のさばさばした性格とは違って、いつも「女」を意識させる静子にひかれてゆき、やがて二人は周囲の人々の目を忍ぶ暗い情熱に結ばれてしまう。現代社会における愛のあり方を追求した力作。

2021.10.08発売
甘いホテル
いっけん英国紳士風の直江一良は、「善良な市民のよき相談相手」と称する《直江コンサルタント》を開いている。ある日、麗しい女性の依頼人がやってきた。彼女は細谷てい子といい、金力にものをいわせて温泉マークのホテル建設を狙って画策している萩原仙三に対抗して、品格あるホテルを建て上品な保養地にする計画の実現に力を貸してほしい、という相談であった。躊躇している直江のもとに「彼女こそコール・ガールの組織を操る悪女」という怪電話があり、助手の紀子と竜平の応援をえて、俄然真相究明にのりだす。笑い・スリル・お色気に溢れるユーモア・ミステリー。

2021.10.08発売
チンネの裁き
ヒマラヤ遠征隊のリーダーとして有名な蛭川繁夫が、剣岳チンネをめざして池の谷左俣の雪渓で落石死した。剣尾根のドーム壁を登攀していた木塚健は、落石が3方から起こり、その上にそれぞれ人がいたことから遭難に疑惑を抱く。しかも、アイゼンの紐が切れていた! 何者かの作為を感じ真相の究明にのりだした木塚と蛭川の兄・一郎の前に立ちふさがる、山の偉容となまぐさい人間関係……。この「チンネの裁き」は、美貌の女流アルピニストをめぐって山の掟をやぶった山男たちの愛の確執から、登攀ルートに企らまれた完全犯罪が山の裁きをうける顛末を、逞しい筆致で描いた異色作。

2021.10.08発売
新編八犬伝
おなじみ、苗字に犬という字があり、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌それぞれの文字のある玉を持つ、8剣士ならぬ8犬士の物語。日本文学最大の長編と言われる滝沢馬琴の名作を、剣豪小説の名手が描く!

2021.10.08発売
暁の鐘は西北より
講談社文庫
帝政ロシアの極東政策が、ひそかに日本に上陸か? ……得体の知れない奇妙な建物、浅間山の谷間にあるという人体建築の秘密とは? 日本人ばなれした濃艶な娘・ニナ小夜子をめぐって、泉東十郎と坂部軍之進との激烈な恋あらそい。また、オリガ桜子一党と人体建築の主・溝呂木信兵衛一党との凄惨な確執。世紀末的症状を現わす田沼時代の、秘密に満ちた多様な人間の綾なす絵巻!

2021.10.08発売
エデンの海
講談社文庫
瀬戸内海にのぞむ女学校に、新任教師として赴任した南条は、教師の間で「問題児」として見られている清水巴に惹かれて行く。複雑な境遇のため祖母のもとで育った巴は、「成熟の側からは不逞にみえ、未熟の側からは可憐にみえる」特異な少女であった。教師として巴に対しながらも南条は、彼女の姿態の中に女を見、はげしい感情にとらえられる。二人の行動は、周囲の好奇の目にさらされて行く……。教え子への想いに、教師としての限界に悩む青年教師と、純粋な感情のままに、奔放にふるまう女生徒との愛の行方を、明るい太陽とひろがる海を背景に描き、青春の光と影を鮮やかに刻む傑作ロマン。

2021.10.08発売
忠直卿行状記
講談社文庫
越前宰相・忠直には、沸々たる不満がたぎる。二代将軍・秀忠の兄・秀康の長子に生まれ、大坂の陣にも東軍随一の戦功をたてながら、恩賞は薄かった。「血統から言えば、わしが将軍となって当然の身分ぞ!」忿懣は忠直を酒色に走らせて、やがては狂乱の殺戮をほしいままにする。愛妾の一国とともに罪人の処刑を見物し、鮮血のなかに盃を傾け、果ては罪なき家臣に無理難題をつきつけて成敗する。残虐の裡に無上の快楽を求めていた。忠直の妻は、秀忠の娘・勝姫である。狂気の中に身を滅亡の淵に追い込もうとする夫の行動を、彼女は江戸に告げた。独自の新解釈による「忠直卿行状記」ほか9篇を収録。