新刊書籍
レーベルで絞り込む :

2020.11.13発売
逢魔物語
講談社文芸文庫
『八犬伝』の伏姫、『番町皿屋敷』のお菊、三ツ目小僧……。物語、伝説、夢、フォークロアなどを鮮やかな媒介として、「秩序」「制度」からはぐれ、はずれた生や、愛たちを問う、「新しい時代」の女性作家・津島佑子の果敢な力業。時代が生んだ「生」の新たな意味を問う、中篇連作集。

2020.11.13発売
女たちの海峡
講談社文庫
病床の父の最後の願いに涙がとまらない。失踪した父を探しに海峡を渡った女が知る、複雑な人生の軌跡ーーあなたのお父様、丁大吉さんはご健在でいらっしゃる……謎の手紙に導かれ、幼いころ失踪した父親を捜しに、海峡を渡った唐谷美弥子の韓国への旅。そしてそこで知る、複雑な人生の軌跡。日本・朝鮮の歴史の暗部を抉り、太平洋戦争から現代にかけて、時代の荒波に翻弄される親子二代を描く、重くて深い感動の小説。

2020.11.13発売
夢二の小徑
講談社文庫
男は泣くもんじゃない、淋しいだとか、悲しいだとか、そんな感傷を歌ったり、描いたりするのは、女女しいことであり、男として恥ずかしいことだ、という男性原理がつくりだした根強い意識のなかで、夢二は死ぬまで感傷を正直に吐露し、悲哀をそのまま描きあげた。勇気なくして、激しい情熱なくして、だれがそれをよくなしえようか。……竹久夢二の魅力に迫る!

2020.11.13発売
音楽展望2
文芸(単行本)
音楽を聴くよろこびを語り、現代の芸術と文化の危機を洞察する。ジャンルを越えた自由な発想による新しい芸術批評の誕生。朝日新聞に連載された人気エッセイ「音楽展望」待望の第2集。

2020.11.13発売
音楽展望
文芸(単行本)
音楽を中心に、西欧と日本の様々な芸術や文化を鋭く感得し、明快に綴る。透徹した知性と犀利な感性がみなぎるエッセイ集。朝日新聞に連載された人気コラム「音楽展望」3年余分を収録。

2020.11.12発売
自由意志の向こう側 決定論をめぐる哲学史
講談社選書メチエ
人間は遺伝子に操られているのか?
宇宙開闢の時点で、その後の出来事は一通りに決まっていたか?
運命はあるのか?
人間と機械は何が違うのか?
こうした疑問はすべて人間の自由意志の問題であり、
デモクリトスからスピノザ、デネットまで、
決定論の哲学史に刻まれている。
ダーウィンや神経科学など自然科学的観点も検討しつつ、
決定論のこれまでとこれからを考える。

2020.11.12発売
経済学の思考法 稀少性の経済から過剰性の経済へ
講談社学術文庫
格差拡大、雇用不安、デフレ、グローバリズムの停滞……。「構造改革」以降、実感なき好景気と乱高下する日本経済。過剰な貨幣発行がもたらす問題、「複雑な”経済現象”」と「理論重視の”経済学”」の乖離など、現代資本主義が直面する困難を徹底的に検証。
アダム・スミスから金融理論、リーマンショックからアベノミクスまで、経済学の限界と誤謬を提示する。
内容抜粋
「経済学」がひとつの思想でありイデオロギーであるとすれば、今日の支配的な経済学の考え方とは異なった「経済」についての見方はできないか。「稀少な資源の配分をめぐる科学」というような経済学の典型的な思考方法ではない、別の思考様式はないのか、ということだ。―――学術文庫版「はじめに」より
目次
学術文庫版「はじめに」
第1章 失われた二〇年――構造改革はなぜ失敗したのか
学術文庫付論
第2章 グローバル資本主義の危機――リーマン・ショックからEU危機へ
学術文庫付論
第3章 変容する資本主義――リスクを管理できない金融経済
第4章 「経済学」の犯罪――グローバル危機をもたらした市場中心主義
第5章 アダム・スミスを再考する――市場主義の源流にあるもの
第6章 「国力」をめぐる経済学の争い――金融グローバリズムをめぐって
第7章 ケインズ経済学の真の意味――「貨幣」の経済学へ向けて
第8章 「貨幣」という過剰なるもの――「稀少性」の経済から「過剰性」の経済へ
第9章 「脱成長主義」へ向けて――現代文明の転換の試み
あとがき――ひとつの回想
学術文庫版あとがき
2012年刊行、講談社現代新書『経済学の犯罪』を改題、
大幅加筆修正したものです

2020.11.12発売
中国の歴史4 三国志の世界 後漢 三国時代
講談社学術文庫
講談社創業100周年企画「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版。第2回配本、第3巻と同時発売の第4巻は、後漢末期から魏・呉・蜀の三国時代に焦点を当てる。
日本人にもっとも長く、広く親しまれてきた外国文学、『三国志』に語られる歴史は、どれほど史実を伝えているのだろうか。中国文学の研究者である著者が、小説『三国志演義』を手掛かりに、大抗争時代の戦乱と外交、文化と社会を解き明かす。
著者によれば、この時代は、現代にいたる中国の歴史を知るうえで、見逃せない重要性を持っているという。たとえば、小説では悪役の魏の曹操は、卓越した改革者であり、その子の曹丕、曹植は優れた詩人だった。曹操父子を中心とする文学運動が、後の唐詩の原点となったのである。また、広大な中国に、統一帝国を強く指向する理念が確立したのは、この時代だった。さらに、中国思想の骨格を成す儒教・仏教・道教が定着し、三教の間で論争と交流が行われるようになったのも、後漢末から三国時代のことだった。
また、陳寿の正史『三国志』や羅貫中の『三国志演義』では脇役だった呉こそが、実はこの時代を演出した影の主役だという。邪馬台国と朝鮮半島を含む東アジアの動乱は、現代に何をもたらしたか。文学から歴史を読む、中国通史シリーズとしては異色の一巻。〔原本:2005年、講談社刊〕

2020.11.12発売
飽きる勇気 好きな2割にフォーカスする生き方
飽きること、変わること、そして自分を愛すること。これ全部、わがままじゃないー。
超人気スタイリングディレクター、ブランドコンサルタントとして活躍する著者がその半生を振り返り、しがらみ、こだわり、未練、キャリア、人脈など「積み重ねてきた」ものをあえて手放して「自分が今本当に楽しい、大切だと思うことに集中して生きる」ことの大切さについて語ります。時代の転換点の今だからこそ読みたい、新しい生き方本です。
【目次より抜粋】
<第1章> 飽きたっていい、逃げたっていい
不登校の経験が教えてくれた「逃げたっていい」
仕事が私に自信をくれるはず。だから、就職浪人してでも編集者になりたかった
「ヴァンテーヌ」が教えてくれたこと。サルサとの出会い
飽きることはマイナスじゃない。飽きたことを続けるのが一番怖い
<第2章> 仕事は「3つのステージ」で考える
目の前にあることに「虫」の視点で取り組んだ第1ステージ
第2ステージは「鳥」の視点で視野を広げ経験や知識をシェア
キャリアを手放す勇気が時に必要に。空いたスペースに運が転がり込む
70代からは「本質的なこと」心血を注ぐと決めている
<第三章>枠やしがらみから自分を解放する練習
おしゃれは自分を好きでいるためのツールになる
離婚と再婚が教えてくれたこと。フレームに押し込めて苦しめていたのは私自身だった
人と比べなくていい。枠にとらわれなければ、ラクに生きられる
自分を好きになること、自分軸で考えることを「練習」すればいい
「変わったね」という評価は絶対気にしない
<第4章>新しい家族のかたち
家族の一員である前にまずは自分。家族はあくまで「個」の集まりだから
「子供のために」とは考えない。いつか「子供のせい」になってしまうから
子供は社会からのお預かりもの。一対一でオーダーメイドな子育てを
子供自身が「楽しい」か。子育てで大事なのは「選択」を経験させること
<第5章>新時代のタイムマネジメントとビジネスマインド
8割はやらない。好きな2割にフォーカスする
心の可動域を広げ「詰まり」は自分で開通させる
ビジョンを持ち、逆算して行動する未来への段取り力
コロナが教えてくれた、おしゃれの尊さと時間は貯金できること
<第6章>シェアと軽やかさを鍵に、次の時代へ
時代は「所有」から「シェア」へ。私ができること
軽やかに生きるとは、より本質的なものに移っていくこと
情熱の種はみんなにある。それを芽吹かせる術がわかれば誰もが情熱的な人生に

2020.11.12発売
しかくいので
講談社の絵本
読み聞かせで盛り上がる、新井洋行さんの幼児えほん新刊
ポツンとたたずむ、白い立方体。
「ぼくは しかくいので……」と、
ページをめくると、しかくいさんの身にいろいろなことが起きます。
みんなが過ごしている日常が描かれているようで、でも、何かちょっと違ってて面白い。
全部読んだら、きっとみんな、しかくいさんのこと、好きになっていると思います。

2020.11.12発売
哲学探究
『哲学探究』は、ウィトゲンシュタインの後期の主著として、哲学史上に燦然と輝く名著です。
すでに、邦訳も出ていますが、古すぎたり、哲学としての解釈に不足があったりして、歴史的な名著の割には、名訳に恵まれませんでした。
このほど、もっとも信頼のおけるテキストである最新第4版の版権を取ることができました。
翻訳は、現在の日本で、もっとも厳密かつ魅力的な研究を続けている鬼界彰夫氏が担当します。
鬼界氏は、『哲学探究』というテキストが、どのような構造になり、何をめざしているのか、日本語で明確にわかるよう、特に版権所有者の許可を得て、見出しや解説等を、十分に入れていきます。
この企画によって、ついに、決定版の『哲学探究』の訳が世に出ることになったのです。

2020.11.11発売
海獣・呼ぶ植物・夢の死体 初期幻視小説集
講談社文芸文庫
痛みと不遇が憧憬を輝かせた。
二十五歳でデビュー後、十年間本は出ず、八〇年代の片隅風呂なし四畳半送金あり、痛みと希死念慮をかかえた独居の歳月。
不屈の思考と憧憬で紡いだ、幻の初期作品群。
現在から過去を振り返る書下ろし「記憶カメラ」併録。
〈収録作品〉
海獣
柘榴の底
呼ぶ植物
夢の死体
背中の穴
記憶カメラ(書下ろし)

2020.11.11発売
幻獣の話
講談社学術文庫
「むだで横道にそれた知識には一種のけだるい喜びがある」。ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986年)は、『幻獣辞典』の序でそう語る。
マルコ・ポーロがスマトラで目にした一角獣、フランスの教会の壁面に刻まれた大耳人間、日光東照宮を彩る幾多の霊獣に、目まぐるしく姿を変える千変万化のバルトアンデルス.......。古今東西の書物に記された、不思議で興味深い生きものたちをめぐるエッセイは、まさにボルヘスが語る「喜び」に満ちている。
龍のように、洋の東西を超えて同じような想像上の生きものが生み出されるのはなぜか。人間はなぜ、くり返し、異様なもの、奇妙なもの、ときにはグロテスクなものを生み出したがるのか――。軽妙洒脱な語り口で繰り広げられる世界に引き込まれていくにつれて、私たちの意識に、あるいは無意識のうちにこそひそむ「幻の獣」の姿が浮かび上がる。
古代中国の『山海経』から、二十世紀にカレル・チャペックが生み出したロボットに至るまで、書物を広く深く愛した著者ならではの幻獣奇譚集。
1 一角獣――マルコ・ポーロが見たもの
2 アジアとヨーロッパ――幻獣という知の遺産
3 不思議な生きもの、不思議な人――狂気と文学のあいだ
4 幻獣紳士録1
5 幻獣紳士録2
6 百鬼の奇――日本の幻獣
7 霊獣たちの饗宴――日光東照宮の場合
8 中国の宝の書――『山海経』入門
9 私という幻の獣――寺山修司の夢
10 ゴーレムからロボットへ――二十世紀の幻獣

2020.11.11発売
語りえぬものを語る
講談社学術文庫
哲学の魅惑!
「相対主義の言わんとするところはまったく正しい。ただ、それは語られえず、示されている。」
相貎論、懐疑論、ウィトゲンシュタインの転回、過去、隠喩、自由――スリリングに展開する著者会心の「哲学的風景」。【解説:古田徹也氏】
●猫は後悔するか
●世の中に「絶対」は絶対ないのか
●霊魂は(あるいは電子は)実在しうるのか
●相対主義はなぜ語りえないのか
●意味はない、しかし相貎はある
●懐疑論にどう答えればよいのか
●私にしか理解できない言葉
●何が語られたことを真にするのか
●自由という相貎
●科学は世界を語り尽くせない
――本書目次より

2020.11.11発売
アステカとインカ 黄金帝国の滅亡
講談社学術文庫
一六世紀、スペイン人によるアメリカ大陸征服史が始まる。黄金を探すコロンブス、ピサロ、コルテス……。抵抗する、モクテスマ、トパック・アマルなどのインディオたち。栄華を誇った帝都と文明は、いかに滅ぼされたのか? 西欧と非西欧の壮絶なる戦いの記録を、既存の、スペイン人主体の史料では触れられなかった「敗者の視点」から再検証、植民地時代から現在へ続くラテンアメリカの被征服史を辿る。
プロローグ 黄金の夢
第一章 コロンブスの目指したシパンゴ
第二章 冒険者バルボア
第三章 メキシコの発見
第四章 首都の攻防
第五章 対決
第六章 「悲しき夜」
第七章 英雄の敗北
第八章 太平洋と中央アメリカ
第九章 南の海の探検
第一〇章 カハマルカの悲劇
第一一章 クスコ占領
第一二章 征服者たちの争いとインカ
第一三章 アラウコの国とパンパ
第一四章 ムイスカの黄金
第一五章 エル・ドラードとアマゾンの国
エピローグ 征服者たちの黄昏
あとがき
年表
民族と地域
人名検索
2002年小学館より刊行されました

2020.11.11発売
南極ダイアリー
講談社選書メチエ
棚氷の崩壊、氷河の後退、上昇する海水温……。南極大陸と南極圏の島々では、自然環境と生態系の変化が複雑に絡み合い、予想外の事態が次々と起こっている。
荒れ狂うドレーク海峡の先にある南極の“日常”を二〇年にわたり撮り続けた写真家は、何を見て、聴いて、嗅いで、触れたのか。
五感による、未知なる大地の記録!
深夜2時、白夜にうかぶペンギンのシルエット。
深く厚い氷の下のカラフルな海の表情ーー。
温暖化で変わりゆく南極の動物たちや景色を
貴重な写真120点とともに描写する。
カラー口絵32ページつき
はじめに
第一章 温暖化の波のなかで――南極半島
第二章 南大洋に浮かぶ生きものたちの楽園ーーサウスジョージア島
第三章 コウテイペンギンの国ーーロス海、ウエッデル海の奥懐へ

2020.11.11発売
中国の歴史3 ファーストエンペラーの遺産 秦漢帝国
講談社学術文庫
講談社創業100周年企画「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版。第2回配本となる第3巻は、最初の中華帝国といえる秦の始皇帝から前漢・後漢までを扱う。
戦国七雄のうち最も西方に位置する秦が初めて中国を統一、始皇帝が誕生したのは前221年。しかしわずか15年で農民反乱と楚漢の抗争を経て滅亡、劉邦の漢が成立する。新を挟み前漢と後漢の劉氏24代の漢帝国は440年も続く。なぜ始皇帝は乱世の中国統一を実現できたのか、また漢帝国の長期支配を可能にしたのは何か。謎に満ちた古代中国の実像に『史記』『漢書』などの史書と新発見の兵馬俑や大量の竹簡文書、出土資料の解読から肉迫する。項羽と劉邦の対決、民衆蜂起、宦官・官僚・外戚の権力闘争など英雄と梟雄、人々が躍動する歴史の内幕を生き生きと描く力作。〔原本:2004年、講談社刊〕

2020.11.11発売
ねこの町の小学校 たのしいえんそく
今回はねこの小学校のこどもたちが犬の村にえんそくに。楽しい山登りのあとは犬の村のお野菜畑で野菜のことならなんでも知ってる野菜はかせ、オリビアさんの収穫のお手つだい……。おいしいごちそうをいただいたり、その感謝を返したり。いろんなお仕事を通じて愛がぐるぐるいろんな人に回っていく、大好評ねこの町シリーズ第5巻!

2020.11.11発売
結局、賢く生きるより素直なバカが成功する 凡人が、14年間の実践で身につけた億稼ぐ接客術
発売前重版! 続々重版! の大反響!
著者累計13万部突破!
単行本初版限定特典! 「エンリケ流 接客マナー8箇条」付き
外見の華やかさで指名をもらえることも多いキャバクラ業界。
とりたてて華やかな見た目でもないエンリケさんは、時給1500円の最底辺からキャバ嬢のスタートを切る。
コツコツと努力を重ね、14年間の経験を積み、最終的には時給26万円・最高月収1億円超え、引退式4日間で5億稼ぐまでに成長する。
美人は見た目だけで指名が入るけど、座ったとたん「チェンジ!」と言われたこともあるエンリケさん。
ある日、「外見ではなく人間性で勝負」すると心に決める。それは18歳に書かれたメモからも読み取れる。
元来不器用で、要領よく賢く立ち回ることができない損な性分。ただしその分、スタッフやお客様のアドバイスには素直に耳を傾け、すぐに成果が出なくても、コツコツと辛抱強く努力をし続けた。
また、「色恋営業」はトラブルの元だから、14年間一度もなし。
本書は今まで公開してこなかった、売れなかった下積み時代の日記をひもとき、当時の目標をクリアするために実践した努力を、エンリケさん本人に細かく解説いただく。
さらに、ナンバー1になるための、心構え、話し方、LINEやメールなどの文章の書き方を、実際にあったエピソードをもとに、実例を交えながら「スグに使える形」で具体的に紹介する。
この本は、やる気はあるのにいまいち上手くいかない、努力しているのに成果が出ない。
そんなあなたのお悩み解決の手助けになること間違えなし!
現役中には話せなかったエピソードも盛りだくさんで初公開します。
巻末に特別付録で、エンリケさんが18歳からつけてきた 直筆日記も初公開します。
夢を叶えるためには何にこだわって、メモを取るべきかが一目でわかる内容です。

2020.11.11発売
イスラエルの起源 ロシア・ユダヤ人が作った国
講談社選書メチエ
「イスラエル」は、どんな国でしょうか? 中東でよく戦争をしている、小国だが強大な軍事力をもっている、と思う人もいるでしょう。一方、スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『シンドラーのリスト』(1993年)を思い出しながら、長らく迫害されてきたユダヤ人がナチスによるホロコーストの末、ついに作り上げた国と考える人もいるかもしれません。
迫害されてきたかわいそうなユダヤ人が念願かなって作った国、しかしアラブ人(パレスチナ人)を迫害している攻撃的な国――このような対極的なイメージは、いかにして生まれてきたのか。本書は、この謎に迫ります。
ホロコーストがイスラエル建国の大きな後押しになったことは間違いないとしても、そのことはイスラエルの軍事的な志向性を説明しません。さらに歴史を遡ると、19世紀後半からユダヤ人が変化していったこと、それが「国家」による自衛を求める動きにつながっていったことが明らかになります。そこで重要な役割を演じたのが、ロシア人でした。
その具体的な動きを追っていくために、本書はまずロシアのリベラリストに注目します。民族の自由を訴え、それゆえユダヤ人の同化にも反対したマクシム・ヴィナヴェル(1862-1926年)の活動を追っていくとき、パレスチナにユダヤ人国家を作ることを目指すシオニズムに共鳴したユダヤ人の中にも同じ主張をもつ者がいたことが分かります。その典型は、ダニエル・パスマニク(1869-1930年)に見られるものです。
ところが、1880年代にロシアで「ポグロム」と呼ばれるユダヤ人への迫害が始まると、ユダヤ人的側面とロシア人的側面を共存させていたロシアのユダヤ人たちは、徐々にユダヤ的側面に特化していきます。そのときユダヤ人たちがもったのが、ロシアの近代化に寄与してきたユダヤ人は「西洋的」だが、ロシアはそれに対立する「東洋的」な性格を持ち続けている、という認識でした。「東洋的」なロシアによって「西洋的」なユダヤ人が苦境に陥ったとき、「西洋的」な国家はユダヤ人を助けない──その経験は、やがてイスラエルが建国され、アラブ人の暴動が起きたとき、同じ構図をユダヤ人の中に想起させるのです。
『ロシア・シオニズムの想像力』で高い評価を受けた気鋭の研究者が巨大な問いに挑む渾身の論考。現代世界を読み解く手がかりが、ここにあります。
[本書の内容]
序 章 二種類のユダヤ人
第一章 内なる国際関係
第二章 ユダヤ人とロシア帝国
第三章 「ロシア・ユダヤ人」の興亡
第四章 ファシズムを支持したユダヤ人
第五章 民族間関係の記憶
第六章 相補関係のユダヤ化
終 章 多面的な個が民族にまとまるとき