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私の万葉集(四)
ワタシノマンヨウシュウ
- 著: 大岡 信

知的な笑いに満ちた異色の巻16をはじめ、東歌、不運の遺新羅使節団の望郷の歌など、従来の「万葉観」を覆すシリーズ第4集。
知的な笑いの要素――この巻16は、万葉集全体の中では巻1に続き、集中2番目に歌数の少ない巻なのです。その収録歌数の少ない巻の鑑賞が、本書では、たぶん他のどの巻よりも長いものになりました。それはしかし、私には当然のことでありました。なぜなら、巻16に収められている歌は、同一作者による何首もの連作をも含めて、すべて一首ずつ独立して鑑賞すべき、固有の背景あるいは物語をもっており、しかしそれが皆、今日の目で見ても鑑賞に堪える、その意味で鑑賞し甲斐のある歌だからです。それゆえ、巻16は、収録歌数は少ない半面、その多様性と、知的興味をいちじるしく刺戟する性質のため、実際にはずっと数の多い巻に匹敵し、凌駕するほどの内容のある巻となっています。しかし、この巻の大きな特徴である知的な笑いの要素は、従来の抒情性を頂点とするピラミッド構成の日本詩歌観においては、むしろ軽んじられ、排斥さえされる傾向がありました。――本書より
書誌情報
紙版
発売日
1997年01月20日
ISBN
9784061491731
判型
新書
価格
定価:704円(本体640円)
通巻番号
1173
ページ数
176ページ
シリーズ
講談社現代新書
初出
PR誌『本』(講談社)1995年7月号~1996年7月号の連載をまとめたもの