最後の職人 池波正太郎が愛した近藤文夫

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最後の職人 池波正太郎が愛した近藤文夫

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近藤文夫は高校卒業後、ホテル「山の上」に入り23歳で料理長に抜擢される。その姿はやがて、ここを常宿にしている文人たちの目に留まるようになる。なかでも池波正太郎との出会いは近藤の人生を変えた。1993年に独立、銀座に「てんぷら近藤」を構える。ここで脇役扱いされてきた素材の研究をすすめて、いままでにない「野菜てんぷら」を考案していく。その生き様を描きながら、なかなか見られない厨房、河岸など舞台裏に迫る


近藤文夫は高校卒業後、駿河台にあるホテル「山の上」の門を叩いた。配属はてんぷらと和食を出すレストランの厨房。全共闘運動真っ盛りの時代だった。23歳で料理長に大抜擢され、厨房を仕切りようになる。職場がホテル内にあるゆえ、朝・昼・夜の料理作りだけでなく、宴会・披露宴のメニューも任され、多忙を極め、7ヵ月間一日も休みがないときもあった。
 そんな青年料理長の姿はやがて、このホテルを常宿にしている文人たちの目に留まるようになる。吉行淳之介、井上靖、三島由紀夫、水原秋桜子、山本健吉、土門拳・・。なかでも池波正太郎との出会いは近藤の人生を変えた。池波の褒め言葉は、なにより近藤の力になった。いつしかホテルの「お荷物」といわれていたレストランは、東京一繁盛するてんぷら店へと進化していった。
 1993年に独立、池波が「第2の故郷」と語っていた銀座に「てんぷら近藤」を構える。ここで近藤は、にんじん、空豆、ズッキーニ、さつまいも、とうもろこし・・・・てんぷら職人の間では「添え物扱い」されていた素材の研究をさらにすすめて、独自の世界観で、いままでにない「野菜てんぷら」を考案していく。昼夜2回転する店を切り盛りしながら、当たり前のように毎日築地に通い、休日を使って新たな食材を探しに全国を飛び回る。池波は92年に亡くなったが、近藤と池波の縁は切れず、『鬼平犯科帳』『剣客商売』などの作品の劇中料理は自ら作り、京都の撮影所に届けている。池波家のお節もいまだに毎年末作っているという。
 そんな誰も真似することができない「最後の職人」の半生を描きながら、なかなか見ることが許されない、てんぷら屋の厨房、河岸、漁場、畑、京都大阪の料理人たちの世界など、「舞台裏」に読者を招待する。


  • 前巻
  • 次巻

目次

まえがき
第一章 二人の恩人
第二章 河岸通い
第三章 二つの鍋
第四章 さつまいもの公式
第五章 幻の花を求めて
第六章 「てんぷらはもうやめや」
第七章 最後の職人
あとがき

書誌情報

紙版

発売日

2013年11月19日

ISBN

9784062186353

判型

四六

価格

定価:2,090円(本体1,900円)

ページ数

314ページ

電子版

発売日

2013年12月20日

JDCN

0621863500100011000W

著者紹介

著: 中原 一歩(ナカハラ イッポ)

1977年 佐賀県生まれ。ノンフィクションライター。高校卒業後、博多の屋台で働きながら、地方紙や週刊誌で執筆活動を始める。18歳で上京後、南極から北朝鮮、アマゾンの源流からアフガニスタンの戦場など、世界を放浪する。常にフリーランスの取材者として、『AERA』などの週刊誌にさまざまな社会問題のルポを発表し続けている。著書に『奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」』(朝日新聞出版)、『世の中への扉「大好き!」を見つけよう』(講談社)、『水の都「石巻」が消えた日』(英治出版)などがある。

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