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相楽総三とその同志
サガラソウゾウトソノドウシ
- 著: 長谷川 伸

作家・長谷川伸は幕末の「赤報隊」隊長・相良総三の軌跡を追い、草莽の志士たちの生死をたどることで「歴史」というものの姿をあらわしました。明治維新について記された書物はあまたありますが、その叙述の志の高さにおいて本書をこえるものはまずないでしょう。軽薄で声高な「改革史観」がはびこりつつある昨今、「偽官軍」の悲劇をあますところなく描いた本書がふたたび多くの読者に迎えられることを切望します。
相楽総三は幕末に尊王攘夷の志をもち、薩摩の西郷隆盛らと往来して倒幕運動に従事した男です。戊辰戦争の際には「赤報隊」を結成。「年貢半減」を掲げて東山道を進軍していったところ新政府の方針変更(裏切り)によって「偽官軍」とされ下諏訪で刑死しました。享年30。
作家・長谷川伸は相楽の軌跡を追い、草莽の志士たちの生死をたどることで「歴史」というものの姿をあらわしました。明治維新について記された書物はあまたありますが、その叙述の志の高さにおいて本書をこえるものはまずないでしょう。
以下は長谷川による「自序」の一部です。すべてはこれに尽きています。軽薄で声高な「改革史観」がはびこりつつある昨今、本書がふたたび多くの読者に迎えられることを切望します。
相楽総三という明治維新の志士で、誤って賊名のもとに死刑に処された関東勤王浪士と、その同志であり又は同志であったことのある人々のために、十有三年間、乏しき力を不断に注いで、ここまで漕ぎつけたこの一冊を、「紙の記念碑」といい、「筆の香華」と私はいっている。
明治維新の鴻業は公卿と藩主と藩士と、学者、郷士、神道家、仏教家とから成ったの如く伝えられがちであるが、そして又、関東は徳川幕府の勢力地域で、日本の西は討幕、東は援幕と印象づけられがちだが、その二ツとも実相でないことを『相楽総三とその同志』は事実に拠って弁駁表明している。士・農・工・商という称呼で代表している、全日本のあらゆる級と層から出て明治維新の大業が成ったのが実相で、そういう観かたを余りにもしないわれらの習癖に対し、無言の体当りを食わせた意味をもたない訳でもないのである。
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目次
自 序
木村亀太郎泣血記
江戸の薩摩屋敷
栃木宿の戦闘
出流岩船の戦い
八王子・相州荻野山中の変
薩邸焼討の朝
江戸湾の海戦
上陸組の生死
赤報隊の進軍
志士殺戮の前
信州追分の戦争
桜井常五郎捕わる
相楽総三の刑死
是非千載の死
解 説 野口武彦
書誌情報
紙版
発売日
2015年02月11日
ISBN
9784062922807
判型
A6
価格
定価:1,859円(本体1,690円)
通巻番号
2280
ページ数
600ページ
シリーズ
講談社学術文庫
電子版
発売日
2015年03月27日
JDCN
0629228000100011000S
初出
本書の底本は、『相楽総三とその同志/相馬大作と津軽頼母』(長谷川伸全集」第七巻、朝日新聞社、1971年)として刊行されました。
著者紹介
長谷川伸(はせがわ・しん) 1884年(明治17年)~1963年(昭和38年)。大正・昭和時代の劇作家、小説家。大衆文学の父ともよばれる。1884年(明治17年)横浜に生まれる。幼くして母と別れたのち、家の没落によって小学校を三年で中退。さまざまな職業を転々として辛酸をなめる。軍隊を除隊後、新聞記者となり猛勉強を重ね、劇評などで頭角をあらわした。やがて小説、戯曲の執筆に手を染める。「沓掛時次郎」「瞼の母」「一本刀土俵入」など次々にヒットをとばし、世にいう「股旅物」ジャンルを確立する。また文学勉強会「新鷹会」を主宰し、門下生には村上元三、山手樹一郎、山岡荘八、戸川幸夫、池波正太郎、平岩弓枝らを輩出した。その一方で「荒木又右衛門」など、入念な考証に基づき「史実」の意味を問う作品を世に送りだしており、本書『相良総三とその同志』は維新の動乱のなかで圧殺されていった「草莽の志士」たちの姿を刻んだ「紙の碑」「筆の香華」である。
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