御家騒動

御家騒動

オイエソウドウ

講談社学術文庫

「主従」とは闘争である。

時代小説や歴史ドラマなどでおなじみの、「家中のトラブルが幕府に露見して改易される」といった筋書きだか、実際にはそうした事例はほぼなかった。
有力大名家に勃発した鍋島騒動、黒田騒動、対馬の柳川一件、伊達騒動……いずれも改易とはなっていない。
子細にその経過をみてみると、幕府が騒動に積極的に介入したというよりは、むしろ大名・家中の側から幕府に積極的に訴訟し、自ら幕府の介入を招いているような節がある。
では、大名や家臣たちはどうしてこのような危ない橋を渡ろうとしたのだろうか?

本書は、御家騒動を引き起こす当事者たちの行動の原理がいかなるものであったのかを探り、「忠臣が身命をなげうって悪臣を排除し、騒動の禍根を未然に絶って御家の危機を救う」勧善懲悪ストーリーとは一味違うリアリティを、幕藩制という時代相のなかから具体的に解き明かす試みである。

"大名家のスキャンダル"を歴史学の眼で徹底検証する、スリリングな歴史研究!

【本書より】
元禄以降の十八世紀には、主従不和や家中騒動が「公儀」に対する罪過である、という固定観念ができあがっているが、それ以前に生じた騒動に対してはそうした「色めがね」(固定観念)をはずして見直してみるべきではないか。家中騒動が「公儀」に対する罪過ではなかったからこそ、大名や従臣たちは将軍・幕府に騒動の調停を強く求めることができたのではないか、という逆の視点から騒動をみていくことが必要なのである。
そのためには、当時に作成された一次的な史料に基づいて騒動全体を見直すという作業が必要となるのはいうまでもない。

【本書の内容】
第一章 近世武士の主従観念と「御家」
第二章 主君を廃立する従臣たち
第三章 従臣を排除する主君たち
第四章 主君を選り好みする従臣たち
第五章 御家騒動の伝統化
補章 「御家騒動」のなかの女性たち

*本書の原本は、2005年に中公新書より刊行されました。


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書誌情報

紙版

発売日

2025年07月10日

ISBN

9784065402467

判型

A6

価格

定価:1,430円(本体1,300円)

通巻番号

2875

ページ数

272ページ

シリーズ

講談社学術文庫

著者紹介

著: 福田 千鶴(フクダ チヅル)

1961年,福岡県に生まれる。九州大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学。専攻は日本近世政治史。博士(文学)。現在,九州大学基幹教育院教授。著書に『幕藩制的秩序と御家騒動』『酒井忠清』『豊臣秀頼』『近世武家社会の奥向構造 江戸城・大名武家屋敷の女性と職制』『大奥を創った女たち』など。

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