講談社文芸文庫作品一覧

野原をゆく
野原をゆく
著:西脇 順三郎
講談社文芸文庫
人間と自然の“存在自身の淋しさ”に美の極致を見、己れを遂に帰らぬ「永劫の旅人」に擬する西脇順三郎。赤土の崖の野っ原を彷徨う詩人の逍遥は、時空を超え枯れ野への夢を追った芭蕉や西行の旅の想いに重なる。『Ambarvalia』、連作詩『旅人かへらず』によって、現代日本の詩の世界に衝撃的な影響を与えた詩人が、透徹した文体の裡に静かな感動を与える名エッセイ。
風前雨後
風前雨後
著:中野 好夫,解説:佐伯 彰一
講談社文芸文庫
蘆花を終生苦しめた重圧の背後にあるもの、スコットの人類冒険史上最大の運命悲劇、江藤新平、川路聖謨、シェイクスピアの世界、──人間への旺盛な興味と探究。不遇の運命とその背後の社会・国家への鋭い考察。英文学、社会評論、翻訳、評伝、社会運動など、その枠を超え、屹立する、比類なき知性と実行力をもつ著者の、精神の動向を闊達自在に展開する「蘇峰と蘆花」「諷刺文学序説」「怒りの花束」ほか収録。ジャンルを超えて思考する豊穣強靱な精神世界!
電子あり
大いなる日・司令の休暇
大いなる日・司令の休暇
著:阿部 昭
講談社文芸文庫
父をこよなく愛した幼、少年の日々。敗戦により海軍軍人であった父の失職の帰還。失意と家庭の不幸を耐えた父のストイシズム。人間の魂の高貴を平明、粉飾なき文体で描く秀作群。惜しまれて急逝した不朽の文学者魂・阿部昭の世界。
電子あり
白日夢
白日夢
著:渡辺 一夫,解説:串田 孫一
講談社文芸文庫
16世紀フランス・ルネサンス研究の遙かな彼方に、優れた真のユマニストの眼は、何を見詰めていたのか。壮大、豊麗なラブレーの『ガルガンチュアとパンダグリュエル物語』を全訳し、詳細な注釈を付け、学問とは何かを生涯探究し続けた希有の知識人の精神。明晰な批評的文体の裡に、“歴史の狂気”を克服する人間の叡智への確たる信頼を静かに語る名エッセイ。
野
著:三浦 哲郎
講談社文芸文庫
著者の故郷を舞台にそこに住む人々とその暮らしを描く。厳しい自然と対峙する強靱な生命力のしたたかさ。優しく哀しくユーモア滲む短篇の名手・三浦哲郎の瑞々しき豊饒の世界。「金色の朝」「がたくり馬車」「沈丁花」ほか〈故郷〉の匂い染み込む作品群16篇。新境地を拓いた著者ならではの短篇集。
電子あり
泉に聴く
泉に聴く
著:東山 魁夷
講談社文芸文庫
“暗黒と苦悩を持つ者は、魂の浄福と平安を祈り希う”若き日のドイツ表現主義の芸術と文学の体験。その後の長い模索と挫折。戦争――肉親の死。「死の側」にたたされ、自然の生命の美に開眼した日。敬虔、静謐――独自の画境を豊饒に展開する美の旅人・東山魁夷、その精神の遍歴。旅する心と祈りがみずみずしく迫る達意のエッセイ。
漂民宇三郎
漂民宇三郎
著:井伏 鱒二
講談社文芸文庫
天保9年、金六、宇三郎兄弟は、松前を出帆、江戸に回航途中、西風に遭い、漂流6ヵ月、天保10年、米捕鯨船に救助され、ハワイ群島オワフ島に着く。兄と仲間3人を失った宇三郎達生残りは、ロシア領カムチャツカ、オホーツク、シトカを経て、エトロフに送られ、天保14年9月上旬、宇三郎をのぞいて、松前城下に着いた。“自選全集”版未収録の芸術院賞受賞の鏤骨の名品。
電子あり
栗の樹
栗の樹
著:小林 秀雄
講談社文芸文庫
“如何にして己を知ろうか”フランス象徴主義、ベルグソン、孔子、西行、宣長――東西古今にわたる「達人」たちの精神の運動を、「観」の目で凝視し「批評」の言葉で語る現代批評の先導・小林秀雄の「無常という事」「西行」「私の人生観」などその精神の精髄を凝集する42篇を収録。
歴史について
歴史について
著:木下 順二
講談社文芸文庫
強靭なる精神漲るエッセイ。情熱溢れる、鋭い思考ーー運命に対峙して歴史の狭間を主体的に生きる実存は、いかに可能か。ドラマの構造と、それはどう絡むのか。10代に一度は受洗したキリスト教を棄て、しかもなお「精神の極北としての神」を求める求道者・木下順二。民話劇『夕鶴』、『子午線の祀り』の作者が明かす濃密な創作世界の「原風景」。故郷での幼・少年期、漱石『三四郎』にも似た上京以後の「本郷」での生活、趣味の乗馬、歌舞伎・能への深い考察。エッセイの精粋。
電子あり
叫び声
叫び声
著:大江 健三郎
講談社文芸文庫
新しい言葉の創造によって“時代”が鼓舞される作品、そういう作品を発表し続けて来た文学者・大江健三郎の20代後半の代表的長篇傑作『叫び声』。現代を生きる孤独な青春の“夢”と“挫折”を鋭く追求し、普遍の“青春の意味”と“青春の幻影”を描いた秀作。
電子あり
思想としての東京 補論・文学史の鎖国と開国
思想としての東京 補論・文学史の鎖国と開国
著:磯田 光一
講談社文芸文庫
明治100年、〈東京〉という地方性の崩壊過程を辿り、地図・文学作品・流行歌を通して、〈東京〉に絡む日本人の複雑な心理を抽出、対象化し、都市先住者の側の眼で、日本の近代化の“軋み”とその象徴〈東京〉の呪縛力を解明。名著『永井荷風』の前史として、近代日本文学史の根底を激しく揺さぶった画期的「東京論」。芸術選奨受賞。
西行論
西行論
著:吉本 隆明,解説:月村 敏行
講談社文芸文庫
個人的な不明な動機で突然出家し、歌を通してしか思想を語らなかった「西行とはなにものであったか」。
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オモチャ箱・狂人遺書
オモチャ箱・狂人遺書
著:坂口 安吾
講談社文芸文庫
世間が顔をしかめる女たちが、安吾の前に頻出する。安吾はそれを“自然”だとし、その文学の中に析出する。安吾が析出した女たちは、40年の時空を超え、今、更に光を放ち、生き出し、動き出す。安吾が“予言者”であることを証明するかのように。敬愛する牧野信一の人と文学を語る秀作「オモチャ箱」、坂口安吾晩年の力作「狂人遺書」ほか8篇を収録。
電子あり
文学の運命
文学の運命
著:大岡 昇平,解説:四方田 犬彦
講談社文芸文庫
「目がくらむような出会い」と交遊――小林秀雄、中原中也、三好達治、桑原武夫、そして「スタンダール」との邂逅。混沌とした青春の放浪時代を出発点に、戦争・戦場・俘虜という「経験と意味」を確認すべく、図らずも小説家として世に出た文学的生涯。常に、文学・政治などすべてに閃めく大岡昇平の鮮烈な「眼」。著者の小説・評論の原点と「志」を語る名エッセイの数々。小説家にして優れた批評家でもあった大岡昇平、珠玉のエッセイ集!
電子あり
人と人影
人と人影
著:井伏 鱒二,解説:松本 武夫
講談社文芸文庫
《白雲なびく駿河台……》自作の明治大学校歌をきいて涙滂沱の老詩人・児玉花外の深い悲しみ。対局前、将棋を放念し無心の散策をする大山康晴名人。窓辺の風に微かな音色を奏でる、太宰治の形見の琴。人生の途上で巡り合った人々の、心に残る鮮烈な記憶と忘れ難いその風貌を、温もりある自在の筆で綴る。井伏鱒二の文学の精髄を伝える、36篇の珠玉の名随筆。 《白雲なびく駿河台……》自作の明治大学校歌をきいて涙滂沱の老詩人・児玉花外の深い悲しみ。対局前、将棋を放念し無心の散策をする大山康晴名人。窓辺の風に微かな音色を奏でる、太宰治の形見の琴。人生の途上巡り合った人々の、心に残る鮮烈な記憶と忘れ難いその風貌を、温もりある自在の筆に綴る。井伏鱒二の文学の精髄を伝える36篇の珠玉の名随筆。
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横しぐれ
横しぐれ
著:丸谷 才一
講談社文芸文庫
父と、黒川先生とが、あの日道後の茶店で行き会った、酒飲みの乞食坊主は、山頭火だったのではなかろうか。横しぐれ、たった1つのその言葉に感嘆して、不意に雨中に出て行ったその男を追跡しているうちに、父の、家族の、「わたし」の、思いがけない過去の姿が立ち現れてくる。小説的趣向を存分にこらした名篇「横しぐれ」ほか、丸谷才一独特の世界を展開した短篇3作を収録。
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時間
時間
著:黒井 千次,解説:秋山 駿
講談社文芸文庫
或る日突然変貌し、異常なまでに猛烈に働き出す男。会社を欠勤し自宅の庭の地中深く穴を掘り始める男。企業の枠を越え、生甲斐を見出そうとする男。高度成長時代に抗して、労働とは何かを問い失われてゆく〈生〉の手応を切実に希求する第1創作集。著者の校訂を経て「花を我等に」「赤い樹木」を加えた新版・6篇。芸術選奨新人賞受賞。
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吹雪物語
吹雪物語
著:坂口 安吾,解説:川村 湊
講談社文芸文庫
“希望の裏打ちのない若者の行為があり得ようか”過去・現在・情念・観念の行きかう193X年冬の新潟。鋭利、俊敏な安吾が、全青春を賭けて敢闘した力作――後の“安吾”を生んだ“夢と混沌”の巨大な“坩堝”。同時代の批評に埋没させられていた秀作『吹雪物語』。
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わがスタンダール
わがスタンダール
著:大岡 昇平,解説:菅野 昭正
講談社文芸文庫
ファブリスを中心にみれば、『パルムの僧院』は宛然一個の冒険小説である。―――スタンダールに魅了され、それを終生問い続けた当代屈指のスタンダリアン=大岡昇平。綿密な探究と思考、対象を徹底的に見極めようとするダイナミックな意志。鮮明な自己認識の大いなる軌跡を示す〈スタンダール論〉34篇を収録した決定版。
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或る一人の女の話・刺す
或る一人の女の話・刺す
著:宇野 千代
講談社文芸文庫
他の介入を許さず気儘に生きた〈放蕩無頼〉の人生。雪の上で夥しい血を吐き、狂い死した父は、娘に〈真っとう〉に生きろと教えた。しかし娘は、父の道をなぞるように更に鮮烈に生きた。70を越した女が、この世に生れ過した不思議を恬淡と語りかける「或る一人の女の話」。「刺す」を併録。自伝的傑作2篇。
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