文芸(単行本)作品一覧

百鬼大乱
文芸(単行本)
暗殺と裏切りの三十年を駆け抜けた「名将 太田道灌」
東国の諸葛孔明と呼ぶにふさわしき漢【おとこ】ここにあり!
応仁の乱に先駆けること十三年、
鎌倉公方が関東管領を殺害。
血みどろの戦国時代が幕を開ける
将軍への野心を抱く鎌倉公方。ついに足利義教の討伐を受け、断絶。
乱れた関東を治めるため新たな公方が選ばれるも、管領上杉家と軋
轢が続く。意地と誇りがぶつかり合い、関東を二分する戦いとなる。
命がけで公方を守る簗田持助。上杉を支える太田道灌。
両者の才知をつくした戦いを活写する歴史巨編。
知られざる関東の戦国が今、明らかになる。

恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ
文芸(単行本)
あ、また時間に捕まえられる、と思った。
捕まえられるままに、しておいた。
小説家のわたし、離婚と手術を経たアン、そして作詞家のカズ。
カリフォルニアのアパートメンツで子ども時代を過ごした友人たちは、
半世紀ほどの後、東京で再会した。
積み重なった時間、経験、恋の思い出。
それぞれの人生が、あらたに交わり、移ろっていく。
じわり、たゆたうように心に届く大人の愛の物語。

伝言
文芸(単行本)
わたしたちのしたこと。しなかったこと。これは、いまを生きるあなたのための物語。
『きみはいい子』『わたしをみつけて』『世界の果てのこどもたち』など、
話題作を生み出し続ける著者、4年ぶりの新作!
2016年本屋大賞3位、
『世界の果てのこどもたち』には書かれなかったもうひとつの真実。
満洲・新京で暮らす女学生、ひろみ。
「尽忠報国」「一億玉砕」「五族協和」、そう信じていた――
永遠に失われた、もう、どこにもない国。
あの場所で見たこと、聞いたこと、
そして、わたしに託されたことを、わたしは忘れない。
終戦間際の満洲を、圧倒的な事実に基づき描く。
これは、いまを生きるあなたのための物語。

蒼天の鳥
文芸(単行本)
第69回江戸川乱歩賞受賞作。
『名探偵コナン』『電脳コイル』『特命係長 只野仁』『特捜9』など数多くのテレビドラマ、アニメを手がけてきた、大ベテラン脚本家が、江戸川乱歩賞を受賞!
歴史に埋もれた鳥たちが、いま羽ばたく。
大正十三(1924)年七月、鳥取県鳥取市──。
主人公の田中古代子は、女性の地位向上を目指し「新しい女」の潮流を訴える女流作家である。本格的に作家として活動するため、娘の千鳥と内縁の夫・涌島義博の三人で、鳥取から東京に引っ越しをする予定を立てていた。移住直前のある日、古代子は千鳥と共に、活動写真「兇賊ジゴマ」を観るために鳥取市内の劇場「鳥取座」に向かう。ところが観劇中、場内で火事が発生。取り残された古代子と千鳥が目にしたのは、煙につつまれる舞台上に立つ「本物」の「兇賊ジゴマ」であった。逃げようとする二人の目の前で、ジゴマはひとりの男を刺殺し、逃亡する。命からがら鳥取県気高郡浜村の自宅に逃げ帰った古代子と千鳥であったが、一息つく暇もなく、再び謎の人物に襲われるのだった。
果たしてこの世の中に、本物のジゴマなどいるものだろうか……? 謎は思いがけない事態へと発展していく。
鳥取出身の実在の作家・田中古代子をモデルに、友人の女流作家・尾崎翠や鳥取に流れてきた過激アナキスト集団「露亜党」、関東大震災など、大正期を鮮やかに描く歴史活劇ミステリー!

夫妻集
文芸(単行本)
娘が婚約者を連れてきた。
他人の分の寿司も遠慮なく口にする、だらしのない男。
娘が選んだ人ならば。自分は、心が広く先進的な父親。そう思っていたはずなのに。
神保町にある出版社、景談社で働く佐原滝郎は、娘の結婚に心が揺らぐ。
「娘が結婚すべきではない」と感じた婚約者は、意外にも滝郎の妻には好印象。
妻もあの婚約者のことは気に入らないと思っていたのに、一体なぜ?
積み重ねてきた夫婦生活の中で初めて見えた、自分と妻の間にあるひずみ。
もしかして、妻と自分はーー。
社内の三組の夫婦の姿を見ていくうちに、滝郎はある決意を固める。

新古事記
文芸(単行本)
第二次大戦日米開戦後のアメリカ。オッペンハイマー、ノイマン、ボーア、フェルミ、若手のファインマン……。太平洋戦争の最中、世界と隔絶したニューメキシコの大地に錚々たる科学者たちが続々と集まってくる。
咸臨丸の船員だった日本人の血を受け継ぐ日系三世のアデラは両親にさえ物理学者の夫の仕事の内容を教えられず、住所を知らせることもできない。秘密裏に進む夫たちの原爆開発、施設内の犬と人間の出産ラッシュ。それと知らず家事と子育てに明け暮れる学者の妻たちの平穏な日々。
「新しい世界は神じゃなく、人の子がつくる」――”われは死なり 世界の破壊者となれり”
その小さな神たちが行き場を探して右往左往している。辺りは火火火火火火、赤いものがボウボウと襲いかかる。
世界は戦さの火だらけだ。火火火火火火が荒れ狂う。小さい神々は蟹のように火火火火火火に追われて逃げ惑う。
山の神も火火火火火火、川の神も火火火火火火に包まれ、樹木の神も立ったまま火火火火火火に焼け焦げていく。
焼け滅ぼされていく。

月夜行路
文芸(単行本)
わたしは誕生日すら祝ってもらえない――。冷えきった夫との関係や子どもとの生活に孤独感を募らせていた沢辻涼子は、我慢の糸が切れたある日、家出を決行する。飛び出した夜の街で出会ったのは、洞察力と推理力に優れた美しいBARのママ、野宮ルナ。ルナに自分が抱える報われなさの正体が「大学時代の元彼」であることを言い当てられた涼子は、彼女と二人で元彼を探すため大阪へ旅に出ることに……。元彼探しが難航する中、次々と事件に巻き込まれる二人は、無事に想い人と再会できるのか――。仕掛けに騙され泣かされる、圧巻のサプライズエンディング!

レーエンデ国物語 月と太陽
文芸(単行本)
この世界を守りたい。
少年は大人になり、少女は英雄になった。
テレビ、書店で話題沸騰!
大人のための王道ファンタジー、はやくも第二弾!
☆☆☆
名家の少年・ルチアーノは屋敷を何者かに襲撃され、レーエンデ東部の村にたどり着く。
そこで怪力無双の少女・テッサと出会った。
藁葺き屋根の村景や活気あふれる炭鉱、色とりどりの収穫祭に触れ、
ルチアーノは身分を捨てて、ここで生きることを決める。
しかし、その生活は長く続かなかった。村の危機を救うため、テッサは戦場に出ることを決める。
ルチアーノと結婚の約束を残して――。
封鎖された古代樹の森、孤島城に住む法皇、変わりゆく世界。
あの日の決断が国の運命を変えたことを、二人はまだ知らない。

十戒
文芸(単行本)
殺人犯を見つけてはならない。それが、わたしたちに課された戒律だった。
浪人中の里英は、父と共に、伯父が所有していた枝内島を訪れた。
島内にリゾート施設を開業するため集まった9人の関係者たち。
島の視察を終えた翌朝、不動産会社の社員が殺され、そして、十の戒律が書かれた紙片が落ちていた。
“この島にいる間、殺人犯が誰か知ろうとしてはならない。守られなかった場合、島内の爆弾の起爆装置が作動し、全員の命が失われる”。
犯人が下す神罰を恐れながら、「十戒」に従う3日間が始まったーー。
週刊文春ミステリーベスト10(「週刊文春」2022年12月8日号)国内部門&MRC大賞2022など4冠に輝き、ミステリ界を震撼させた『方舟』夕木春央、待望の最新作!

純銀のラビリンス
文芸(単行本)
日本人離れした灰色の髪と瞳をもつ水上久遠(みなかみ・くおん)は、母方の実家・冠城(かぶらぎ)家を訪れていた。
この家の男性陣はなぜか代々日本人離れした美形ぞろいで、ときどき吉兆のしるし「先祖返り」の外見を持って生まれる者がいるという。その外見的特徴を備えた久遠には、本人もあずかり知らない特別な秘密があるようだった。
ある日、久遠は不思議な力に引きずられるように時空を超えて、異世界へと飛ばされてしまう。気がつけば深い森の中。敵と味方が入り乱れる中、偶然行き会った美丈夫の神官・ドーシャが久遠を保護することに。最初こそ保護者と子どものような関係だったふたりだが、数多の試練を乗り越えるうちに、そこに特別な感情と、抑えきれない欲望がまじり始めて……。
ふたりは知らない。この出逢いこそ、運命に導かれたものであることを。
運命の相手とめぐりあい、愛し合う。吉原理恵子が描く異世界転移ファンタジー、待望の第2弾!

アガタ
文芸(単行本)
「見えているのに見えないもの、それを捜すのよ」
オシャレすぎる女性警視が新米刑事に突きつけた言葉の意味は?
美大に通う女子学生が背中をめった刺しにされて殺された。しかし、指紋も足跡もなく、防犯カメラの映像も残っていない。警視庁の捜査一課に異動したばかりの青木一は捜査本部に呼ばれ、地元の有力者の息子がストーカーだったという噂を耳にして、無断で本人に接触したため管理官から大目玉を食らう。一方、鵜飼縣は警視庁本部庁舎の片隅であらゆる犯罪情報を収集分析して汎用性の高い検索システムを構築している。スタッフの桜端道が投資詐欺事件の情報をつつきまわすうちにたどり着いた謎の闇サイトには殺人現場の生々しい写真が。縣は秘かに美大生殺害事件の捜査の進み行きを探り始める……。
『脳男』の作者による規格外の警察小説の誕生!

天涯図書館
文芸(単行本)
小説の女王・皆川博子が百年近くの歳月をかけ耽溺してきた、永遠に残したい本の数々。
生まれ変わっても本の山野に埋もれていたい。知るほどに読むほどに好きになる。
『辺境図書館』『彗星図書館』に続く、完全保存版ブックガイド。
(短編2本も追加収蔵)
《この天涯図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。知らない、読んだことがない、見つからない――。そんなことはどうでもよろしい。読みたければ、世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。(天涯図書館・2代目司書)》

泥酔文士
文芸(単行本)
会社を辞めて、毎日が日曜日になった。
もう、締め切りが待っているわけでもないし、損益計算書とにらめっこする必要もなくなった。目が覚めたら起きる。眠くなったら眠るし、腹が減ったら食べる。
面白そうな映画が封切られたら急いで見に行き、楽しそうな本はできるだけ手に入れる。それに飽きたら、似た身の上の友人を誘いだして、喫茶店でやくたいもないお喋りにうつつを抜かす。時間はいくらでもあるのだ。
こんな感覚、どこかで味わったことがあったなと思ったら、五十年近く前の学生時代に似た生活を送っていたのだった。なんだか懐かしい毎日である。
瘋癲老人のいちばんの醍醐味は、ベッドに寝転がって、何の役にもたたない本を読むことである。つまらなければ投げ出せばいいだけで、努力して読む必要は、全くない。今夢中になっているのは、昭和期に生きた文士たちの随筆である。今ではもう考えられないことなのだが、昭和の文士たちは、みんなで集まってよく酒を飲み、議論を交わし、挙句の果ては殴り合いの喧嘩をしたりしていた。
本の中で、彼らはまったく溌溂としている。
だが、実は全員、すでにあの世の人となっている。
深夜、そんな彼らの口吻や一挙手一投足を一人静かにページの中に追う。
鬼籍に入った人たちは安心できる。もう、裏切られることは絶対にないからだ。
ひとり燈のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる。
兼好法師の気持ちが痛いほどよくわかる。
そんな風にして、文士たちの随筆を芋づる式に次から次へと読んでいるうちに、目に余る酔っ払いたちに出くわすようになった。
困ったひとだなあ。
思わずため息と微苦笑が口元に浮かぶ。でも彼らは、もう死んでこの世にはいないのだ。どんな愚行と醜態を繰り広げようと、もういなくなってしまった人たちは、みんななんだか愛おしい。
そんな、どうにも困った、愛おしい酔っ払い文士たちの面影をひとりずつ追ってみようと思いたった。なにしろ、時間だけはたっぷりあるのだから。
(「はじめに」より)

霜月記
文芸(単行本)
『高瀬庄左衛門御留書』『黛家の兄弟』に続く、「神山藩シリーズ」最新作。
名判官だった祖父・失踪した父・重責に戸惑う息子――町奉行を家職とする三代それぞれの葛藤を描く。
18歳の草壁総次郎は、何の前触れもなく致仕して失踪した父・藤右衛門に代わり、町奉行となる。名判官と謳われた祖父・左太夫は、毎日暇を持て余す隠居後の屈託を抱えつつ、若さにあふれた総次郎を眩しく思って過ごしている。ある日、遊里・柳町で殺人が起こる。総次郎は遺体のそばに、父のものと似た根付が落ちているのを見つけ、また、遺体の傷跡の太刀筋が草壁家が代々通う道場の流派のものではないかと疑いを持つ。
さまざまな曲折を経て、総次郎と左太夫はともにこの殺人を追うことになるが、果たして事件の真相と藤右衛門失踪の理由とは。
~「神山藩シリーズ」とは~
架空の藩「神山藩」を舞台とした砂原浩太朗の時代小説シリーズ。それぞれ主人公も年代も違うので続き物ではないが、統一された世界観で物語が紡がれる。

鷹の惑い
文芸(単行本)
世の中は変わる。変わる世の中に対応するのが、警察の仕事だ。
21世紀に沸く平成日本。海外逃亡していたはずの極左の最高幹部が突然仙台に現れ、公安に衝撃が走った。
身柄の移送を担当した公安一課の海老沢は、警察官人生最大の痛恨の失敗を犯す。
一方、捜査一課の高峰は目黒の空き家で殺害された元代議士秘書の身辺を探る。被害者の経歴には6年間の不自然な空白があった。
新聞記者からの思わぬ情報。死の床にある元刑事の父の言葉。そして海老沢に下った極秘の特命捜査ーー事件の様相は一変する。
公安一課と捜査一課。父の系譜をたどる息子たち。警察小説の騎手による大河シリーズ「日本の警察」平成ミレニアム編!

ウェルテルタウンでやすらかに
文芸(単行本)
推理作家「私」のもとへ現れた、不審な自称「町おこしコンサルタント」の男。彼は「私」に、町おこしのために小説を書いてほしいと依頼する。小説の力を利用して、寂れゆく町・安楽市を自殺の名所にしたいと嘯くのだ。承諾した「私」だが、密かにその計画を阻止することを決意する。なぜなら安楽市は、「私」の故郷なのだから――。

天災ものがたり
文芸(単行本)
磯田道史氏、絶賛!
「人は自然の力に左右される。昔はなおさら。それを描ききったこの本こそ、私が出会いたかった歴史小説」
地震、津波、火事、飢饉、豪雪、火山の噴火、河川の氾濫……。日本史上に起こった大災害を直木賞作が克明に記した圧巻の連作短篇小説集。
(以下、収録作品)
江戸時代初期「囚人」・・・時は明暦。小火に始まる火事はからっ風のあおりを受けて、江戸を焼き尽くす。その時、日本橋小伝馬町の牢屋に入っていた男を救った奇跡とは?
明治時代「漁師」・・・百二十七年前に東北を襲った三陸沖地震。その復興に至る道のりは、現代社会の防災上の大きな教訓と学びとなった。
昭和時代「小学校教師」・・・昭和三十八年。新潟から上京する列車に乗った女性教諭を襲ったのは、記録的な豪雪だった。これは、天災だけでなく、発達した交通網による人災の記録でもある。
(ほか3篇)

もぬけの考察
文芸(単行本)
第66回 群像新人文学賞受賞作!
この部屋の住人は、みんないなくなる? 都市の片隅にあるマンションの一室、408号室に入れ替わる住人たち――。奇想天外な物語が、日常にひそむ不安と恐怖を映し出す。
同じ部屋で前の時間が見えないまま孤独と恐怖を積み重ねていく構成で細部まで考えられていた。
理不尽さと暴力的な状況がスリリングで、多様な恐怖を描ける人だと思った。――柴崎友香
一連の奇想天外な考察は、インスタレーションと呼ばれる空間芸術の手法とも似ていて、
日常性からの逸脱を効果的に演出するにはうってつけだ。
――島田雅彦
ある〈部屋〉のみを舞台にすることで、作品の〈空間〉は限定されている。
が、前の住人、その前の……と過去を連鎖的に想像可能で、今後の住人という未来も延々の想像が可で、その意味で〈時間〉が限定されない。そこに越境のポテンシャルが満ちている。――古川日出男

ジューンドロップ
文芸(単行本)
わたしたちには家族をめぐる秘密がある
母の不妊治療の失敗、凶暴な白い光と共に襲ってくる片頭痛。
しずくとタマキは、持て余した心を抱えて
縛られ地蔵に会いに行く――。
傷つき、傷つけ、思いあう。痛切な家族の愛のかたち。
「ふと脳裏に、幼い未発達の実が木から落下する光景が過りました。
どうして自分は彼らと同じ道をたどらなかったんだろう」
第66回群像新人文学賞受賞作!

我が手の太陽
文芸(単行本)
第169回芥川賞候補作。
鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失った自信は訓練や練習では取り戻すことはできない。現場仕事をこなしたい、そんな思いに駆られ、伊東は……。
“「人の上に立つ」ことにまるで関心がなかった。
自分の手を実際に動かさないのなら、それは仕事ではなかった。”
”お前が一番、火を舐めてるんだよ”
”お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。
お前自身が、誰より馬鹿にしているというのに”
腕利きの溶接工が陥った突然のスランプ。
いま文学界が最も注目する才能が放つ異色の職人小説。