文芸(単行本)作品一覧

眼球の毛
文芸(単行本)
静謐な未来都市の無明!
40年後、新しい奇病、変わらぬ男女の煩悶。
芥川賞作家初の書下ろし特別作品
2040年、土曜日の朝、40歳になった教授は、愛宕山の家で、小鳥たちのさえずりを聞きながら目覚める。未来都市東京は、いたる所で木漏れ日が揺れているエコロジー都市である。素粒子論の研究にいきづまっている教授は、土曜日の午後を、研究室の助手である愛人と過ごす時間に、無上のエロスの喜びを見出しているのだが、最近、その愛人と若い研究者の関係を疑い、不安と嫉妬に揺れていた…。

愛妻日記
文芸(単行本)
R-18指定の重松清
奥様には隠れて読んでほしいのです。
夫のゆがんだ情欲を描く、初の性愛小説集
「匿名で官能小説を」という「小説現代」編集部の注文を承けて、表題作を書いた。最初は一度かぎりの企画物のつもりだったが、ハマった。2作目以降は、志願して短編を書き継いでいった。全6編。いずれも、夫婦の物語。官能小説。妻に対する夫のゆがんだ――でも、だからこそまっとうでありうるはずの情欲を描いた。小説の書き手として、これらの物語を僕は欲していたのだろう。今後も夫婦や家族の物語を書きつづけたいから、性から逃げたくなかった、のかもしれない。
重松清

豆腐小僧双六道中 ふりだし
文芸(単行本)
これぞ妖怪。
私は誰、此処は何処。小僧は彷徨(さまよ)う。小僧は進む。
妖怪豆腐小僧がアイデンティティーを捜す!?
「なぜ、手前は豆腐を持っているんでしょうか?」自己の存在理由、存在意義にうすーく不安を抱く小さな妖怪が数々の異種妖怪に出会い、「世間」を知る立志篇!

老いること暮らすこと
文芸(単行本)
老人介護、孫のお守り、主婦業に、もの書き仕事……
よくもここまで生き延びて来たものだと感謝したい。
老いというのは七面倒なものだと思いながら、少しずつ老いを甘受するのが、我々の年齢の頃なのだろうか。今回、つくづく自分が老年になっているという事実を認識した。

飛びすぎる教室
文芸(単行本)
ムダ知識こそ生き甲斐
イスラム圏ツアー旅行にハマッた清水ハカセが語る料理、幽霊、カレンダー、聖書に宇宙という脈絡のない雑談に、私生活ごと爆発のサイバラ画伯が絵を付けた、コンビ最後の貴重な1冊。

啓順地獄旅
文芸(単行本)
“逃亡者”を描く傑作時代小説
この世の果てまで逃げのびる
火消しの顔役に追われ続ける町医者啓順は、最古の医書『医心方』を探しに京へ行くよう命ぜられた。

指を切る女
文芸(単行本)
女(ヒト)って、こんなに哀しいの?
強く見せても、キツく見えても心の炎は揺らめきどおし。
身を投げだして鮮烈に生きる4人の女たちの物語
「どう。油くさい女の膝に抱かれて、あなたの気分は」――節子
「なぜ誘ってくれないのよ。なぜなのよ」――直子
「これじゃあ、まるで愛人じゃない」――美佳
「女は駅で男は汽車や。いつかは出ていってしまう」――唯子

忠臣蔵釣客伝
文芸(単行本)
妖刀村正の祟り、赤穂浪士の戒名の謎。綱吉の側近で、吉良上野介の女婿が大事件の裏に隠蔽された歴史の真実に迫る。
知者はそれ水を楽しむ。釣りの醍醐味は、糸の震えと、抵抗する獲物の手応え。吉良上野介の女婿は何を釣る? 海底に眠る金銀か? 何を解くや若き太公望。赤穂四十六士の、「刃」と「剣」字入り法名の謎か? はた将軍家に祟る妖刀村正か。内匠頭の怨念とは! 釣りの世界から見た元禄の世の奇怪。本邦初の「釣り時代ロマン」。満を持して登場。新人にして呑舟の魚。沸騰する海面に、見よ、煌く銀鱗。読者ゆめゆめ釣り落すなかれ。
出久根達郎

洛中洛外
文芸(単行本)
室町言葉の高貴なる女人の生命感!
清原の館から京の街中へ出奔した翠子の運命の転変を描く秀作。
「翠子殿」
兼満の声のみ響いた。
「私はそなたを殺しはせぬ。なれど、あの絵師と男と女としてのそなたを見とうはない」
「私の字を生かし、絵師殿の絵を生かすには、男と女は要りませぬ。ただ、限りなく相手をゆるす心がなければならぬと覚悟しておりまする」
「私の色身はほろんでも、執心は残る。そなたと絵師殿を男と女としては結びつけはさせぬ。恨まれるか」
「いいえ、亀女の最期のさとしでもありました。絵師殿の洛中洛外図をくもらぬ色彩で残すには、絵と字が清らで交わらぬ方がよいと。(略)」

ピアノ・サンド
文芸(単行本)
1人でいるのも悪くない 好きな男のすべてはいらない
詩人・平田俊子が、新たに創出した文学世界。「小説」でなければ描けなかった2つの女性の物語り。
「ところで100年前のピアノがあるんだけどさ、誰か預かってくれる人いないかな」
「100年前のピアノ?」
「そう。フランス製」
好奇心が飢えた魚のように易々と釣り上げられた。そんなの聞いたことがない。いったいどんなピアノだろう。――(本文より)

眠らんかな
文芸(単行本)
「眠らんかな、眠らんかな」伊豆下田の禅寺で知り合った老社長の遺したことばが、いつまでも心をゆさぶる。――企業に携わる現代人の内奥に流れるやりとりを、哀惜しつつ瑞々しい筆致で描く表題作ほか3篇。最新作品集。
私は週末、伊豆下田にあるその寺によく出かけた。東京からの長い時間は苦にならなかった。その頃会社勤めに対して退屈以上の嫌悪を持ちはじめていた私は、あたかも脱出するかのような気持で夜の電車に踞っていた。――(表題作書き出し)
〔収録作品〕
田舎うどん/崖(はけ)を見る/眠らんかな/アイスブレイカー

こわれもの
文芸(単行本)
「妻よ、おまえはそうやって何倍もの仕事をしているのだな」
真摯に生きようとするほど引き裂かれていく夫婦の絆。抑うつの時代を漂流する家族の再生はあるのか。
現代を生き抜くことの苦悩と葛藤を、抑えた筆致で細やかに描く。私小説的な手法で綴られた作品を貴方はただ「読む」のではなく、心の奥深く「体験」することになる。

ママはノースカロライナにいる
文芸(単行本)
第66回芥川賞受賞『オキナワの少年』から32年。
全身文学者・東峰夫ならではのペーソス溢れる自叙伝的小説。
書かずにはいられない。書くために生きている。作家・東峰夫は、東京都内の六畳一間のアパートで一人、暮らしている。電話もテレビもない禁欲的生活を送りながら、ひたすら小説を著している。文学に己の生涯を捧げ尽くした著者の傑作集。

福猫小判夏まつり
文芸(単行本)
小説を読む愉しみが、しみじみ味わえる名作卓越した筆致。言葉が紡ぎだす小説という世界に、するりと入りこんでしまいます。表題作は、木山捷平賞、野間文芸新人賞受賞の著者にとって、数少ない恋愛小説。
「小説を読む愉しみ」がじっくり、しみじみ味わえます。
ほろ苦さを秘めた上質な恋愛小説である表題作はじめ4作の中短編を収録した傑作集。
女の目が別れる前の妻の視線と似ている気がして、波多野はついて行ってみようかとかんがえた。それで1日がつぶれればいい。彼女はデパートを出ると西武池袋駅構内で宝くじを買い、受け取るときに両手を合わせて拝んだ。それから切符を買って各駅停車に乗り込み、空いている車内のシルバーシートに腰かけた。電車が動き出すと、縁の分厚い真っ黒なサングラスをかけて通りすぎる景色を見ていた。そのうち高価なハンドバッグから食品売場の通路に転がったコロッケを取り出し、座席に正座してゆっくりと咀嚼しはじめた。――(福猫小判夏まつり/本文より)

異色歴史短篇傑作大全
文芸(単行本)
歴史を貫く人の命の輝やき!
渡辺淳一の幕末医学小説の秀作を中心に、菊地秀行等、気鋭・新鋭粒ぞろいの傑作集。
本書の収録作品
渡辺淳一◆沃子誕生
梓澤 要◆しゑやさらさら
東 秀紀◆優しい侍
菊地秀行◆介護鬼
高橋直樹◆命懸け
二宮陸雄◆星侍
宮本昌孝◆一の人、自裁剣
火坂雅志◆羊羹合戦
諸田玲子◆釜中の魚
領家高子◆千本桜

「競争相手は馬鹿ばかり」の世界へようこそ
文芸(単行本)
待望の最新エッセイ集
辛辣なユーモアと深い愛をこめて小説、映画、日常の細部を語る過激な豊かさと魅惑にみちた金井美恵子の世界へようこそ。
眼ざめれば、新しい1日がはじまっていて、活力に満ちあふれているというわけではないし、退屈で、苛立しくも腹立しい事態に直面したりもするのですが、それでも、なんらかの刺激的な出来事がないこともないのですし、そのなかには、生きているよろこびを全身的なものとして体験する瞬間もあります。そうした瞬間のために、私は文章を書くことを選んだのではなかったでしょうか。――あとがきより

ハダカのゴタキスト
文芸(単行本)
代わりに言ってくれて、ありがとう!
甘え下手の女たちを、可愛げがないと決めつける男たちに。
中国に暮らして初めて見えてくるニッポンの恋愛事情。
中国語では嫉妬のことを、「吃醋(ツーツォウ)」、つまり「お酢を食べる」と言う。嫉妬が酸っぱいなんて、私は思いもよらなかった。まあ確かに、甘くはないし、辛くもないだろう。苦々しい気がするから、苦いというなら、少しは納得できる。しかし、酸っぱいとは……。――(本文より)

風のまつり
文芸(単行本)
シーナ式旅情長篇小説
謎の女が島にいた。
撮影に訪れただけの六平を南の島で待っていたのは、色っぽい女となんてこったの大騒動。
目次
不思議ホテル
ハマボウフウ
さよならチビガメ
おじゃれ舟
ハイビスカス
闇まどい
羽虫の踊り
かざぐるま
ひくい雲
あらし
ゆれる炎
しぶき
窓からの風
夜のうねり

イロニアの大和
文芸(単行本)
保田與重郎をめぐる大和文学紀行。ーー国のまほろば・大和の地に刻まれた、無垢なる魂の悲惨と栄光。悠久と無常の風土に、保田文学の根源をたどる、碩学の傑作評論。
「保田を読み始めた頃は旅を嫌っていた若者が、老境に入って、旅の経験もかなり積み重ねて来たその蓄積の上で、保田の大和を眺めた時どのように見えるか、そのことをたしかめようとしたのがこの本である。いうまでもなく現実にはその土地は行政区画としての奈良県であって、そこにひそむ遠い過去の追想は、所詮幻にすぎぬかもしれない。しかし幻にこそ土地の神髄があると考えれば、現実の相はかえって虚にすぎなくなるともいえる。実にして虚、このイロニーの上に保田の大和は浮んでいると見た所に表題を置くいわれがあった。」(後書より)

精霊の王
文芸(単行本)
<魂の原日本>を求めて縄文へと遡る思考の旅
日本という国家が誕生したとき、闇へと埋葬された「石の神」とは?
芸能、技術、哲学の創造を司る霊妙な空間の水脈をたどる。
柳田国男『石上問答』の新たな発展がここにある!
宿神の秘密を明かす奇跡の書 金春禅竹『明宿集』現代語訳も収録!!
日本人の精神史をくつがえす!
私はこの本で、思考する行為に「後戸」の空間にみなぎる霊力を注ぎ込むことによって、私たちの生きる世界からすっかり見えなくなってしまった「創造の空間」への通路を、あらためて開削しようとする試みにとりくんだ。この世界のいたるところに「後戸」をつくりだすこと。私たちの心の内部に凍結され眠らされている潜在能力の耳元で、目覚まし時計のように激しい励起の鈴を鳴り響かせ、そこにもういちど生き生きとした「創造の空間」を立ち上がらせてみたいというのが、この本を書いた私の願いなのだ。
この本を読み終えた方は、これまで語られてきた「日本人の精神史」というものが、根底からくつがえされていく光景をまのあたりにすることだろう。石の神、シャグジの発する不思議な波動にはじめて接して以来何十年もの歳月をへて、ようやく私の学問はその波動の発する宇宙的メッセージに接近し、それを解読していく方法に近づくことができたような気がする。(プロローグより)