文芸(単行本)作品一覧

世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語
文芸(単行本)
世界14ヵ国で翻訳出版!
献身的な愛と、性の違和感について書かれた真実の人間ドラマ。
「お願いがあるの」
あの日の午後、グレタが寝室から声をかけなかったら……。
すべては、バルト海から風が吹きつける、あの寒い午後に始まった。絵のモデルとなる女性が来られなくなり、妻が思いついたのは、夫に女性用のストッキングと靴を穿いてもらうことだった。夫は承諾するが、それが20世紀初めの、もっとも激しく奇妙な愛の物語の始まりになるとは知る由もなかった。
デンマーク人の画家アイナー・ウェゲナーと、やはり画家で、アメリカ生まれの妻グレタ。事実に基づいて書かれた本作は「愛する人の変化に、どう対処するか?」を問いかけてくる。グレタが授けたリリーという名前で、女性の服を着るようになっていくアイナー。ゲームのような夫婦関係は、やがてそれぞれに大きな決断を迫るのだった。リリーをモデルにしたおかげで、グレタの絵の才能は花開く。フランス人の美術商が彼女の絵に目を付け、夫婦はパリへ移り住むが、ふたつの大戦に挟まれたパリの自由な空気はリリーをさらに解放し、アイナーの存在は徐々に記憶のなかに消されていく。ドレスデン婦人科病院での、ある外科手術を知ったグレタの勧めで、アイナーは、永遠に「リリー」になるべくドイツへと旅立つが……。
テーマは複雑で深遠。
愛に対するエバーショフの知的で巧みな探究により、この小説は、注目に値する「事件」となるだろう。
――(ニューヨーク・タイムズ)

自分という自然に出会う―読むワークショップ―
文芸(単行本)
わからないまま歩き続ける勇気が出てきます。
セラピスト、瞑想ファシリテーター、身体感覚講座講師、森案内人、フリーダイビング世界選手権日本代表など生き方を模索しつかんだ人達が伝える人生マニュアル。

子供たちの戦争
文芸(単行本)
傑作連作小説集
戦時下というギリギリの生活環境にあっても、人々は逞しく生きていた。
そこにはやはり恋があり、歌があり、食があり、性があり、日々の小さな喜びや悲しみがあった。
多感な少年たちが経験した銃後の「生」と「性」。もうひとつの戦争の貌(かお)が、ここにある。
<収録作品>
●青竜刀とブルマース
●男と女
●城と藁草履
●匂いと臭い
●亀と五重塔
●軍艦と恋
●童児と童女

マチルデの肖像 恋する音楽小説2
文芸(単行本)
「ねえ、もし木下さんがワーグナーだったら、
ミンナとマチルデとコジマの3人のうちで、
誰にいちばん魅力を感じる?」
音楽が生まれる場所には、必ずドラマがある。
懐かしいあの曲が耳元で甦る、16の短篇小説。

切岸まで
文芸(単行本)
文の京(ふみのみやこ)文芸賞最優秀賞受賞作!
身を苛む愛の深さ
選考委員 加賀乙彦氏、青木玉氏、奥本大三郎氏絶賛!
四年前の夏、瑤子は夫の裏切りを知った。
瑤子より五歳年下の女性を愛しているというのだった。
問いつめても跪(ひざまず)いても夫の心は戻らない。
五十歳を過ぎて、夫を失う痛みには耐えられそうもなかった。
高校に通う一人息子は口数を減らして瑤子を拒み、
八十を超えた母に心配をかけるわけにもいかない。
行き場のない瑤子の心は徐々に無力になっていく。

彼が彼女の女だった頃
文芸(単行本)
Love&Sexをめぐるナイン・ストーリーズ
心まで裸にされる九つの瞬間
思い出して、あなたが私の女だった頃。
覚えていて、私があなたの女だったこと。
忘れないでいて時が過ぎても二人死んでも。
1992‐2002
1990年に私は人間になった。わけがあって、15歳から25歳までの記憶があまりない。ほんとの話だ。で目が覚めたら26歳で、とつぜん成体で、そして体だけでこの世界に生まれてきた感じ。自分の使い方がわからない。他人は何をするのかわからない。他人と何をするのか、わからない。人間の見習いをする亜人間みたいに、人と人の記憶に狂おしく憧れるレプリカントみたいに、誰かを求める。閃光のような一瞬、信じられない光、甘さ、そういうものばかり求めて生きている。記憶も家族もなくても生きられる、そう信じたかった。涙の意味もわからないまま泣いていた。
……そんな自分がこの本にいる。――赤坂真理

コッペリア
文芸(単行本)
私とそっくり同じ顔をした人形が、
じっと私を見つめている。
その人形は官能的な肌と壊れた心をもっていた。
天才的な人形作家、人形を溺愛する青年、
人形になりきろうとする女優、そしてパトロン。
人形に憑かれた人々が織りなす情念のアラベスク。
目を閉じて
胸の上で両手を組み、
銀色の髪は
ふわりと広がり、
そして周辺には
細かな花が散らばっている。
眠っているのだ、
と最初は思った。
けれど違った。
死んでいる。
最初から命などないのに、
それでも死んでいる。
これは人形の、遺体だ。
喉が渇く。
胸の鼓動が速くなる。

モナの瞳
文芸(単行本)
世界は「フィクション」じゃない。
東京の世紀末からアラビアの果て、地図なき光の迷路へ。
そこでぼくを待っていたのは、街に渦巻く戦争の噂、巨大な難民キャンプ、そして……。
芥川賞作家が放つ力作長編小説。
いったいここでぼくはなにをしているのか。電話一本で女によびだされ数千キロを旅してきた。その女が去ってしまうと、こんどはアラビア人の女を最果てのビーチまで追いかけてきた。……いまのぼくはモナに動かされ、そのことでかろうじて自分が支えられているのではないか。――(本文より)

大江戸開府四百年事情
文芸(単行本)
江戸の暮らしにこそ、日本再生の手がかりがある。
多数の図版で立証する江戸の暮らしの真実
●役人が極端に少ない世界
●権あって禄の少ない老中
●定員の増えない町奉行所
●大家さんは分散処理の末端
●女性美容師の誕生
●生活習慣病予防食
●合意だけでできた離婚
●小さな便利さ、小さな災い

21世紀本格宣言
文芸(単行本)
「本格ミステリーよ、永遠なれ」
新世紀の本格のかたちは?探偵の姿は?
すべては輝かしい未来のために!
本格の創作者=論客がおくる最新メッセージ。

きれいな人
文芸(単行本)
傑作長編小説
無垢な魂の物語
マダム・ヴィトラックの100歳の誕生日祝いに配られた詩集と、
98歳の「小娘」イヴォンヌの何日にもわたって続いていく昔語り――。
日付の感覚を失っていく「私」の目の前に、ふたつの大戦に翻弄され正気を失ったミッシェルの魂の物語が浮かび上がる……。
『亡命者』そして『君の中の見知らぬ女』のあと、『きれいな人』が本になることになり、三部作として世に残ることになったのは、大変うれしいことである。世に残るという言い方をするのは、これら三作の中身をなすものが私の内部のどこか言いようのない広い深いところから出てきて、私のペン先で言語化され、そのあと活字化されて、人々に読まれる形のものとなった経緯を、とてもふしぎなことと思うからである。――(「あとがき」より)

宰相リシュリュー
文芸(単行本)
『三銃士』の悪役の大立者
歴史的人物に、宰相の条件を探る。待望久しい人物歴史小説の秀作!
中江兆民は『一年有半』で大政治家に「フランスのリシュリュー、コルベール、チエール。イギリスのピット、ロバート・ピール、グラッドストン。ドイツのビスマルク。イタリアのカヴール、中国の諸葛亮(孔明)、會国藩、わが国の徳川家康、大久保利通」をあげた。「大政治家のすることには一定の方向があり、動かすべからざる順序があり、光りかがやき、すぐれて偉い感じがある」という。
リシュリューとルイ13世というコンビは、次の太陽王ルイ14世の治世、フランスの「大世紀」を用意した。(本文から)

ハネムーン・レシピ
文芸(単行本)
「結婚して一緒にいる」ってどういうことなんだろう?
料理と旅をしながら2人はず~~~~~~っと考えた。
結婚した日はいつだっけ?
思い出すのは区役所からの帰り道に食べた杏仁豆腐の味。
「西へ行きなさい」と占い師に言われ、台湾へ。本場の肉まんと水餃子。
夫の故郷から毎月送られてくる段ボール箱の不思議とハチの子ご飯。
妻の実家で今は亡き両親の思い出探し。庭のブランコに乗ってみた。
築地の奥の奥で結婚記念日に見つけたお宝食材、ホタテと金目鯛。
両親の新婚旅行をたどるイタリア旅行。オリーブオイルとハーブと涙。

作家の四季 池波正太郎未刊行エッセイ集5
文芸(単行本)
懐かしいあの街、あの人、映画。年々の風景と、なおつのる新しい旅への希望
まだ本になっていない佳編・名編、44編。
池波正太郎のラスト・エッセイ。

熱を食む、裸の果実
文芸(単行本)
世間なんて消えてなくなれ。
そうすればこの三叉路の真ん中には、僕と君だけだ。
写真家・横木安良夫が本格的作家デビュー。
鮮やかな南国のラブストーリー。
アオザイを着た女性が通りを横切る瞬間、男は一瞬にカメラで捉えた。
麻伊子――褐色の肌を持つ日本人、あるいは越僑(ベトQ)。
ライジ――名前を失い、日本を捨てた写真家。
一葉の写真が手渡されたときから、空気が、風が、光が、つまり世界が変わった。
サイゴンの街で、メコン川の船上で、リゾート地のニャチャンのビーチで。
2人が繰り広げる情熱的で刺激的な恋愛模様。

江戸の川風
文芸(単行本)
天皇の料理人と将軍の料理人!
壮大なスケールと江戸前の枠、待望久しい未完の秀作。
縄田一男スペシャル解説付。
絶筆、七回忌特別出版
日本料理の源流である四条流からは、高橋家、石井家の2派があり、四条流包丁の総元締は、高橋家がつとめ、形式上、石井家は高橋家に入門し包丁式の免許を得るかたちとなっている。そして高橋家は天皇の料理番を、石井家は将軍家の料理頭取をつとめていた。
一見、羽山信樹作品初の市井ものと見紛う本書の真のテーマは、食文化を介した皇室と幕閣の抗争である。(略)
1人の男、早咲屋圭次郎を江戸へ送った。鮨屋の圭次郎に託された密命は――?(解説より)

輝く日の宮
文芸(単行本)
源氏物語を巡る、10年ぶりの書き下し小説。
美人国文学者が水の会社の役員との恋愛を経ながら、失われた源氏物語の一章の謎を解く。
6章全てを異なる形式、文体で描き日本文学の可能性を極限まで広げた傑作。

無垢の力――<少年>表象文学論
文芸(単行本)
果敢(はか)なくも美しき<少年>という魅惑
美と憧憬の文学
近代日本文学の正統から排除された少年愛=自己愛の文化的系譜をたどり、
「無垢」のイメージに託された価値と論理を現代に問う力作評論。

煙波
文芸(単行本)
野暮天なんぞ相手じゃない!
気風の良さは小樽一、五郎駒姐さんの胸の裡は、愛しい人への秘めた思いがたぎる。
検梅反対、一銭積立、組合結成、新見番設立……欧州大戦から大正期、活気あふれる小樽芸者の心意気。

FUTON
文芸(単行本)
「滑稽で愛らしく、哀しくてセンチメンタルだ」
――高橋源一郎氏絶賛の大型新人登場!
「『蒲団』?あの、変態の先生が女弟子のフトンに顔をうずめて泣く話?」
田山花袋「蒲団」の書き直しを図る中年アメリカ人と愛人の日系女子学生。
95歳の曾祖父の戦後史と現在。知的ユーモア溢れる書き下ろし長篇!
百年前に書かれた小説、田山花袋の『蒲団』が、現代の日本で『FUTON』として甦った。新たにアメリカからの登場人物も加えたこのニューヴァージョンは、花袋のオリジナルがそうであったように、滑稽で愛らしく、哀しくてセンチメンタルだ。そしてはじめて読むのに、なぜか懐かしい気がするのである。――(高橋源一郎)